さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら

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第一章 思い立つおっさん

第6話 ダークヘイムの洞窟前で出会う鍛錬好き親娘

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「見捨てるか助けるかだと? ……愚問だな。言っとくが俺は王都の名高いレンタル道具屋だぞ? みすみすお客様を見捨てるわけがないだろうが!」

 全く、羊飼いの宿屋がこんなところで人を試す真似を始めていたとはな。経営が厳しそうだから恐らく金稼ぎの為にやっている可能性があるが、大方弱そうな冒険者や盗賊相手に罠を仕掛けて金をせしめているといったところだろ。

「助けるなら止めはシナイ。ただし、壁や鉄格子、檻は壊すナ。ここはいずれ再建して、羊飼いたちを呼び戻す……」

 ……なるほどな。どうりで一人だけなわけだ。

 羊を飼い慣らしているのはいいとしても、冒険者どころか観光地にもならない高原で宿屋が上手くいくわけないからな。

「壊さずに解放すればいいんだな?」
「……魔法でもイイ」
「心配しなくても俺は道具しか使えん。魔法そのものは使えんよ」

 まさか羊飼いの宿屋がこんなことになっているとは思わなかったが、俺ではなく冒険者と盗賊を閉じ込めているとは想像しなかった。

 そういや。

「そこの盗賊。俺をおじさんと呼んだが、お前は頭目の息子か?」
「そ、そうそう!! 話に聞いてたからすぐに分かったっす」

 俺を慕っている頭目の息子だし助けてやらないとだな。

「……ところで、E級。檻の中のように見えるがそっち側は行き止まりか?」

 頭目の息子は結構前から閉じ込められていたっぽいから、E級冒険者に訊いてみるか。

「い、いいえ。鉄格子が床下からせり上がっていて奥に進めないだけです。これさえ開けられれば、峡谷へ行けると思います……私の力では無理でしたが」

 それだけ分かれば十分だ。

 ……じゃあ始めるか。

 要は破壊せずに二人を向こう側に脱出させればいいわけだ。それなら丁度いい道具がある。

 ――というわけで俺が無限収納から取り出した道具は、グラインダード峡谷のどこかの岩の上に飛べるテレポート魔法スクロールだ。

 昔行ったことがあるからこそ飛べるが、どの岩に飛ぶかは俺にも分からない。昔のパーティーメンバーが不要なものだからと譲ってくれたものだがこれなら何とかなるだろ。

 もっとも、使えば消えてなくなってしまうが。

 ここで時間を使うのは勿体ないので、鉄格子の隙間からスクロールを手渡すことにする。

「E級のお前には魔力があるだろ?」
「あ、あります」
「だったら、そこの盗賊坊主を仲間認定してくれ。それで二人同時に飛べる」
「分かりました。それはどうやって使うんですか?」

 今どきの冒険者は魔法スクロールの使い方も知らないのか?

「お前、魔法スクロールを見たことがないのか?」
「い、E級なので……」

 ……そうだったな。

 行き先を唱えるだけでいいのだが、まぁいい。教えればいいだけだ。

「そこに書かれている行き先を唱えてみろ。そうすればそこに仲間と共に飛べる」
「分かりました。え~と、テレポート・グラインダード……あっ!?」
「アクセルおじさん、親父に――っ!?」

 俺の言う通りにしたE級はテレポートを発動させ、行き先であるグラインダードに飛んだ。

 行きたかったところだろうし、何とかなるだろう。

「……オマエ、魔法使えたのか?」
「違う。あれは魔法スクロール……唱えるだけで飛べる魔法の巻物だ。鉄格子も壁も破壊しなかったぞ? 俺はこのまま大森林に抜けるからな。それと、今後はこういう真似はするなよ?」

 俺がしたことに驚いたのか、それ以上何も言わず羊飼いの青年は俺に頭を下げ、見送ってくれた。

 宿屋の今後が気になるところだが、罠を仕掛けるのだけでもやめてくれれば問題は無い。

 奥行きのある通路を抜けると、すぐにエリア境界を示す木の柵があった。俺はそこをあっさりと通り抜け、草木をかき分けながら大森林地帯を進む。

 ここでも魔物の姿はなくひたすら抜けて行くだけだったが、この大森林エリアにはダークヘイムに行ける洞窟があることを思い出した。

 ダークヘイムは地下に小規模な町が広がっていて、そこにはダークエルフが暮らしている。荷物持ちとして冒険者パーティーに連れて行ってもらったからよく覚えている場所だ。

 ちょっと寄ってみるか。数十年ぶりではあるが、エルフ族は長命だから今もひっそりといるはずだ。

 そうしてダークヘイムの洞窟周辺に差し掛かると、洞窟の手前で槍を振り回している年配者を見かけた。

 動作一つ一つを見ても俺にはさっぱりだが、強そうな気配は何となく分かる。

「そこの男! お前もどうだ? 槍をぶん回してすっきりとしてみないか?」

 どこに隠れるでもなく黙って見ていたが、声をかけられて出て行かないわけにはいかない。

 槍をぶん回したことなんて一度もないが、見よう見まねでやってみることに。念のため予め出しておいた使い切りの筋力増加の種を口に含んでいたのが良かったのか、疲れが出ることなく槍を自在にぶん回してみせた。

「ふ~汗掻いちまった!」
「おぬし、やりおるな」

 インチキな力だったが、ちょっとした運動になって気持ちよかった。

 ……それはいいとして。

「ところで、さっきから大木に隠れてこっちを覗いてるのはあんたの娘か何かか?」

 ダークエルフだから年齢は分からないが、見た目年齢はミレイより若い十九歳くらいに見えるうえかなりの美人だ。

「娘? あぁ、あいつはオレが鍛えてやってる娘だ。ああ見えて年齢は……」
「エルフ族は長命だろ? 言わなくてもいいぞ」
「ふっ、確かにな。おぬし、名は?」

 ダークエルフは気難しいとされていたが、気が合えばそんなことはないことを知っている。

「俺はアクセル・リオットだ。あんたは?」
「わしは……ああ、名はいずれ名乗る。先へ急ぐのだろう? ここで立ち止まらず、次の冒険者を探しに行くがよいぞ」

 ちょっとした出会いではあったが、気の合うダークエルフの爺さんだ。本当はダークヘイムに寄るつもりだったが、俺の事情をすぐに察したようだ。

 ずっと隠れて見られている娘が気になるが、ダークヘイムへはそのうち立ち寄れるはずだ。その時にでも話しかければいい。

「じゃあな、爺さん! また寄るよ。あんたの娘にもよろしくな!」
「ふ。よかろう。そうさせてもらう」

 俺の気まぐれで寄り道をした場所だったが、ダークエルフとはまたいずれ出会う機会もあるだろう。

 そう思いながら、俺は次の冒険者がいるとされる湿地帯へと急いだ。

「す、凄い……! ただの人間が父とあそこまで張り合えるなんて! 父も許してくれた。すぐにあの人間を追いかけないと!」
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