60 / 67
60甘:繋げる失恋の心
しおりを挟む
キャナリーンと奇跡的に繋がる事が出来たその日から、1ヶ月程経った。ブンボル王国は、新しい年を迎えていた。エリザータとアルヴェードは、ようやく方針を決め、ミルフォンソとキャナリーンを会わせる事にした。
「是非、来てください。キャナリーンさん」
「お忙しいとは思いますが、お会いしたいです。ミルフォンソさん」
そう電話でやり取りし、実行する日を迎えた。洒落たレストランにて、エリザータとアルヴェードは2人を待つ。すると、ミルフォンソが到着した。
「エリザータさん、お誘いありがとうございます」
「来てくれて、ありがとうございます。ミルフォンソさん」
それからわずかな時間が過ぎ、キャナリーンが到着。
「アルヴェードさん、遅くなってしまいましたか?」
「いいえ?大丈夫ですよ、キャナリーンさん」
この日の食事会のメンバーが揃う。面識がなく、隣同士で座るミルフォンソとキャナリーンは、お互いが気になってはいたが、食事が運ばれて来た為、エリザータとアルヴェードに促され乾杯をした。そして、夕食を始める。エリザータはミルフォンソと、アルヴェードはキャナリーンと向かい合う形で座っていて、つぶさに表情を伺いながら他愛のない世間話をする。その2人の表情に緊張が無くなったと判断したアルヴェードは、口火を切る。
「さて、今日の本題に行きますか」
ミルフォンソもキャナリーンも首を傾げる。エリザータは言った。
「今から、お二人の自己紹介をお願いします。まずは、貴方から」
エリザータは、ミルフォンソを指名。ミルフォンソは突然の事に戸惑いつつも、口を開く。
「僕は、ミルフォンソ。この度王族に復帰が決まったシュク一族の次期当主です。現在は、王子の側近を務めています」
キャナリーンは、隣に座る男性の身分に驚く。しかし、アルヴェードの微笑みに促され、自己紹介をし始める。
「ええと、私は、キャナリーン。薬剤師をしています」
それを聞き届けると、アルヴェードは言った。
「自己紹介、ありがとうございました。これから、少し私たち夫婦の話に付き合ってください」
ミルフォンソとキャナリーンは、疑問の目をしつつも頷いた。エリザータは言った。
「もしかしたら、お気に障る事を言うかもしれません。ご了承ください」
「では、お話しします。単刀直入に言いますと、ミルフォンソさんとキャナリーンさんには共通点があります。それは、失恋をされた方という事です」
「私たち、2人の事をとっても心配しています。けれど、私たちは真の意味でその痛みを知りません。その心の傷に完全に寄り添えないと思いました」
「そこで、差し出がましい事とは思いましたが、失恋された方同士で悩み等を共有してもらい、その上でその傷をお互いで癒していただきたいと考え、こちらに来ていただきました」
ミルフォンソとキャナリーンは、顔を見合わせる。それを見届けながら、エリザータは話しを続けた。
「勿論、変な提案ですから、拒否されてもいいです」
「どちらにせよ、私たちはお二人の傷に寄り添わせていただきます」
ミルフォンソは答えた。
「そんな、エリザータさんは話を聞いてくれました。多少、気持ちは楽になりましたよ?」
それに追いかけるようにキャナリーンも答える。
「私も、アルヴェードさんに話を聞いてもらって少し前向きになれたんで、大丈夫です」
エリザータとアルヴェードの「そうですか」という声が揃う。その光景を見ながらミルフォンソは言った。
「でも、ここまでしてくださったのに、拒否するのも抵抗があります。なので、キャナリーンさんと今夜はお話ししてから帰ります」
キャナリーンはそれに返した。
「確かに、ご厚意を無駄にしたくないので、今日は彼と話しをしてみます」
エリザータとアルヴェードの「そうですか!」という声が揃う。そして、それからエリザータとアルヴェードは、ミルフォンソとキャナリーンの話を聞く事に専念した。ミルフォンソは、こう言った。
「レディファーストって言うんでしょうか?女性の貴女からお話を僕に聞かせてください」
「わ、わかりました」
そして、キャナリーンはセブレーノへの想いを語った。ミルフォンソはセブレーノの名前に驚きつつもそれを静かに聞いた。
「何度話しても、辛くてかなしくて、ごめんなさい」
キャナリーンの涙が流れる。ミルフォンソは今にも涙が出てきそうな感覚に襲われる。
「わかります。届けては駄目な気持ちを抱える辛さは」
そう言うと、ミルフォンソはミルーネへの想いを語った。キャナリーンは、未だ涙の中それを静かに聞いた。
「これからも、僕は妹とその夫と共に生きます。おそらく、苦しいんだろうなと思ってますが」
ミルフォンソの涙が目に溜まる。キャナリーンはこう声をかけた。
「私、私が一番辛い失恋をしたって思ってました。けど、貴方は違う。恋した瞬間から、失恋なんて、辛すぎます」
その声は、涙で震えていた。ミルフォンソはかけられた言葉に遂に落涙する。それを隣で見たキャナリーンは思わずそれを手で拭いに行った。ミルフォンソは、お礼とばかりにキャナリーンの涙をその手で拭ってやる。そのキャナリーンが言った。
「もし、貴方がよければ、これからも色々お話しませんか?」
「はい、お願いします」
その光景をエリザータとアルヴェードは、力強く頷きながら最後まで見守った。
「是非、来てください。キャナリーンさん」
「お忙しいとは思いますが、お会いしたいです。ミルフォンソさん」
そう電話でやり取りし、実行する日を迎えた。洒落たレストランにて、エリザータとアルヴェードは2人を待つ。すると、ミルフォンソが到着した。
「エリザータさん、お誘いありがとうございます」
「来てくれて、ありがとうございます。ミルフォンソさん」
それからわずかな時間が過ぎ、キャナリーンが到着。
「アルヴェードさん、遅くなってしまいましたか?」
「いいえ?大丈夫ですよ、キャナリーンさん」
この日の食事会のメンバーが揃う。面識がなく、隣同士で座るミルフォンソとキャナリーンは、お互いが気になってはいたが、食事が運ばれて来た為、エリザータとアルヴェードに促され乾杯をした。そして、夕食を始める。エリザータはミルフォンソと、アルヴェードはキャナリーンと向かい合う形で座っていて、つぶさに表情を伺いながら他愛のない世間話をする。その2人の表情に緊張が無くなったと判断したアルヴェードは、口火を切る。
「さて、今日の本題に行きますか」
ミルフォンソもキャナリーンも首を傾げる。エリザータは言った。
「今から、お二人の自己紹介をお願いします。まずは、貴方から」
エリザータは、ミルフォンソを指名。ミルフォンソは突然の事に戸惑いつつも、口を開く。
「僕は、ミルフォンソ。この度王族に復帰が決まったシュク一族の次期当主です。現在は、王子の側近を務めています」
キャナリーンは、隣に座る男性の身分に驚く。しかし、アルヴェードの微笑みに促され、自己紹介をし始める。
「ええと、私は、キャナリーン。薬剤師をしています」
それを聞き届けると、アルヴェードは言った。
「自己紹介、ありがとうございました。これから、少し私たち夫婦の話に付き合ってください」
ミルフォンソとキャナリーンは、疑問の目をしつつも頷いた。エリザータは言った。
「もしかしたら、お気に障る事を言うかもしれません。ご了承ください」
「では、お話しします。単刀直入に言いますと、ミルフォンソさんとキャナリーンさんには共通点があります。それは、失恋をされた方という事です」
「私たち、2人の事をとっても心配しています。けれど、私たちは真の意味でその痛みを知りません。その心の傷に完全に寄り添えないと思いました」
「そこで、差し出がましい事とは思いましたが、失恋された方同士で悩み等を共有してもらい、その上でその傷をお互いで癒していただきたいと考え、こちらに来ていただきました」
ミルフォンソとキャナリーンは、顔を見合わせる。それを見届けながら、エリザータは話しを続けた。
「勿論、変な提案ですから、拒否されてもいいです」
「どちらにせよ、私たちはお二人の傷に寄り添わせていただきます」
ミルフォンソは答えた。
「そんな、エリザータさんは話を聞いてくれました。多少、気持ちは楽になりましたよ?」
それに追いかけるようにキャナリーンも答える。
「私も、アルヴェードさんに話を聞いてもらって少し前向きになれたんで、大丈夫です」
エリザータとアルヴェードの「そうですか」という声が揃う。その光景を見ながらミルフォンソは言った。
「でも、ここまでしてくださったのに、拒否するのも抵抗があります。なので、キャナリーンさんと今夜はお話ししてから帰ります」
キャナリーンはそれに返した。
「確かに、ご厚意を無駄にしたくないので、今日は彼と話しをしてみます」
エリザータとアルヴェードの「そうですか!」という声が揃う。そして、それからエリザータとアルヴェードは、ミルフォンソとキャナリーンの話を聞く事に専念した。ミルフォンソは、こう言った。
「レディファーストって言うんでしょうか?女性の貴女からお話を僕に聞かせてください」
「わ、わかりました」
そして、キャナリーンはセブレーノへの想いを語った。ミルフォンソはセブレーノの名前に驚きつつもそれを静かに聞いた。
「何度話しても、辛くてかなしくて、ごめんなさい」
キャナリーンの涙が流れる。ミルフォンソは今にも涙が出てきそうな感覚に襲われる。
「わかります。届けては駄目な気持ちを抱える辛さは」
そう言うと、ミルフォンソはミルーネへの想いを語った。キャナリーンは、未だ涙の中それを静かに聞いた。
「これからも、僕は妹とその夫と共に生きます。おそらく、苦しいんだろうなと思ってますが」
ミルフォンソの涙が目に溜まる。キャナリーンはこう声をかけた。
「私、私が一番辛い失恋をしたって思ってました。けど、貴方は違う。恋した瞬間から、失恋なんて、辛すぎます」
その声は、涙で震えていた。ミルフォンソはかけられた言葉に遂に落涙する。それを隣で見たキャナリーンは思わずそれを手で拭いに行った。ミルフォンソは、お礼とばかりにキャナリーンの涙をその手で拭ってやる。そのキャナリーンが言った。
「もし、貴方がよければ、これからも色々お話しませんか?」
「はい、お願いします」
その光景をエリザータとアルヴェードは、力強く頷きながら最後まで見守った。
0
あなたにおすすめの小説
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
離した手の温もり
橘 凛子
恋愛
3年前、未来を誓った君を置いて、私は夢を追いかけた。キャリアを優先した私に、君と会う資格なんてないのかもしれない。それでも、あの日の選択をずっと後悔している。そして今、私はあの場所へ帰ってきた。もう一度、君に会いたい。ただ、ごめんなさいと伝えたい。それだけでいい。それ以上の願いは、もう抱けないから。
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
曖昧な距離で愛している
山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる