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第三章 彼と彼氏と友達
34.秘密の言葉
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流石に行列が出来ている場所から外れ、七瀬とわたしと弘人は順路の間にあるスペースに避難した。
でも、七瀬に止められてから弘人はずっと黙っているし、七瀬は無言の重圧みたいなものがあるしこれからどうなるんだろ。
「お前、綾希に何しようとしてた?」
「俺は別に何も……」
「――っ! ふざけんっ――」
だ、駄目っ、暴力は駄目!
「七瀬には関係ない。俺が葛西さんに言おうとしただけで、お前に言われるとか意味不明だね」
七瀬は一瞬だけ弘人に手を上げようとしてたけど、人前だからかきちんと自分を抑えてる。
だけど、
「っざけんなよ? どさくさ紛れでキスしようとしてただろ? 訳も分かってない綾希にそんなことするなっての! 最初から告白するつもりで泉さんの誘いに乗って来たってのはバレバレなんだよ。抵抗しない綾希にそんなことするなよマジで! 告白するなら今ここでやれよ!!」
弘人の態度次第でどうなるか。
だからもう、わたしが言わないと。
「弘人。わたし、七瀬が好き!」
「あ、あのな、俺は綾希に言ったんじゃなくて……。弘人呼びなのか?」
あぁ、そっか。
七瀬って下の名前で呼ばれたいけど、呼ばれないのをかなり気にしてるんだよね。弘人呼びしているわたしの言葉に反応するあたり。
「悪いけど、俺と葛西さんとでお前に秘密にしてることがある。それだけでも彼女と繋がりを持ってるし諦めるとかないから!」
「……なんだよそれ!」
「葛西さん。俺、ちょっと具合が悪いんだ。だから、泉さんにはそう言っといてくれないかな?」
え、そうなの?
「お、おいっ! 秘密って何だよ?」
「さぁな」
「弘人、本当にこのまま帰るの?」
「うん、ごめんね。泉さんには後でちゃんと謝るから、だからごめん」
そういうと、弘人はわたしにだけひたすら謝りながらこの場から離れていく。
……雪乃がせっかく勇気を出して誘って楽しみにしていたのに。
あの態度は駄目だよ、弘人。
「ところで綾希。お前……もう少し、疑うとかそんな気持ち持ってくれないとマジで困る」
「うん?」
「俺もまだ正式にはしてないのに、あいつにキスされそうになってたんだぞ? 自覚あるのかよ、マジで……」
自覚はあるつもりだけど、確かに焦ったよね。
「あの場で動けなくて、でも七瀬が来てくれたから」
「それはそうだけど、好きでもない奴に迫られて動けないってのは……」
「でも、そこまで嫌いじゃない」
好きでもないけれど嫌いってわけでもなくて。だからそんなに焦りもしなかったのかもしれない。
「お前……俺に言ってることと同じじゃねえかよ! それじゃあ、いずれ好きになるかもしれないって聞こえる。勘弁してくれよ本当に」
全然意味が違うのに、どうすれば伝わる?
「で、あいつとの秘密って? 俺に言えないことをあいつと共有してるってことだろ?」
「それは別に大したことじゃなくて、体育祭の時に――」
言葉の続きを黙って聞く七瀬だったけれど。
「あっ! あやきち、七瀬くん! ここにいたんだ? いつまでも来ないから心配したじゃん! あれ、弘人くんは?」
雪乃もこの場に戻ってきてしまった。
……タイミング問題がきちゃったなぁ。
「あいつ、具合悪いって。だから帰らせた。勝手にごめん、泉さん」
弘人が勝手に帰っちゃっただけで七瀬のせいじゃないのに。
「そうなんだ……。大丈夫かな、弘人くん。それと、七瀬くんが判断して帰らせてくれたのなら、何も問題ないよ。私が無理矢理誘ったわけだし、移動もそうだし人混みにも疲れたと思う。ふたりともごめんね」
七瀬の気持ちが通じたかのように、雪乃も七瀬に頭を下げた。
「ううん、平気」
「泉さん。とりあえずせっかく来たし、適当に回ろうか?」
「もちろん!! 行きたいところはすでにチェック済みなんだぜ!」
うん、雪乃はきっと大丈夫。
「じゃあ、あやきちは七瀬くんから離れないように!! それじゃ、行きますか」
雪乃がここに来たから七瀬には結局言えなかったけれど、七瀬は気にしてないよね?
「……綾希、俺から離れるなよ。秘密が何なのかは知らないけど、お前を渡すつもりなんて絶対ないから!」
流石にここではぐれるわけにはいかないので、わたしは七瀬の手をしっかり握って離れないようにした。
七瀬もわたしの手を強く握り返してくれた。
……それ以外の意味も込められているように思えたけれど、弘人をのぞいて三人だけで思い思いのまま水族館を楽しんだ。
「大丈夫。わたしは七瀬だけだから」
「俺もだ」
七瀬がずっと気にしていた弘人のことを嫌いじゃない発言。七瀬に言ったこととは意味がまるで違くて。
だって、わたしの中心は七瀬で出来ているから。
結局言えなかったけれど、ほんの些細なことを七瀬がいつまでも気にし続けるなんてないと思ったから、その後は何も言わなかった。
でも、七瀬に止められてから弘人はずっと黙っているし、七瀬は無言の重圧みたいなものがあるしこれからどうなるんだろ。
「お前、綾希に何しようとしてた?」
「俺は別に何も……」
「――っ! ふざけんっ――」
だ、駄目っ、暴力は駄目!
「七瀬には関係ない。俺が葛西さんに言おうとしただけで、お前に言われるとか意味不明だね」
七瀬は一瞬だけ弘人に手を上げようとしてたけど、人前だからかきちんと自分を抑えてる。
だけど、
「っざけんなよ? どさくさ紛れでキスしようとしてただろ? 訳も分かってない綾希にそんなことするなっての! 最初から告白するつもりで泉さんの誘いに乗って来たってのはバレバレなんだよ。抵抗しない綾希にそんなことするなよマジで! 告白するなら今ここでやれよ!!」
弘人の態度次第でどうなるか。
だからもう、わたしが言わないと。
「弘人。わたし、七瀬が好き!」
「あ、あのな、俺は綾希に言ったんじゃなくて……。弘人呼びなのか?」
あぁ、そっか。
七瀬って下の名前で呼ばれたいけど、呼ばれないのをかなり気にしてるんだよね。弘人呼びしているわたしの言葉に反応するあたり。
「悪いけど、俺と葛西さんとでお前に秘密にしてることがある。それだけでも彼女と繋がりを持ってるし諦めるとかないから!」
「……なんだよそれ!」
「葛西さん。俺、ちょっと具合が悪いんだ。だから、泉さんにはそう言っといてくれないかな?」
え、そうなの?
「お、おいっ! 秘密って何だよ?」
「さぁな」
「弘人、本当にこのまま帰るの?」
「うん、ごめんね。泉さんには後でちゃんと謝るから、だからごめん」
そういうと、弘人はわたしにだけひたすら謝りながらこの場から離れていく。
……雪乃がせっかく勇気を出して誘って楽しみにしていたのに。
あの態度は駄目だよ、弘人。
「ところで綾希。お前……もう少し、疑うとかそんな気持ち持ってくれないとマジで困る」
「うん?」
「俺もまだ正式にはしてないのに、あいつにキスされそうになってたんだぞ? 自覚あるのかよ、マジで……」
自覚はあるつもりだけど、確かに焦ったよね。
「あの場で動けなくて、でも七瀬が来てくれたから」
「それはそうだけど、好きでもない奴に迫られて動けないってのは……」
「でも、そこまで嫌いじゃない」
好きでもないけれど嫌いってわけでもなくて。だからそんなに焦りもしなかったのかもしれない。
「お前……俺に言ってることと同じじゃねえかよ! それじゃあ、いずれ好きになるかもしれないって聞こえる。勘弁してくれよ本当に」
全然意味が違うのに、どうすれば伝わる?
「で、あいつとの秘密って? 俺に言えないことをあいつと共有してるってことだろ?」
「それは別に大したことじゃなくて、体育祭の時に――」
言葉の続きを黙って聞く七瀬だったけれど。
「あっ! あやきち、七瀬くん! ここにいたんだ? いつまでも来ないから心配したじゃん! あれ、弘人くんは?」
雪乃もこの場に戻ってきてしまった。
……タイミング問題がきちゃったなぁ。
「あいつ、具合悪いって。だから帰らせた。勝手にごめん、泉さん」
弘人が勝手に帰っちゃっただけで七瀬のせいじゃないのに。
「そうなんだ……。大丈夫かな、弘人くん。それと、七瀬くんが判断して帰らせてくれたのなら、何も問題ないよ。私が無理矢理誘ったわけだし、移動もそうだし人混みにも疲れたと思う。ふたりともごめんね」
七瀬の気持ちが通じたかのように、雪乃も七瀬に頭を下げた。
「ううん、平気」
「泉さん。とりあえずせっかく来たし、適当に回ろうか?」
「もちろん!! 行きたいところはすでにチェック済みなんだぜ!」
うん、雪乃はきっと大丈夫。
「じゃあ、あやきちは七瀬くんから離れないように!! それじゃ、行きますか」
雪乃がここに来たから七瀬には結局言えなかったけれど、七瀬は気にしてないよね?
「……綾希、俺から離れるなよ。秘密が何なのかは知らないけど、お前を渡すつもりなんて絶対ないから!」
流石にここではぐれるわけにはいかないので、わたしは七瀬の手をしっかり握って離れないようにした。
七瀬もわたしの手を強く握り返してくれた。
……それ以外の意味も込められているように思えたけれど、弘人をのぞいて三人だけで思い思いのまま水族館を楽しんだ。
「大丈夫。わたしは七瀬だけだから」
「俺もだ」
七瀬がずっと気にしていた弘人のことを嫌いじゃない発言。七瀬に言ったこととは意味がまるで違くて。
だって、わたしの中心は七瀬で出来ているから。
結局言えなかったけれど、ほんの些細なことを七瀬がいつまでも気にし続けるなんてないと思ったから、その後は何も言わなかった。
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