きみのその手に触れたくて"

遥風 かずら

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第六章 恋敵クライマックス

70.仕組まれた罠と微笑む男

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「雪乃」
「うん? 教室入らないの? って、どうした~?」
「先行ってて」
「……あ、おっけ! 先に教室入っとく。いい席期待してて~」
「任せた」

 トイレに行っただけの僅かな時間、教室に戻るとわたしが座れそうな席がどこにもなかった。わたしの味方でもある雪乃がいい席を取っていたはずなのに、何故かわたしとはぐれていた。

 そんな雪乃の隣には自称ライバル女子が座り、わたしが来たことに気付いた雪乃が申し訳なさそうな顔をしている。

 ……多分強引に誘われたのかもしれない。

 弘人を探しても同様で彼の周りには、普段あまり話してなさそうな女子が近くに座っているし、七瀬も沢山の女子に囲まれていた。てっきり沙奈が邪魔してるかと思っていたけど、沙奈は教室にすら来ていなかった。

 わたしが話せる人や味方は誰かの仕組まれによって離されたらしい。座る席がほとんど見当たらない中、唯一がら空き――わざと空けたらしい場所はが座っていて、見事にその席の隣しかなかった。

 そんなあいつは嬉しそうに誰かに手を振っている。

「綾希! こっちだ、空いてるぞ!」

 他に空いてる席がないか探したもののどこにもない。空いてる席がないならそのまま教室に入らず欠席扱いでもいいから出て行こうとすると、タイミング悪く先生が入ってきた。

 その結果、そいつの隣に座るしかなくて。

「お前、視力が落ちたのか? それとも耳が遠くなった?」

 話しかけてくるけど話すことないし、このまま無視でいいよね。

「うぉーい! 聞こえてるんだろ? 何でオレと話すらしてくれねえの?」

 むしろどうしてそこまでわたしと話がしたいのかが謎。楽しい話をした覚えなんてないのに。

「沙奈に聞いたけど、俺と別れてからしばらくへこんでたらしいな? やっぱ別れるつもりなかったんだろ? でも、こうして同じ学校に通えるようになったし距離とか関係無くなったから、ヨリ戻さん?」
「……えっと、誰?」
「うぉい! 綾希ってそんな酷いことを言う奴だったっけか? 沙奈と編入男子の話で盛り上がってた時はもっと自然体だったって聞いたんだけどな。どうせ今もキャラ作ってんだろ?」

 それはこの人の大きな勘違い。

 沙奈とわたしがまだ仲良しな時は彼女に合わせていた。元々人見知りだし、その辺の女子とすら話したことがないわたしにとって、沙奈の強い口調と喋りで引っ張られていただけだった。それこそ沙奈と一緒にいた最初の弘人のように。

「何か用?」
「おっ。いや? 綾希の隣に座りたかっただけ。そうでもしないと話すらしてくれねえだろ? だから協力してもらった」

 あぁ、そっか。見た目だけは良くて、そのくせ調子が良すぎるからあまり知らない女子は優しさを出してしまうんだ。

 でも、沙奈はタイプが違うから最初からそれほど相手をしていなかったようにも思える。

「沙奈はどこ……?」
「あいつ、ああ見えて運動部女子なんだよな。今は大会か何からしくて、学校にいないらしいぞ。気にするなんて珍しいな。確か、喧嘩別れしたんじゃなかったか? 俺もあまり話してないけどよ」
「さぁ……?」

 隣から雑音が聞こえてきている。

 ……今はそう思うしかなくて。喧嘩はしたけどこういう時に沙奈がいてくれたら少しはマシだったのかもって思えてきた。

 それほどこの男はうるさいし、とても嫌いすぎるから。

 あぁ、七瀬の傍に行きたいな。

 だけど、わたしはどうすれば? 

 授業時間の間だけは耐えるしかないのかな?

 七瀬輔くん――わたしはあなたの隣に座りたい。
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