57 / 156
弐頁:属性との出会い
57.オベライ海底塔の魔防戦 1
しおりを挟む「――というわけなんだ」
「ふんふんふん……ふにぁ~悪いピカピカのせいだったのにぁ……」
「やはり討伐で得られた属性石には、癒しの効果なんて無いってことだろうね」
騎士クライスの話によるとゲレイド新国からここまで来るのに、シャル姫が身に付けている装飾品が原因で、賊はともかく魔物に狙われまくりだったらしい。
「とてもじゃないが姫には真実を言えぬし、妻に宝石をかざすことも控えさせてもらった。エンジたちに助けられたが、恐らく海上からも宝石狙いの魔物どもが向かってくるはずだ」
「海から? 属性の獣の力は凄まじいのは分かるけど、宝石目当てでどうしてそんなことに……」
「光の神獣ってのは聖なる獣であったと同時に、周辺の魔物を抑えていたと聞く。その力が討伐で失われたことに気付くのは、人間よりも魔物の方が早い。ゲレイド新国の連中は、自国の周辺から魔物を遠ざける狙いがあったとみえる」
光の杖を持っていたレシスも、結構な確率で狙われやすかった。
もっとも彼女の場合は、敵を誘っている光そのものに守られていたけど。
クライスは姫には危険なことを悟られることなく、国まで守ることが出来たことに安堵している。
姫に何かあった時点で、王にも知られてしまうことを恐れた為だとか。
「俺たちに何が出来るんです?」
「エンジは魔法が相当強いのだろう?」
「いえ、シャル姫を浮かせたくらいですよ」
「ふっ、謙遜するな。リウちゃんの奇襲があってこそかもしれぬが、鳥どもは恐れ慄いていたぞ? 手の内を見せずとも、エンジの持つ魔力に気付いたのは明らかだ」
ここに来るまで大した魔法を使っていない。
そして最近は、コピーするほどの相手も敵も見つかっていないのが気になる。
光の属性石を狙って海上から敵が来るという話な時点で、嫌な予感しかしない。
「エンジさま! 大変にぁ!! あっちの方角からたくさん来るにぁ」
それほど慌ててはいないが、すでに範囲サーチで捉えているのかリウは海の先の方を指している。
警戒を強めているのか、耳も尻尾も緊張感を漂わせているようだ。
「海の向こう側か。まさか、本当に?」
「分かるのか!? ここからでは特に変わった様子に見えないが……魔法だけでなくスキルも持ち合わせているとすれば、エンジとリウちゃんに頼りたいのだが……」
「ギルドのクエストの範疇外なのでは?」
「ああ。これはミーゴナの危機だ。だが、我ら騎士は剣と盾しか扱えぬ。それ故、王に援軍を求めたとて城と民を守ることしか出来ないのだ。ここまで来てもらってすまないが、ミーゴナを守ってくれないか?」
ザーリンとルールイを先に帰し、リウと二人だけになってこんなことが起きるなんて、つくづくザーリンに試されている気がしてならない。
しかも今回はリウの支援攻撃を当てにするでもなく、完全に魔法だけで戦うことが前提だ。
これを冒険者のいないギルド依頼にして来る辺り、フェアリーの企みそのものに思えて来る。
「リウの思い出の地でもありますし、守るのは行きがかり上、やりますが……城に防御魔法を張るといった大それた真似は出来ませんよ?」
「ふむ……」
「リウは回復魔法しか出来ないにぁ……」
「リウのせいじゃないからね? 今回は俺がやるしかないってだけだよ」
「にぅ~」
途端に耳をへたらせるリウを優しく撫でてあげた。
すると何かを思いついたのか、耳を立たせて俺を見つめながら提案を出して来た。
「ふにぁ~……森からアルクスに戻って、ドールを呼んで来るかにぁ?」
「ドールを? あぁ、そうか。彼女たちは俺の魔力で動いているようなもんだっけ。いや、でも……ログナのこともあるし、ドールたちはアルクスを守ってもらいたいかな」
「ふむぅ……」
「リウにはこの国の人たちを守っててもらいたいな。俺だけで何とかしてみたいし」
「でもでもでも、エンジさま! 絶対防御はもう無いのにぁ……」
攻撃を喰らえば当然だけど、ダメージを負うことになる。
それでもそれは直接攻撃によるものだし、魔法で何とか出来るならノーダメージになることの方が確率としては高いだろう。
「みぁう? エンジさま?」
「大丈夫、近づけさせないよ。それに魔法攻撃だったら、攻撃を受ける方が自分にとっては最高だからね」
リウの心配も分かるものの、海上から敵が来るということは魔法による遠隔攻撃が圧倒的に優位だ。
ここは迎え撃ちながらコピーもしまくるのが最善だろう。
「……ここでは魔法攻撃も思いきり出来ません。海上に何か拠点のようなものは?」
「あぁ、ある。ミーゴナから見える海は、オベライ海と言う。そこに昔、海上、いや……海底から塔を建てたらしくてな。昔こそこの国も魔法士がいたようで、その塔で魔法を繰り出して守ったと聞いている」
「海底の塔ですか?」
「そうだ。昔は今よりも海も深くは無かったようだからな。とにかく、その塔ならばエンジも防ぐことが容易になるはずだ。頼めるか?」
「リウもここで守りますし、やりますよ。そうじゃないと、俺も成長出来ませんからね」
ザーリンの言葉に従うならば塔の中で魔法戦を展開。
その最中に、スキルやら何やらを育てる必要がある。
そうすることでしばらく留守にしているアルクスも、国として成長を遂げる可能性がありそうだ。
「あの塔へはどうやって?」
「もちろん、空からでしか入れない。見ての通りだが、船では塔の入り口にすらたどり着けぬ」
こうなるとルールイを呼び戻したい。
俺から迎えに戻ると言っておきながら、結局こうなるのか。
0
あなたにおすすめの小説
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜
あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。
その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!?
チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双!
※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
最強付与術師の成長革命 追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
旧題:最強付与術師の成長革命~レベルの無い世界で俺だけレベルアップ!あ、追放元パーティーから魔力回収しますね?え?勇者降ろされた?知らんがな
・成長チート特盛の追放ざまぁファンタジー!
【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】
付与術のアレンはある日「お前だけ成長が遅い」と追放されてしまう。
だが、仲間たちが成長していたのは、ほかならぬアレンのおかげだったことに、まだ誰も気づいていない。
なんとアレンの付与術は世界で唯一の《永久持続バフ》だったのだ!
《永久持続バフ》によってステータス強化付与がスタックすることに気づいたアレンは、それを利用して無限の魔力を手に入れる。
そして莫大な魔力を利用して、付与術を研究したアレンは【レベル付与】の能力に目覚める!
ステータス無限付与とレベルシステムによる最強チートの組み合わせで、アレンは無制限に強くなり、規格外の存在に成り上がる!
一方でアレンを追放したナメップは、大事な勇者就任式典でへまをして、王様に大恥をかかせてしまう大失態!
彼はアレンの能力を無能だと決めつけ、なにも努力しないで戦いを舐めきっていた。
アレンの努力が報われる一方で、ナメップはそのツケを払わされるはめになる。
アレンを追放したことによってすべてを失った元パーティは、次第に空中分解していくことになる。
カクヨムにも掲載
なろう
日間2位
月間6位
なろうブクマ6500
カクヨム3000
★最強付与術師の成長革命~レベルの概念が無い世界で俺だけレベルが上がります。知らずに永久バフ掛けてたけど、魔力が必要になったので追放した元パーティーから回収しますね。えっ?勇者降ろされた?知らんがな…
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる