猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら

文字の大きさ
77 / 80
アフターストーリー 2

猫族の拠点・ミネット村

しおりを挟む
 魔導師レイモンは、俺とコムギさんが暮らす部屋と地下の部屋を繋げられて満足そうだった。

 その満足度が物凄く高かったようで、彼女はメルバ漁村に程近い森林へと案内してくれているのだが――

「――村の人が驚いてたんですけど、後でもう一度きちんと話をしてもらっていいですか?」

 彼女は繋がった俺の部屋からすぐに出て、メルバ漁村を何の警戒もなく歩き回ってしまった。その結果は言うまでもなく。

「む? 何を話す? トージの家から出入りした時点で認知されていたと見たぞ?」

 何を認知されたのかなんて怖くて聞けない。

「怪しい者か、あるいは全く気にしなくていいのか、の確認みたいなものですよ。猫のクウくんも怪しまれるくらい村の人は警戒心が高いので……」
「ふむ……。我が地上に出ていない間に人々は警戒を絶やさなくなったのか。それは難儀なことだな。ならば、村に戻ったらきちんと話すことにしよう」

 言い方が何とも古めかしい感じがするんだよな。

「ココアが話してる拠点はどの辺にあるのかニャ?」
「そうだぞ~。おいら、この辺も結構歩いたけどそんなところはなかったぞ~」
「何だかぐるぐると同じところを歩いているような気がするニャ……」
「ふふ。それはそうだろう。目的がはっきりしていなければ、あの者らは入り口を閉ざすのだ」

 コムギさんの言う通り、森林エリアを歩きだしてからあまり距離を歩いた感じがしない。それどころか何度も同じところを歩いているような感じだ。

 レイモンが地上を歩くのは数十年ぶりらしいが、ほぼ地下にいるせいで実は単なる道迷いなのではと思う程に歩き回っている。

「この森は奥に行けば行くほど、人間が近くにいれば警戒するのだ。たとえトージがでなくともな」
「トージは全然危険じゃないニャ!」

 コムギさんが怒ってくれるのは嬉しいが、反面俺には何の危なさもないという意味でもあるから、いいのか悪いのか複雑な気分だ。

 しかしここにいるコムギさんやクウ、そしてレイモンにも強さという意味では敵わないのは事実だからな。

 レイモンを先頭に小屋周辺の森林エリアをしばらく歩いていると、歩くレイモンを避けるようにして前方の木々が左右に避け出し始めたような、そんな風に見えた。

 レイモンはエルフだから森の精霊とかが歓迎してるとかそんな感じだろうか?

「不思議な感じだなぁ」
「ニャ? トージ、どうかしたかニャ?」
「ん~? なんだなんだ?」
「な、何でもないよ」

 思わず口に出していたが見えているのはどうやら俺だけで、足元を歩くコムギさんとクウには見えていないみたいだった。

「……よしよし。は我を忘れず拒まないでいてくれるようだ。無論、トージがいてもな!」
「へ?」
「トージには見えていたはずだ。根元が太い植物が自ら折れて、道を作ってくれている光景を。アレは我を歓迎、いや認めているからこその動きなのだよ」

 やはり解釈で合っていたのか。

「コムギやクウは猫だから見えなくとも問題はない。猫なら出入り自由なのだからな」
「……なるほど」

 つまり、猫優遇の拠点?

 そうしてしばらく歩いていると、一本の大木の中央に小屋の作りと同じ木製の扉があった。猫、あるいはエルフ用の扉のようでドアノブは見当たらない。

 どう見ても入り口の扉にしか見えないが、歓迎されないと見えない扉だな。

 レイモンが扉に近づき、手をかけるかと思いきや。

「トージ。この扉を開けてくれ」

 そう言って俺に開けさせようとしている。

「え? 俺でいいんですか?」
「我はすでに認められている。だが、トージが認められなければこの扉は消えるのみ。トージが猫に認められていればすんなり開けられるはずだ」

 ううむ。猫に認められるとか、それは真の意味で確かめられてるな。

「じゃ、じゃあ開けてみます」
「うむ」
「トージなら大丈夫ニャ!」
「おいらを助けてくれたからな~。トージなら何も心配ないぞ~」

 コムギさんとクウに可愛く応援されながら、俺は扉を押してみた。

 扉を押すと、そんなに強く押していないのにまるで向こうから開けられたように中へと吸い込まれ、前のめりになったどころか俺だけ先に中へと飛び込んでしまった。

「うわっ!?」

 地面に転げてしまう姿勢だったが、顔はもちろん全身で受け止められた感触はまるで猫そのもののようなモフっとした抱き枕のようなものに近い。

「いらっしゃいませニャン! トージ・ムギヤマさん、ミネット村にめでたくご入場ニャン~!」

 モフモフな感触をたっぷりと感じながら自分の耳に聞こえてきたのは、可愛い猫さんの歓迎の声だった。

 もしや俺にとって最高の拠点なのでは!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

戦えない魔法で追放された俺、家電の知識で異世界の生存率を塗り替える

yukataka
ファンタジー
安全を無視したコスト削減に反対した結果、 家電メーカーの開発エンジニア・三浦恒一は「価値がない」と切り捨てられた。 降格先の倉庫で事故に巻き込まれ、彼が辿り着いたのは――魔法がすべてを決める異世界だった。 この世界では、魔法は一人一つが常識。 そんな中で恒一が与えられたのは、 元の世界の“家電”しか召喚できない外れ魔法〈異界家電召喚〉。 戦えない。派手じゃない。評価もされない。 だが、召喚した家電に応じて発現する魔法は、 戦闘ではなく「生き延びるための正しい使い方」に特化していた。 保存、浄化、環境制御―― 誰も見向きもしなかった力は、やがて人々の生活と命を静かに支え始める。 理解されず、切り捨てられてきた男が選ぶのは、 英雄になることではない。 事故を起こさず、仲間を死なせず、 “必要とされる仕事”を積み上げること。 これは、 才能ではなく使い方で世界を変える男の、 静かな成り上がりの物語。

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

元・神獣の世話係 ~神獣さえいればいいと解雇されたけど、心優しいもふもふ神獣は私についてくるようです!~

草乃葉オウル ◆ 書籍発売中
ファンタジー
黒き狼の神獣ガルーと契約を交わし、魔人との戦争を勝利に導いた勇者が天寿をまっとうした。 勇者の養女セフィラは悲しみに暮れつつも、婚約者である王国の王子と幸せに生きていくことを誓う。 だが、王子にとってセフィラは勇者に取り入るための道具でしかなかった。 勇者亡き今、王子はセフィラとの婚約を破棄し、新たな神獣の契約者となって力による国民の支配を目論む。 しかし、ガルーと契約を交わしていたのは最初から勇者ではなくセフィラだったのだ! 真実を知って今さら媚びてくる王子に別れを告げ、セフィラはガルーの背に乗ってお城を飛び出す。 これは少女と世話焼き神獣の癒しに満ちた気ままな旅の物語!

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...