ブンボル王国の恋事情

森田金太郎

文字の大きさ
12 / 67

12甘:夫婦の作戦

しおりを挟む
エリザータは、1週間ぶりの帰宅を果たした。使用人たちが出迎えてくれたが、アルヴェードの姿はない。仕事の時間帯だったからだ。

「アルヴェード、アルヴェード、今すぐ会いたいわ」

 エリザータは、呟く。しかし、夫との再会までだいぶ時間を要した。

 夜遅くの時間だった。アルヴェードは帰宅した。エリザータは、玄関近くの部屋で待機していて、扉が開く音に一目散に飛び出していった。

「アルヴェード!おかえりなさい!!」
「エリザータ!帰っていたのか!!」

 夫婦は、きつく抱き合った。そして、使用人の目の前ではあったが、熱くキスを交わした。それが終わると、エリザータは謝罪を始める。

「貴方を、1週間も放っておいてしまってごめんなさい。私、第五条も破ってしまったわ」
「そうだな、酷い妻だ」

 エリザータは、沈んだ顔になり、うなだれた。しかし、アルヴェードの問いが降ってくる。

「1週間、俺はお前の中にいたか?」
「それは!当たり前じゃない!!」

 弾かれたように頭を上げたエリザータ。アルヴェードのこれ以上ないという愛おしそうな視線がエリザータの目に飛び込んできた。

「なら、許す。第五条の違反はなかった事にする。それに、頼みたい事が出てきた。だから、それをもって罪は『チャラ』だ」
「何?私、何をすればいい?」
「セブレーノと接触して欲しい」
「せ、セブレーノっ?」

 エリザータは、久しぶりに聞いたその名前に動揺した。アルヴェードはたたみかけた。

「確か、最近、大病院を立ち上げた筈だ。セブレーノの医療の力を借りたい」
「も、もしかして、ミルーネの病気の事?」
「何故知っている?」
「王子も言ってたわ、ミルーネが病気だって」
「そうか。なら話が早い。お前が出かける前に話したかったのは、それなんだ。あれから、考えた。賭けに近いが、ミルーネの病に対する主治医を変えて、病を快方に導く事が出来ないか、とな。心当たりのあるいい医者と言ったら、セブレーノしか思いつかなくてな」

 セブレーノ、それは、エリザータにとって最初の愛人の名前だ。エリザータは、アルヴェードの最初の愛人の名前を引き合いに出し言う。

「アルヴェード、貴方、私が貴方にティコラセーヌと会えって言ったら、何の抵抗もなく会えるかしら?」
「簡単に会えないさ。この頼みがどんなに辛い事かわかっている。しかし、いずれ第八条を守り、ミルーネとは別れる。その時、辛い病を抱えたままのミルーネを解放するのは、第九条に反するだろう?」
「そうね、ミルーネの未来を思ってやらなければならない立場だものね」

 エリザータは、再びうなだれた。

「私は、王子の未来の為に、何が出来るかわからなくなったわ」
「何か、あったのか?」

 エリザータは、うなだれたままつらつらとシュク一族の事をアルヴェードに話した。アルヴェードの目が見開かれる。

「ミルーネを、悪く言っているのか?王宮は?」
「そうよ。シュク一族が元ヒュラ一族という話は信じるしかないと思ってる。けれど、悪のヒュラ一族にミルーネが入ったからと言って、即ミルーネが悪って思いたくないわ。だって、貴方がこの件に関わる前から心を奪われていた画家だもの」
「嬉しい言葉じゃないか、エリザータ。よし、ミルーネの汚名を晴らす為に俺は動こう。そして、王子との愛を続けられるようにする」
「王子の為に、ありがとう。よろしくね?私は、セブレーノに会って、ミルーネを紹介するわ」
「頼む」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

離した手の温もり

橘 凛子
恋愛
3年前、未来を誓った君を置いて、私は夢を追いかけた。キャリアを優先した私に、君と会う資格なんてないのかもしれない。それでも、あの日の選択をずっと後悔している。そして今、私はあの場所へ帰ってきた。もう一度、君に会いたい。ただ、ごめんなさいと伝えたい。それだけでいい。それ以上の願いは、もう抱けないから。

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

曖昧な距離で愛している

山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

あなたの片想いを聞いてしまった夜

柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」 公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。 政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。 しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。 「好きな人がいる。……片想いなんだ」 名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。

処理中です...