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26甘:夫婦の12の過去その12
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エリザータ、アルヴェード、ティコラセーヌは、ビタル学園を卒業した。ティコラセーヌは、就職した。エリザータは、本格的にクルーサム財閥次期総帥夫人としての歩みを始める。そして、アルヴェードは、財閥のこれからの為に、より専門的な知識を大学で得る日々を始めた。
エリザータは、アルヴェードの言葉に甘え、セブレーノの元へ度々通う日々を過ごしていた。しかし一方で、夫人として財閥の事を知れば知るほどアルヴェードが幼少期からどれだけ大きな物を背負ってきたかが身に染みてわかってきた。
「愛とか何とかじゃない。私、アルヴェードを支えなきゃ」
エリザータにそんな考えが浮かんだ。そして、意を決してある日、セブレーノに告げた。
「セブレーノ、私、とっても元気になったわ!今まで私に寄り添ってくれてありがとう。貴方には感謝しきれないくらいよ。だからこそ、やるべき事が見えてきたの」
「まるで、別れの挨拶だね」
「そう。セブレーノ、貴方とお別れしたい」
「僕と別れてやるべき事、か。何となくわかったよ。夫を選びたくなったんだね?」
「今でも、アルヴェードを夫として愛しているのかわからないわ。けれど、もっとアルヴェードの為に何か出来ないかな?って思うようになったの」
「それを愛って言うんじゃないかな?と、思うけど、僕は、お役御免みたいだね」
「ごめんなさい。私、貴方に甘えるだけ甘えて何もやってあげられなかったかもしれない」
エリザータは、頭を下げる。
「気にしないよ。エリザータ、君と出会えた事、それが一番の僕の誇りとして、これから生きていく。活躍を祈るよ、エリザータ」
「ありがとう、セブレーノ」
そして、エリザータはセブレーノとの愛人関係を終わりにした。しかし、大学での講義と財閥の仕事を同時進行でこなすようになったアルヴェードに、その別れの話はなかなか切り出せなかった。
その日、アルヴェードは帰宅するなり、適当なソファに座り、すぐに居眠りをしてしまった。それを発見したエリザータ。毛布をかけてやりつつ、改めて夫の顔を見た。
「とても、疲れてるのね?アルヴェード」
こんな状況のアルヴェードに、仮にティコラセーヌがアルヴェードの妻だったらどうしていただろうと考えた。しかし、何も思いつかない自分がいた。急にエリザータは悔しくなる。夫を起こさないように声を殺し涙を流し始めるエリザータ。一方、アルヴェードは、毛布がかかった気配に気づき、目を覚ました。
「エリザータ?」
エリザータは、大粒の涙を流しながら、はっとした。
「ごめんなさい、起こしてしまって」
アルヴェードは、エリザータの涙に手を伸ばした。エリザータは、慌てて自ら涙を拭う。
「何故?泣いていた?」
「何でもない」
「何かがなければ涙など流れないだろうに」
抑えた筈のエリザータの涙が再び流れる。アルヴェードは戸惑った。そして、アルヴェードは、仮説を口にする。
「セブレーノと、何かあったのか?」
「セブレーノ。セブレーノとは別れたわ」
「何故!」
アルヴェードは、かかっていた毛布を勢いよく剥がした。
「あ、貴方を、妻として支えたくなったの。セブレーノとの幸せな時間をくれたから。その分、セブレーノと会う時間を、貴方の為に使おうって思って、別れたわ。だ、だけど、私、貴方に何も出来ない。悔しいわ」
エリザータの涙は弾ける。アルヴェードは返した。
「その気持ちはありがたいが、泣く女を、どう扱っていいかわからない。泣くな、エリザータ」
「ごめんなさい」
「それに、俺は、今まで1人でここでやってきた。だから、支える存在は必要ではない。お前は、ただ『俺の妻という肩書きを持った女』としてここにいればいいんだ」
「違う!それは、違うわ!アルヴェード!!」
エリザータは、少し感情的な声になった。アルヴェードは、多少気圧される。エリザータは言葉を続けた。
「間違いなく、貴方はティコラセーヌに支えられていたと、私は、今思ったわ。きっと、貴方はティコラセーヌと過ごした時間、ティコラセーヌがいなかったらここにいなかったでしょう」
アルヴェードは、はっとする。
「私、ティコラセーヌの代わりにはなれない。凄く、凄く、悔しいの!何で?何でこんなにも悔しいのかわからないけど、ティコラセーヌに負けたくない!!」
そんなエリザータを、アルヴェードは抱きしめた。
「そこまで、俺の事を考えてくれて、感謝する。だから、落ち着け。エリザータ」
強く、かつ、優しく包むアルヴェードの腕に、エリザータは包まれた。伝わるアルヴェードのぬくもりに、エリザータは、自らの気持ちに名前をつける事が出来た。そして、その名前がエリザータの口からこぼれた。
「アルヴェード、愛してるっ」
自らの腕の中で響き渡った言葉に、アルヴェードの心は震えた。そして、アルヴェードの涙が落ちた。
「エリザータ、俺もだ」
そう言いながら、アルヴェードはエリザータの顔を覗き込んだ。お互いの涙を確認した後、アルヴェードは言った。
「なら、改めて。俺と結婚してくれるか?エリザータ?」
「勿論よ!アルヴェード!!」
エリザータは、アルヴェードに抱きついた。やがて、2人の唇は溶け合う。結婚5年目のプロポーズが成功した瞬間であった。
それから、エリザータとアルヴェードは、愛人がいなければ自らたちは、夫婦になり得なかったと認識。世間では忌み嫌われる不倫ではあるが、自分たちだけは「不倫に感謝する生活」を送ろうと独自でルールを決め、お互いに愛人が出来る事を妨げないようにした。
その後、数々の愛人を2人は得たが、その度に、伴侶の魅力を再発見してより強い愛情をお互いに抱くようになっていった。
エリザータは、アルヴェードの言葉に甘え、セブレーノの元へ度々通う日々を過ごしていた。しかし一方で、夫人として財閥の事を知れば知るほどアルヴェードが幼少期からどれだけ大きな物を背負ってきたかが身に染みてわかってきた。
「愛とか何とかじゃない。私、アルヴェードを支えなきゃ」
エリザータにそんな考えが浮かんだ。そして、意を決してある日、セブレーノに告げた。
「セブレーノ、私、とっても元気になったわ!今まで私に寄り添ってくれてありがとう。貴方には感謝しきれないくらいよ。だからこそ、やるべき事が見えてきたの」
「まるで、別れの挨拶だね」
「そう。セブレーノ、貴方とお別れしたい」
「僕と別れてやるべき事、か。何となくわかったよ。夫を選びたくなったんだね?」
「今でも、アルヴェードを夫として愛しているのかわからないわ。けれど、もっとアルヴェードの為に何か出来ないかな?って思うようになったの」
「それを愛って言うんじゃないかな?と、思うけど、僕は、お役御免みたいだね」
「ごめんなさい。私、貴方に甘えるだけ甘えて何もやってあげられなかったかもしれない」
エリザータは、頭を下げる。
「気にしないよ。エリザータ、君と出会えた事、それが一番の僕の誇りとして、これから生きていく。活躍を祈るよ、エリザータ」
「ありがとう、セブレーノ」
そして、エリザータはセブレーノとの愛人関係を終わりにした。しかし、大学での講義と財閥の仕事を同時進行でこなすようになったアルヴェードに、その別れの話はなかなか切り出せなかった。
その日、アルヴェードは帰宅するなり、適当なソファに座り、すぐに居眠りをしてしまった。それを発見したエリザータ。毛布をかけてやりつつ、改めて夫の顔を見た。
「とても、疲れてるのね?アルヴェード」
こんな状況のアルヴェードに、仮にティコラセーヌがアルヴェードの妻だったらどうしていただろうと考えた。しかし、何も思いつかない自分がいた。急にエリザータは悔しくなる。夫を起こさないように声を殺し涙を流し始めるエリザータ。一方、アルヴェードは、毛布がかかった気配に気づき、目を覚ました。
「エリザータ?」
エリザータは、大粒の涙を流しながら、はっとした。
「ごめんなさい、起こしてしまって」
アルヴェードは、エリザータの涙に手を伸ばした。エリザータは、慌てて自ら涙を拭う。
「何故?泣いていた?」
「何でもない」
「何かがなければ涙など流れないだろうに」
抑えた筈のエリザータの涙が再び流れる。アルヴェードは戸惑った。そして、アルヴェードは、仮説を口にする。
「セブレーノと、何かあったのか?」
「セブレーノ。セブレーノとは別れたわ」
「何故!」
アルヴェードは、かかっていた毛布を勢いよく剥がした。
「あ、貴方を、妻として支えたくなったの。セブレーノとの幸せな時間をくれたから。その分、セブレーノと会う時間を、貴方の為に使おうって思って、別れたわ。だ、だけど、私、貴方に何も出来ない。悔しいわ」
エリザータの涙は弾ける。アルヴェードは返した。
「その気持ちはありがたいが、泣く女を、どう扱っていいかわからない。泣くな、エリザータ」
「ごめんなさい」
「それに、俺は、今まで1人でここでやってきた。だから、支える存在は必要ではない。お前は、ただ『俺の妻という肩書きを持った女』としてここにいればいいんだ」
「違う!それは、違うわ!アルヴェード!!」
エリザータは、少し感情的な声になった。アルヴェードは、多少気圧される。エリザータは言葉を続けた。
「間違いなく、貴方はティコラセーヌに支えられていたと、私は、今思ったわ。きっと、貴方はティコラセーヌと過ごした時間、ティコラセーヌがいなかったらここにいなかったでしょう」
アルヴェードは、はっとする。
「私、ティコラセーヌの代わりにはなれない。凄く、凄く、悔しいの!何で?何でこんなにも悔しいのかわからないけど、ティコラセーヌに負けたくない!!」
そんなエリザータを、アルヴェードは抱きしめた。
「そこまで、俺の事を考えてくれて、感謝する。だから、落ち着け。エリザータ」
強く、かつ、優しく包むアルヴェードの腕に、エリザータは包まれた。伝わるアルヴェードのぬくもりに、エリザータは、自らの気持ちに名前をつける事が出来た。そして、その名前がエリザータの口からこぼれた。
「アルヴェード、愛してるっ」
自らの腕の中で響き渡った言葉に、アルヴェードの心は震えた。そして、アルヴェードの涙が落ちた。
「エリザータ、俺もだ」
そう言いながら、アルヴェードはエリザータの顔を覗き込んだ。お互いの涙を確認した後、アルヴェードは言った。
「なら、改めて。俺と結婚してくれるか?エリザータ?」
「勿論よ!アルヴェード!!」
エリザータは、アルヴェードに抱きついた。やがて、2人の唇は溶け合う。結婚5年目のプロポーズが成功した瞬間であった。
それから、エリザータとアルヴェードは、愛人がいなければ自らたちは、夫婦になり得なかったと認識。世間では忌み嫌われる不倫ではあるが、自分たちだけは「不倫に感謝する生活」を送ろうと独自でルールを決め、お互いに愛人が出来る事を妨げないようにした。
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