セイバー

森田金太郎

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25話

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◆許可
 翌朝、勇は部屋にて黄色のボールを手に呟いた。

「これ、戦ってる時に持ってもらう人がいなくなっちゃった。家に置いておくしかないよなぁ。ごめん、晴、留守番しててね?」

 そして、勇は「1人」で登校して行き、教室に入るなり、愛にメモを渡した。

「ね!これから愛ちゃんが変身したら、言ってみない?」

 愛は、そのメモを見つつ次第に微笑んだ。

「涼くんと晴くんも言ってたもんね?私にも『これ』、ありがとう」

 勇は、愛がそれを受け入れてくれた事に笑顔になり、自らの席に着いた。

 勇は、その日の日程をこなしているうちに、愛を見て、ある懸念が生まれた。そして、放課後、愛に再び話しかけた。

「ねぇ、明日休みじゃん?愛ちゃんの家、行っていい?」
「明日?」
「うん、アースセイバーになったからさ、僕の仲間になって戦う事、愛ちゃんの家族に許してもらおうって思って。ほら、僕の場合、怒られちゃったからさ」

 愛は、こう返した。

「私、家に言ってなかった。戦った事」
「じゃあさ、僕と一緒に言おう?」
「うん」

 そして、翌日の休みの日。勇の姿は愛の自宅にあった。愛の両親は、どこか心ここにあらずという印象であった。一方、恭は、勇の来訪にニコニコしていた。緊張感溢れる愛の傍らで、勇は芽室家の面々にこう言った。

「あの、僕が変な人たちと戦ってる事はみんな知ってるよね?実は、愛ちゃん、戦えるようになったんだよ!愛ちゃんを僕の仲間にしていい?」

 愛の両親は、驚いた顔をした。愛の父親は言った。

「それは知ってるよ?けど、愛が加わる事ないと思うなぁ」

 母親も続く。

「今まで、勇くんたちがやってきたんでしょう?」

 勇はそれに返した。

「そうだけど、僕1人になっちゃったんだよ」

 それに対して、愛の両親は思案の表情を見せた。愛は、その2人の顔を見た後、下を向き言った。

「恭」

 恭はそれに反応。

「えっ?何?愛姉ちゃん?」

 愛は首を横に振りながら言った。

「違う、呼んだんじゃないよ。ねぇ、お父さん、お母さん、覚えてるよね?その変な人たちに恭が捕まっちゃった事」

 愛の両親ははっとした。愛はたたみかけた。

「その変な人たちと、私は戦うの。勇くんと一緒に戦いたいの」

 母親は言った。

「そうだったわ。わかったわ。やって来なさい」

 父親は言った。

「勇くん、愛をよろしくね?」

 勇は元気な声で返した。

「うん!わかった!!」

 恭は言った。

「わー!愛姉ちゃんが勇兄ちゃんの仲間だ!!」

 愛は、伏し目がちに言った。

「ありがとう、お父さん、お母さん、頑張る」

 そして、勇は芽室家の玄関をくぐった。愛はそれを追いかけて来た。

「愛ちゃん?」
「ごめん、ちょっとだけ外に行きたくて」
「ふーん。わかった!ちょっと散歩していこ?」

 愛は頷き、勇の隣で歩き始めた。

「愛ちゃん、これから頑張ろうね?」

 勇は、愛に言葉をかけたが、愛は答えなかった。勇は愛の顔を覗き込んだ。すると、愛の目に涙が。

「えっ!ど、どうしたのっ?愛ちゃん?」
「ごめん、やっぱり、だなって、思って」

 勇は、戸惑った。しかし、なんとなく察した。愛は涙のまま、言葉を続ける。

「恭の名前出したら、すぐにオッケーになった。やっぱり、お父さんとお母さんは、私より恭の方が大事なんだなって」
「無理はないと思うけど」
「そうだよね?それに、今、お姉ちゃんがいなくなっちゃってるから、それどころじゃないんだよね。だから、私戦えるようになった事、お父さんとお母さんに言えなかった」
「累さん、また?」

 愛は頷く。勇は続けた。

「愛ちゃんは、愛ちゃんのお父さんお母さんの本当の娘なのに、一番大事にされてないよね。でも、それなのに、恭くんを大事にしたり、累さんを心配したりしてる愛ちゃん、すっごく強いよ!僕なんかよりね?」

 愛は、ひたすら落涙する。その涙を勇は拭ってやりつつ、こう言った。

「そんな強い愛ちゃんが仲間になってよかった!よろしくね!愛ちゃん!!」

 愛は、力強く頷いた。

◆試しに
 それから、数日後。勇と愛は、一緒に下校していた。特に言葉を交わすことなく歩き続けたが、2人のセイブ・ストーンが反応した。荷物の中から飛び出し、2人を先導し始める。勇は言った。

「愛ちゃん!頑張ろうね!!」
「うん!頑張る、勇くん!!」

 勇と愛はセイブ・ストーンを追いかけ走った。辿り着いたのは、知らない街並み。その2人の視線の先には、カラミティたち。もう既に周辺のビルに集り、徐々に建物を壊し始めていた。落ちるガラス片やコンクリート片などが地面を叩きつけている中、勇と愛は、こう声を揃えた。

「解き放て!守りの力!!」

 赤の戦士が名乗る。

「三種の力は最強の証!アースセイバートリプル!!」

 緑の戦士が名乗る。

「輝く花は広がる微笑み!アースセイバーフラワー!!」

 そして戦士は声を揃えた。

「レッツ!セイブ!!」

 トリプルとフラワーの存在に気づいたバイオレットとオレンジ。バイオレットは言った。

「厄介なのが来たぞ!カラミティ、アースセイバーフラワーを叩け!!」

 カラミティたちは、ビル破壊をやめ、フラワーの元へと突進してきた。トリプルは叫ぶ。

「フラワーを守って!僕の盾っ!!」

 先手必勝で展開されたトリプルの盾は、フラワーを守った。それにひと安心したトリプルは、バイオレットとオレンジの元に。

「フラワーを!やらせない!!」

 そして、トリプルは何度も飛び上がりながら、バイオレットとオレンジに自らの拳を水や炎と共にお見舞いした。しかし、バイオレットとオレンジはニヤニヤしていた。バイオレットは言った。

「カラミティ!そんな盾は破壊しろ!」

 オレンジも続けて言う。

「そうすれば、フラワーを叩けるわ!」

 1体のカラミティは、トリプルの盾をその身を犠牲にしつつ破壊し、残ったカラミティが次々にフラワーに集る。フラワーは悲鳴を上げた。

 その悲鳴にトリプルは一旦バイオレットとオレンジの元からフラワーに集るカラミティの所に移動。1体ずつ拳で倒していく。そんな中、トリプルはフラワーに声をかけた。

「フラワー!カラミティ、こわいよね?外から僕、助けるから、信じて!!」

 フラワーは、そんなトリプルの声に力をもらい、こう言った。

「私、アースセイバーになったんだもん!戦わなきゃね!!」

 そして、フラワーはカラミティにその拳を叩きつけた。すると、カラミティは一瞬で消滅。オレンジは驚愕の声を上げた。

「な!なんてすって?」

 フラワーとカラミティの間にようやく空間が出来た。それを認めたトリプルは言った。

「フラワー!飛んで!飛べるはず!!」

 フラワーはそれを聞き、飛んだ。バイオレットは言った。

「カラミティ!追え!フラワーを!!」

 カラミティは飛ぼうとした。しかし、トリプルの水の洗い流しと炎の焼き尽くしがカラミティを足止めする。

 一方、飛んだ事でフラワーは破壊された建物がよく見えた。そして、こう呟いた。

「私のあの技、人の傷しか治せない物なのかな?試してみようかな?」

 そして、フラワーは意を決した。

「セイブ・フラワー・ストーム・ヒーリング!」

 この日の花びらの乱舞は、建物を包んだ。そして、その建物はカラミティの攻撃などなかったかのように元通りの姿を取り戻した。バイオレットとオレンジは驚くばかり。バイオレットが苦々しそうに言った。

「破壊出来たと思ったら、これか!」

 トリプルは言った。

「凄い!フラワー!!」

 そして、トリプルはバイオレットとオレンジの方を見て、こう言った。

「僕も負けてられない!ちょっと試したい事があるんだ!付き合って!!」

 そして、トリプルは必殺技を繰り出した。

「セイブ・ウォーター・クロス・スプラッシュ!セイブ・ファイア・ソード・レイズ!」

 十字の水が発生。それは、回転しながらバイオレットとオレンジの元へ接近し、弾けた。同時に、炎をまとった剣が日光のように大量に降り注いだ。いずれもバイオレットとオレンジに深刻なダメージを与える事が出来、残っていたカラミティを消滅させる事も出来た。

「私たち、もう、何も出来ないわ」

 オレンジのそんな声が弱々しく響いた。トリプルは言った。

「ふぅっ!大成功だ!!」
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