37 / 75
第四章 彼の心とわたしの心
37.暑苦しいオトコと夏の始まり
しおりを挟む
七瀬と弘人が編入してきた春はクラス中の女子が期待の目を光らせ、あわよくば――なんて思ってた子が沙奈を含めて数人はいた。
わたしはどっちにも属さず、ただただ春眠の惰眠を貪ってただけだけど。
同クラの女子たちにとって、わたしの存在はあくまで後ろの席の居眠り女子。そういえばずっと眠ってるよね――くらいの存在。
だけど、女子の中でも目立つ沙奈と友達だったせいもあって、別の意味で警戒はされていた。そんな沙奈と何気ない恋話をして、適当に話を合わせていたのがついこの前までの話。
そして今では、常に敵対視される関係になってしまっている。
沙奈は手に入れるものは何でも手に入れたいという、ある意味『ジャイアニズム』的な女子。
堂々とした宣言をしたうえで七瀬を奪おうとしている。
けれど、七瀬は最初から沙奈を苦手にしていた。七瀬はわたしの想像以上に大真面目で優しくて一途すぎたから。
そんな優しい彼が今ではわたしの彼氏に。それでも、まだ七瀬のことを全て知ったわけじゃなくて。
一途な気持ちは伝わってきているものの、その気持ちに少しずつ受け入れていきたいって思うようになりつつあるのがつい最近。
それなのに、どうして最悪な夏が始まろうとしているのか意味が分からない。
「楽しみすぎ!!」
「なにが?」
「またまたぁ! 綾希はチャンスやよ。上手くいけばヨリ戻せるんやし」
「ヨリ?」
どこからの情報なのか知らないけれど、沙奈はあいつがうちの学校に移ってくることを事前に知っていた。
そしてそれを武器にして七瀬にずっとアタックし続けている。
「えーと、夏に編入生っていうのも驚くかもしれませんけれど、隣接区から移ってきた男子を紹介します。どうぞ、入って!」
先生の言葉の後、教室に入ってきた新たな男子に女子たちは期待の歓声を上げる。
「えーと、こっちの学校から推薦で行ける大学があるって知って移ってきました。で、自分は宇月 世って言います。友達からは単純にせいって呼ばれていたので気軽に呼んでください」
本当に何で今さらうちの学校、それも同じクラスに来るの?
「それでは宇月君の席は……もうすぐ席替えになるけれど、ひとまず宮前さんの隣に座ってくれる?」
よりにもよって沙奈の隣とか。
先生だから何も分かってないのは仕方がないけれど、何で沙奈の隣の空きスペースに座らせるの?
ただでさえ事前にやり取りしてる疑いがあるふたりなのに。
……なんか、もうそれだけでも最悪な夏が始まってしまった気がする。
何が最悪かって、早くもわたしのいる場所を気にしているっていうか、こっち見ないで欲しい。
「世くん、君の席はあたしの隣やよ。後ろ気にせんと、隣に座って」
「……あぁ、悪いね。ついつい教室全体を見回したくなったんだ。可愛い女子ばかりだから嬉しくてね」
「嬉しいこと言ってくれるやん。ちなみに気になる女子は?」
「まだ見つけてない。ま、HR終わったらすぐ見つかると思うけどね」
……沙奈と仲良くしてくれるならそのまま仲良くしていてほしい。
とにかく一限が始まるまで静かに眠らせてほしいし、話しかけられることがありませんように。
「…………あいつ、どんなコネでこのクラスに来たんだ? おっと……」
隣の席からは、状況を理解出来ないといった声のトーンでなるべくわたしを起こすまいとしながら呟く七瀬の声が聞こえていた。
「また机顔になりそうなくらいぐっすり眠って。全く……なるべく俺が綾希を庇ってやるし守るから、そのまま寝てていいからな綾希」
わたしはどっちにも属さず、ただただ春眠の惰眠を貪ってただけだけど。
同クラの女子たちにとって、わたしの存在はあくまで後ろの席の居眠り女子。そういえばずっと眠ってるよね――くらいの存在。
だけど、女子の中でも目立つ沙奈と友達だったせいもあって、別の意味で警戒はされていた。そんな沙奈と何気ない恋話をして、適当に話を合わせていたのがついこの前までの話。
そして今では、常に敵対視される関係になってしまっている。
沙奈は手に入れるものは何でも手に入れたいという、ある意味『ジャイアニズム』的な女子。
堂々とした宣言をしたうえで七瀬を奪おうとしている。
けれど、七瀬は最初から沙奈を苦手にしていた。七瀬はわたしの想像以上に大真面目で優しくて一途すぎたから。
そんな優しい彼が今ではわたしの彼氏に。それでも、まだ七瀬のことを全て知ったわけじゃなくて。
一途な気持ちは伝わってきているものの、その気持ちに少しずつ受け入れていきたいって思うようになりつつあるのがつい最近。
それなのに、どうして最悪な夏が始まろうとしているのか意味が分からない。
「楽しみすぎ!!」
「なにが?」
「またまたぁ! 綾希はチャンスやよ。上手くいけばヨリ戻せるんやし」
「ヨリ?」
どこからの情報なのか知らないけれど、沙奈はあいつがうちの学校に移ってくることを事前に知っていた。
そしてそれを武器にして七瀬にずっとアタックし続けている。
「えーと、夏に編入生っていうのも驚くかもしれませんけれど、隣接区から移ってきた男子を紹介します。どうぞ、入って!」
先生の言葉の後、教室に入ってきた新たな男子に女子たちは期待の歓声を上げる。
「えーと、こっちの学校から推薦で行ける大学があるって知って移ってきました。で、自分は宇月 世って言います。友達からは単純にせいって呼ばれていたので気軽に呼んでください」
本当に何で今さらうちの学校、それも同じクラスに来るの?
「それでは宇月君の席は……もうすぐ席替えになるけれど、ひとまず宮前さんの隣に座ってくれる?」
よりにもよって沙奈の隣とか。
先生だから何も分かってないのは仕方がないけれど、何で沙奈の隣の空きスペースに座らせるの?
ただでさえ事前にやり取りしてる疑いがあるふたりなのに。
……なんか、もうそれだけでも最悪な夏が始まってしまった気がする。
何が最悪かって、早くもわたしのいる場所を気にしているっていうか、こっち見ないで欲しい。
「世くん、君の席はあたしの隣やよ。後ろ気にせんと、隣に座って」
「……あぁ、悪いね。ついつい教室全体を見回したくなったんだ。可愛い女子ばかりだから嬉しくてね」
「嬉しいこと言ってくれるやん。ちなみに気になる女子は?」
「まだ見つけてない。ま、HR終わったらすぐ見つかると思うけどね」
……沙奈と仲良くしてくれるならそのまま仲良くしていてほしい。
とにかく一限が始まるまで静かに眠らせてほしいし、話しかけられることがありませんように。
「…………あいつ、どんなコネでこのクラスに来たんだ? おっと……」
隣の席からは、状況を理解出来ないといった声のトーンでなるべくわたしを起こすまいとしながら呟く七瀬の声が聞こえていた。
「また机顔になりそうなくらいぐっすり眠って。全く……なるべく俺が綾希を庇ってやるし守るから、そのまま寝てていいからな綾希」
0
あなたにおすすめの小説
ホウセンカ
えむら若奈
恋愛
☆面倒な女×クセ強男の不器用で真っ直ぐな純愛ラブストーリー!
誰もが振り返る美しい容姿を持つ姫野 愛茉(ひめの えま)は、常に“本当の自分”を隠して生きていた。
そして“理想の自分”を“本当の自分”にするため地元を離れた大学に進学し、初めて参加した合コンで浅尾 桔平(あさお きっぺい)と出会う。
目つきが鋭くぶっきらぼうではあるものの、不思議な魅力を持つ桔平に惹かれていく愛茉。桔平も愛茉を気に入り2人は急接近するが、愛茉は常に「嫌われるのでは」と不安を抱えていた。
「明確な理由がないと、不安?」
桔平の言葉のひとつひとつに揺さぶられる愛茉が、不安を払拭するために取った行動とは――
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※イラストは自作です。転載禁止。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
【全16話+後日談5話:日月水金20:00更新】
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
Fly high 〜勘違いから始まる恋〜
吉野 那生
恋愛
平凡なOLとやさぐれ御曹司のオフィスラブ。
ゲレンデで助けてくれた人は取引先の社長 神崎・R・聡一郎だった。
奇跡的に再会を果たした直後、職を失い…彼の秘書となる本城 美月。
なんの資格も取り柄もない美月にとって、そこは居心地の良い場所ではなかったけれど…。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王太子殿下のおっしゃる意味がよくわかりません~知能指数が離れすぎていると、会話が成立しない件
碧井 汐桜香
恋愛
天才マリアーシャは、お馬鹿な王子の婚約者となった。マリアーシャが王妃となることを条件に王子は王太子となることができた。
王子の代わりに勉学に励み、国を発展させるために尽力する。
ある日、王太子はマリアーシャに婚約破棄を突きつける。
知能レベルの違う二人の会話は成り立つのか?
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる