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第五章 ラブ・カルテット
56.最初から始めたい
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「あやきちー! こっち」
凄い分かりやすいなぁ、雪乃って。
「七瀬。雪乃があっちに」
「……みたいだな。行くぞ、綾希」
「行く」
――週末。
約束の展望台に行くため、七瀬とふたりで向かっている。入口前にはすでに雪乃がいて、もの凄く大げさに手を振っていた。
誘ってくれた弘人は先にチケット売り場に行っているらしく、雪乃だけがわたしたちを出迎えている。
「よくぞ来てくれました! 七瀬くんとあやきち」
「うん、来た」
「泉さん、サンキュな」
「いえいえ。やっぱ、こういうのってみんなで行かないと駄目っしょ!」
当初は雪乃だけバイトの都合で来られなかった。
けれど、流石にそれはおかしいだろ――なんてことを弘人に詰め寄った七瀬のおかげで、雪乃も来られるようになった。
雪乃と合流したところで何だか唇が渇いていたのが気になったわたしは、近くの化粧室に行くことに。
その間、ふたりから少しだけ離れることになった。
「泉さん。なんていえばいいのか、とにかく応援する」
「あーうん。まぁ、アレですよ。わたし、意外にしぶといんで! 七瀬くんだってもう迷うのやめたんでしょ?」
「あいつを悲しませたのも俺のせいだし。それに、俺はあいつが隣にいないと駄目って分かったんで、俺もしぶとくいこうかなと」
「そかそか。やっぱ、七瀬くんはイイ男だなぁ……。それとは別にいいお友達になれそうだよ」
「や、すでに友達でしょ?」
ふたりのところに戻ろうとすると、何を話しているのか気になってなかなかふたりの元に行けずにいる。
……様子だけで判断してしまうけど、七瀬と雪乃はやっぱり仲がいいのかな?
それとも、共通の話題とかで盛り上がっているだけなのだろうか。
「うむ! あやきちともどもよろしくっす」
「綾希の友達だから面白い……? それとも、泉さんって実は最初からそういうキャラ?」
「半々でございますよ。とりあえずあやきちが戻ってきたし、こっち気にしてるっぽいからまた後にしよか」
「そうだね」
怪しい雰囲気とかそういうのは今はほとんど感じられない。以前感じた不安はどこにいったんだろうってくらい、楽しそうにしているから多分もう大丈夫だと思う。
「じゃあ、中に行きますか~!」
弘人が中で待っていることもあって、雪乃は張り切った声を出すとそのまま先に中に入って行く。ほんの数秒遅れで七瀬も中に向かって歩こうとしたので、わたしもついていこうとすると、七瀬はわたしに近付き声をかけてくる。
「綾希、俺の手から離れるなよ?」
「あれ? 七瀬っていつの間にか戻った?」
「ん? 何が?」
「わたしのこと。色々変えて呼んでたから。だけど今は気分が戻った?」
「……あぁ、まぁそんなとこ。俺的に、綾希って呼ぶのがいい。慣れっていうか、俺がそう呼びたいだけ」
弘人に誘われての展望台なのに、わたしも七瀬もまるで出会った頃――それこそ最初の頃に戻ったような、そんな感じで呼び合っていた。
「じゃあ、七瀬」
「お前も最初に戻ってるだろ」
「七瀬!」
最初と違うのは、何の迷いもなしにわたしの手を握っていること。嫌じゃなくて、むしろこのまま離さずに繋いだままでいたいって思えた。
……七瀬もそうなのかな?
――そうだといいな。
凄い分かりやすいなぁ、雪乃って。
「七瀬。雪乃があっちに」
「……みたいだな。行くぞ、綾希」
「行く」
――週末。
約束の展望台に行くため、七瀬とふたりで向かっている。入口前にはすでに雪乃がいて、もの凄く大げさに手を振っていた。
誘ってくれた弘人は先にチケット売り場に行っているらしく、雪乃だけがわたしたちを出迎えている。
「よくぞ来てくれました! 七瀬くんとあやきち」
「うん、来た」
「泉さん、サンキュな」
「いえいえ。やっぱ、こういうのってみんなで行かないと駄目っしょ!」
当初は雪乃だけバイトの都合で来られなかった。
けれど、流石にそれはおかしいだろ――なんてことを弘人に詰め寄った七瀬のおかげで、雪乃も来られるようになった。
雪乃と合流したところで何だか唇が渇いていたのが気になったわたしは、近くの化粧室に行くことに。
その間、ふたりから少しだけ離れることになった。
「泉さん。なんていえばいいのか、とにかく応援する」
「あーうん。まぁ、アレですよ。わたし、意外にしぶといんで! 七瀬くんだってもう迷うのやめたんでしょ?」
「あいつを悲しませたのも俺のせいだし。それに、俺はあいつが隣にいないと駄目って分かったんで、俺もしぶとくいこうかなと」
「そかそか。やっぱ、七瀬くんはイイ男だなぁ……。それとは別にいいお友達になれそうだよ」
「や、すでに友達でしょ?」
ふたりのところに戻ろうとすると、何を話しているのか気になってなかなかふたりの元に行けずにいる。
……様子だけで判断してしまうけど、七瀬と雪乃はやっぱり仲がいいのかな?
それとも、共通の話題とかで盛り上がっているだけなのだろうか。
「うむ! あやきちともどもよろしくっす」
「綾希の友達だから面白い……? それとも、泉さんって実は最初からそういうキャラ?」
「半々でございますよ。とりあえずあやきちが戻ってきたし、こっち気にしてるっぽいからまた後にしよか」
「そうだね」
怪しい雰囲気とかそういうのは今はほとんど感じられない。以前感じた不安はどこにいったんだろうってくらい、楽しそうにしているから多分もう大丈夫だと思う。
「じゃあ、中に行きますか~!」
弘人が中で待っていることもあって、雪乃は張り切った声を出すとそのまま先に中に入って行く。ほんの数秒遅れで七瀬も中に向かって歩こうとしたので、わたしもついていこうとすると、七瀬はわたしに近付き声をかけてくる。
「綾希、俺の手から離れるなよ?」
「あれ? 七瀬っていつの間にか戻った?」
「ん? 何が?」
「わたしのこと。色々変えて呼んでたから。だけど今は気分が戻った?」
「……あぁ、まぁそんなとこ。俺的に、綾希って呼ぶのがいい。慣れっていうか、俺がそう呼びたいだけ」
弘人に誘われての展望台なのに、わたしも七瀬もまるで出会った頃――それこそ最初の頃に戻ったような、そんな感じで呼び合っていた。
「じゃあ、七瀬」
「お前も最初に戻ってるだろ」
「七瀬!」
最初と違うのは、何の迷いもなしにわたしの手を握っていること。嫌じゃなくて、むしろこのまま離さずに繋いだままでいたいって思えた。
……七瀬もそうなのかな?
――そうだといいな。
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