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35甘:国際問題
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アルヴェードは、ベルカイザ号の船長と政府高官の2人と共に、ベルカイザ号を一時下船した。3人は、迎えたレト共和国海軍の士官に銃を突きつけられた。その士官の男性1人がこう言う。
「これは、敵対意思からの行動ではない。念の為の措置と解釈して欲しい」
アルヴェードは、他の2人と頷き、士官の誘導に従った。アルヴェードは、心の中で「そう言えば」と言い、士官たちの顔を何度も見渡す。その視線に気づいた士官が言った。
「何か?」
「いえ、何でもありません。失礼しました」
アルヴェードは頭を下げ、心の中の話の続きをする。「この士官もそうだが、先ほど通信に対応してくれた女性も、指揮官らしき男性も、発音に多少の違和感はあるが、ブンボルの言葉を話しているな。何故だ?国交がないというのに」
ベルカイザ号代表団は、やがて車に乗せられ、首相のいる建物へと到着。応接間に通された。すると、首相と思しき初老の男性が入室してくる。軍の士官たちは、それを確認すると、部屋を退出。士官たちの背中を見届けた後、男性は自己紹介を始めた。
「はじめまして、レト共和国首相のクルセインです」
政府高官に続き、アルヴェードは自己紹介する。
「ブンボル王国のクルーサム財閥次期総帥、アルヴェードと申します。この度の救援に心より感謝致します」
それが終わると、船長も自己紹介するが、それを聞きながらアルヴェードは驚愕の声を心の中で上げていた。「このクルセイン首相、完璧なブンボルの発音だ。まるで、ブンボルの国民と話しているようだ」と。
クルセインは自己紹介が終わると、こう切り出した。
「災難でした。海賊船に囲まれた事は」
政府高官がそれに反応する。
「あの海賊船は、レトの物でしょうか?」
「いいえ」
クルセインは首を何度も横に振る。そして、こう続けた。
「本当に、ここ数日の話です。レトの領海ギリギリに、ワイカル国の海賊船が襲来し、通行する船舶が数隻被害に遭うようになりました。海賊船は、作戦が全て成功したからでしょうね、ここに居座っていました」
「そんな情報は、掴んでいませんでした」
アルヴェードは、苦々しく言った。すると、クルセインは返す。
「国交があれば、いち早くお知らせ出来たのに」
代表団3人は、ぐうの音も出ないクルセインの言葉に沈黙。クルセインはそんな3人を尻目に話し続ける。
「ワイカル国は、貧しい国です。それは、皆さんご存知ですよね?」
3人の頷きを確認すると、クルセインは更に続ける。
「かの国は、1世紀半前のわが国と姿がかぶります。わが国も、大変貧しい国でした」
代表団3人の脳裏に、1世紀半前の外国人労働者の暴動の話が浮かぶ。政府高官は、返した。
「1世紀半前。わが国が得たレトからの大量の労働者は、一時的な国力向上をもたらしました」
「レト側も、利がありました」
「では、何故暴動を起こしたのですか?」
アルヴェードは、政府高官とクルセインの会話をただ傍観していた。クルセインは、言う。
「私の先祖の話です。ブンボルの炭鉱で働いたと言っていました。ブンボルのエウル一族の声かけによってね。そのエウル一族が急に『やれ』と命じたのですよ。ブンボルの国民を攻撃しろと。仕事を紹介してくれたエウル一族には恩義を感じていたので、逆らえず、炭鉱の上司や同僚を次々と襲い、中にはブンボルの国民を死亡させたレトの国民もいたという話が伝わっています」
アルヴェード、政府高官、船長は、お互いの顔を見合わせる。
「驚きましたか?」
クルセインの問いに、アルヴェードが返した。
「いや、その、ブンボルでは暴動を扇動したのは、ヒュラ一族と言われています。なので、そこに驚きました」
「ヒュラ一族?知りませんね。とにかく、そのエウル一族から先祖たちは、多額の報酬を得て帰国したそうです。その報酬にて、レトは発展を遂げる事が出来た。しかし、同時にブンボルに国交断絶を言い渡されてしまいました。当然とはいえ、残念な措置です。我々は、恩義をブンボルに対して抱いています。わが国は、ブンボルと国交を回復したいのですよ」
政府高官は、困惑。
「しかし、私は経済担当の大臣。ここでの判断は出来ません」
クルセインの表情は、冷たい物へと一変する。
「そうですか。それは、残念だ。これは好機だと海軍に救援させたというのに。わが国の軍に危険を冒させるだけ冒させて、何も見返りはないのですか?」
「で、ですから、国に持ち帰ると」
「そうしてください」
クルセインの表情は、穏やかな物へと戻る。アルヴェードは言った。
「首相、国交回復までは、時間がかかるでしょう。その前に、民間レベルでの小さな交流を持つ事は可能と思います。クルーサム財閥が、その窓口を務めさせていただきます。その、ベルカイザ号の窮地を救ってくれたので」
「おお、それは喜ばしい話ですね。わが国の経済団体で、ブンボルと交流したいと考えている団体を募ってみます」
「よろしくお願いします」
アルヴェードたちは、その場から解放された。アルヴェードは思った。「だから、レトの国民は、ブンボルの言葉を自然に話していたのか」と。そんな中、船長がアルヴェードに声をかける。
「念の為の船の点検をし、異常なしと判断したら出航します」
「そうしてくれ」
そして、船の緊急点検が始まるが、雨が降ってくる。そして、風も強くなる。海は荒れてきた。ベルカイザ号は、船自体の異常は認められなかったが、レトの港を出られなくなってしまった。
「天候が安定するまで、ここに停泊せざるを得なくなりました」
「何という事だ。海賊がいなければ、こんな天候に足止めを食らう事はなかったのに」
船長とアルヴェードの会話が、ブリッジで繰り広げられた。
「これは、敵対意思からの行動ではない。念の為の措置と解釈して欲しい」
アルヴェードは、他の2人と頷き、士官の誘導に従った。アルヴェードは、心の中で「そう言えば」と言い、士官たちの顔を何度も見渡す。その視線に気づいた士官が言った。
「何か?」
「いえ、何でもありません。失礼しました」
アルヴェードは頭を下げ、心の中の話の続きをする。「この士官もそうだが、先ほど通信に対応してくれた女性も、指揮官らしき男性も、発音に多少の違和感はあるが、ブンボルの言葉を話しているな。何故だ?国交がないというのに」
ベルカイザ号代表団は、やがて車に乗せられ、首相のいる建物へと到着。応接間に通された。すると、首相と思しき初老の男性が入室してくる。軍の士官たちは、それを確認すると、部屋を退出。士官たちの背中を見届けた後、男性は自己紹介を始めた。
「はじめまして、レト共和国首相のクルセインです」
政府高官に続き、アルヴェードは自己紹介する。
「ブンボル王国のクルーサム財閥次期総帥、アルヴェードと申します。この度の救援に心より感謝致します」
それが終わると、船長も自己紹介するが、それを聞きながらアルヴェードは驚愕の声を心の中で上げていた。「このクルセイン首相、完璧なブンボルの発音だ。まるで、ブンボルの国民と話しているようだ」と。
クルセインは自己紹介が終わると、こう切り出した。
「災難でした。海賊船に囲まれた事は」
政府高官がそれに反応する。
「あの海賊船は、レトの物でしょうか?」
「いいえ」
クルセインは首を何度も横に振る。そして、こう続けた。
「本当に、ここ数日の話です。レトの領海ギリギリに、ワイカル国の海賊船が襲来し、通行する船舶が数隻被害に遭うようになりました。海賊船は、作戦が全て成功したからでしょうね、ここに居座っていました」
「そんな情報は、掴んでいませんでした」
アルヴェードは、苦々しく言った。すると、クルセインは返す。
「国交があれば、いち早くお知らせ出来たのに」
代表団3人は、ぐうの音も出ないクルセインの言葉に沈黙。クルセインはそんな3人を尻目に話し続ける。
「ワイカル国は、貧しい国です。それは、皆さんご存知ですよね?」
3人の頷きを確認すると、クルセインは更に続ける。
「かの国は、1世紀半前のわが国と姿がかぶります。わが国も、大変貧しい国でした」
代表団3人の脳裏に、1世紀半前の外国人労働者の暴動の話が浮かぶ。政府高官は、返した。
「1世紀半前。わが国が得たレトからの大量の労働者は、一時的な国力向上をもたらしました」
「レト側も、利がありました」
「では、何故暴動を起こしたのですか?」
アルヴェードは、政府高官とクルセインの会話をただ傍観していた。クルセインは、言う。
「私の先祖の話です。ブンボルの炭鉱で働いたと言っていました。ブンボルのエウル一族の声かけによってね。そのエウル一族が急に『やれ』と命じたのですよ。ブンボルの国民を攻撃しろと。仕事を紹介してくれたエウル一族には恩義を感じていたので、逆らえず、炭鉱の上司や同僚を次々と襲い、中にはブンボルの国民を死亡させたレトの国民もいたという話が伝わっています」
アルヴェード、政府高官、船長は、お互いの顔を見合わせる。
「驚きましたか?」
クルセインの問いに、アルヴェードが返した。
「いや、その、ブンボルでは暴動を扇動したのは、ヒュラ一族と言われています。なので、そこに驚きました」
「ヒュラ一族?知りませんね。とにかく、そのエウル一族から先祖たちは、多額の報酬を得て帰国したそうです。その報酬にて、レトは発展を遂げる事が出来た。しかし、同時にブンボルに国交断絶を言い渡されてしまいました。当然とはいえ、残念な措置です。我々は、恩義をブンボルに対して抱いています。わが国は、ブンボルと国交を回復したいのですよ」
政府高官は、困惑。
「しかし、私は経済担当の大臣。ここでの判断は出来ません」
クルセインの表情は、冷たい物へと一変する。
「そうですか。それは、残念だ。これは好機だと海軍に救援させたというのに。わが国の軍に危険を冒させるだけ冒させて、何も見返りはないのですか?」
「で、ですから、国に持ち帰ると」
「そうしてください」
クルセインの表情は、穏やかな物へと戻る。アルヴェードは言った。
「首相、国交回復までは、時間がかかるでしょう。その前に、民間レベルでの小さな交流を持つ事は可能と思います。クルーサム財閥が、その窓口を務めさせていただきます。その、ベルカイザ号の窮地を救ってくれたので」
「おお、それは喜ばしい話ですね。わが国の経済団体で、ブンボルと交流したいと考えている団体を募ってみます」
「よろしくお願いします」
アルヴェードたちは、その場から解放された。アルヴェードは思った。「だから、レトの国民は、ブンボルの言葉を自然に話していたのか」と。そんな中、船長がアルヴェードに声をかける。
「念の為の船の点検をし、異常なしと判断したら出航します」
「そうしてくれ」
そして、船の緊急点検が始まるが、雨が降ってくる。そして、風も強くなる。海は荒れてきた。ベルカイザ号は、船自体の異常は認められなかったが、レトの港を出られなくなってしまった。
「天候が安定するまで、ここに停泊せざるを得なくなりました」
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