セイバー

森田金太郎

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32話

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◆偵察
 翌日、学校は休みであった。勇は、パトロールのような事をしようと朝食後、すぐに外に繰り出して行った。

「こんなんで、罪滅ぼし出来るとは思わないけど、何かやりたい。やらせて」

 誰が聞くものでもない決意が街の中に消えて行った。傍らに浮遊する黄色の繭さえもそれを聞いていないようだった。

 行き交う人々は、勇とは正反対の笑顔を浮かべている。

「僕、みんなの事、守るよ」

 そう言った瞬間だった。勇は、広場に治りかけの傷を抱えたバイオレットとオレンジの姿を見た。勇は激しく反応するセイブ・ストーンを握り締め言った。

「解き放て!守りの力!!三種の力は最強の証!アースセイバートリプル!!レッツ!セイブ!!」

 矢継ぎ早に言ったトリプルの声に、オレンジが反応した。

「1人?まぁ、目標はあんた1人だから、丁度いいけど」
「僕に何の用だい?」

 バイオレットは、トリプルに肉薄し、万全ではないにしろ、強いパンチを見舞わせた。

「『あれ』をやれよ。オーバーフローを」
「もう二度とやらないっ!」

 トリプルもバイオレットにパンチで反撃。そんな中ではあったが、トリプルは言った。

「バイオレットとオレンジだけなんだね!今日は!!」

 それに、オレンジは返し、バイオレットも続けた。

「それは、あんたも同じでしょう?あの女と、赤ん坊がいないわよね?」
「親父たちは、今日の作戦には必要ないからな!お前を煽るだけ煽って、オーバーフローをやらかしてもらえば、俺様たちがわざわざ『ターゲット・デモリッション』をやる必要はなくなるわけだ!!」
「僕は決めたんだ!あの技は何があってもやらない!封印だよ!!」

 オレンジが再び口を開く。

「やりなさいよ。丁度、回復の女がいないんだから!」

 すると、繭があった方向から声が聞こえた。

「ねむゆたにぇは、むげんにょみやい!あーしゅせいばぁしぃじょ!!」
「し、シードっ?僕と、戦ってくれるのっ?」
「ふやわー、くりゅ。」
「フラワーが?」

 トリプルは「来る筈がない」と思ったが、前回シードの言う事を聞かなかった経験から、こう言った。

「わかった!フラワーを待つよ!!教えてくれてありがとう!シード!!」

 シードは、それを聞き届けると、繭に戻って行った。トリプルは、それを見届け、気合いを入れた。

「今日は、バイオレットとオレンジだけを倒せばいい!行くよ!!」

 そして、バイオレットとオレンジに交互にパンチを見舞わせた。すると、この声がトリプルの耳に届く。

「輝く花は広がる微笑み!アースセイバーフラワー!!」
「フラワー!来てくれてありがとう!!」

 フラワーの到着に、バイオレットは言った。

「来なくていい奴が、きやがったな!カラミティ!!」

 カラミティは、トリプルとフラワーを取り囲む。フラワーは言った。

「カラミティは、私が消すよ!トリプルは、バイオレットとオレンジを!!」
「うん!」

 そして、フラワーは、カラミティを次々に消していく。トリプルは再びバイオレットとオレンジと交戦する。やがて、トリプルは叫んだ。

「セイブ・ウイング・チェイス・ニードル!!」

 更に、トリプルは言った。

「水の力!炎の力!僕の針に、力を!!」

 トリプルの翼からの針は、水をまとったり、炎をまとったりしながら、バイオレットとオレンジを倒した。同時に、カラミティは消え去った。

◆共に戦う決意
 脅威は去った。そして、変身が解けた勇と愛は、気まずく並び立つ。沈黙が永遠に続くかと思われた。しかし、勇は意を決して言った。

「愛、ちゃん、来てくれてありがとう」

 愛は、どう返していいかわからないような顔をして勇を見た。やがて、口ごもりながら話をし始める。

「お、お礼、なんて、要らない。私、アースセイバーだもん。守らなきゃいけないんだよね」

 勇は、頷いた。それを見つつ、愛は言った。

「守る為に来た。あの日、私、シードの言う事聞いてたら、勇くんも怒らなくて済んだ。だから、あの日は、私が悪い事したの。なのに、勇くんの事責めちゃった。ごめん、ごめん、ごめん」

 愛は、その瞳を潤ませた。勇は、慌てて言った。

「あの日は、僕もどうかしてた!だから、愛ちゃん、自分を責めないで!!」

 愛は、落涙しつつも、出来る精一杯の笑顔を作った。そして、こう返した。

「お互い、悪いって事にしよう?」
「愛ちゃん。うん、そうしようか。その罪滅ぼしに、これからも僕は戦うよ」
「私も、そうするよ。また、よろしくね?勇くん?」
「勿論だよ!こっちこそよろしく!愛ちゃん!!」

 勇と愛は、決意に溢れた目でお互いを見る。その顔には笑みが溢れた。それをシードが入る繭が喜ばしそうに揺れながら見ていた。
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