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34話
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◆打診
翌週の放課後の事だった。12月の冷たい空気の中、勇は自らを監視し続ける芯に言った。
「ねぇ、芯さん。バイオレットたちに会わせてくれない?」
「彩さんを、殺す決意を固めたって事かい?」
「違うよ。話をしたいだけだよ」
芯は、警戒の表情を崩さない。勇はその表情を見て、少し考えた。そして、口を開く。
「もし、僕が芯さんにとって『嫌な事』をしたら、僕に芯さんが考えられる僕が『嫌な事』していいよ」
芯は、揺れる目で思案した。そして、言った。
「君の仲間、あの女の子に酷い事、しようかな?」
「わかったよ、芯さん。愛ちゃんと一緒に行くね?」
日を改め、週末の休みの日、勇は愛と待ち合わせをして、プラネットクラッシャーのアジトに向かった。傍らには、シードの入った繭。やがてたどり着いた大きめの白い邸宅を目の前にして勇は言った。
「あのアパートとは違うね?」
「そうだね」
短く芯は返し、アジトへと勇と愛を引き入れた。そこには、ソファにてくつろぐ充と彩、そして、家事に忙しくしている累の姿があった。芯は言った。
「客を、連れてきたよ」
充は言った。
「何の話だ?アースセイバー?」
勇は返す。
「なんて言っていいかわからないけど、僕たち、戦うのやめない?」
その場にいる人々、全員が戸惑いの表情を浮かべた。勇は、その中で、彩を見た。そして、心の中でこう言った。「この人を、死なせたくない。芯さんの為にも」と。そして、口を開く。
「バイオレット、オレンジ、君たちをもうこれ以上傷つけたくない。僕は、君たちを守りたくなったんだよ!だけど、地球を壊すって君たちが言うのなら、僕は、君たちを傷つけなきゃいけない。だから、もう、地球を壊そうとしないで!僕たちが戦わない事で、君たちを守りたいんだ!ねえ!バイオレット!!オレンジ!!」
充と彩の目が揺れるだけ揺れる。彩が言った。
「何を言うのよ!私たちは、地球を壊しに来た!!それを放棄しろって言うの?」
「そうだよ」
勇の強い声色が響く。充は言った。
「どこまでもお前は、特殊な奴だ!そこが面白い所ではあったが、それは受け入れられない!!」
「駄目?」
勇の打診を拒絶するように、充はバイオレットに、彩はオレンジに変身した。
◆破壊者集合
「バイオレット!オレンジ!駄目だよ!!」
勇の必死な叫びが邸宅に響く。それに呼ばれたように、2人の影が。
「何の騒ぎだ?」
勝が2階から降りてくる。そして、その背中を追うようにして、環が出てきた。
「お姉ちゃん、戦うの?」
勇は驚いた。
「小木、環さんっ?」
「久しぶりー。あ、とりあえず、小木環って名前、やめたから。時任環にしたの!よろしくね!!」
環は、オレンジの傍に行くと、ブルーに変身し、言葉を続けた。
「3人で、アースセイバー潰しちゃお?」
オレンジが返した。
「そうね。あんたの『ミッドナイト・ティアーズ』は百人力よ」
もはや戦いは避けられない。勇は言った。
「愛ちゃん、ごめん、戦おう」
「うん」
「解き放て!守りの力!!」
「三種の力は最強の証!アースセイバートリプル!!」
「輝く花は広がる微笑み!アースセイバーフラワー!!」
「レッツ!セイブ!!」
そして、トリプル、フラワー、バイオレット、オレンジ、ブルーは、邸宅の外に出ていった。それを追いかける声が。
「ねむゆたにぇは、むげんにょみやい!あーしゅせいばぁしぃじょ!!」
ブルーは言った。
「話に聞いたけど、メンバー変わっちゃったのね?でも、何人でも私の涙で潰してやるんだから!」
そして、ブルーは「ミッドナイト・ティアーズ」を見舞う為に涙を流し始めた。
「やっぱり、こわいよぉ。ジャイアント・キング・デストロイ様ぁ」
そんなブルーの言葉が紡がれているうちに、シードが言った。
「といぷゆ、みえなくなりゅ。ふやわー、みえなくなりゅ。」
「また、僕、見えなくなる?」
「今度は、私も?」
そう話していると、ブルーの涙にて、トリプルとフラワー、シードの視力が奪われた。フラワーは言った。
「見えないっ。あの時、トリプルたちは、こんな感じだったのね?」
「うん!そうだよ!!」
トリプルとフラワーのやり取りの後、シードが声を上げる。
「みえにゃい!みえにゃい!でみょ、ふやわーにょ、はにゃで、みえりゅ!!」
「そうだね!」
しかし、そこで勝が叫ぶ。
「もたつくな!バイオレット!オレンジ!今のうちに『ターゲット・デモリッション』だ!!」
その一声で、バイオレットとオレンジは声を揃えた。
「ターゲット・デモリッション!!」
紫と橙色の塊がトリプル、フラワー、シードに迫る。しかし、フラワーは臆せずに叫んだ。
「セイブ・フラワー・ストーム・ヒーリング!」
その花びらは、フラワー自身と、トリプル、シードの視力を回復させた。間髪入れずにトリプルは叫ぶ。
「セイブ・ウイング・ミラー・シールド!!」
見事に、トリプルから返されたターゲット・デモリッションはバイオレット、オレンジ、ブルーを倒した。アジト内部にいた芯と累も飛び出して来る。累は言った。
「充さん!」
「くそっ、押しきれねぇ!」
芯は血相を変えて彩を抱きしめた。
「彩さん!彩さん!!」
「芯、私は、大丈夫よ」
◆迷走への自覚
勇と愛は、繭に入ったシードと共に帰路につく。勇は愛との別れ際、こう言った。
「なんだか、僕、迷走してるね。ごめん、色々巻き込んで」
「本当だよ。びっくりした。勇くんが『戦わない』って言ったのは」
「ごめん。やっぱり、戦わなきゃ、なんだね」
「でも、色々考えたんだよね?それに、私より長く戦ってきた勇くんの考えだから、駄目って言わない。これから、どうなるかわからないけど、一緒に頑張っていこう?」
「ありがとう、愛ちゃん」
そして、2人はそれぞれの自宅へと帰って行った。繭は、勇について行った。
翌週の放課後の事だった。12月の冷たい空気の中、勇は自らを監視し続ける芯に言った。
「ねぇ、芯さん。バイオレットたちに会わせてくれない?」
「彩さんを、殺す決意を固めたって事かい?」
「違うよ。話をしたいだけだよ」
芯は、警戒の表情を崩さない。勇はその表情を見て、少し考えた。そして、口を開く。
「もし、僕が芯さんにとって『嫌な事』をしたら、僕に芯さんが考えられる僕が『嫌な事』していいよ」
芯は、揺れる目で思案した。そして、言った。
「君の仲間、あの女の子に酷い事、しようかな?」
「わかったよ、芯さん。愛ちゃんと一緒に行くね?」
日を改め、週末の休みの日、勇は愛と待ち合わせをして、プラネットクラッシャーのアジトに向かった。傍らには、シードの入った繭。やがてたどり着いた大きめの白い邸宅を目の前にして勇は言った。
「あのアパートとは違うね?」
「そうだね」
短く芯は返し、アジトへと勇と愛を引き入れた。そこには、ソファにてくつろぐ充と彩、そして、家事に忙しくしている累の姿があった。芯は言った。
「客を、連れてきたよ」
充は言った。
「何の話だ?アースセイバー?」
勇は返す。
「なんて言っていいかわからないけど、僕たち、戦うのやめない?」
その場にいる人々、全員が戸惑いの表情を浮かべた。勇は、その中で、彩を見た。そして、心の中でこう言った。「この人を、死なせたくない。芯さんの為にも」と。そして、口を開く。
「バイオレット、オレンジ、君たちをもうこれ以上傷つけたくない。僕は、君たちを守りたくなったんだよ!だけど、地球を壊すって君たちが言うのなら、僕は、君たちを傷つけなきゃいけない。だから、もう、地球を壊そうとしないで!僕たちが戦わない事で、君たちを守りたいんだ!ねえ!バイオレット!!オレンジ!!」
充と彩の目が揺れるだけ揺れる。彩が言った。
「何を言うのよ!私たちは、地球を壊しに来た!!それを放棄しろって言うの?」
「そうだよ」
勇の強い声色が響く。充は言った。
「どこまでもお前は、特殊な奴だ!そこが面白い所ではあったが、それは受け入れられない!!」
「駄目?」
勇の打診を拒絶するように、充はバイオレットに、彩はオレンジに変身した。
◆破壊者集合
「バイオレット!オレンジ!駄目だよ!!」
勇の必死な叫びが邸宅に響く。それに呼ばれたように、2人の影が。
「何の騒ぎだ?」
勝が2階から降りてくる。そして、その背中を追うようにして、環が出てきた。
「お姉ちゃん、戦うの?」
勇は驚いた。
「小木、環さんっ?」
「久しぶりー。あ、とりあえず、小木環って名前、やめたから。時任環にしたの!よろしくね!!」
環は、オレンジの傍に行くと、ブルーに変身し、言葉を続けた。
「3人で、アースセイバー潰しちゃお?」
オレンジが返した。
「そうね。あんたの『ミッドナイト・ティアーズ』は百人力よ」
もはや戦いは避けられない。勇は言った。
「愛ちゃん、ごめん、戦おう」
「うん」
「解き放て!守りの力!!」
「三種の力は最強の証!アースセイバートリプル!!」
「輝く花は広がる微笑み!アースセイバーフラワー!!」
「レッツ!セイブ!!」
そして、トリプル、フラワー、バイオレット、オレンジ、ブルーは、邸宅の外に出ていった。それを追いかける声が。
「ねむゆたにぇは、むげんにょみやい!あーしゅせいばぁしぃじょ!!」
ブルーは言った。
「話に聞いたけど、メンバー変わっちゃったのね?でも、何人でも私の涙で潰してやるんだから!」
そして、ブルーは「ミッドナイト・ティアーズ」を見舞う為に涙を流し始めた。
「やっぱり、こわいよぉ。ジャイアント・キング・デストロイ様ぁ」
そんなブルーの言葉が紡がれているうちに、シードが言った。
「といぷゆ、みえなくなりゅ。ふやわー、みえなくなりゅ。」
「また、僕、見えなくなる?」
「今度は、私も?」
そう話していると、ブルーの涙にて、トリプルとフラワー、シードの視力が奪われた。フラワーは言った。
「見えないっ。あの時、トリプルたちは、こんな感じだったのね?」
「うん!そうだよ!!」
トリプルとフラワーのやり取りの後、シードが声を上げる。
「みえにゃい!みえにゃい!でみょ、ふやわーにょ、はにゃで、みえりゅ!!」
「そうだね!」
しかし、そこで勝が叫ぶ。
「もたつくな!バイオレット!オレンジ!今のうちに『ターゲット・デモリッション』だ!!」
その一声で、バイオレットとオレンジは声を揃えた。
「ターゲット・デモリッション!!」
紫と橙色の塊がトリプル、フラワー、シードに迫る。しかし、フラワーは臆せずに叫んだ。
「セイブ・フラワー・ストーム・ヒーリング!」
その花びらは、フラワー自身と、トリプル、シードの視力を回復させた。間髪入れずにトリプルは叫ぶ。
「セイブ・ウイング・ミラー・シールド!!」
見事に、トリプルから返されたターゲット・デモリッションはバイオレット、オレンジ、ブルーを倒した。アジト内部にいた芯と累も飛び出して来る。累は言った。
「充さん!」
「くそっ、押しきれねぇ!」
芯は血相を変えて彩を抱きしめた。
「彩さん!彩さん!!」
「芯、私は、大丈夫よ」
◆迷走への自覚
勇と愛は、繭に入ったシードと共に帰路につく。勇は愛との別れ際、こう言った。
「なんだか、僕、迷走してるね。ごめん、色々巻き込んで」
「本当だよ。びっくりした。勇くんが『戦わない』って言ったのは」
「ごめん。やっぱり、戦わなきゃ、なんだね」
「でも、色々考えたんだよね?それに、私より長く戦ってきた勇くんの考えだから、駄目って言わない。これから、どうなるかわからないけど、一緒に頑張っていこう?」
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