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第二章
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しおりを挟む昨晩同様にホールのメインの照明は消えており、オレンジ色の照明が付いていた。
中央の聖母マリアの石像は暖かい光に包まれている。
僕達以外は全員、部屋へ戻ってはいるが起きてはいる様だ。
扉下から部屋の灯りが細く漏れている。
あんな事が起こった後なのだ、無理もないだろう。
そんな中、倫太郎が聖母マリアの石像の前で急に立ち止まる。
「海斗の両親はどんな人なんだい」
「急にどうしたんですが、普通だと思いますよ。敢えて言うのであれば母はお喋り好きで、父は物作りが趣味と言ったところでしょうか」
「そういえば海斗の部屋にある家具は、全部お父さんが作ってくれたんだっけ。以前見た時は売り物みたいで本当に驚いたな。一から何かを作り出す事は簡単な事ではないから、海斗のお父さんの事本当に尊敬するよ。この間遊びに行った時は、二人とも外出していて会えなかったけれど、また今度海斗の家に行った時にはご挨拶させてね。その時に海斗のお父さんが、家具を作っているところ見てみたいなあ」
「辞めといた方がいいですよ。僕の父は教えたがりの人間なんで、そんな事言ったら調子に乗って父の気が済むまで家から帰れなくなりますよ」
そう言うと倫太郎は大きく口を開けて笑った。
「それも良いかもね、海斗のお母さんとも喋りしたいし、お父さんからもいろいろとご教授願いたいよ。本当にそのまま海斗の家の家族にしてほしいくらいだ」
横から見た倫太郎の顔は笑ってはいるが、どこか寂しそうでもあった。
彼は今、自分の家族の事を考えているのだろうか。
そんな寂しげな彼の顔を見て、僕は居ても立っても居られなくなった。
「倫太郎さん、僕の家では毎年お盆に親戚の集まりがあるのですが、皆僕よりずっと歳上だから話も合わなくてつまらないんです。でも倫太郎さんがその場にいてくれれば、僕はそんな事もへっちゃらだと思うんです。なので僕の為に家に遊びに来てくれませんか。つまらない親戚の集まりなんて抜け出して、庭で花火でもやりましょう。僕沢山用意しておきますね」
倫太郎は目を見開き、驚いた様に僕を見る。
僕は倫太郎を見つめ返した。
目が合ったまま数秒経ち、倫太郎は吹き出すように笑う。
「それじゃお邪魔させて貰おうかな。親戚との退屈な世間話なら任せて、俺口だけは上手いから」
そう言って倫太郎は食堂へと歩き出した。
僕に背を向け歩みを止めないまま、彼は恥ずかしそうにこう続ける。
「海斗、ありがとう」
その言葉に嬉しくなった僕は彼の背中を追いかけ、
「僕の為ですからね」
と念を押してもう一度言うと、倫太郎はまた口を大きく開け笑った。
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