ブンボル王国の恋事情

森田金太郎

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64甘:見届ける門出

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季節は過ぎ、冬となった。エリザータは、自宅の外に出て空を見つめる。そして、寒さに震えつつ言った。

「明日、曇りだといいわね」
「そうだな、ミルーネにとってはいい天気だからな」

 傍らのアルヴェードは、そんな妻を温めるように抱きしめた。

 翌日。国にとって特別な祝日が来た。空には青い所は見えなかった。明るく白い雲がひしめき合う空を見上げ、朝早くミルーネはミルフォンソと共に家を出た。ミルーネは、後ろを振り返り、呟いた。

「もう、ここには戻らない」

 傍らに立つミルフォンソに、ミルーネは声をかけた。

「今まで、ありがとうございました。お兄様」
「どういたしまして。行こう、式場へ」
「うん」

 そう、王子ランディレイと王子妃となるミルーネの結婚式の日が来たのだ。式場に行くと、セブレーノがいた。

「しっかり全ての体調管理をさせていただきます」

 ミルーネの病状を管理する為に特別に呼ばれたのだ。ミルーネは、頭を下げ言葉を返した。

「よろしくお願いします」

 最低限の光の下、ミルーネはウエディングドレスに着替える。着替え中の管理だけは看護師を目指していたキャナリーンが務めた。

「素敵ですよ。ミルーネさん」
「ありがとうございます」

 その後、ミルフォンソと共にチャペルへと入るミルーネ。そこには、正装をした王子ランディレイが待っていた。ランディレイは微笑み、ミルーネの到着を待つ。待っている間、ランディレイは感嘆の呟きを漏らした。

「ミルーネ、ああ、綺麗だ」

 そして、夫婦となる2人が並ぶ。セブレーノが近くで見守る中、ランディレイとミルーネは最上の笑顔を交換した。

 やがて、式は執り行われる。誓いの言葉などを交わした後、2人の結婚指輪が交換された。

「ミルーネ、愛しているよ」
「愛してるわ。王子」

 そして、厳かであった式は終了する。式にて正式に王子妃として認められたミルーネにセブレーノが駆け寄ってくる。

「おめでとうございます。休憩に参りましょう」

 そして、ミルーネは、次の行事であるパレードの準備が整うまでの間、暗い部屋に通された。ランディレイもそれに続いて部屋に入る。

「ミルーネ、大丈夫かい?」
「大丈夫よ」

 暗闇の中で、優しい声のやり取りが行われた。一方、部屋の外にはミルフォンソとキャナリーンが来る。キャナリーンは、セブレーノに小さな壺を渡した。

「この大きさで、大丈夫かしら?セブレーノ」
「特別に作ってくれて、ありがとう。さすがに、パレードの車の中にまでついていくわけいかないからさ。万が一の時のために、王子に持ってもらう。ウエディングドレスには、ポケットがないからね」
「セブレーノ先生、キャナリーン、妹のためにお守りの軟膏をありがとうございます」

 セブレーノとキャナリーンは、ミルフォンソに笑顔を向けた。

 そして、パレードの準備が整ったとの連絡がミルフォンソに届く。

「王子、王子妃、お時間です」

 ランディレイとミルーネは、ミルフォンソの声で部屋から出てくる。セブレーノは、ランディレイに先ほどの壺を渡す。

「お妃を、守って差し上げてくださいね」
「わかったよ。ありがとう」

 そして、王子夫妻は、オープンカーに乗る。オープンカーがゆっくり走り出すと、沿道から国民の大きな歓声が上がった。その国民の列の最後あたりにエリザータとアルヴェードの姿が。2人の耳に、その歓声がわずかに届く。アルヴェードが言った。

「始まったようだな」
「そうね。楽しみだわ、王子とミルーネ、いいえ、王子妃の姿を見るのが」

 ミルーネは、ランディレイと共に沿道の国民に対して、手を振り続ける。しかし、パレードが終盤に差し掛かった頃、ミルーネのその手に異変が訪れた。

「駄目」

 ミルーネの手は、火傷してしまった。ランディレイは、軟膏の入った壺を取り出し、急いでその手に塗ってあげた。

「大丈夫だよ、これがあるから」
「ありがとう」

 その様子は、沿道にいたエリザータとアルヴェードの目に届いた。エリザータは、ため息をつきながら呟いた。

「王子、やっぱり王子妃のことになると、強くなるわね」
「王子妃、よくここまで来たな」
「ああ、素敵な夫婦になったわ」
「俺も、そう思う。感動が止まらない」

 エリザータとアルヴェードは微笑んだ。そして、ランディレイとミルーネへ祝福の拍手を惜しみなく贈った。
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