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ドラゴンと純愛
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十年前のこと。
わたしは八つになったばかりで、アルト兄さんは十六歳。
両親が流行り病で亡くなって間もなく、わたしも同じ病に罹って、生死の境をさまよった。生来頑健な兄は病に罹らず、つきっきりでわたしの看護をしてくれた。
「怖くて堪らなかった。ミルカまで死んでしまったら、僕はひとりぼっちになってしまう。どうしたらいいのか分からなくて、僕は泣きながらミルカの看病をしてたんだ。ミルカも死んだら僕も死ぬって思ってたし、本気でそのつもりだった」
……わたし自身、当時のことはあまり憶えていない。幼かったし、ひどい高熱にうなされて朦朧としていたから、当然だろう。
ただ、わたしの側にずっとついててくれたアルト兄さんの泣き顔だけは憶えてる。ぼろぼろ涙をこぼして、悲痛な面持ちで繰り返してた。
いかないで。僕をおいていかないでって。
「病状がちょっと落ち着いた頃だったかな。ミルカが僕に言ったんだ。お兄ちゃんをおいてどこにもいったりしないって。お兄ちゃんの傍にずっといる。約束するから、泣かないでって」
それも、うろ覚えだ。
なんとなく、そんなようなことを言ったかなってぼんやりとは、憶えてる。
アルト兄さんが涙ながらにわたしに訴えたことも、なんとなく記憶に残ってる。
――約束だよ、ミルカ。ずっと僕の傍にいて。僕もミルカの傍にずっといるから。僕たちは、これからもずっと一緒にいよう。
何しろ二人きりの兄妹なのだ。ひとり残されてしまう不安は、子ども時分なだけにとても大きかった。
「そんなわけで」
からりとした声音でアルト兄さんが話をしめくくった。
「僕はミルカの生涯の伴侶となることを決めたんだ。約束通りにね」
「……ちょ、ちょっとアルト兄さ……」
生涯の伴侶とか、飛躍しすぎだから!
すかさずツッコミをいれたかったのだけど、アルト兄さんにべったりくっつかれて、身動きもままならない。離してと訴えてみても聞き入れてくれやしない。
もうっ、馬鹿力なんだから!
こうなったらきっつい肘鉄をくらわすしかないと、脇をしめた。
「なるほどのぅ」
ところが、なんとも暢気な水竜様の声に、力が抜けてしまった。
「さような経緯があったとは。兄殿の気持ちも分からぬでもないのぅ」
いやいやいやいや、「なるほど」じゃないですから、水竜様! アホ兄に賛同されては困りますっ!
「じゃが、うーむ、しかしのぅ、兄殿。ミルカは実の妹であろう? 近親婚は、今は人間界では忌避されておろう? ミルカを愛しく思うのは良いが、ちと、いきすぎではないか?」
水竜様が、まっとうな事を!
思わず瞠目した。
トカゲ姿の水竜様はいたって真面目な顔つきだ。爬虫類とは思えない表情の豊かさに感心してしまう。ドラゴンの底力(?)だろうか。
さて、兄はというと。
フンッと鼻を鳴らし、嫌みったらしい口調で言い返した。
「なんと。神獣たるドラゴン様もお言葉とは思えませんね。人類最初の夫婦は兄と妹であったことを、まさかドラゴン様ともあろうお方が知らぬわけはないでしょう?」
「それはむろん知っておる」
水竜様はあからさまにむっとして応じた。
ああ、なんだかまた不穏な雰囲気になってきましたけど……っ。
「であれば、兄と妹が結ばれ、子孫を残すのは自然の理と申せましょう? 神獣と称されるドラゴン様がそれを否定なさるとは、いかなものでしょうねぇ?」
「それは遠き神話の世の話じゃ。今の世には適わぬであろう。兄殿の言は理不尽というものじゃ」
「まぁ、謂われない非難を受けるのは、もう慣れっこです。純粋な愛は、時として偏見を持たれるものですからね」
アホ兄は陶酔しきっている。
水竜様は呆れかえり、一瞬言葉を失ってしまったようだ。絵に描いたような「ぽかんとした顔」をしてアルト兄さんを凝視している。
兄のアホっぷりに、わたしは身内として恥ずかしいやら申し訳ないやら、赤面するばかりだ。
「僕の気持ちは未来永劫、変わりませんよ。誰が何と言おうと、ミルカは僕の嫁で決定事項です」
「ミルカ自身は納得しておらぬように見受けられるが、それはどうなのじゃ」
人間の世の常識からしたら水竜様の存在って、常識からかけ離れたところにいるはずなのに、アホ兄より常識的だよ。
ううっ、水竜様がほんとうに神様に見えます。いやまぁ、本物のドラゴンで、神獣なんだけど。
「水竜さんの目が曇ってるからそう見えるだけです。僕達は愛し合ってます。もちろんまだ精神愛にとどまってて、清い関係ですが」
「あっ、あったりまえでしょぉぉっ! っていうか、愛し合ってなんかないからっ!」
堪らず、大声でつっこんで、肘鉄もくらわしてやった。グエッとカエルの鳴き声みたいなくぐもった声が頭上でしたのに、アホ兄の腕はまだわたしに巻きついてて、それはもう頑丈で太い蔦のごとしだ。
嫁とか、しっ、子孫がどうとか、いったい何をいいだすの、このアホ兄はっ!!
腹が立つやらうすら寒いやら、もう、どう反応したらいいの、このアホ兄に!?
水竜様は呆れかえり、口も挟めないようだ。わたしとアルト兄さんのやりとりを、困惑した様子で眺めている。
そりゃぁね。両親がいなくなって、たった一人の兄だもの、大切な存在だとは思ってるよ? こんな兄でも、たったひとりの身内だもの。
だけど、夫婦になるとかは別問題! 別というか、それ以前の話でしょう? 兄の嫁になりたいなんて、考えたこともない。
「そんなに照れなくってもいいよ、ミルちゃん。恥ずかしくて素直になれないだけだよね? でもお兄ちゃん、ミルカの気持ちはちゃんと分かってるから」
「ちっとも! さっぱり! これっぽっちも! まったくもって分かってないからっ!」
頬ずりするのやめてってば! ぎゅうぎゅう、抱きついてくるのも、もういい加減にして!
またもや忍耐の緒が切れそうです。せっかく締まってたのに。怒り心頭のあまり、髪の毛が逆立ってる気がする。ちぢれっ毛をこれ以上縮れさせたくないってのに!
素直になれと言うなら、なってみましょうか、お兄ちゃんの望み通りに?
「…………お・に・い・ちゃん……っ」
顔を俯かせ、喉に力をこめてぐっと抑え込んだ低い声を発した。
途端、アルト兄さんは両腕をバッと上げ、素早く立ち上がった。相変わらず、驚くべき身体能力だ。
振り返って仰ぎ見ると、アルト兄さんは周章狼狽の体で、後退りしていた。冷や汗をかき、「やばっ」という文字が顔に浮かんでいた。
「あっ、そ、そうだ! 家畜小屋の戸、開けっ放しになってたけど、驢馬達、放牧されてなかったんだよ」
そういえば、小屋の戸は開けておいたけど、小屋の中の柵をはずしておくのをうっかり失念してた。鶏の卵もそのままだ。
「山羊や驢馬、放牧してこないとって思ってたんだよ。お兄ちゃん、ちょっと行って、開けてくるよ」
言うやいなや、アルト兄さんは一目散に駆けだした。
アホ兄にもそれなりに学習能力はあったみたいだ。わたしが怒り爆発寸前ってことに気がつき、即刻逃げだすくらいには。
わたしは八つになったばかりで、アルト兄さんは十六歳。
両親が流行り病で亡くなって間もなく、わたしも同じ病に罹って、生死の境をさまよった。生来頑健な兄は病に罹らず、つきっきりでわたしの看護をしてくれた。
「怖くて堪らなかった。ミルカまで死んでしまったら、僕はひとりぼっちになってしまう。どうしたらいいのか分からなくて、僕は泣きながらミルカの看病をしてたんだ。ミルカも死んだら僕も死ぬって思ってたし、本気でそのつもりだった」
……わたし自身、当時のことはあまり憶えていない。幼かったし、ひどい高熱にうなされて朦朧としていたから、当然だろう。
ただ、わたしの側にずっとついててくれたアルト兄さんの泣き顔だけは憶えてる。ぼろぼろ涙をこぼして、悲痛な面持ちで繰り返してた。
いかないで。僕をおいていかないでって。
「病状がちょっと落ち着いた頃だったかな。ミルカが僕に言ったんだ。お兄ちゃんをおいてどこにもいったりしないって。お兄ちゃんの傍にずっといる。約束するから、泣かないでって」
それも、うろ覚えだ。
なんとなく、そんなようなことを言ったかなってぼんやりとは、憶えてる。
アルト兄さんが涙ながらにわたしに訴えたことも、なんとなく記憶に残ってる。
――約束だよ、ミルカ。ずっと僕の傍にいて。僕もミルカの傍にずっといるから。僕たちは、これからもずっと一緒にいよう。
何しろ二人きりの兄妹なのだ。ひとり残されてしまう不安は、子ども時分なだけにとても大きかった。
「そんなわけで」
からりとした声音でアルト兄さんが話をしめくくった。
「僕はミルカの生涯の伴侶となることを決めたんだ。約束通りにね」
「……ちょ、ちょっとアルト兄さ……」
生涯の伴侶とか、飛躍しすぎだから!
すかさずツッコミをいれたかったのだけど、アルト兄さんにべったりくっつかれて、身動きもままならない。離してと訴えてみても聞き入れてくれやしない。
もうっ、馬鹿力なんだから!
こうなったらきっつい肘鉄をくらわすしかないと、脇をしめた。
「なるほどのぅ」
ところが、なんとも暢気な水竜様の声に、力が抜けてしまった。
「さような経緯があったとは。兄殿の気持ちも分からぬでもないのぅ」
いやいやいやいや、「なるほど」じゃないですから、水竜様! アホ兄に賛同されては困りますっ!
「じゃが、うーむ、しかしのぅ、兄殿。ミルカは実の妹であろう? 近親婚は、今は人間界では忌避されておろう? ミルカを愛しく思うのは良いが、ちと、いきすぎではないか?」
水竜様が、まっとうな事を!
思わず瞠目した。
トカゲ姿の水竜様はいたって真面目な顔つきだ。爬虫類とは思えない表情の豊かさに感心してしまう。ドラゴンの底力(?)だろうか。
さて、兄はというと。
フンッと鼻を鳴らし、嫌みったらしい口調で言い返した。
「なんと。神獣たるドラゴン様もお言葉とは思えませんね。人類最初の夫婦は兄と妹であったことを、まさかドラゴン様ともあろうお方が知らぬわけはないでしょう?」
「それはむろん知っておる」
水竜様はあからさまにむっとして応じた。
ああ、なんだかまた不穏な雰囲気になってきましたけど……っ。
「であれば、兄と妹が結ばれ、子孫を残すのは自然の理と申せましょう? 神獣と称されるドラゴン様がそれを否定なさるとは、いかなものでしょうねぇ?」
「それは遠き神話の世の話じゃ。今の世には適わぬであろう。兄殿の言は理不尽というものじゃ」
「まぁ、謂われない非難を受けるのは、もう慣れっこです。純粋な愛は、時として偏見を持たれるものですからね」
アホ兄は陶酔しきっている。
水竜様は呆れかえり、一瞬言葉を失ってしまったようだ。絵に描いたような「ぽかんとした顔」をしてアルト兄さんを凝視している。
兄のアホっぷりに、わたしは身内として恥ずかしいやら申し訳ないやら、赤面するばかりだ。
「僕の気持ちは未来永劫、変わりませんよ。誰が何と言おうと、ミルカは僕の嫁で決定事項です」
「ミルカ自身は納得しておらぬように見受けられるが、それはどうなのじゃ」
人間の世の常識からしたら水竜様の存在って、常識からかけ離れたところにいるはずなのに、アホ兄より常識的だよ。
ううっ、水竜様がほんとうに神様に見えます。いやまぁ、本物のドラゴンで、神獣なんだけど。
「水竜さんの目が曇ってるからそう見えるだけです。僕達は愛し合ってます。もちろんまだ精神愛にとどまってて、清い関係ですが」
「あっ、あったりまえでしょぉぉっ! っていうか、愛し合ってなんかないからっ!」
堪らず、大声でつっこんで、肘鉄もくらわしてやった。グエッとカエルの鳴き声みたいなくぐもった声が頭上でしたのに、アホ兄の腕はまだわたしに巻きついてて、それはもう頑丈で太い蔦のごとしだ。
嫁とか、しっ、子孫がどうとか、いったい何をいいだすの、このアホ兄はっ!!
腹が立つやらうすら寒いやら、もう、どう反応したらいいの、このアホ兄に!?
水竜様は呆れかえり、口も挟めないようだ。わたしとアルト兄さんのやりとりを、困惑した様子で眺めている。
そりゃぁね。両親がいなくなって、たった一人の兄だもの、大切な存在だとは思ってるよ? こんな兄でも、たったひとりの身内だもの。
だけど、夫婦になるとかは別問題! 別というか、それ以前の話でしょう? 兄の嫁になりたいなんて、考えたこともない。
「そんなに照れなくってもいいよ、ミルちゃん。恥ずかしくて素直になれないだけだよね? でもお兄ちゃん、ミルカの気持ちはちゃんと分かってるから」
「ちっとも! さっぱり! これっぽっちも! まったくもって分かってないからっ!」
頬ずりするのやめてってば! ぎゅうぎゅう、抱きついてくるのも、もういい加減にして!
またもや忍耐の緒が切れそうです。せっかく締まってたのに。怒り心頭のあまり、髪の毛が逆立ってる気がする。ちぢれっ毛をこれ以上縮れさせたくないってのに!
素直になれと言うなら、なってみましょうか、お兄ちゃんの望み通りに?
「…………お・に・い・ちゃん……っ」
顔を俯かせ、喉に力をこめてぐっと抑え込んだ低い声を発した。
途端、アルト兄さんは両腕をバッと上げ、素早く立ち上がった。相変わらず、驚くべき身体能力だ。
振り返って仰ぎ見ると、アルト兄さんは周章狼狽の体で、後退りしていた。冷や汗をかき、「やばっ」という文字が顔に浮かんでいた。
「あっ、そ、そうだ! 家畜小屋の戸、開けっ放しになってたけど、驢馬達、放牧されてなかったんだよ」
そういえば、小屋の戸は開けておいたけど、小屋の中の柵をはずしておくのをうっかり失念してた。鶏の卵もそのままだ。
「山羊や驢馬、放牧してこないとって思ってたんだよ。お兄ちゃん、ちょっと行って、開けてくるよ」
言うやいなや、アルト兄さんは一目散に駆けだした。
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