パーティーから追い出された劣等賢者ですが、最強パーティーを育てて勇者を世界から追い出そうと思います。

遥風 かずら

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第3章:目覚めの力

30.記憶の辿り道

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「アクさま……何故あの黒騎士を仲間にしたのですか?」
「仲間などでは無いぞ。まぁ、何というか俺は負けてしまったからな……だからだ」
「まさかそんな……要素を使えば、たとえ手練れのランス使いだとしてもアクさまが敗北されることなど無かったのでは?」
「隙を作ったのは俺だ。それより、ロサはガンネアで住人を守っていたらしいではないか」
「いえ……薬師の女が『あうあう』などと慌てふためいていたので、混乱を防ぐ為に動いただけです」

 パナセのことを言っているようだが、ロサとパナセの相性は相当に悪いだけに仕方が無かったか。

「仲間などではない黒騎士はともかくとして、これからどちらへ向かわれるのですか? それに、薬師の傍をついて来ているエーセン族の子供も懐柔を?」
「召喚士は俺が保護することで話をつけた。元から仲間にするつもりではあったのでな……」

 エーセン族の連中からしてみれば、岩屋を守り抜いてくれた恩人に対して、反対の意思など示すつもりは無かったようだ。

 ロサには詳しく言わないが、俺の敗北の原因は、パナセを傍に置いたことによる油断だ。

 岩屋のエーセン族を救い、パナセを救ったアミナスとどちらにも恩が生まれたことで、話はスムーズに通った。

「ではこのPTでほぼお決まりですか?」
「それは分からんが、俺もベナークのように女子供しかPTにしていないのは、いささか不満ではあるな」
「黒騎士を除いて、男を加えると?」
「お前、気付いていたのか?」
「雰囲気で分かります。わたくしのジョブをお忘れですか?」
「血塗られの運命か……ロサの活躍の場を作ってやらずに申し訳ないことだな」
「うふふ……そんなものはアクさまのお傍にいれば、いつでもいくらでも生み出されるものですわ」

 ロサの気持ちをどこまで信じていいものかは分からないが、コイツなりの忠誠心があるのは確かだ。

 女子供だけのPTに男を加えるとなると、ツテを頼るしか無いが、子供といえば竜人娘は己の弱さを克服したのだろうか。 

 正直言って、黒騎士が仲間にはなり得ないことが確実な以上、攻撃重視の剣士でも入れなければ勇者を消すことなど、永劫において敵わぬことでは無いのか?

「とりあえずだ、これから向かうのは、かつて勇者どもと辿った地だ」
「邂逅の可能性はあるのでは?」
「その可能性はあるが、逃げてしまえば俺の目的は意味を失うことになるだろう」
「わたくしは愛を示す為に、アクさまをお支え致しますわ」
「そうだな。このPTで突出した強さを持っているのはロサ、お前だけだ。頼るぞ」
「いつでも口づけをお待ち申し上げていますわ」
「あ、あぁ……そのうちな。ロサは引き続き、黒騎士と一定の距離を保ちながら監視を続けてくれ」

 愛情を注げばロサは俺だけに服従するが、それだけが救いか。

 それにしても、パナセとアミナスは愉快な属性が似たもの同士なのか、どちらもお気楽に歩いているようだ。

「黒騎士はよく分からないけど、見事に女だらけ。アクセリって、そうなの?」
「何の話だ?」
「見たまんまの話! パナのことがあるから男の冒険者を加えないんでしょ?」
「……ルシナはパナセの過去を知っていたのか?」
「それはね。あの子はあんたのおかげで愉快な子になっているけれど、冒険者PTについて行っては光を失いかけていた」

 俺とパナセが出会った時も、荷物扱いされた挙句に置いてけぼりをされていたが……

「薬師が悪いわけじゃないのに、自分たちの弱さを薬師に全て押し付けた。ろくでもないPTは必ずと言っていいほど、傲慢な男ばかりがリーダーをしていたから、アクセリ以外の男は加えるべきではないかも」
「そうだな……」

 パナセの血に対する異常な反応と、隠された能力が過去PTによるものだとすれば、火力不足だからと男を加えるべきではないかもしれない。

「あぁ、そうだ、忘れていた。ルシナ、手を出せ」
「え、何?」
「右でも左でも構わない。手を俺に貸してみろ」
「う、うん」

 万能なパナセと違い、同じ薬師でもルシナには攻撃要素が足りないのは明らかだ。

「わっ!? ど、どうして撫でまくっているの? あんた、やっぱりパナにもそうやって変なことを繰り返して手籠てごめに……」
「そのまま大人しくしてろ」
「……く、くすぐったいってば。さ、さわさわ……触られるの弱いのに! や、やめ……」

 何を勘違いしているかは分からないが、ルシナが使う霧と相性のいい要素と、短剣くらいは授けてやることにした。

「――あれ……何か、魔力の流れが変わった気がするんだけど」
「俺があまり使わない水の要素をお前に与えた。霧と同じように上手く扱ってやれ!」
「え、じゃあ、アクセリは水魔法を使えなくなったってこと?」
「氷の要素を使いすぎたせいか、水がいうことを聞かなくなったからな」
「ふ、ふーん? 今更だけど、魔法……元素の要素と話でもしているの?」
「賢者として、全ての能力を従えた時に交わした盟約によるものだ。言葉による会話ではない」
「そ、そうなんだ。賢者って、すごいんだ……」

 前に出て戦うことを苦手としている以上、全能でもないが知恵は与えることが出来るのは、賢者としての役割なのかもしれないな。

「ルシナには俺の傍で、攻撃と幻霧魔法で支援をしてもらうぞ。薬師としての力は、いざという時で構わん!」
「そ、そういうことなら、そうするけど……敵って人間がほとんどでしょ? とてもじゃないけど、ちっぽけな魔法程度でどうにかできないと思うけど」
「これを持て」
「た、短剣……?」
「『アシッドガードナイフ』だ。それで戦えとまで言わないが、ルシナの身を守るための守り道具だ。念のためとして持っておけ」
「う、うん。ありがと」

 黒騎士エウダイの動向は注視しなければならないが、まずはかつての拠点である城を目指すとするか。
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