ブンボル王国の恋事情

森田金太郎

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60甘:繋げる失恋の心

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キャナリーンと奇跡的に繋がる事が出来たその日から、1ヶ月程経った。ブンボル王国は、新しい年を迎えていた。エリザータとアルヴェードは、ようやく方針を決め、ミルフォンソとキャナリーンを会わせる事にした。

「是非、来てください。キャナリーンさん」
「お忙しいとは思いますが、お会いしたいです。ミルフォンソさん」

 そう電話でやり取りし、実行する日を迎えた。洒落たレストランにて、エリザータとアルヴェードは2人を待つ。すると、ミルフォンソが到着した。

「エリザータさん、お誘いありがとうございます」
「来てくれて、ありがとうございます。ミルフォンソさん」

 それからわずかな時間が過ぎ、キャナリーンが到着。

「アルヴェードさん、遅くなってしまいましたか?」
「いいえ?大丈夫ですよ、キャナリーンさん」

 この日の食事会のメンバーが揃う。面識がなく、隣同士で座るミルフォンソとキャナリーンは、お互いが気になってはいたが、食事が運ばれて来た為、エリザータとアルヴェードに促され乾杯をした。そして、夕食を始める。エリザータはミルフォンソと、アルヴェードはキャナリーンと向かい合う形で座っていて、つぶさに表情を伺いながら他愛のない世間話をする。その2人の表情に緊張が無くなったと判断したアルヴェードは、口火を切る。

「さて、今日の本題に行きますか」

 ミルフォンソもキャナリーンも首を傾げる。エリザータは言った。

「今から、お二人の自己紹介をお願いします。まずは、貴方から」

 エリザータは、ミルフォンソを指名。ミルフォンソは突然の事に戸惑いつつも、口を開く。

「僕は、ミルフォンソ。この度王族に復帰が決まったシュク一族の次期当主です。現在は、王子の側近を務めています」

 キャナリーンは、隣に座る男性の身分に驚く。しかし、アルヴェードの微笑みに促され、自己紹介をし始める。

「ええと、私は、キャナリーン。薬剤師をしています」

 それを聞き届けると、アルヴェードは言った。

「自己紹介、ありがとうございました。これから、少し私たち夫婦の話に付き合ってください」

 ミルフォンソとキャナリーンは、疑問の目をしつつも頷いた。エリザータは言った。

「もしかしたら、お気に障る事を言うかもしれません。ご了承ください」
「では、お話しします。単刀直入に言いますと、ミルフォンソさんとキャナリーンさんには共通点があります。それは、失恋をされた方という事です」
「私たち、2人の事をとっても心配しています。けれど、私たちは真の意味でその痛みを知りません。その心の傷に完全に寄り添えないと思いました」
「そこで、差し出がましい事とは思いましたが、失恋された方同士で悩み等を共有してもらい、その上でその傷をお互いで癒していただきたいと考え、こちらに来ていただきました」

 ミルフォンソとキャナリーンは、顔を見合わせる。それを見届けながら、エリザータは話しを続けた。

「勿論、変な提案ですから、拒否されてもいいです」
「どちらにせよ、私たちはお二人の傷に寄り添わせていただきます」

 ミルフォンソは答えた。

「そんな、エリザータさんは話を聞いてくれました。多少、気持ちは楽になりましたよ?」

 それに追いかけるようにキャナリーンも答える。

「私も、アルヴェードさんに話を聞いてもらって少し前向きになれたんで、大丈夫です」

 エリザータとアルヴェードの「そうですか」という声が揃う。その光景を見ながらミルフォンソは言った。

「でも、ここまでしてくださったのに、拒否するのも抵抗があります。なので、キャナリーンさんと今夜はお話ししてから帰ります」

 キャナリーンはそれに返した。

「確かに、ご厚意を無駄にしたくないので、今日は彼と話しをしてみます」
 
 エリザータとアルヴェードの「そうですか!」という声が揃う。そして、それからエリザータとアルヴェードは、ミルフォンソとキャナリーンの話を聞く事に専念した。ミルフォンソは、こう言った。

「レディファーストって言うんでしょうか?女性の貴女からお話を僕に聞かせてください」
「わ、わかりました」

 そして、キャナリーンはセブレーノへの想いを語った。ミルフォンソはセブレーノの名前に驚きつつもそれを静かに聞いた。

「何度話しても、辛くてかなしくて、ごめんなさい」

 キャナリーンの涙が流れる。ミルフォンソは今にも涙が出てきそうな感覚に襲われる。

「わかります。届けては駄目な気持ちを抱える辛さは」

 そう言うと、ミルフォンソはミルーネへの想いを語った。キャナリーンは、未だ涙の中それを静かに聞いた。

「これからも、僕は妹とその夫と共に生きます。おそらく、苦しいんだろうなと思ってますが」

 ミルフォンソの涙が目に溜まる。キャナリーンはこう声をかけた。

「私、私が一番辛い失恋をしたって思ってました。けど、貴方は違う。恋した瞬間から、失恋なんて、辛すぎます」

 その声は、涙で震えていた。ミルフォンソはかけられた言葉に遂に落涙する。それを隣で見たキャナリーンは思わずそれを手で拭いに行った。ミルフォンソは、お礼とばかりにキャナリーンの涙をその手で拭ってやる。そのキャナリーンが言った。

「もし、貴方がよければ、これからも色々お話しませんか?」
「はい、お願いします」

 その光景をエリザータとアルヴェードは、力強く頷きながら最後まで見守った。
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