冷たい左手

池子

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第二章

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「まず事件について一から整理してみようか。現段階で不明な点を書き出そう」
倫太郎の私物のノートを貸してもらい、気になる点を書き出していく。


・密室の部屋に出入りした方法
・睡眠薬をいつ混入させたか
・犯人の動機


「こんなところですかね。倫太郎さん他に気になる事はありますか」
「気になる事ではないが、先程皆がいる前で言ったように、睡眠薬はハーブティーに入っていたって事は間違い無いだろう。その証拠が海斗が夜中に目を覚ましてしまったことさ。海斗は昨日殆どハーブティーを口にしなかっだろう、だから睡眠薬の効果があまり発揮されなかったと考えられる」
倫太郎の言う通り昨日飲んだハーブティーに睡眠薬が入っていたのだろう。
しかしそうなると一つ問題が発生してしまう。
「昨日の夜ハーブティーが入れられたティーカップは、どれも同じものを使っていました。のり子さん以外はその時に、睡眠薬入りの水が使用されたハーブティーを飲んでいます。そうなると犯人も睡眠薬を飲んでいる筈なんです。しかし犯人は夜中に犯行を行う事が出来た。どうやって睡眠薬を回避したのでしょうか。それとも、その場で飲んでいなかったのり子さんが怪しいのでしょうか」
「一度厨房に行って昨日のティーカップを確認してみようか」
僕達は厨房に向かう為ホールへ出ると、ホール内は静まり返っていた。
中央の聖母マリアの石像だけが、昨日と変わらずに中央に佇んでいる。
ホールを抜け食堂に行くと、のり子が食事の準備をしていた。
昼食の準備をしてくれているようだ。あんな事があったのにも関わらず、僕達の為に動いてくれる彼女に先程まで向けていた疑念の気持ちを恥じた。
「のり子さん食事の準備ありがとうございます、忙しい中申し訳ありませんが、昨日の夜までの厨房の状況を教えて頂けないでしょうか。誰がハーブティーに睡眠薬を入れたのかを調べたいのです」
「いえ、私にはこれくらいにか出来ないので。厨房の状況ですか・・・。皆様がいらしてから十五時頃までは昼食の片付けなどをしておりずっと厨房におりました。一度自室に戻り一時間程休憩をし、夜の仕込みの為十六時には、また厨房に戻りそこからは皆様にハーブティーを提供するまで殆ど離れておりません。何度か用事で厨房から抜ける時はありましたが、その時は皆様の中の二人以上が必ず食堂におりましたので、何か不可解な行動をとっていたら誰かが気づいていると思います」
「厨房に入って睡眠薬を入れたのは、十五時から十六時ののり子さんが外していた時と考えるのが妥当か。その時間帯は全員が個室で休んでいたから誰にでも可能って事になるね」
倫太郎は顎に手を当てながら、のり子にもう一つ質問する。
「昨夜ハーブティーを飲んだティーカップを見せて頂く事は可能でしょうか」
「ティーカップですね、こちらの棚に閉まってありますのでご確認下さい」
ティーカップは厨房の壁側に設置されてある棚に八つ並べられていた。
「このティーカップは元からこの別荘に置いてあったのでしょうか」
「はい、こちらは以前から別荘に置いてある物のようです。以前この別荘に清掃に入った時には既にこの棚に用意がされておりました」
「なるほど、このティーカップの数は元から八つでしたか」
「はいティーカップは八つでした。セットのソーサーも同じ数です」
「ティーカップの置き場所を知っている方は、のり子さんの他に誰かいますか」
「私以外ですと、食事のご用意、片付けを手伝って頂いた美波様と杏奈様は知っておられます。他には荒井様と慎二様も知っておられると思います。昨日の十六時頃にお二人に軽食をご用意した時に食堂に座られながら私と談笑しておりましたので、この棚からティーカップを用意しているところは見ているかと思います」
倫太郎とのり子の会話を横目に僕はティーカップを手に取ってみた。
どこにでも置いてあるような白いティーカップだ。
一つ一つおかしなところは無いか確認してみたが、傷や色褪せも見られずどれも同じ見た目をしていた。それはソーサーも同じであった。
「どのティーカップも何ら可笑しなところはないね」
「中身のハーブティーに何か変化をつけていたのでしょうか」
「それも考えられなくはないが、ハーブティーは香りが強い為匂いに変化をつけるのは難しいと思う。色見の変化も誰かに気付かれてしまう可能性もある。やはり考えられるとしたらこのティーカップの方だろう」
一応の為他の食器類も確認してみたが可笑しなところは見られなかった。
そんな中のり子が、何かを思い出したように両手を叩く。
「そういえば事件とは関係あるか分からないのですが、昨夜の二十二時三十分頃、厨房にいた私の元へ真琴様が来られました。部屋に備え付けの灰皿を持ってきて中にある煙草の吸殻を捨てて欲しいと頼まれたんです。それと布巾があれば貸して欲しいと言われました。灰皿の中にはまだ十本程しか吸殻がなかったので、何故この少量の吸殻を捨てる必要があるのだろうと疑問に思いました」
倫太郎はのり子の話を聞くと顎に手を当てたまま少し考えこんだが、そのままお礼を言って食堂を後にした。
「もう一度現場の確認をしたいから真琴先生の部屋に行こう。俺が中に入るから海斗は部屋の外で待ってていいよ」
正直倫太郎の申し出は有り難かったが、僕は首を横に振った。
「一緒に解決すると言いました、辛いけど僕は現実から目を背けたくないです」
僕の言葉に倫太郎は少し微笑むと、前を向き真琴先生の部屋へ向かった。
僕も離されないように後を追いかけた。


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