45 / 67
45甘:決戦開始
しおりを挟む
それから、数日後の事であった。王宮前にアルヴェードらベルカイザ号の関係者が集まっていた。
「では、行きましょう」
そんなアルヴェードの一言で一行は王宮へと入って行った。
再びの王マーディルとの謁見であった。その場には、当然ギャスバーもいたが、アルヴェードの申し出により、王妃ランクーナ、王子ランディレイも同席していた。ベルカイザ号の船長は、そうそうたる顔ぶれに恐縮した様子だった。そんな中、マーディルが口を開く。
「先日の続き、どのような話か聞かせてもらおう」
ベルカイザ号関係者は、揃って頭を下げる。それを確認すると、マーディルは言葉を続けた。
「先日と同様に聴取は側近が行う。偽りのない証言を」
ベルカイザ号関係者の「はい」という揃った声が響いた。ギャスバーは口を開いた。
「レト共和国、クルセイン首相との会談の内容の事細かい報告を」
政府高官が話し始めた。
「続きと申しますか、王妃や王子が新たに立ち会っていただいているので、はじめからご報告致します。簡単にクルセイン首相との会談に至った経緯を振り返ります。船長」
「はい。我々が乗船していたベルカイザ号は、レト共和国近海でワイカル国の海賊船に取り囲まれました。回避出来ない状況でした。そこで、次期総帥の判断に従いました」
アルヴェードがこの日最初の証言をし始める。
「レトが手を挙げる可能性はありましたが、乗客の安全を第一に考え、周辺地域全ての国に救援要請の通信を入れました。それを受け、やはりレトが手を挙げ、海軍が完璧なベルカイザ号への保護作戦を展開してくれました。」
船長がそれに続く。
「海軍の提案により、レトの港への一時避難を実行しました」
政府高官が更に続く。
「そこで、クルセイン首相が我々に面会を求めて来たので、それを受けました」
アルヴェードが話に一旦区切りをつけた。
「救援に対する感謝を述べに行かねばならない立場でしたからね」
それにギャスバーはこう返した。
「救援を要請する国を、わが国と国交がある国に限定すべきだったのでは?」
アルヴェードは、それに返答。
「今思えば、その前提を掲げた上で要請すれば無用な誤報を生み出す事はなかったでしょう。その事実は大いに反省致します。しかし、当時はなりふり構っていられない状況でした。新造船に傷ひとつつけたくありませんでしたし、略奪などの被害を受けないように一刻も早く避難をしたかったので」
「ぬぅ、起こってしまった事は覆せない。仕方なかったとしよう」
「ありがとうございます」
アルヴェードが頭を下げると、ベルカイザ号関係者もそれに続いた。全員が頭を上げると、ギャスバーは、聴取を続けた。
「それで、本題をそろそろ話せ。改めて訊く、クルセイン首相は何を話し、それにお前たちがどのように返したのかを」
アルヴェードがそれに返した。
「これより、私1人で答弁致します。他の者には、事前に了解は得ております」
「許そう」
ギャスバーはアルヴェードを睨みつつ許可を出した。
「面会は、少しの時間でしたが、濃い話をさせていただきました。クルセイン首相は、ブンボルの言葉が達者でしたので」
ランディレイやランクーナはその話に興味深そうにした。それは、マーディルも同じで、口を開く。
「それは、なんと」
アルヴェードは、柔らかい表情でマーディル、ランディレイ、ランクーナを見渡し、こう言った。
「首相はブンボルの国民かと思えるくらいの言葉をお話ししていましたよ。また、他のレトの関係者たちもブンボルの言葉を使って我々に対応してくれました」
「ええい!レト関係者が話したブンボルの言葉の件はどうでもいい!先の話に進め!!」
しびれを切らしたようにギャスバーは喚きはじめる。アルヴェードは一転、そんなギャスバーに鋭い視線を向け、極めて冷静に言葉を返した。
「これは、世間話ではありません。この先の話の為の重要な事柄です。ギャスバーさん、何故クルセイン首相らは、ブンボルの言葉を話したと思いますか?」
「尋問しているのは、こちらだ!質問は受け付けない!!」
「わかりました。それは、失礼致しました」
アルヴェードは、慇懃に頭を下げる。そして、頭を上げると言った。
「答えは、クルセイン首相が1世紀半前にブンボルの炭鉱で働いたレトの労働者の子孫だからですよ。おそらく、そんな首相の指導にて、一部の国民は、ブンボルの言葉を話せるようになった」
「ま、まさか!当時のレトの国民は、ブンボルの言葉は話せなかった筈!!」
「ん?何故、それがわかるのです?あ、いや、私からの質問はこの場では厳禁でしたね。そうでしたか。そうですよね?あの暴動を起こしたレト国民をブンボルに連れて来たエウル一族の方なら、伝承として知っていて当然の話ですね。これは、また失礼しました」
アルヴェードはさすがにもう頭を下げなかった。そして、話を続ける。
「クルセイン首相は、おっしゃっていました。ブンボルには多大な恩があると。ブンボルは多額の金をレトにもたらし、それが今の発展の礎になったからと。そして、先日報告いたしました通り、国交回復を望みました。おそらく、それがクルセイン首相の悲願。その為にブンボルの言葉を猛勉強されたのでしょうから」
「推測の話はいい!」
「はい、わかりました」
ギャスバーは、次第に手をわなわなさせはじめる。それを見つつ、アルヴェードは意見を述べた。
「こちらも、救援や補給などの恩を受けました。個人的、いや、ベルカイザ号に乗船していた者の総意として申し上げます。レトとの国交回復を何卒前向きにご検討いただきたい。そして、正式に国交を回復するまでの間、クルーサム財閥とレトの経済団体との民間レベルでの交流をお認めください」
政府高官もそれに続く。
「私も経済担当大臣として、それを望みます」
ランクーナは、感嘆の声を上げる。
「素敵な話ですわね。貴方様?どうされます?」
問われたマーディルは返答。
「うぬ。レトへの恩返しにもなるであろう。許す」
「陛下!」
ギャスバーの焦りの声が響いた。アルヴェードはそれをものともせず、こう言った。
「陛下、王妃様、寛大なご判断に感謝致します。しかし、その前に、ひとつはっきりさせたい事があります」
「では、行きましょう」
そんなアルヴェードの一言で一行は王宮へと入って行った。
再びの王マーディルとの謁見であった。その場には、当然ギャスバーもいたが、アルヴェードの申し出により、王妃ランクーナ、王子ランディレイも同席していた。ベルカイザ号の船長は、そうそうたる顔ぶれに恐縮した様子だった。そんな中、マーディルが口を開く。
「先日の続き、どのような話か聞かせてもらおう」
ベルカイザ号関係者は、揃って頭を下げる。それを確認すると、マーディルは言葉を続けた。
「先日と同様に聴取は側近が行う。偽りのない証言を」
ベルカイザ号関係者の「はい」という揃った声が響いた。ギャスバーは口を開いた。
「レト共和国、クルセイン首相との会談の内容の事細かい報告を」
政府高官が話し始めた。
「続きと申しますか、王妃や王子が新たに立ち会っていただいているので、はじめからご報告致します。簡単にクルセイン首相との会談に至った経緯を振り返ります。船長」
「はい。我々が乗船していたベルカイザ号は、レト共和国近海でワイカル国の海賊船に取り囲まれました。回避出来ない状況でした。そこで、次期総帥の判断に従いました」
アルヴェードがこの日最初の証言をし始める。
「レトが手を挙げる可能性はありましたが、乗客の安全を第一に考え、周辺地域全ての国に救援要請の通信を入れました。それを受け、やはりレトが手を挙げ、海軍が完璧なベルカイザ号への保護作戦を展開してくれました。」
船長がそれに続く。
「海軍の提案により、レトの港への一時避難を実行しました」
政府高官が更に続く。
「そこで、クルセイン首相が我々に面会を求めて来たので、それを受けました」
アルヴェードが話に一旦区切りをつけた。
「救援に対する感謝を述べに行かねばならない立場でしたからね」
それにギャスバーはこう返した。
「救援を要請する国を、わが国と国交がある国に限定すべきだったのでは?」
アルヴェードは、それに返答。
「今思えば、その前提を掲げた上で要請すれば無用な誤報を生み出す事はなかったでしょう。その事実は大いに反省致します。しかし、当時はなりふり構っていられない状況でした。新造船に傷ひとつつけたくありませんでしたし、略奪などの被害を受けないように一刻も早く避難をしたかったので」
「ぬぅ、起こってしまった事は覆せない。仕方なかったとしよう」
「ありがとうございます」
アルヴェードが頭を下げると、ベルカイザ号関係者もそれに続いた。全員が頭を上げると、ギャスバーは、聴取を続けた。
「それで、本題をそろそろ話せ。改めて訊く、クルセイン首相は何を話し、それにお前たちがどのように返したのかを」
アルヴェードがそれに返した。
「これより、私1人で答弁致します。他の者には、事前に了解は得ております」
「許そう」
ギャスバーはアルヴェードを睨みつつ許可を出した。
「面会は、少しの時間でしたが、濃い話をさせていただきました。クルセイン首相は、ブンボルの言葉が達者でしたので」
ランディレイやランクーナはその話に興味深そうにした。それは、マーディルも同じで、口を開く。
「それは、なんと」
アルヴェードは、柔らかい表情でマーディル、ランディレイ、ランクーナを見渡し、こう言った。
「首相はブンボルの国民かと思えるくらいの言葉をお話ししていましたよ。また、他のレトの関係者たちもブンボルの言葉を使って我々に対応してくれました」
「ええい!レト関係者が話したブンボルの言葉の件はどうでもいい!先の話に進め!!」
しびれを切らしたようにギャスバーは喚きはじめる。アルヴェードは一転、そんなギャスバーに鋭い視線を向け、極めて冷静に言葉を返した。
「これは、世間話ではありません。この先の話の為の重要な事柄です。ギャスバーさん、何故クルセイン首相らは、ブンボルの言葉を話したと思いますか?」
「尋問しているのは、こちらだ!質問は受け付けない!!」
「わかりました。それは、失礼致しました」
アルヴェードは、慇懃に頭を下げる。そして、頭を上げると言った。
「答えは、クルセイン首相が1世紀半前にブンボルの炭鉱で働いたレトの労働者の子孫だからですよ。おそらく、そんな首相の指導にて、一部の国民は、ブンボルの言葉を話せるようになった」
「ま、まさか!当時のレトの国民は、ブンボルの言葉は話せなかった筈!!」
「ん?何故、それがわかるのです?あ、いや、私からの質問はこの場では厳禁でしたね。そうでしたか。そうですよね?あの暴動を起こしたレト国民をブンボルに連れて来たエウル一族の方なら、伝承として知っていて当然の話ですね。これは、また失礼しました」
アルヴェードはさすがにもう頭を下げなかった。そして、話を続ける。
「クルセイン首相は、おっしゃっていました。ブンボルには多大な恩があると。ブンボルは多額の金をレトにもたらし、それが今の発展の礎になったからと。そして、先日報告いたしました通り、国交回復を望みました。おそらく、それがクルセイン首相の悲願。その為にブンボルの言葉を猛勉強されたのでしょうから」
「推測の話はいい!」
「はい、わかりました」
ギャスバーは、次第に手をわなわなさせはじめる。それを見つつ、アルヴェードは意見を述べた。
「こちらも、救援や補給などの恩を受けました。個人的、いや、ベルカイザ号に乗船していた者の総意として申し上げます。レトとの国交回復を何卒前向きにご検討いただきたい。そして、正式に国交を回復するまでの間、クルーサム財閥とレトの経済団体との民間レベルでの交流をお認めください」
政府高官もそれに続く。
「私も経済担当大臣として、それを望みます」
ランクーナは、感嘆の声を上げる。
「素敵な話ですわね。貴方様?どうされます?」
問われたマーディルは返答。
「うぬ。レトへの恩返しにもなるであろう。許す」
「陛下!」
ギャスバーの焦りの声が響いた。アルヴェードはそれをものともせず、こう言った。
「陛下、王妃様、寛大なご判断に感謝致します。しかし、その前に、ひとつはっきりさせたい事があります」
0
あなたにおすすめの小説
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
離した手の温もり
橘 凛子
恋愛
3年前、未来を誓った君を置いて、私は夢を追いかけた。キャリアを優先した私に、君と会う資格なんてないのかもしれない。それでも、あの日の選択をずっと後悔している。そして今、私はあの場所へ帰ってきた。もう一度、君に会いたい。ただ、ごめんなさいと伝えたい。それだけでいい。それ以上の願いは、もう抱けないから。
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
曖昧な距離で愛している
山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる