ブンボル王国の恋事情

森田金太郎

文字の大きさ
15 / 67

15甘:夫婦の12の過去その1

しおりを挟む
アルヴェードは、ミルーネ宅を後にした。そして、呟いた。

「政略的な思惑を聞いてしまったな。反吐が出る」

 一方、エリザータはトゥルレ・ジェネラル・ホスピタルを後にした。そして、呟いた。

「セブレーノ、否が応でも、あの日々を思い出しちゃうわね」

 そして、アルヴェードとエリザータの思考は、別々の場所にいながらにして、子供の頃の思い出まで遡っていった。

「アルヴェード!その言葉遣いは何だ!金輪際、自分の事を『俺』と言うな!!」

 10歳頃のアルヴェードは、クルーサム財閥の総帥である父親に叱責されていた。アルヴェードは、言葉にて噛みつく。

「いいじゃないか!家の中なら!!」
「お前は、クルーサム財閥の次期総帥!乱暴な言葉は使うな!!」

 アルヴェードは、唇を噛み、返した。

「俺は、それを望まない!俺は、俺として生きたい!!」
「アルヴェード!駄目だ!!この家に産まれた男児としての宿命を受け入れなさい!!」
「じゃあ、出て行く!」
「それも許さない!!」

 アルヴェードは、その父親の言葉に返答する事なく、自室に走って行った。

「嫌だ!嫌だ!嫌だ!自由が欲しい!!」

 ベッドの上に登り、枕を何度も叩いた。震える拳をアルヴェードは見つめ、次第に諦観が心を支配するのを感じた。

「駄目、だよな。やっぱり、俺の道は決まっている」

 翌朝、アルヴェードは父親に謝罪した。

「父さん、昨日は、すみませんでした。私は、間違っていました。総帥を継ぐことが私にとっての誇りですよね?」
「よく、わかったな。よし、いい子だ。アルヴェード」

 そして、アルヴェードは学校に登校して行った。ビタル学園初等部の校舎にいつものように入り、教室にてクラスメイトに挨拶を次々にした。そして、こんな話を耳に挟んだ。クラスメイトの男子の許婚がこの度決まったと。それに、アルヴェードは返した。

「おめでとうございます。よき女性だといいですね」

 その男子は、微笑んだ。その顔を見つつ、アルヴェードは心の中で言った。「いずれ、俺にも許婚が決まるんだろうな」と。

 やがて、授業が始まる。このビタル学園は、各学年が上級家庭クラス、中流家庭クラス、要支援家庭クラスに別れる学園。勿論、アルヴェードは、上級家庭クラスの一員だ。上級家庭クラスの保護者が高額の授業料を支払い、貧しい要支援家庭クラスの児童生徒授業料を免除するシステムのこの学園にて、日々アルヴェードは知識を蓄えている。

 アルヴェードと同じ学年の中流クラスの教室には、エリザータの姿があった。休み時間、エリザータは、クラスメイトの女子が2年上の学年の男子に恋をしたという話を聞いた。

「あの人、かっこいいもの!わかるわ!!」

 そして、エリザータは心の中で言った。「私もいつか、かっこいい男子に恋したい!」と。

 そんな中であった。アルヴェードはある日呟く。

「クルーサム財閥の総帥にはなる。けれど、妻は自由に選びたい。その候補は、あえて上級家庭からは選ばない」

 そして、日を改めてアルヴェードは同じ学年の要支援家庭クラスの教室を休み時間に覗いた。上級家庭クラスの男子が来た事に要支援家庭クラスの児童は驚いた。そんな視線をもろともせずに、アルヴェードは、とある女子児童の元へと歩を進めた。その女子は、そのクラスの中で一際かわいらしい女子だった。アルヴェードはその女子に声をかける。

「俺は、アルヴェード。君、名前は?」
「ティコラセーヌ」

 ティコラセーヌの声は、驚きで震えていた。アルヴェードは微笑み、こう言う。

「少し、2人で話がしたい、いいか?」
「は、はい」

 そして、ティコラセーヌは、アルヴェードについて行った。学園の校庭のベンチに座り、アルヴェードは単刀直入に告げる。

「ティコラセーヌ、君に一目惚れした。俺と付き合ってくれないか?」
「えっ!!」

 ティコラセーヌは、目を丸くした。そのティコラセーヌにアルヴェードは言った。

「急だから、考える時間をやるよ。1週間後、また来る。その時に返事を聞く」

 アルヴェードは立ち上がり、教室に帰って行った。ティコラセーヌはそれを見送りながら、震える声で言った。

「じょ、上級家庭クラスの人の言う事聞かなかったら、私、ここに通えなくなる。言う事聞くしかないよね?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

離した手の温もり

橘 凛子
恋愛
3年前、未来を誓った君を置いて、私は夢を追いかけた。キャリアを優先した私に、君と会う資格なんてないのかもしれない。それでも、あの日の選択をずっと後悔している。そして今、私はあの場所へ帰ってきた。もう一度、君に会いたい。ただ、ごめんなさいと伝えたい。それだけでいい。それ以上の願いは、もう抱けないから。

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

曖昧な距離で愛している

山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

あなたの片想いを聞いてしまった夜

柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」 公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。 政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。 しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。 「好きな人がいる。……片想いなんだ」 名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。

【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜

四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」 度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。 事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。 しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。 楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。 その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。 ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。 その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。 敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。 それから、3年が経ったある日。 日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。 「私は若佐先生の事を何も知らない」 このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。 目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。 ❄︎ ※他サイトにも掲載しています。

処理中です...