48 / 67
48甘:別れの気配
しおりを挟む
ベルカイザ号関係者たちは、次々に部屋を退出。それを見送ったマーディル以下王宮の面々は、未だ歴史を覆された事に対する動揺が残っていた。しかし、マーディルはそれを振り切り、こう言う。
「有意義な時間であった。さて、これからが大変だ。レトとの国交回復の件は、議会にも話を通さねばならない」
ランクーナが苦しげな顔をしてそれに返した。
「レトの労働者に殺害された人の子孫が議員にはいますからね。反対に回るかもしれません」
「うぬ」
「父上、母上、しかし、信じましょう。議員を説得出来る日を」
マーディルとランクーナは頷く。ギャスバーは、肩身が狭く縮こまった。そんなギャスバーを見つつ、ランディレイは思いを馳せ、呟いた。
「アルヴェード。エリザータの夫。あんなに豪胆な人物だったとは。僕も負けていられない」
一方、ベルカイザ号関係者はお互いに声をかけつつ解散。アルヴェードは仕事へと戻った。
その夜、アルヴェードは帰宅する。エリザータが迎えた。
「おかえりなさい、今日は、一段と疲れたんじゃない?お疲れ様」
「エリザータ、ただいま」
アルヴェードは、妻の顔を見ると、みるみる抑えていた感情が溢れ出る。
「エリザータ!」
アルヴェードは性急にエリザータを抱きしめた。その様は、さすがのエリザータも戸惑う程であった。
「ど、どうしたの?」
「すまない、しばらくこうさせてくれ」
アルヴェードの脳裏には、振りかざされたギャスバーの短剣への恐怖がよみがえっていた。しかし、じわじわ伝わるエリザータのぬくもりにそれが薄れる。アルヴェードは、エリザータに多少長いキスをした後、妻を解放した。
「何か、あったの?」
「いや、その、煽りすぎたのかもしれない。王の側近に攻撃を加えられる所だった」
「えっ」
エリザータは一旦震えた。アルヴェードは自嘲しつつもこう返した。
「陛下が、止めてくれた。だから無傷で帰って来られたが、さすがにおそろしくなってな。陛下の言葉がなければ、今頃エリザータの顔は見れていないだろうと思ったら、止められなくなった。お前を抱きしめるのが。恥ずかしいな」
「そんな。恥ずかしくないわよ。無事に戻って来てよかったわ。でも、あまり無茶はしないでね?」
「ああ、そうする」
もう一度、アルヴェードはエリザータにキスをし、言った。
「王子にも助けられながらだったが、ほぼ俺の思った通りに事は進んだ」
「そうなの!よかったわ!!」
「ああ。エウル一族には罰が与えられる事が決まったし、レトとの国交回復も実現出来る方向だ。そして、一番の成果は、シュク一族が何らかの形で王族に復帰出来るようになった。そこで、王子とミルーネが会えるようになった」
エリザータは、目を輝かせた。
「本当に?」
「ああ」
エリザータのため息が漏れる。
「けれど、そうなると王子との仲も、終わりに近いわね」
「そうだな。俺のミルーネとの時間も、そう長くはない」
不倫ルール第八条、いずれ愛人とは別れるというルールを遵守する時が間もなく来る。一抹のさびしさをエリザータとアルヴェードは抱きながらも、2人は笑顔を交換した。
「ミルーネと、いいお別れしてくるのよ?アルヴェード」
「お前こそ、王子とな?」
「ええ」
「有意義な時間であった。さて、これからが大変だ。レトとの国交回復の件は、議会にも話を通さねばならない」
ランクーナが苦しげな顔をしてそれに返した。
「レトの労働者に殺害された人の子孫が議員にはいますからね。反対に回るかもしれません」
「うぬ」
「父上、母上、しかし、信じましょう。議員を説得出来る日を」
マーディルとランクーナは頷く。ギャスバーは、肩身が狭く縮こまった。そんなギャスバーを見つつ、ランディレイは思いを馳せ、呟いた。
「アルヴェード。エリザータの夫。あんなに豪胆な人物だったとは。僕も負けていられない」
一方、ベルカイザ号関係者はお互いに声をかけつつ解散。アルヴェードは仕事へと戻った。
その夜、アルヴェードは帰宅する。エリザータが迎えた。
「おかえりなさい、今日は、一段と疲れたんじゃない?お疲れ様」
「エリザータ、ただいま」
アルヴェードは、妻の顔を見ると、みるみる抑えていた感情が溢れ出る。
「エリザータ!」
アルヴェードは性急にエリザータを抱きしめた。その様は、さすがのエリザータも戸惑う程であった。
「ど、どうしたの?」
「すまない、しばらくこうさせてくれ」
アルヴェードの脳裏には、振りかざされたギャスバーの短剣への恐怖がよみがえっていた。しかし、じわじわ伝わるエリザータのぬくもりにそれが薄れる。アルヴェードは、エリザータに多少長いキスをした後、妻を解放した。
「何か、あったの?」
「いや、その、煽りすぎたのかもしれない。王の側近に攻撃を加えられる所だった」
「えっ」
エリザータは一旦震えた。アルヴェードは自嘲しつつもこう返した。
「陛下が、止めてくれた。だから無傷で帰って来られたが、さすがにおそろしくなってな。陛下の言葉がなければ、今頃エリザータの顔は見れていないだろうと思ったら、止められなくなった。お前を抱きしめるのが。恥ずかしいな」
「そんな。恥ずかしくないわよ。無事に戻って来てよかったわ。でも、あまり無茶はしないでね?」
「ああ、そうする」
もう一度、アルヴェードはエリザータにキスをし、言った。
「王子にも助けられながらだったが、ほぼ俺の思った通りに事は進んだ」
「そうなの!よかったわ!!」
「ああ。エウル一族には罰が与えられる事が決まったし、レトとの国交回復も実現出来る方向だ。そして、一番の成果は、シュク一族が何らかの形で王族に復帰出来るようになった。そこで、王子とミルーネが会えるようになった」
エリザータは、目を輝かせた。
「本当に?」
「ああ」
エリザータのため息が漏れる。
「けれど、そうなると王子との仲も、終わりに近いわね」
「そうだな。俺のミルーネとの時間も、そう長くはない」
不倫ルール第八条、いずれ愛人とは別れるというルールを遵守する時が間もなく来る。一抹のさびしさをエリザータとアルヴェードは抱きながらも、2人は笑顔を交換した。
「ミルーネと、いいお別れしてくるのよ?アルヴェード」
「お前こそ、王子とな?」
「ええ」
0
あなたにおすすめの小説
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
離した手の温もり
橘 凛子
恋愛
3年前、未来を誓った君を置いて、私は夢を追いかけた。キャリアを優先した私に、君と会う資格なんてないのかもしれない。それでも、あの日の選択をずっと後悔している。そして今、私はあの場所へ帰ってきた。もう一度、君に会いたい。ただ、ごめんなさいと伝えたい。それだけでいい。それ以上の願いは、もう抱けないから。
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
曖昧な距離で愛している
山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる