ブンボル王国の恋事情

森田金太郎

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54甘:宿泊

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一方、エリザータは自宅にて、真剣にミルフォンソの事を考えていた。

「こうなったら、ミルフォンソさんの魅力を知るために、四六時中つきまとっちゃおうかしら?」

 迷惑な行為とはわかってるが、それしか考えが浮かばなかった。その夜、アルヴェードは帰宅。多少夫は気が重そうな顔をしていたが、本題を話した。

「ねえ、しばらくミルフォンソさんの所にいるつもりだから、よろしくね?」
「ん?ああ、ミルフォンソの家に住むって事か?」
「『住む』なんて言ってないわよ」
「そう聞こえた」
「そう、なら、住んじゃおうかしら?」
「行って来い」
「じゃあ、明日から家を留守にするわ。改めてよろしく」
「ああ」

 いやにすんなり受け入れたアルヴェードの顔をエリザータは覗き込む。

「なんだ?エリザータ?」
「何かあった?」

 アルヴェードは、エリザータの左手薬指を取る。そして、そこに収まっている結婚指輪を撫でた。そして、一旦ため息をついた後、答えた。

「ベルカイザ号の造船で融資してくれたルルコスに、負担をかける事になる。次回の航海の予約が伸び悩んでいてな。このままだと、財閥内の企業が倒れる。だから、場合によっては融資返済を待ってもらう事になる。それを指示するかどうか迷っているんだ」
「あら、らしくないのは、私だけでなかったのね?らしくないわよ。ルルコスは、うまくやるわよ。と言うか、今度こそ、財閥の力を借りずにうまくやって欲しいわ。いつまでも甘える銀行であって欲しくない。もう私のパパは頭取を辞めて、私の家族は関係無くなった銀行だけど、後継の頭取には踏ん張ってもらおうかしら。やっちゃいなさいよ」
「ありがとう。背中を押してくれて」
「どういたしまして。お互い、頑張ろう?」

 夫婦の笑顔が交わされた。

 翌日の夕方、エリザータはミルフォンソの自宅前に立った。そして、呼び鈴を鳴らす。

「はい」

 対応したのは、ミルーネだった。

「ミルーネさん」
「エリザータさんっ!どうされたんですか?」
「えっと、お兄さんいらっしゃいます?」
「ええ!」

 ミルーネは、家の中に戻りながらこう声を上げた。

「お兄様!エリザータさんが来てるよ!!」
「わかったよ」

 交代でミルフォンソが出てきた。

「エリザータさん、今日はどうしましたか?」
「あの、不躾なお願いなんですが、ここにしばらく泊まらせていただけないでしょうか?」
「ええっ?」

 驚くミルフォンソ。その背後のミルーネも驚く。ミルフォンソは、尋ねる。

「えっと、あの、急に何故?」
「その、夫と喧嘩しまして、居場所が家に無くなってしまって、心当たりがここしか無くて。ごめんなさい」

 エリザータは、「ランディレイ王子の時と同じ嘘から始めてどうするのよ?私」と思いつつも、困ったような顔を作り、ミルフォンソを見る。ミルフォンソは一旦困惑の表情を浮かべたが、すぐ優しげな顔になり返答した。

「そういう事なら、どうぞ。上がってください」
「ありがとうございます!」

 エリザータは、感謝の言葉を言いつつ、心の中では謝罪の言葉を言っていた。「ごめんなさい、ミルフォンソさん」と。そんなエリザータにミルーネは声をかけた。

「アルヴェードさんとどんな喧嘩をしたんですか?」
「あの、その、内緒です。恥ずかしいので」
「そうですか」

 家の中に、宿泊者として入るエリザータ。それを見つつ、ミルーネが思案顔になる。

「あの、私の部屋を自由に使ってください。エリザータさん」
「え?ミルーネさんは?」
「王子に事情を話して、王宮にしばらく置いてもらうようにします」
「で、出来るかしら?」
「わかりません。もし駄目だったら、2人で寝ましょう?」
「え、ええ」

 エリザータは少し冷静になる。自分がランディレイを愛人にしていた頃、ランディレイは、平気で自分を長い間留め置いた事を思い出す。そして、王子の婚約者であるミルーネを泊めない筈がないと判断した。

「王宮にまで迷惑かけそうですね、私たちの夫婦喧嘩」
「いいんです!」

 ミルーネは、むしろランディレイの傍に行ける事にうきうきし始めている様子だった。そして、それを傍目で静かに見ているミルフォンソの表情は、曇った。しかし、ミルフォンソは言った。

「気をつけて、行ってくるんだよ?」
「うん!お兄様!!」

 そして、ミルーネは王宮に連絡を取った。すると、二つ返事で宿泊を認められた。しばらくすると、迎えの車が来た。それにミルーネは乗り込み、王宮へと向かって行く。かくして、エリザータはミルフォンソと2人きりとなった。

「色々、ご迷惑をかけます。ミルフォンソさん」
「いいえ。むしろ、妹があんなに笑顔になってよかったと思います。ありがとうございました」

 ミルフォンソの言葉は前向きではあったが、その表情は正反対の物であった。
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