セイバー

森田金太郎

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16話

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◆失われた水の力
 翌日、当然涼は学校を欠席。愛は異変に心配の声を上げる。

「涼くん、どうしちゃったの?今度は、涼くんが家出?」

 勇は暗い顔で答えた。

「プラネットクラッシャーに、『悪』にされちゃったんだ。昨日」
「えっ」

 晴は、近くでそのやり取りを聞いていたが、険しい顔をし、押し黙った。愛は、そんな晴を見つつ、悔しそうな顔をした。

「私に、何か出来る事ないかな?」

 出来る事などないと愛は思いつつ、そんな言葉を口走った。勇は、かなしげな顔になり、こう返した。

「愛ちゃん、気持ちだけもらっておくよ」

 愛の目には、涙の気配。勇もその涙がうつりそうになる。そんな中で、勇は言葉を続けた。

「涼が、無事に戻ってくるように、一緒に願おうね?」

 愛は頷いた。始業のチャイムがそれを包んだ。

 それから、涼のセイブ・ストーンは、勇、晴、愛が日替わりでその手に持ち、涼が帰る日を待った。

◆氷が溶ける日
 そんなある日、勇、晴、愛は、一緒に下校した。愛は言った。

「勇くんと晴くん、涼くんとこんな感じで帰ってたんだね?」
「そうだよ。僕が真ん中で歩いてさ」
「そうなんだ」

 そんな話をしながら歩いていくと、3人は駅に着いた。すると、勇と晴の足が止まる。愛は、そんな2人を首を傾げ見たが、その2人の視線の先の人物の名前を叫んだ。

「涼くん!」

 涼の後ろには、充と彩。勇は言った。

「愛ちゃん!ごめん、今日はこの戦い、見ないで!」
「えっ?」
「涼の、今の涼の攻撃には僕の盾は効かないんだ!愛ちゃんを守れない!逃げて!帰って!!」
「うん」

 愛は、勇の必死な言葉に言う事を聞くことにした。愛は逃げていく。それを見届けた勇は晴と共に叫んだ。

「解き放て!守りの力!!」

 そして、2人は名乗る。

「はためく翼は強き盾!アースセイバーウイング!!」
「荒ぶる炎は確かな希望!アースセイバーファイア!!」

 その後、「レッツ!セイブ!!」という掛け声は自粛した。

 一方、そんな2人に対峙する3人は、こう言った。

「プラネットクラッシャーアースバイオレット」
「プラネットクラッシャーアースオレンジ」
「アースクラッシャーアイス」

 そして、バイオレットとオレンジは、声を揃える。

「カラミティ!!」

 4体のカラミティがそれぞれ2体ずつウイングとファイアを取り押さえる。それを認めたアイスは、無数の氷の刃をウイングとファイアに浴びせかける。ウイングとファイアの悲鳴が駅前に轟く。

 そんな中、ファイアは炎を繰り出す。ファイアを取り押さえていたカラミティは弱体化。その隙に、ファイアはカラミティの拘束から抜け出す。更に、ファイアはウイングを拘束しているカラミティにも炎を繰り出し、ウイングを救出する。ウイングは言った。

「ありがとう!ファイア!!」
「ああ!だが、この状況、厳しいぜ!!」

 ウイングとファイアは、バイオレット、オレンジ、アイス、カラミティの次々に繰り出される攻撃を、防戦一方という形で、受け止める。

 そうしているうちに、ウイングは、ファイアはある事に気づく。その事を、ウイングは苦しい場面ではあったが言った。

「ウォーター、アイスとして苦しんでるっ!」
「俺もそう思っだぜ!!」

 ウイングは意を決した様子で言った。

「ファイア!氷のウォーターに、僕の翼は何も出来ない!氷を溶かす事が出来るのは、炎!ファイアだよ!だから、ファイアの炎で涼を助けてあげて!!バイオレットとオレンジ、カラミティは僕がなんとかする!!」

 ファイアは、一瞬動きを止め、言葉を返さなかったが、意を決したように、こう言った。

「わかったぜ!」

 そして、ファイアはアイスに肉薄し、こう言った。

「俺が相手だ!アイス!!」
「ふっ」

 アイスは鼻で笑い、無視するようにファイアから距離を置こうとするが、ファイアは追いかけ、炎を浴びせかける。アイスは不快感を込めた声色で言った。

「乱暴な」
「乱暴でも何でもいい!改めて言うぜ!俺が相手だ!アイス!!」

 そう言ったファイアは自らを炎で包む。アイスからの氷の刃を溶かすために。氷の刃が通用しないと判断したアイスは、ファイアに殴りかかってきた。ファイアはそれに応戦する。そうしているうちに、2人はウイング、バイオレット、オレンジ、カラミティの元から離れて行った。忌々しそうなアイスの声がファイアに届く。

「熱い、私の力が溶ける」
「効いてるようだな!」

 ファイアからの炎は徐々に威力を増していく。ファイアはそんな炎を繰り返しアイスに浴びせかけた。苦しげな表情になっていくアイスではあったが、それでもファイアに猛攻を仕掛ける。アイスのパンチは、ファイアに当たり続け、ファイアのパンチもウォーターに当たり続ける。ファイアはその度に激しい炎を繰り出し、アイスの凍った力を溶かそうとした。たまらなくなったアイスは、苦しげにこう叫んだ。

「アースセイバーファイア。これで、片付ける。クラッシュ・アイス・スピアー・スノー」

 ファイアは、それを受け叫んだ。

「セイブ・ファイア・クロス・エクスプロージョン!」

 十字の炎から発生した爆発の衝撃波は、無数の氷の棘の槍を押し返す。アイスの必殺技は、決まらなかった。アイスは言った。

「くっ。私の技が」
「もう、終わりにしよう。セイブ・ファイア・クロス・エクスプロージョン!」

 ファイアが至近距離で放った必殺技を受けたアイスは爆発前の十字の炎に包まれた。アイスの悲鳴が轟く。そんな中ではあったが、アイスの波打っていた髪が真っ直ぐになっていく。そして、その瞳に光が戻っていく。それを認めたファイアは、炎の中に入って行き、その炎を自らの体に戻す。炎の消えたそこには、ファイアの目の前にウォーターが佇む光景が広がった。

「ファイア、ありがとう」
「戻ったか?ウォーター?」

 ウォーターの頷きが、ファイアの目に映った。
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