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第四章 彼の心とわたしの心
39.そうじゃなくて
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「弘人との秘密なんて秘密でもなくて。あのね七瀬。七瀬もわたしに秘密がある。違う?」
「……ん? 元クラスメート女子って? そいつがどうかしたのか? それに、俺は綾希に隠し事なんか一切ないけど……まさか俺を疑ってたりしてる?」
体育祭の時、弘人とコンビニに買い出しに行った時に七瀬の元クラスメートが七瀬に会いに来ていた。
その事をわざわざ七瀬に言わなくてもいいと、弘人と二人だけの秘密と称して共有。
……だけど、ただの元クラスメートがどうして違う学校にまで会いに来るのか、それがずっとわたしの中で引っ掛かっていて。
「体育祭の時。わたしが弘人と一緒に買い出しに行った時間に七瀬、来てくれなかったね?」
これもわたしの単なるわがままに過ぎないけれど、きちんと訊いておきたい。
「林崎と買い出しに……あぁ。あの時は沙奈とか面倒な女子に説明をしてたからな。んん? もしかして俺がいなくて寂しくて拗ねてるのか? それならそうと――」
「それだけじゃなくて。実は七瀬にこっそり会いに来ていた女子がいた。元クラスメート女子じゃなくて本当は元カノ?」
「もしかして優美か? あいつ、うちの学校にまで来てたのかよ。ん? ははぁ、あいつとのことを疑ってるんだな? 言うけど、あいつは前の学校の時の単なる同級生で……」
自称の元カノって言ってたけど、七瀬の認識違い?
でも、
「あり得ない。ただの同級生が別の学校にまで会いに来る? 本当は今でも付き合ってる彼女じゃない?」
どういう目的かなんてバレバレだけど、現にうちの学校にまで移ってきたあいつの例もあるし。
「は? 何でそうなるんだ? 全然ちげーし! ……ったく、分かった。あいつが元カノだった時があったのは事実だ。けど、もう終わってるんだよ。今は綾希だけしか好きじゃない。それとも綾希は俺を信じてないのか? だから林崎と仲良くして庇って、俺には教えないような秘密を作ってたりしてたとか、そういうことなのかよ?」
そうじゃなくて。
そうじゃないのに、どうしてすぐに弘人を引き合いに出すの?
違う、嫌だよこんなの。このままじゃ七瀬と離れてしまう。
どうしてこうなるの?
上手く七瀬に言えそうになくて、わたしは何度も首を振る。
「……っ! 綾希。先に教室戻っとく。とにかく、落ち着いたらでいいからな……」
それなのに首振りで誤解されたのか、七瀬だけ席を立って学食からいなくなってしまった。
もうすぐ昼休みが終わるのに信じたくないことばかりでこの場から動けなかった。元彼と別れた時にすら泣かなかったのに、涙が出ていた。
止まらなくて、止められなくて涙を流すしかなかった。昼休みが終わる予鈴が鳴り響く中、わたし一人だけがずっと席に座っていた。
「あれ? 葛西さん、どうしたの? もうすぐ昼休み終わるけど……え」
呆然とする中、涙が止まりかけたところでわたしの顔を心配そうに覗き込みながら弘人が声をかけてきた。
「弘人、どうしてここに?」
流石に涙を流していたのだけは見せなかったけれど、それでも少しだけ見られたかも。
「もしかして具合悪い? それなら保健室に行った方がいいよ。俺、付き添うから」
「違う。ひとりがいいし、気にしなくていいから」
「流石に心配だから。保健室の前で俺は教室に戻って先生に伝えておくから、だから……」
あぁ、どうしてこうなったんだろ?
口下手なわたしが悪かったのかな。
でも、七瀬の彼女だからこそ気になったのに。七瀬ならそんなには怒ることなんてないと思っていたのに。
輔――わたしを置いていかないでよ。
このままなんて絶対に嫌だ。
「七瀬だよね? 七瀬のことで葛西さんは悲しんでるんだよね?」
「…………」
正解でもないし答えたくもなくて、弘人に対し首を左右に振るだけしか出来なくて、だけど弘人はわたしのそばを離れようとしない。
「葛西さん。心配しないで。俺がきちんとあいつに話しておくから。だから、とりあえず保健室に行こうよ。このままここにいてもどうにも出来ないっていうか、えっと……」
七瀬のせいでもなく弘人のせいでもないけど、落ち込みすぎたせいか本当に具合が悪くなって、結局弘人に肩を貸してもらいながら保健室に連れて行ってもらうことになった。
「ごめんなさい、林崎くん……」
「――! い、いいよ、気にしないで」
「……ん? 元クラスメート女子って? そいつがどうかしたのか? それに、俺は綾希に隠し事なんか一切ないけど……まさか俺を疑ってたりしてる?」
体育祭の時、弘人とコンビニに買い出しに行った時に七瀬の元クラスメートが七瀬に会いに来ていた。
その事をわざわざ七瀬に言わなくてもいいと、弘人と二人だけの秘密と称して共有。
……だけど、ただの元クラスメートがどうして違う学校にまで会いに来るのか、それがずっとわたしの中で引っ掛かっていて。
「体育祭の時。わたしが弘人と一緒に買い出しに行った時間に七瀬、来てくれなかったね?」
これもわたしの単なるわがままに過ぎないけれど、きちんと訊いておきたい。
「林崎と買い出しに……あぁ。あの時は沙奈とか面倒な女子に説明をしてたからな。んん? もしかして俺がいなくて寂しくて拗ねてるのか? それならそうと――」
「それだけじゃなくて。実は七瀬にこっそり会いに来ていた女子がいた。元クラスメート女子じゃなくて本当は元カノ?」
「もしかして優美か? あいつ、うちの学校にまで来てたのかよ。ん? ははぁ、あいつとのことを疑ってるんだな? 言うけど、あいつは前の学校の時の単なる同級生で……」
自称の元カノって言ってたけど、七瀬の認識違い?
でも、
「あり得ない。ただの同級生が別の学校にまで会いに来る? 本当は今でも付き合ってる彼女じゃない?」
どういう目的かなんてバレバレだけど、現にうちの学校にまで移ってきたあいつの例もあるし。
「は? 何でそうなるんだ? 全然ちげーし! ……ったく、分かった。あいつが元カノだった時があったのは事実だ。けど、もう終わってるんだよ。今は綾希だけしか好きじゃない。それとも綾希は俺を信じてないのか? だから林崎と仲良くして庇って、俺には教えないような秘密を作ってたりしてたとか、そういうことなのかよ?」
そうじゃなくて。
そうじゃないのに、どうしてすぐに弘人を引き合いに出すの?
違う、嫌だよこんなの。このままじゃ七瀬と離れてしまう。
どうしてこうなるの?
上手く七瀬に言えそうになくて、わたしは何度も首を振る。
「……っ! 綾希。先に教室戻っとく。とにかく、落ち着いたらでいいからな……」
それなのに首振りで誤解されたのか、七瀬だけ席を立って学食からいなくなってしまった。
もうすぐ昼休みが終わるのに信じたくないことばかりでこの場から動けなかった。元彼と別れた時にすら泣かなかったのに、涙が出ていた。
止まらなくて、止められなくて涙を流すしかなかった。昼休みが終わる予鈴が鳴り響く中、わたし一人だけがずっと席に座っていた。
「あれ? 葛西さん、どうしたの? もうすぐ昼休み終わるけど……え」
呆然とする中、涙が止まりかけたところでわたしの顔を心配そうに覗き込みながら弘人が声をかけてきた。
「弘人、どうしてここに?」
流石に涙を流していたのだけは見せなかったけれど、それでも少しだけ見られたかも。
「もしかして具合悪い? それなら保健室に行った方がいいよ。俺、付き添うから」
「違う。ひとりがいいし、気にしなくていいから」
「流石に心配だから。保健室の前で俺は教室に戻って先生に伝えておくから、だから……」
あぁ、どうしてこうなったんだろ?
口下手なわたしが悪かったのかな。
でも、七瀬の彼女だからこそ気になったのに。七瀬ならそんなには怒ることなんてないと思っていたのに。
輔――わたしを置いていかないでよ。
このままなんて絶対に嫌だ。
「七瀬だよね? 七瀬のことで葛西さんは悲しんでるんだよね?」
「…………」
正解でもないし答えたくもなくて、弘人に対し首を左右に振るだけしか出来なくて、だけど弘人はわたしのそばを離れようとしない。
「葛西さん。心配しないで。俺がきちんとあいつに話しておくから。だから、とりあえず保健室に行こうよ。このままここにいてもどうにも出来ないっていうか、えっと……」
七瀬のせいでもなく弘人のせいでもないけど、落ち込みすぎたせいか本当に具合が悪くなって、結局弘人に肩を貸してもらいながら保健室に連れて行ってもらうことになった。
「ごめんなさい、林崎くん……」
「――! い、いいよ、気にしないで」
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