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真夜中の箱庭
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御年十三歳になられるリーゼロッテ嬢は、一風変わった少女だ。
やや癖のあるやわらかな栗毛色の長髪、伏し目がちの瞳は萌芽の若葉色、頬にさす淡い桃色が白磁の肌をより引き立て、唇は紅の薔薇の蕾を思わせる。たいそう美しい伯爵令嬢なのだが、表情は乏しく、非常に無口だ。なぜああも無口なのか、いっそ謎めいて思えるほどに。
笑い声をたてているところを一度たりとも見たことがなく、感情の起伏を顔にも声にも表さない。それゆえに、まるで精巧な人形のようだと揶揄される。
当のお嬢様自身がご自分の無口さや周囲の反応を気に病んでいないのが救いと言えようか。
リーゼロッテ様はその無口さゆえに、内向的で臆病な性格だと思われがちだが、存外そうでもない。
声に出してこそ言わないが意志表示は明確にし、そこそこに……いや、たまにはこちらが魂消てしまう程の積極性もある。
リーゼロッテ様の思いもかけない行動に、私は度々慌て、とまどい、そしてちょっと微笑ましい気持ちになるのだ。
エックホーフ伯爵家の三女、リーゼロッテ様の家庭教師を勤めるようになって、早いもので一年半が経つ。
いついかなる時も寡黙なリーゼロッテ様だが、私を「レギナルト」と親しく名を呼んでくれ、――これは私の気のせいかもしれないが、出逢いの頃よりは口数が増え、表情も多少豊かになったように感じられる。
無愛想で愛嬌のないと娘と眉をひそめられることも多いリーゼロッテ様だが、感情が面に出にくいだけで、決して冷淡な性格ではなく、思いやりのある優しい方だ。――それはもう間違いなく。
リーゼロッテ様は、少々不器用な方なのだ。表情筋が上手く動かないだけで。
そんなリーゼロッテ様は、感情表現だけではなく、別の面でも少々不器用だった。
料理や裁縫を趣味として好まれるのだが、その出来具合は大抵微妙なものだ。リーゼロッテ様自身はその出来具合に納得しているようなので、こちらからは何とも指摘しようがないのだが。
そして私は、リーゼロッテ様よりは多少、手先は器用と言えた。しかし手先は器用であっても、体そのものは“不器用”だった。――不健康な体に劣等感を抱いていた私は、手先の器用さ以外は誇れるものが何一つなかった。
幼い頃から虚弱な体質だった私は、二十歳を過ぎても病がちで社交界にもあまり顔を出せない始末だった。
アクス家の次男は無為徒食の軟弱者。そう謗られても致し方の無い有様で、父母の落胆顔を見る度、申し訳ないような腹立たしいような悲しみを覚えていたものだった。
男爵家の冷や飯食いとして一生を終えるのかと我ながら情けなく思っていたが、縁故を頼り、恐れ多くも伯爵令嬢の家庭教師を勤めることとなった。
かくして、私はリーゼロッテ様と出逢ったのだ。
さて、私より十二歳年下の伯爵令嬢は、今現在、私の寝室におり、寝衣姿の私を見据えている。
リーゼロッテ様の突然の訪問に、私は大いに驚いた。
蜂蜜色の髪はいつにもましてくしゃけて乱れているだろうし、灰青色の瞳は眠気をよどませ曇っているだろう。視界が曇っているのは視力が低いせいだが、寝ぼけ眼でいるには違いない。慌てて髪を手櫛で整え、眼鏡をかけた。時計を見ると、午後三時をやや回った時刻であった。
迂闊にも体調を崩し、寝込んでしまった私をわざわざ見舞いに来てくださったリーゼロッテ様は、楕円形をした大きな藤籠を大事そうに抱えていた。
使用人を部屋から下がらせると、リーゼロッテ様はまっすぐにこちらに向かって歩いてきた。「こんにちは」とか「ごきげんいかが」という挨拶もないが、それはいつものことだ。リーゼロッテ様はぺこりと軽くお辞儀をし、それですべての挨拶を簡略化する。
リーゼロッテ様はそれで良いが、私までそうであってはいけないだろう。
まさか寝台に座ったままリーゼロッテ様をお迎えするわけにはと掛け布団をのけ、寝台から降りようとしたのだが、目力で制されてしまった。リーゼロッテ様は相変わらず口の端をきつく結び、声を発しない。若葉色の瞳でじっと私を見、様子を窺ってくる。
心配してくださっているのだろう。
しかし、それだけにしては妙な迫力を感じる。
リーゼロッテ様はいつになく気合いの入ったご様子だった。
「申し訳ございません、お嬢様。十日も授業を遅らせてしまいましたね。――ああ、もう熱は下がっておりますから、明日……いえ、明後日には本復できるかと」
「…………」
リーゼロッテ様は眉を僅かにしかめた。
物事に敏いリーゼロッテ様は、私が無理をしてそう言っているのではないかと疑い、突きつめるような鋭いまなざしを向けてくる。
私は微笑み、遅まきながら見舞いにいらしてくださったことに礼を述べ、それから「本当にもう大丈夫です」と語を継いだ。
「昔から、この夏と秋の季節の変わり目にはどうにも弱くて、情けない限りです」
「…………」
納得してくださったのかどうなのか、リーゼロッテ様は小さく頷いたようだった。
それからリーゼロッテ様は抱えていた藤籠を寝台脇の円卓に置き、中から小鍋を取り出した。小さな椀と匙も一緒にそこから取り出し、そして鍋の蓋をあけた。そこから湯気が立ち、「それは何でしょうか」と問うまでもなく、スープであろうことが分かった。しかし立ち上ってくる匂いは微妙なものだった。リーゼロッテ様のお気を悪くしてはいけないと思い口を閉ざしたが、美味しそうと感じる匂いではなかった。甘そうなような酸っぱそうなような……いったい何の材料を使い、どんな香辛料を入れればそのような匂いになるのか分からない、未知なる匂いであった。――異国風と言えば良いのであろうか。
「……もしやそれは、お嬢様、御自らお作りになったスープでございましょうか」
無粋ながら問うと、リーゼロッテ様はこくりと頷いた。そしてスープの入った椀をこちらに差し出してくる。それだけならまだしも、寝台に膝をかけて身を乗り出し、「わたしが飲ませて差し上げます」と言わんばかりに、匙を突き出してきた。伯爵令嬢らしからぬ振る舞いであった。
「お、お嬢様」
「…………」
リーゼロッテ様は寝台に這い上るようにして乗りかかり、それだけでは届かぬと、さらに身を進め、私の上に跨るような姿勢になった。そして椀を左手に、匙を右手に、私に迫ってくる。
これには参ってしまった。
伯爵令嬢に押し倒されて……いや、倒されてはいないが、のしかかられて身動きを封じられてしまっているこの体勢は、いかがなものであろう。
美しい伯爵令嬢は真顔で私に迫ってくるのだ。
せっかく下がった熱がぶり返しそうだ。
リーゼロッテ様は相変わらずの無表情で、だらだらと汗を流す私を、不思議顔もせずに見つめている。
「お嬢様、その椀と匙を渡していただければ、自分で飲めます。どうか、お降りいただけませんか。この姿勢では……お嬢様の服も乱れておしまいになります」
人が見たらどんな誤解をされるか分からない。
……いや、誤解されるなどという危惧は滑稽かもしれない。
リーゼロッテ様はまだたった十二の少女なのだ。
私はいったい何を焦り、心配しているのだろうか。
「お嬢様、伯爵令嬢ともあろうお方がこのような振る舞いをなさるのは、あまり褒められたものではありませんよ」
そう窘めてみるも、リーゼロッテ様は私の上から降りようとはせず、「飲め」と匙を口に近づけてくる。
しかたないと諦め、リーゼロッテ様の差し出す匙を口内に迎え、すっかり冷めきったスープを啜った。
舌先にピリリとした刺激が走った。酸味と辛味が混じり合い、それでいて奇妙な甘みもある、なんとも言えない味ではあったが、思ったよりは不味くなかった。
「……美味しゅうございます」
という世辞がすぐ出るほどには。
私のその言葉を聞けて満足したのか、お嬢様は椀の中に匙を入れ、それを私に手渡して、やっと寝台から降りてくださった。
リーゼロッテ様は私の様子を窺い続けている。言葉一つ発せず、寝台の脇でただじっと佇む様は、たしかに人形のように見える。しかし人形にしてはまなざしが強い。
リーゼロッテ様はリーゼロッテ様なりに私の身を案じ、気にかけてくれているのだ。こうしてスープまで作ってくれ、手ずから私に飲ませてくれようとするほどに。
とりあえず、椀の中身は空けてしまわねばなるまいと、匙は使わず、椀に直接口をつけて、一息に飲み干した。
そういえば、リーゼロッテ様が私の部屋に入ったのは……いや、アクス家に来たのはこれが初めてではなかったろうか。
どうやらリーゼロッテ様も同じことを思いついたらしく、私がスープを二杯飲んだのを確かめ終えた頃には、急にそわそわとし始め、若干落ち着きを失くしていた。目を泳がせ、首を巡らせて部屋中を眺めまわし、やがてある一点に目を止めた。
暖炉と本棚、寝台と円卓と長椅子、工具等が無造作に置かれた作業台……その作業台の上にリーゼロッテ様の目が止まった。そこに置かれている物をもっと良く見るために、リーゼロッテ様はそこへ近づいて行った。そして、私を振り返り見る。
「――それは、箱庭ですよ、お嬢様。ご覧になるのは初めてですか?」
「…………」
こっくりと大きく頷いたリーゼロッテ様の瞳が、光を弾くように輝いている。そして作りかけの箱庭と私とを忙しくなく見やる。「お前がつくったのか」と目で問われ、私は「はい」と答えた。
私の唯一といっていい趣味が、箱庭作りだった。
幼い頃から病弱だった私は部屋に閉じこもることが多く、いつも無聊をかこっていた。その退屈しのぎに始めたのが箱庭作りだったのだが、今ではすっかり夢中になり、時間を割いてまで作るようになってしまった。
今、作業台の上にあるのは、果樹園を模した箱庭だ。林檎の木と納屋、小川にベンチ、それだけの他愛無い小さな箱庭だったが、まだ作りかけのそれはリーゼロッテ様の興味を大きく引いたようだった。
リーゼロッテ様は私を請うようにして見つめ、突然に口を開いた。
「レギナルト」
リーゼロッテ様の声に不意をつかれ、私は思わず目を瞬かせてしまった。
「レギナルト、……箱庭、他にもあるのか?」
リーゼロッテ様のお声を聞くのは、どれくらいぶりだろうか。
寝込んでいたせいもあって、こうしてお会いするのも十日ぶりなのだが、そのぎこちなくも愛らしくか細い声を聞くのは、もっと久しかった。「レギナルト」と私の名を呼ぶのは、リーゼロッテ様もずいぶん久しかったろう。
「人にあげてしまって手元には少ししか残していないのですが、隣室に、完成品を幾つか保存しております。――箱庭、お気に召されましたか?」
「…………」
リーゼロッテ様は頷いた。そわそわと落ちつかなげなリーゼロッテ様に、
「作りかけのそれでよろしければ、どうぞお手に取ってご覧ください」
と促した。
リーゼロッテ様の頬が明るく紅潮した。
精緻で豪華な出来でもない粗い作りの箱庭で、稚拙さに多少の気恥ずかしさはあったが、興味深げに手に取ってもらえるのは嬉しかった。
「レギナルトは、すごいな」
感嘆のため息をもらし、ぽつりとリーゼロッテ様が言った。
「器用なのは知っていたが、こんな見事な……か、可愛らしい物を作れるなんて……レギナルトはすごい」
「お褒めにあずかり、ありがとうございます。まだまだ拙く雑な所の多い物ですが、そのようにおっしゃっていただけるのは嬉しいです」
「…………」
「もっと優れた物を作る職人を知っておりますから、良い物を選んで、今日のお礼に一つ二つ、差し上げましょう。どのような箱庭をお好みでしょうか」
「レギナルト」
「はい」
「レギナルトの作ったものがいい。それ以外は要らない」
きっぱりとした口調でリーゼロッテ様は言った。若葉色の瞳がまっすぐに私をとらえ、しかしふと、その瞳が逸らされた。
「レギナルトが、……レギナルトのが、いいのだ」
「そうですか」
もしかして照れていらっしゃるのだろうか、リーゼロッテ様は。
そして何故私までつられるようにして照れてしまうのか。
一瞬、奇妙な空気が流れた。リーゼロッテ様がいつになく饒舌になっていらっしゃるからかもしれない。
「それでしたら、何かこれというご要望はございますか? たいそうな物は作れませんが、ご希望の物があれば、それを作りましょう」
「…………」
リーゼロッテ様はこちらに向き直り、少しだけ驚いたような困ったような戸惑い顔を見せた。ややあってから、リーゼロッテ様は「それならば」と切り出した。
「水車小屋がいい。春の、花のある……」
言いさして、リーゼロッテ様は口を噤んでしまった。どのように要望を言えば良いのやらと、思案顔だ。
私はすぐに察した。
「あの水車小屋ですね。以前ともに出掛けた、花畑が近くにあった、あの場所の」
「…………」
こくこくとリーゼロッテ様は頷いた。
半年前、野外学習と称してリーゼロッテ様と二人で出掛けたことがあった。伯爵領地内の屋敷から程近い場所で、付き添いの従者もおり二人きりだったわけではないが、邸を出、ああして二人で物見遊山に行くのは初めてだった。
空は晴れ渡って風は和やかに吹き、花は爛漫と咲きみだれ、鳥は歌い、蝶は舞い、暖かな光に満ち溢れていた。
リーゼロッテ様は家庭教師である私にたくさんの質問を浴びせてきた。言葉は少なかったが、目を輝かせてあらゆることを問い、私もまた持てる知識を総動員して答えて差し上げた。突飛な質問に「困りましたね」と苦笑することもしばしばだった。しかしリーゼロッテ様は苛立ちも怒りもせず、次から次へと問いを重ねてきた。問うこと自体を楽しんでいるようだった。
表情は硬いままではあったが、年頃の少女らしい好奇心の旺盛さ、それに快活さと明朗さが若葉色の瞳を生き生きとさせていた。
あの日のことが、良い思い出としてリーゼロッテ様の記憶に刻まれたのであれば、それは嬉しいことだ。
「それでは、あの水車小屋の箱庭を作りましょう。……そうですね、来月の誕生日祝いにそれを贈らせていただきますよ。今日のお礼も兼ねて」
リーゼロッテ様は来月十三歳になられる。その祝いに何を贈ろうかと悩んでいたが、その思案は晴れた。
急ぎ、材料を集めなければ。それに水車小屋の写生もしてこなければならない。あとひと月余り、忙しくなりそうだと別の思案を巡らせていたところへ、リーゼロッテ様が先ほどよりは遠慮がちな足取りで私に近づき、声をかけてきた。
「レギナルト」
「何でしょう、お嬢様」
「…………」
リーゼロッテ様は、本日のお召し物のドレスと同じように、頬を薔薇色に染めていた。とても愛くるしいご様子ではあったが、いつにない雰囲気でもあった。
「お嬢様?」
「レギナルト。……――約束だ。箱庭、楽しみに待っている」
「承知いたしました」
「それからレギナルト、できればその……名を…………いや、……――」
言いさして、リーゼロッテ様は口の端を結んで、俯いてしまわれた。
少し不機嫌そうな、いや、拗ねたようなと言った方が的確だろうか。そんなリーゼロッテ様の表情が可笑しくもあり、心を和ませてくれた。
リーゼロッテ様の家庭教師となって、一年半。
ともにいる時間はさほど多くはないが、それでもリーゼロッテ様の無表情な面の奥に隠れた、豊かな心情の断片くらいは読みとれるようになってきたと思う。
「リーゼロッテ様」
リーゼロッテ様の要望に応え名を呼ぶと、若葉色の瞳がハッと見開かれた。
実に分かりやすく、素直な反応だ。
目は口ほどに物を言うというが、なるほどリーゼロッテ様の若葉色の瞳は思いがけないほど饒舌だ。
いやこれも、私の贔屓目かもしれないが。
教え子の成長を間近で眺め、実感できるのは楽しいものだ。
ご成長の暁には、さぞや美しく清雅な貴婦人におなりのことだろう。
「リーゼロッテ様、茶を用意させます。よろしければどうぞ、茶話室まで案内させますから、そこでお寛ぎください」
「…………」
リーゼロッテ様はぎこちなく首を横に振った。
もう帰るから、ゆっくり養生してちゃんと体調を戻せと言わんばかりの顔つきで私を睨んできた。そして急ぎ足で私の寝室から出、ドアを閉めたかと思うと再びそろりと少しだけ空けて、顔を覗かせた。そしてリーゼロッテ様は、まるで挑戦状でも叩きつけるかのような口調で私に言い放った。
「明後日、待ってる。スープを用意しておく。栄養満点のスープを作っておくから」
楽しみにしていろと、ぶっきらぼうな声音で。あるいは照れくささを隠したような上擦った声で。
そしてリーゼロッテ様は些か乱暴にドアを閉め、パタパタと慌ただしい足音を響かせて走り去っていった。
私は再び眼鏡をはずして、瞼を軽く閉じた。
知らず、口元に笑みが滲んでくる。
今夜見るだろう夢を、想像した。
それは、リーゼロッテ様の作ったスープのような温かくも奇妙な気持ちのする、不思議な夢に違いない。
私が作った小さな箱庭の中、花に囲まれたテーブルでリーゼロッテ様と並んで座り、差し出された微妙な味のスープを飲まされては、微笑みを返す、そんな夢。
そして私は、水車の回る音を心音と重ねて聞いている。
束の間とも永遠とも言える、そんな風に幸せな、ひと時の優しい夢を見るだろう。
やや癖のあるやわらかな栗毛色の長髪、伏し目がちの瞳は萌芽の若葉色、頬にさす淡い桃色が白磁の肌をより引き立て、唇は紅の薔薇の蕾を思わせる。たいそう美しい伯爵令嬢なのだが、表情は乏しく、非常に無口だ。なぜああも無口なのか、いっそ謎めいて思えるほどに。
笑い声をたてているところを一度たりとも見たことがなく、感情の起伏を顔にも声にも表さない。それゆえに、まるで精巧な人形のようだと揶揄される。
当のお嬢様自身がご自分の無口さや周囲の反応を気に病んでいないのが救いと言えようか。
リーゼロッテ様はその無口さゆえに、内向的で臆病な性格だと思われがちだが、存外そうでもない。
声に出してこそ言わないが意志表示は明確にし、そこそこに……いや、たまにはこちらが魂消てしまう程の積極性もある。
リーゼロッテ様の思いもかけない行動に、私は度々慌て、とまどい、そしてちょっと微笑ましい気持ちになるのだ。
エックホーフ伯爵家の三女、リーゼロッテ様の家庭教師を勤めるようになって、早いもので一年半が経つ。
いついかなる時も寡黙なリーゼロッテ様だが、私を「レギナルト」と親しく名を呼んでくれ、――これは私の気のせいかもしれないが、出逢いの頃よりは口数が増え、表情も多少豊かになったように感じられる。
無愛想で愛嬌のないと娘と眉をひそめられることも多いリーゼロッテ様だが、感情が面に出にくいだけで、決して冷淡な性格ではなく、思いやりのある優しい方だ。――それはもう間違いなく。
リーゼロッテ様は、少々不器用な方なのだ。表情筋が上手く動かないだけで。
そんなリーゼロッテ様は、感情表現だけではなく、別の面でも少々不器用だった。
料理や裁縫を趣味として好まれるのだが、その出来具合は大抵微妙なものだ。リーゼロッテ様自身はその出来具合に納得しているようなので、こちらからは何とも指摘しようがないのだが。
そして私は、リーゼロッテ様よりは多少、手先は器用と言えた。しかし手先は器用であっても、体そのものは“不器用”だった。――不健康な体に劣等感を抱いていた私は、手先の器用さ以外は誇れるものが何一つなかった。
幼い頃から虚弱な体質だった私は、二十歳を過ぎても病がちで社交界にもあまり顔を出せない始末だった。
アクス家の次男は無為徒食の軟弱者。そう謗られても致し方の無い有様で、父母の落胆顔を見る度、申し訳ないような腹立たしいような悲しみを覚えていたものだった。
男爵家の冷や飯食いとして一生を終えるのかと我ながら情けなく思っていたが、縁故を頼り、恐れ多くも伯爵令嬢の家庭教師を勤めることとなった。
かくして、私はリーゼロッテ様と出逢ったのだ。
さて、私より十二歳年下の伯爵令嬢は、今現在、私の寝室におり、寝衣姿の私を見据えている。
リーゼロッテ様の突然の訪問に、私は大いに驚いた。
蜂蜜色の髪はいつにもましてくしゃけて乱れているだろうし、灰青色の瞳は眠気をよどませ曇っているだろう。視界が曇っているのは視力が低いせいだが、寝ぼけ眼でいるには違いない。慌てて髪を手櫛で整え、眼鏡をかけた。時計を見ると、午後三時をやや回った時刻であった。
迂闊にも体調を崩し、寝込んでしまった私をわざわざ見舞いに来てくださったリーゼロッテ様は、楕円形をした大きな藤籠を大事そうに抱えていた。
使用人を部屋から下がらせると、リーゼロッテ様はまっすぐにこちらに向かって歩いてきた。「こんにちは」とか「ごきげんいかが」という挨拶もないが、それはいつものことだ。リーゼロッテ様はぺこりと軽くお辞儀をし、それですべての挨拶を簡略化する。
リーゼロッテ様はそれで良いが、私までそうであってはいけないだろう。
まさか寝台に座ったままリーゼロッテ様をお迎えするわけにはと掛け布団をのけ、寝台から降りようとしたのだが、目力で制されてしまった。リーゼロッテ様は相変わらず口の端をきつく結び、声を発しない。若葉色の瞳でじっと私を見、様子を窺ってくる。
心配してくださっているのだろう。
しかし、それだけにしては妙な迫力を感じる。
リーゼロッテ様はいつになく気合いの入ったご様子だった。
「申し訳ございません、お嬢様。十日も授業を遅らせてしまいましたね。――ああ、もう熱は下がっておりますから、明日……いえ、明後日には本復できるかと」
「…………」
リーゼロッテ様は眉を僅かにしかめた。
物事に敏いリーゼロッテ様は、私が無理をしてそう言っているのではないかと疑い、突きつめるような鋭いまなざしを向けてくる。
私は微笑み、遅まきながら見舞いにいらしてくださったことに礼を述べ、それから「本当にもう大丈夫です」と語を継いだ。
「昔から、この夏と秋の季節の変わり目にはどうにも弱くて、情けない限りです」
「…………」
納得してくださったのかどうなのか、リーゼロッテ様は小さく頷いたようだった。
それからリーゼロッテ様は抱えていた藤籠を寝台脇の円卓に置き、中から小鍋を取り出した。小さな椀と匙も一緒にそこから取り出し、そして鍋の蓋をあけた。そこから湯気が立ち、「それは何でしょうか」と問うまでもなく、スープであろうことが分かった。しかし立ち上ってくる匂いは微妙なものだった。リーゼロッテ様のお気を悪くしてはいけないと思い口を閉ざしたが、美味しそうと感じる匂いではなかった。甘そうなような酸っぱそうなような……いったい何の材料を使い、どんな香辛料を入れればそのような匂いになるのか分からない、未知なる匂いであった。――異国風と言えば良いのであろうか。
「……もしやそれは、お嬢様、御自らお作りになったスープでございましょうか」
無粋ながら問うと、リーゼロッテ様はこくりと頷いた。そしてスープの入った椀をこちらに差し出してくる。それだけならまだしも、寝台に膝をかけて身を乗り出し、「わたしが飲ませて差し上げます」と言わんばかりに、匙を突き出してきた。伯爵令嬢らしからぬ振る舞いであった。
「お、お嬢様」
「…………」
リーゼロッテ様は寝台に這い上るようにして乗りかかり、それだけでは届かぬと、さらに身を進め、私の上に跨るような姿勢になった。そして椀を左手に、匙を右手に、私に迫ってくる。
これには参ってしまった。
伯爵令嬢に押し倒されて……いや、倒されてはいないが、のしかかられて身動きを封じられてしまっているこの体勢は、いかがなものであろう。
美しい伯爵令嬢は真顔で私に迫ってくるのだ。
せっかく下がった熱がぶり返しそうだ。
リーゼロッテ様は相変わらずの無表情で、だらだらと汗を流す私を、不思議顔もせずに見つめている。
「お嬢様、その椀と匙を渡していただければ、自分で飲めます。どうか、お降りいただけませんか。この姿勢では……お嬢様の服も乱れておしまいになります」
人が見たらどんな誤解をされるか分からない。
……いや、誤解されるなどという危惧は滑稽かもしれない。
リーゼロッテ様はまだたった十二の少女なのだ。
私はいったい何を焦り、心配しているのだろうか。
「お嬢様、伯爵令嬢ともあろうお方がこのような振る舞いをなさるのは、あまり褒められたものではありませんよ」
そう窘めてみるも、リーゼロッテ様は私の上から降りようとはせず、「飲め」と匙を口に近づけてくる。
しかたないと諦め、リーゼロッテ様の差し出す匙を口内に迎え、すっかり冷めきったスープを啜った。
舌先にピリリとした刺激が走った。酸味と辛味が混じり合い、それでいて奇妙な甘みもある、なんとも言えない味ではあったが、思ったよりは不味くなかった。
「……美味しゅうございます」
という世辞がすぐ出るほどには。
私のその言葉を聞けて満足したのか、お嬢様は椀の中に匙を入れ、それを私に手渡して、やっと寝台から降りてくださった。
リーゼロッテ様は私の様子を窺い続けている。言葉一つ発せず、寝台の脇でただじっと佇む様は、たしかに人形のように見える。しかし人形にしてはまなざしが強い。
リーゼロッテ様はリーゼロッテ様なりに私の身を案じ、気にかけてくれているのだ。こうしてスープまで作ってくれ、手ずから私に飲ませてくれようとするほどに。
とりあえず、椀の中身は空けてしまわねばなるまいと、匙は使わず、椀に直接口をつけて、一息に飲み干した。
そういえば、リーゼロッテ様が私の部屋に入ったのは……いや、アクス家に来たのはこれが初めてではなかったろうか。
どうやらリーゼロッテ様も同じことを思いついたらしく、私がスープを二杯飲んだのを確かめ終えた頃には、急にそわそわとし始め、若干落ち着きを失くしていた。目を泳がせ、首を巡らせて部屋中を眺めまわし、やがてある一点に目を止めた。
暖炉と本棚、寝台と円卓と長椅子、工具等が無造作に置かれた作業台……その作業台の上にリーゼロッテ様の目が止まった。そこに置かれている物をもっと良く見るために、リーゼロッテ様はそこへ近づいて行った。そして、私を振り返り見る。
「――それは、箱庭ですよ、お嬢様。ご覧になるのは初めてですか?」
「…………」
こっくりと大きく頷いたリーゼロッテ様の瞳が、光を弾くように輝いている。そして作りかけの箱庭と私とを忙しくなく見やる。「お前がつくったのか」と目で問われ、私は「はい」と答えた。
私の唯一といっていい趣味が、箱庭作りだった。
幼い頃から病弱だった私は部屋に閉じこもることが多く、いつも無聊をかこっていた。その退屈しのぎに始めたのが箱庭作りだったのだが、今ではすっかり夢中になり、時間を割いてまで作るようになってしまった。
今、作業台の上にあるのは、果樹園を模した箱庭だ。林檎の木と納屋、小川にベンチ、それだけの他愛無い小さな箱庭だったが、まだ作りかけのそれはリーゼロッテ様の興味を大きく引いたようだった。
リーゼロッテ様は私を請うようにして見つめ、突然に口を開いた。
「レギナルト」
リーゼロッテ様の声に不意をつかれ、私は思わず目を瞬かせてしまった。
「レギナルト、……箱庭、他にもあるのか?」
リーゼロッテ様のお声を聞くのは、どれくらいぶりだろうか。
寝込んでいたせいもあって、こうしてお会いするのも十日ぶりなのだが、そのぎこちなくも愛らしくか細い声を聞くのは、もっと久しかった。「レギナルト」と私の名を呼ぶのは、リーゼロッテ様もずいぶん久しかったろう。
「人にあげてしまって手元には少ししか残していないのですが、隣室に、完成品を幾つか保存しております。――箱庭、お気に召されましたか?」
「…………」
リーゼロッテ様は頷いた。そわそわと落ちつかなげなリーゼロッテ様に、
「作りかけのそれでよろしければ、どうぞお手に取ってご覧ください」
と促した。
リーゼロッテ様の頬が明るく紅潮した。
精緻で豪華な出来でもない粗い作りの箱庭で、稚拙さに多少の気恥ずかしさはあったが、興味深げに手に取ってもらえるのは嬉しかった。
「レギナルトは、すごいな」
感嘆のため息をもらし、ぽつりとリーゼロッテ様が言った。
「器用なのは知っていたが、こんな見事な……か、可愛らしい物を作れるなんて……レギナルトはすごい」
「お褒めにあずかり、ありがとうございます。まだまだ拙く雑な所の多い物ですが、そのようにおっしゃっていただけるのは嬉しいです」
「…………」
「もっと優れた物を作る職人を知っておりますから、良い物を選んで、今日のお礼に一つ二つ、差し上げましょう。どのような箱庭をお好みでしょうか」
「レギナルト」
「はい」
「レギナルトの作ったものがいい。それ以外は要らない」
きっぱりとした口調でリーゼロッテ様は言った。若葉色の瞳がまっすぐに私をとらえ、しかしふと、その瞳が逸らされた。
「レギナルトが、……レギナルトのが、いいのだ」
「そうですか」
もしかして照れていらっしゃるのだろうか、リーゼロッテ様は。
そして何故私までつられるようにして照れてしまうのか。
一瞬、奇妙な空気が流れた。リーゼロッテ様がいつになく饒舌になっていらっしゃるからかもしれない。
「それでしたら、何かこれというご要望はございますか? たいそうな物は作れませんが、ご希望の物があれば、それを作りましょう」
「…………」
リーゼロッテ様はこちらに向き直り、少しだけ驚いたような困ったような戸惑い顔を見せた。ややあってから、リーゼロッテ様は「それならば」と切り出した。
「水車小屋がいい。春の、花のある……」
言いさして、リーゼロッテ様は口を噤んでしまった。どのように要望を言えば良いのやらと、思案顔だ。
私はすぐに察した。
「あの水車小屋ですね。以前ともに出掛けた、花畑が近くにあった、あの場所の」
「…………」
こくこくとリーゼロッテ様は頷いた。
半年前、野外学習と称してリーゼロッテ様と二人で出掛けたことがあった。伯爵領地内の屋敷から程近い場所で、付き添いの従者もおり二人きりだったわけではないが、邸を出、ああして二人で物見遊山に行くのは初めてだった。
空は晴れ渡って風は和やかに吹き、花は爛漫と咲きみだれ、鳥は歌い、蝶は舞い、暖かな光に満ち溢れていた。
リーゼロッテ様は家庭教師である私にたくさんの質問を浴びせてきた。言葉は少なかったが、目を輝かせてあらゆることを問い、私もまた持てる知識を総動員して答えて差し上げた。突飛な質問に「困りましたね」と苦笑することもしばしばだった。しかしリーゼロッテ様は苛立ちも怒りもせず、次から次へと問いを重ねてきた。問うこと自体を楽しんでいるようだった。
表情は硬いままではあったが、年頃の少女らしい好奇心の旺盛さ、それに快活さと明朗さが若葉色の瞳を生き生きとさせていた。
あの日のことが、良い思い出としてリーゼロッテ様の記憶に刻まれたのであれば、それは嬉しいことだ。
「それでは、あの水車小屋の箱庭を作りましょう。……そうですね、来月の誕生日祝いにそれを贈らせていただきますよ。今日のお礼も兼ねて」
リーゼロッテ様は来月十三歳になられる。その祝いに何を贈ろうかと悩んでいたが、その思案は晴れた。
急ぎ、材料を集めなければ。それに水車小屋の写生もしてこなければならない。あとひと月余り、忙しくなりそうだと別の思案を巡らせていたところへ、リーゼロッテ様が先ほどよりは遠慮がちな足取りで私に近づき、声をかけてきた。
「レギナルト」
「何でしょう、お嬢様」
「…………」
リーゼロッテ様は、本日のお召し物のドレスと同じように、頬を薔薇色に染めていた。とても愛くるしいご様子ではあったが、いつにない雰囲気でもあった。
「お嬢様?」
「レギナルト。……――約束だ。箱庭、楽しみに待っている」
「承知いたしました」
「それからレギナルト、できればその……名を…………いや、……――」
言いさして、リーゼロッテ様は口の端を結んで、俯いてしまわれた。
少し不機嫌そうな、いや、拗ねたようなと言った方が的確だろうか。そんなリーゼロッテ様の表情が可笑しくもあり、心を和ませてくれた。
リーゼロッテ様の家庭教師となって、一年半。
ともにいる時間はさほど多くはないが、それでもリーゼロッテ様の無表情な面の奥に隠れた、豊かな心情の断片くらいは読みとれるようになってきたと思う。
「リーゼロッテ様」
リーゼロッテ様の要望に応え名を呼ぶと、若葉色の瞳がハッと見開かれた。
実に分かりやすく、素直な反応だ。
目は口ほどに物を言うというが、なるほどリーゼロッテ様の若葉色の瞳は思いがけないほど饒舌だ。
いやこれも、私の贔屓目かもしれないが。
教え子の成長を間近で眺め、実感できるのは楽しいものだ。
ご成長の暁には、さぞや美しく清雅な貴婦人におなりのことだろう。
「リーゼロッテ様、茶を用意させます。よろしければどうぞ、茶話室まで案内させますから、そこでお寛ぎください」
「…………」
リーゼロッテ様はぎこちなく首を横に振った。
もう帰るから、ゆっくり養生してちゃんと体調を戻せと言わんばかりの顔つきで私を睨んできた。そして急ぎ足で私の寝室から出、ドアを閉めたかと思うと再びそろりと少しだけ空けて、顔を覗かせた。そしてリーゼロッテ様は、まるで挑戦状でも叩きつけるかのような口調で私に言い放った。
「明後日、待ってる。スープを用意しておく。栄養満点のスープを作っておくから」
楽しみにしていろと、ぶっきらぼうな声音で。あるいは照れくささを隠したような上擦った声で。
そしてリーゼロッテ様は些か乱暴にドアを閉め、パタパタと慌ただしい足音を響かせて走り去っていった。
私は再び眼鏡をはずして、瞼を軽く閉じた。
知らず、口元に笑みが滲んでくる。
今夜見るだろう夢を、想像した。
それは、リーゼロッテ様の作ったスープのような温かくも奇妙な気持ちのする、不思議な夢に違いない。
私が作った小さな箱庭の中、花に囲まれたテーブルでリーゼロッテ様と並んで座り、差し出された微妙な味のスープを飲まされては、微笑みを返す、そんな夢。
そして私は、水車の回る音を心音と重ねて聞いている。
束の間とも永遠とも言える、そんな風に幸せな、ひと時の優しい夢を見るだろう。
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