27 / 40
26話
しおりを挟む
◆人の盾
それからというものの、勇は、「晴」に挨拶しつつ、登校し続ける日々を過ごす。
そんな中の週末、勇は「秘密ソルジャーシリーズ」のグッズや「晴」に見守られながら、自室にて宿題をしていた。すると、セイブ・ストーンが反応する。
「まず。また何かやってる!」
宿題は途中だったが、勇はそれを放り投げて家を飛び出す。そして、自転車に乗り、セイブ・ストーンを追った。全速力で自転車を漕ぐ勇の視線の先に、走る愛の姿が。
「愛ちゃん!!」
勇は自転車を急停止させ、言った。
「乗って!!」
「うん!!」
愛は勇の後ろに乗り込む。勇は再び自転車を漕ぎ始める。そんな2人を2人のセイブ・ストーンが先導する。そして、辿り着いた先には、バイオレットとオレンジ。勇と愛は急ぎ自転車を降り、セイブ・ストーンを手にこう声を揃える。
「解き放て!守りの力!!」
そして、矢継ぎ早に名乗る。
「三種の力は最強の証!アースセイバートリプル!!」
「輝く花は広がる微笑み!アースセイバーフラワー!!」
2人は、この掛け声で自らたちに気合いを入れた。
「レッツ!セイブ!!」
アースセイバーとプラネットクラッシャーの間には、カラミティがわらわらいた。カラミティは、通行人を捕まえて襲っていた。
「やぁめぇろぉ!カラミティ!!」
「カラミティ!その人たちを離して!!」
そして、トリプルとフラワーは、カラミティにそれぞれの拳をお見舞いする。トリプルの拳に倒され、フラワーの拳に消滅していくカラミティ。しかし、確実に人々は傷つき、アスファルトはひび割れる。フラワーは言った。
「後で、なおしてあげなきゃ」
「そうだね!その前に、カラミティを全部倒さなきゃ!!」
そして、トリプルとフラワーは、カラミティを全て排除する事が出来た。トリプルは、バイオレットとオレンジに対抗し、フラワーは通行人の傷の治療と道路の補修に2人とも必殺技を出そうとした。しかし、トリプルもフラワーも「えっ」という短い声を上げ、全ての動きを止めた。
視線の先には、人骨をあしらった服を着た男性。そして、長髪の女性が現れていた。トリプルは悲鳴のような声を上げる。
「芯さん?」
そして、フラワーは叫んだ。
「お、お姉ちゃん?」
トリプルが久しぶりに顔を見た洞口芯は、オレンジを庇うように佇んでいた。そして、フラワーが久しぶりに顔を見た芽室累は、バイオレットを庇うように佇んでいた。バイオレットは言う。
「下手な真似したら、こいつらを殺すぜ?」
オレンジも続いた。
「地球人を、殺したくないわよね?」
動揺の声が止まらないトリプルとフラワー。
「芯さん!何で!!」
「お姉ちゃん!どうして!!」
しかし、芯も累もその問いには答えず、別な事を発言した。芯は言う。
「勇くん、今日からは、オレンジをやらせないよ」
累は言った。
「愛?バイオレットたちに、倒されて?」
棒立ちになるトリプルとフラワー。そんな2人を嘲り笑うオレンジは、芯と累の首にその腕を回し、人の盾にした。そして、言った。
「私たちにも、盾が出来たわ、トリプル。あんたの盾、羨ましかったのよ?」
全く羨ましそうでもない声色で言われたその言葉にトリプルは返した。
「2人を!解放して!!」
バイオレットは、芯と累をオレンジに任せ、無抵抗になっているトリプルとフラワーに殴りかかった。そして、言った。
「残念だな!奴らは望んでここにいる!!解放などあり得ない!!」
「嘘!お姉ちゃん!!」
フラワーの悲鳴のような声が響き渡る。トリプルが叫ぶ。
「どうして?芯さん!累さん!」
芯は微笑むだけ、累はぼうっとそれを見ているだけだった。バイオレットは笑いながらこう言った。
「今のお前らなら、やれるかもな!!」
そして、バイオレットはこう続けた。
「ターゲット・デモリッション!」
そして、バイオレットに遅れてオレンジも言った。
「ターゲット・デモリッション!」
その攻撃に、トリプルとフラワーは倒れた。その光景を見ながら、バイオレットは充になり、累を連れ、オレンジは彩になり、芯を連れ姿を消した。累は幸せそうな声を上げた。
「充さん、素敵」
芯も言った。
「彩さん、勝ってよかった」
◆黄色へ伸ばされる指
取り残されたトリプルは、変身解除。勇になった。一方、未だフラワーのままの愛は、立ち上がり、力なく言った。
「セイブ・フラワー・ストーム・ヒーリング」
フラワーからの花びらは、傷ついた人々の傷を治し、アスファルトのひび割れを元通りにした。それを感知したのか、フラワーも変身解除と相成った。その愛の目には涙。勇はそんな愛に歩み寄り、抱きしめた。その勇の目にも、涙が浮かんでいた。愛の戸惑いの声が響く。
「お姉ちゃん」
勇の悔しそうな声が響く。
「ま、守れなかった」
しばらく涙の奔流に身を委ねた後、勇と愛は勇の自転車にて帰宅。2人の間には、会話はなかった。
部屋に戻った勇。やりかけだった宿題に取り掛かるが、身が入らない。一旦「晴」を見つめ、何とかそれを片付けると、「晴」に話しかけた。
「晴、僕、どうしよう?」
翌日から、勇は「晴」を持ち歩くようになった。勇はこう言い聞かせた。
「ごめん、壊したくない。失くしたくない。けど、僕には、これしかないんだ」
勇は以前のように袋には入れず、むき出しのまま黄色のボールを持ち運んだ。ボールは、勇の傍らで外からの光を受け、輝いていた。さすがに授業中は一旦荷物の中に入れたが、休み時間となると、勇はボールをいそいそと取り出す。
その事は、愛も気づいていて、ある日声をかけた。
「晴、くん」
愛の指先は、ボールを撫でる。勇も追いかけるようにボールを指でなぞった。それからというものの、勇と愛は交互に黄色いボールをその手に持ち、下校する日々を過ごした。
それからというものの、勇は、「晴」に挨拶しつつ、登校し続ける日々を過ごす。
そんな中の週末、勇は「秘密ソルジャーシリーズ」のグッズや「晴」に見守られながら、自室にて宿題をしていた。すると、セイブ・ストーンが反応する。
「まず。また何かやってる!」
宿題は途中だったが、勇はそれを放り投げて家を飛び出す。そして、自転車に乗り、セイブ・ストーンを追った。全速力で自転車を漕ぐ勇の視線の先に、走る愛の姿が。
「愛ちゃん!!」
勇は自転車を急停止させ、言った。
「乗って!!」
「うん!!」
愛は勇の後ろに乗り込む。勇は再び自転車を漕ぎ始める。そんな2人を2人のセイブ・ストーンが先導する。そして、辿り着いた先には、バイオレットとオレンジ。勇と愛は急ぎ自転車を降り、セイブ・ストーンを手にこう声を揃える。
「解き放て!守りの力!!」
そして、矢継ぎ早に名乗る。
「三種の力は最強の証!アースセイバートリプル!!」
「輝く花は広がる微笑み!アースセイバーフラワー!!」
2人は、この掛け声で自らたちに気合いを入れた。
「レッツ!セイブ!!」
アースセイバーとプラネットクラッシャーの間には、カラミティがわらわらいた。カラミティは、通行人を捕まえて襲っていた。
「やぁめぇろぉ!カラミティ!!」
「カラミティ!その人たちを離して!!」
そして、トリプルとフラワーは、カラミティにそれぞれの拳をお見舞いする。トリプルの拳に倒され、フラワーの拳に消滅していくカラミティ。しかし、確実に人々は傷つき、アスファルトはひび割れる。フラワーは言った。
「後で、なおしてあげなきゃ」
「そうだね!その前に、カラミティを全部倒さなきゃ!!」
そして、トリプルとフラワーは、カラミティを全て排除する事が出来た。トリプルは、バイオレットとオレンジに対抗し、フラワーは通行人の傷の治療と道路の補修に2人とも必殺技を出そうとした。しかし、トリプルもフラワーも「えっ」という短い声を上げ、全ての動きを止めた。
視線の先には、人骨をあしらった服を着た男性。そして、長髪の女性が現れていた。トリプルは悲鳴のような声を上げる。
「芯さん?」
そして、フラワーは叫んだ。
「お、お姉ちゃん?」
トリプルが久しぶりに顔を見た洞口芯は、オレンジを庇うように佇んでいた。そして、フラワーが久しぶりに顔を見た芽室累は、バイオレットを庇うように佇んでいた。バイオレットは言う。
「下手な真似したら、こいつらを殺すぜ?」
オレンジも続いた。
「地球人を、殺したくないわよね?」
動揺の声が止まらないトリプルとフラワー。
「芯さん!何で!!」
「お姉ちゃん!どうして!!」
しかし、芯も累もその問いには答えず、別な事を発言した。芯は言う。
「勇くん、今日からは、オレンジをやらせないよ」
累は言った。
「愛?バイオレットたちに、倒されて?」
棒立ちになるトリプルとフラワー。そんな2人を嘲り笑うオレンジは、芯と累の首にその腕を回し、人の盾にした。そして、言った。
「私たちにも、盾が出来たわ、トリプル。あんたの盾、羨ましかったのよ?」
全く羨ましそうでもない声色で言われたその言葉にトリプルは返した。
「2人を!解放して!!」
バイオレットは、芯と累をオレンジに任せ、無抵抗になっているトリプルとフラワーに殴りかかった。そして、言った。
「残念だな!奴らは望んでここにいる!!解放などあり得ない!!」
「嘘!お姉ちゃん!!」
フラワーの悲鳴のような声が響き渡る。トリプルが叫ぶ。
「どうして?芯さん!累さん!」
芯は微笑むだけ、累はぼうっとそれを見ているだけだった。バイオレットは笑いながらこう言った。
「今のお前らなら、やれるかもな!!」
そして、バイオレットはこう続けた。
「ターゲット・デモリッション!」
そして、バイオレットに遅れてオレンジも言った。
「ターゲット・デモリッション!」
その攻撃に、トリプルとフラワーは倒れた。その光景を見ながら、バイオレットは充になり、累を連れ、オレンジは彩になり、芯を連れ姿を消した。累は幸せそうな声を上げた。
「充さん、素敵」
芯も言った。
「彩さん、勝ってよかった」
◆黄色へ伸ばされる指
取り残されたトリプルは、変身解除。勇になった。一方、未だフラワーのままの愛は、立ち上がり、力なく言った。
「セイブ・フラワー・ストーム・ヒーリング」
フラワーからの花びらは、傷ついた人々の傷を治し、アスファルトのひび割れを元通りにした。それを感知したのか、フラワーも変身解除と相成った。その愛の目には涙。勇はそんな愛に歩み寄り、抱きしめた。その勇の目にも、涙が浮かんでいた。愛の戸惑いの声が響く。
「お姉ちゃん」
勇の悔しそうな声が響く。
「ま、守れなかった」
しばらく涙の奔流に身を委ねた後、勇と愛は勇の自転車にて帰宅。2人の間には、会話はなかった。
部屋に戻った勇。やりかけだった宿題に取り掛かるが、身が入らない。一旦「晴」を見つめ、何とかそれを片付けると、「晴」に話しかけた。
「晴、僕、どうしよう?」
翌日から、勇は「晴」を持ち歩くようになった。勇はこう言い聞かせた。
「ごめん、壊したくない。失くしたくない。けど、僕には、これしかないんだ」
勇は以前のように袋には入れず、むき出しのまま黄色のボールを持ち運んだ。ボールは、勇の傍らで外からの光を受け、輝いていた。さすがに授業中は一旦荷物の中に入れたが、休み時間となると、勇はボールをいそいそと取り出す。
その事は、愛も気づいていて、ある日声をかけた。
「晴、くん」
愛の指先は、ボールを撫でる。勇も追いかけるようにボールを指でなぞった。それからというものの、勇と愛は交互に黄色いボールをその手に持ち、下校する日々を過ごした。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~
shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて
無名の英雄
愛を知らぬ商人
気狂いの賢者など
様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。
それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま
幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる