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15話
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◆背後
夏休みも終わり、二学期の始業式のために勇たちは高校へ。その日の日程は、つつがなく終わった。そして、いつものように勇は涼と晴の2人と共に下校していく。そこに、傷ついた彩が駆け寄ってきた。勇は、驚く。
「ど、どうしたの?」
「仲間割れしたのよ!」
彩が叫ぶように言った。すると、後から充が鬼の形相で彩を追いかけてきた。
「オレンジ!逃げるな!お前を潰す!!」
「潰されたくないわ!助けて!!」
彩が手を取ったのは、涼だった。涼は短く、
「えっ」
と、言った。が、彩に連れて行かれてしまい、勇と晴からは姿が見えなくなってしまった。勇は叫んだ。
「涼!!」
晴も怒鳴るように言った。
「何だって言うんだよ!!」
その横を充が走って行ってしまった。勇は言った。
「晴!追おう!!」
晴は返した。
「言われなくても、やるぜ!」
そして、2人は走って行った。しかし、涼と彩、そして充さえも見つからない。晴は言った。
「まずい。セイブ・ストーンの力を借りるしかねぇ」
「え?そんな事出来るのっ?」
「ああ。前、勇が家出した時、セイブ・ストーンを使って勇がいたアパートを探したんだ」
「そうなんだ!早速やろう!!」
勇はセイブ・ストーンを取り出した。そして、晴と共に、涼の元へ導いて欲しいと念じた。すると、セイブ・ストーンが光る。晴はそれを認めるとこう言った。その声色は焦っていた。
「行くぜ!早く行かねぇと!!」
「うん!!」
一方、涼は、彩に抱きつかれていた。
「ねぇ、助けてよ。あなた、優しそう。私、そんなあなた、急に好きになったの。助けて、バイオレットが私を殺そうとしてるの」
涼は、戸惑うばかりだった。
「僕は、あなたに対しては、優しくしないよ?」
戸惑いの中、抵抗する涼。しかし、彩の腕の力は増す。
「こんなに好きになった人は、初めてなの!離さない!絶対に!!」
その彩の必死な声色に、一瞬、涼は心が揺れた。守るべき人になったのではと。涼が抵抗をわずかに弱めたその瞬間だった。涼は背中を刺された。涼の悲鳴が辺りに木霊する。
「あああああっ!!」
涼の背中に刺さっているのは、バイオレットの右手が太い針に変化した物だった。彩は涼から離れた。
「ふふっ。うまくいったわね」
バイオレットは言った。
「よくやった」
そのバイオレットの声を聞きながら彩はオレンジになった。それを見届けながら、バイオレットは涼に言った。
「これからお前には、俺様たちの仲間になってもらうぞ?アースセイバーウォーターは、もう、終わりだ」
「い、や、だ。そん、な、事、しない」
涼は、セイブ・ストーンを放り投げる。そのセイブ・ストーンは、飛んで行ってしまった。涼は、流れ込む悪しき力にもがいたが、次第に心が凍っていく感覚に身を委ねた。涼の瞳は虚ろになる。
その瞬間、勇と晴は涼の元に辿り着く。勇は叫んだ。
「涼!!」
晴は苦々しい顔をし、怒鳴った。
「涼に、涼に何をしやがったんだ!!」
その2人の声を聞きつつ、バイオレットはようやく右手を涼から抜いた。虚ろな目をした涼は、ただただそこに佇んだ。
◆氷の戦士
オレンジは言った。
「私たちの新たな仲間よ!戦いなさい!アースセイバーと!!」
涼は力なく頷いた。そして、禍々しい雲に包まれ、再び姿を現す。
「アースクラッシャーアイス」
そう名乗った涼は、アースセイバーウォーターの格好はしていたが、様子が違う。真っ直ぐ腰まで伸びていた髪は、波打ち、その瞳からは光は全く見えなかった。それを見たバイオレットは舌打ちした。
「プラネットクラッシャーアースホワイトじゃないだと?しぶといな。意外と」
しかし、気持ちを入れ替え、こうアイスに命令した。
「やれ!アイス!!」
アイスは、頷き、変身前にも関わらず、勇と晴に攻撃を仕掛けてきた。勇と晴は氷の刃を浴びつつセイブ・ストーンを手にし、叫ぶように言った。
「解き放て!守りの力!!」
いつもより少ない声が辺りに響く。
「はためく翼は強き盾!アースセイバーウイング!!」
「荒ぶる炎は確かな希望!アースセイバーファイア!!」
2人は、名乗ったはいいが、アイスからの猛攻に、「レッツ!セイブ!!」とは言えなかった。防御力のないファイアは、簡単に傷つけられる。ウイングは、そんなファイアに翼からの羽根の盾を与えるが、氷の刃は、それを貫通してしまう。ウイングは動揺した。
「僕の盾が!破られたっ?」
ファイアは言った。
「ウイング、ありがとよ!仕方ねぇ!こうするしか!」
ファイアはいつもカラミティ相手にやっている炎の焼き尽くしを氷の刃を溶かすために使う。アイスは言った。
「炎、厄介だ」
ウイングは、動揺が収まらない状況だったが、意を決しアイスに近づく。そして、言った。
「ウォーター!涼!目を覚ましてっ!!」
「私は、アイス!」
「君は、ウォーター!アースセイバーウォーターだよ!!」
「うるさい」
アイスは、ウイングに殴りかかる。的確なパンチは、ウイングにダメージを与える。ファイアは言った。
「今のウォーターには、何も届かないようだな!」
ウイングはかなしげな目をし、言った。
「けど!これは!涼だよ!ウォーターだよ!」
しかし、ウイングは今まで感じた事のないダメージを自覚。
「ウォーター!やめて!目を覚まして!!」
そんな様子に、ファイアは言った。
「ウイング!アイスから離れろ!!」
その瞬間だった。アイスがこう言った。
「クラッシュ・アイス・スピアー・スノー」
氷の棘が無数に生えている大量の槍が吹雪の如くその場に舞う。ウイングはその防御力でそれに当たっても辛うじて踏みとどまる事が出来た。そして、ファイアは辛くもそれを避ける事が出来た。その光景に、オレンジは言った。
「もう、役立たず!」
そう言い終わると、オレンジはアイスの首根っこを掴んだ。バイオレットは言った。
「『教育』するか」
そして、バイオレットとオレンジはアイスのままの涼を連れ去った。そして、それを感じ取ったように、涼のセイブ・ストーンがウイングとファイアの元に。ウイングはそれを手にした。その瞬間、変身は解けた。勇はその両手で涼のセイブ・ストーンを握りしめてこう言った。
「こんなの、嫌だよ、涼」
夏休みも終わり、二学期の始業式のために勇たちは高校へ。その日の日程は、つつがなく終わった。そして、いつものように勇は涼と晴の2人と共に下校していく。そこに、傷ついた彩が駆け寄ってきた。勇は、驚く。
「ど、どうしたの?」
「仲間割れしたのよ!」
彩が叫ぶように言った。すると、後から充が鬼の形相で彩を追いかけてきた。
「オレンジ!逃げるな!お前を潰す!!」
「潰されたくないわ!助けて!!」
彩が手を取ったのは、涼だった。涼は短く、
「えっ」
と、言った。が、彩に連れて行かれてしまい、勇と晴からは姿が見えなくなってしまった。勇は叫んだ。
「涼!!」
晴も怒鳴るように言った。
「何だって言うんだよ!!」
その横を充が走って行ってしまった。勇は言った。
「晴!追おう!!」
晴は返した。
「言われなくても、やるぜ!」
そして、2人は走って行った。しかし、涼と彩、そして充さえも見つからない。晴は言った。
「まずい。セイブ・ストーンの力を借りるしかねぇ」
「え?そんな事出来るのっ?」
「ああ。前、勇が家出した時、セイブ・ストーンを使って勇がいたアパートを探したんだ」
「そうなんだ!早速やろう!!」
勇はセイブ・ストーンを取り出した。そして、晴と共に、涼の元へ導いて欲しいと念じた。すると、セイブ・ストーンが光る。晴はそれを認めるとこう言った。その声色は焦っていた。
「行くぜ!早く行かねぇと!!」
「うん!!」
一方、涼は、彩に抱きつかれていた。
「ねぇ、助けてよ。あなた、優しそう。私、そんなあなた、急に好きになったの。助けて、バイオレットが私を殺そうとしてるの」
涼は、戸惑うばかりだった。
「僕は、あなたに対しては、優しくしないよ?」
戸惑いの中、抵抗する涼。しかし、彩の腕の力は増す。
「こんなに好きになった人は、初めてなの!離さない!絶対に!!」
その彩の必死な声色に、一瞬、涼は心が揺れた。守るべき人になったのではと。涼が抵抗をわずかに弱めたその瞬間だった。涼は背中を刺された。涼の悲鳴が辺りに木霊する。
「あああああっ!!」
涼の背中に刺さっているのは、バイオレットの右手が太い針に変化した物だった。彩は涼から離れた。
「ふふっ。うまくいったわね」
バイオレットは言った。
「よくやった」
そのバイオレットの声を聞きながら彩はオレンジになった。それを見届けながら、バイオレットは涼に言った。
「これからお前には、俺様たちの仲間になってもらうぞ?アースセイバーウォーターは、もう、終わりだ」
「い、や、だ。そん、な、事、しない」
涼は、セイブ・ストーンを放り投げる。そのセイブ・ストーンは、飛んで行ってしまった。涼は、流れ込む悪しき力にもがいたが、次第に心が凍っていく感覚に身を委ねた。涼の瞳は虚ろになる。
その瞬間、勇と晴は涼の元に辿り着く。勇は叫んだ。
「涼!!」
晴は苦々しい顔をし、怒鳴った。
「涼に、涼に何をしやがったんだ!!」
その2人の声を聞きつつ、バイオレットはようやく右手を涼から抜いた。虚ろな目をした涼は、ただただそこに佇んだ。
◆氷の戦士
オレンジは言った。
「私たちの新たな仲間よ!戦いなさい!アースセイバーと!!」
涼は力なく頷いた。そして、禍々しい雲に包まれ、再び姿を現す。
「アースクラッシャーアイス」
そう名乗った涼は、アースセイバーウォーターの格好はしていたが、様子が違う。真っ直ぐ腰まで伸びていた髪は、波打ち、その瞳からは光は全く見えなかった。それを見たバイオレットは舌打ちした。
「プラネットクラッシャーアースホワイトじゃないだと?しぶといな。意外と」
しかし、気持ちを入れ替え、こうアイスに命令した。
「やれ!アイス!!」
アイスは、頷き、変身前にも関わらず、勇と晴に攻撃を仕掛けてきた。勇と晴は氷の刃を浴びつつセイブ・ストーンを手にし、叫ぶように言った。
「解き放て!守りの力!!」
いつもより少ない声が辺りに響く。
「はためく翼は強き盾!アースセイバーウイング!!」
「荒ぶる炎は確かな希望!アースセイバーファイア!!」
2人は、名乗ったはいいが、アイスからの猛攻に、「レッツ!セイブ!!」とは言えなかった。防御力のないファイアは、簡単に傷つけられる。ウイングは、そんなファイアに翼からの羽根の盾を与えるが、氷の刃は、それを貫通してしまう。ウイングは動揺した。
「僕の盾が!破られたっ?」
ファイアは言った。
「ウイング、ありがとよ!仕方ねぇ!こうするしか!」
ファイアはいつもカラミティ相手にやっている炎の焼き尽くしを氷の刃を溶かすために使う。アイスは言った。
「炎、厄介だ」
ウイングは、動揺が収まらない状況だったが、意を決しアイスに近づく。そして、言った。
「ウォーター!涼!目を覚ましてっ!!」
「私は、アイス!」
「君は、ウォーター!アースセイバーウォーターだよ!!」
「うるさい」
アイスは、ウイングに殴りかかる。的確なパンチは、ウイングにダメージを与える。ファイアは言った。
「今のウォーターには、何も届かないようだな!」
ウイングはかなしげな目をし、言った。
「けど!これは!涼だよ!ウォーターだよ!」
しかし、ウイングは今まで感じた事のないダメージを自覚。
「ウォーター!やめて!目を覚まして!!」
そんな様子に、ファイアは言った。
「ウイング!アイスから離れろ!!」
その瞬間だった。アイスがこう言った。
「クラッシュ・アイス・スピアー・スノー」
氷の棘が無数に生えている大量の槍が吹雪の如くその場に舞う。ウイングはその防御力でそれに当たっても辛うじて踏みとどまる事が出来た。そして、ファイアは辛くもそれを避ける事が出来た。その光景に、オレンジは言った。
「もう、役立たず!」
そう言い終わると、オレンジはアイスの首根っこを掴んだ。バイオレットは言った。
「『教育』するか」
そして、バイオレットとオレンジはアイスのままの涼を連れ去った。そして、それを感じ取ったように、涼のセイブ・ストーンがウイングとファイアの元に。ウイングはそれを手にした。その瞬間、変身は解けた。勇はその両手で涼のセイブ・ストーンを握りしめてこう言った。
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