42 / 105
第二章
2-7
しおりを挟む
赤い夕焼けが皺枯れた細い指の影を深く浮かび上がらせる。
文机の前に正座して、お妙は静かに硯に向かい墨を磨っていた。これから記す決まり文句のような出だしは頭に入っている。しかし、そこから先の部分のを何と記すべきか。思いつく事柄を全て並べ立てては順序などに思いを巡らしていると、取り止めも無くなり堂々巡りしてしまう。
鈴虫の閉じ込められた堂に佐吉が入ってからだいぶ時間が経っていた。嘉平が戻る前に大まかな所は仕上げおきたいものだ。耄碌したと自分を叱咤しながら白い木綿の布を晒布を広げた。ふと赤ん坊の顔が脳裏に浮び、お妙の手が暫し止まる。そう、鈴虫は小さく生まれついた愛らしい顔立ちの男の子だった。
あの日…孫娘を亡くた悲しみを誰にも悟られまいと、気丈に釜戸の前に立っていたお妙の元に、血塗れの嘉平が駆け込んできた。その胸に抱かれていた未だ胎脂に覆われた赤ん坊…神か仏が願いを聞き届けて、再びこの手に授けてくれた大切な命。お妙にとってはその子が男の子でも、忌み子の産んだ子でも、どうでも良かった。失われた孫娘が姿を変えて戻って来てくれたようで、ただ愛しくてたまらなかったのだ。
その子が今、どうにもならない自らの体と闘っている。
「鈴虫よ…私はこれで最後になるかも知れない…あぁ、この後は喜一郎の嫁に伝えていければ良かったのに…ごめんよ、鈴虫。さぞや心細かろう…」
お妙は筆を握ると白い布地に文字を連ねてゆく。
そこには鈴虫が観世音菩薩の現身として振舞うにあたり、その功徳に浴する者が守らねばならない約束事を書き記さねばならない。体が小さく、あまり丈夫とは言えない鈴虫を思うと、乱暴な扱いをされる事は絶対に避けたい。まずはその辺りを明記しておこう。
それから…
お妙の手は何度も止まる。時に小さな喜一郎を抱き上げる雪虫の笑顔が浮び、時に首を括った嫁の苦悶の顔が浮ぶ。色々ありすぎた人生に、更に鈴虫の悲しみが刻まれようとしている。
この掟に携わる誰もが、それぞれの運命に弄ばれる事からは逃れられないのは分っている。どうせ逃れられないのならば、その対価として出来うる限り大きなものを得てやろう。お妙は精一杯思案を巡らせて巧妙な文章を組み立ててゆく。これが鈴虫に代わってしてやれる運命への仕返しだ。
お妙は滑らせる墨の跡を涙で滲ませないように気を張って筆を進めた。
山の端に夕日が隠れる頃に嘉平は何とか屋敷に戻ることが出来た。上ノ村の村長は怪我を負った際に、鈴虫の体の様子を診ていたので話は早かった。「始まったようだ」その一言で全てを察した上ノ村長は近隣への手配を請け負ってくれると言う。嘉平は屋敷の中の事と、村の女子供への対処をすれば良いだけだ。
しかし、そうは言っても簡単なことではない。時期があまり良くないのだ。どうせならば稲の刈り取りが終わった後の秋の祭礼の時期と被って貰えれば良かった。そうすれば自然と女や子供の目を逸らすことが出来ただろう。しかし凡その時期は見当がついても、その通りに鈴虫の体に観世音菩薩の御力が宿るとは限らないのだ。
何と言い繕って時期を早めようか。嘉平は思案に暮れながら、とうとう屋敷まで辿り着いてしまった。
「母さま、ただいま戻りました。手配は引き受けてくれるそうです。そして、これ、ここに、上ノ村より葛粉を分けていただきました。食の落ちた鈴虫の口に入れて欲しいとの事です。頃合を見て葛湯を作りますのでお運び願います。」
「心得たよ。で、嘉平や、書き止める文言はこんなものでどうだろうか。」
畳の上に広げられた晒布に綿々と綴られた文言は見事なものであった。
「母さま、見事にございます。」
お妙はそれを聞くと安堵の溜息を吐いた。
「そうかね、あぁ、では私はまだ早いけれど、もう寝かせてもらいますよ。お前も何か食べてから早々に休みなさいね。」
「…そうですね、でも…佐吉が堂を出るのを確かめてから休もうと思います。」
「そうかい、あの二人…引き剥がすのは可哀相な気もするけど…仕方が無い。後のことは頼んだよ。おやすみなさい。」
嘉平はお妙に背を向けて襖を閉めると、静まり返った廊下を厨へと向かい、小さく燈した明かりを頼りに鍋底を浚って簡単な夕餉を済ませた。この明かりが燃え尽きるまでに嘉平にはもう少しやるべきことが残っている。足早に納戸へ行き、普段余り使われていない行灯を一つ用意する。そして行李を開けて古びた女物の着物を一枚取り出した。その着物は薄い単衣で、あちこちに継接ぎのある酷く粗末なものであった。それらを持って廊下を戻り、自室に入るとそれらを入り口近くに置いたまま横になった。
屋敷の中は静まり返っていた。少し前まで虫や蛙の鳴き声が賑やかだったのが、今はすっかり落ち着いた会話の様な音色になっている。いつのまにか忍び足で季節は通り過ぎて秋めいた空気へと変わっていた。物寂しい沈黙の中に嘉平は独り佇みながら物思いに耽る。
「南無観世音菩薩…南無観世音菩薩…南無…。」
表で僅かに戸の閉まる音が聞こえた。思っていたよりも早く佐吉は堂を出たようだ。嘉平は昼間の疲れと、二つ目の言い付けが守られたことを確認できた安堵感から、強烈な眠気に襲われてそのまま朝まで眠りに付いた。
足音を忍ばせて佐吉は家路を急ぐ。誰の目にも留まらぬように家まで帰らねばならないのだ。
蛇がとぐろを巻くように、佐吉の中には悲しみや、切なさや、愛しい者を守りきれない不甲斐無さ、ありとあらゆる負の感情が渦巻いていた。あんな状態で鈴虫を独り置いてきたかったわけが無い。出来る事ならば二人で遠くへ逃れて、二度とこの土地へ戻りたくなかった。しかし、もし捕まれば今度こそ鈴虫の体はただでは済まされないだろう。結局は一緒に居残ることも、連れて逃げる事も叶わないのだ。
佐吉の頭上には一筋の雲も無い夜空が広がっていた。人間の気持ちなどとは関係なく自然は美しい。ただ凛と澄み切った漆黒の中に白い月と星が明るく輝いている。そして、そこから降り注ぐ淡い光が地上を青く照らし、佐吉の帰るべき道を真っ直ぐに指し示す。真綿のように白くて軽い鈴虫をその背に負って通った道を、今夜は青黒く重い孤独を抱えて独り行く。これが目印だよと教えた柿木から道を逸れると灯りの無い我が家だ。
佐吉は家まで辿り着きはしたが、親父と喜一郎の顔をまともに見ることも、話をすることも出来るとは思えなかったので、そのまま音を立てぬようにして作業小屋へと独り入って行った。
格子窓から僅かに月光の漏れる薄暗い作業小屋で膝を抱えると、否が応にも鈴虫の顔が脳裏に浮んだ。ほんの少し前まで繋いでいた指が温度を失っゆく。目頭に溜まる感情を押し殺そうと、佐吉は瞼をきつく閉じ、両の拳を固く握り締めた。
「…すず…すず、俺は…俺は!…ごめんよ…やっぱり、俺は無力だっ!!ごめん…ごめんよ…俺は一体どうすれば良かったんだろうか。」
おら、しあわせだから…だいじょうぶ…
閉じた瞼の裏で鈴虫が笑った。
精一杯の優しい言葉をくれた瞼の裏の鈴虫を手放したくない。佐吉は喉を詰めて声を殺し、真っ黒な天井に向かって鈴虫の名を呼んだ。闇の中に伸ばした手は、空を掴み決して鈴虫には届かない。そんな事は分っている。それでもそうせずには居られなかった。
「…お鈴ちゃん…俺の手を離さないでよ…俺も離さないから…」
佐吉は暗い空間を掴んだまま力無く床に横になると、独りぼっちの眠りに就いた。
文机の前に正座して、お妙は静かに硯に向かい墨を磨っていた。これから記す決まり文句のような出だしは頭に入っている。しかし、そこから先の部分のを何と記すべきか。思いつく事柄を全て並べ立てては順序などに思いを巡らしていると、取り止めも無くなり堂々巡りしてしまう。
鈴虫の閉じ込められた堂に佐吉が入ってからだいぶ時間が経っていた。嘉平が戻る前に大まかな所は仕上げおきたいものだ。耄碌したと自分を叱咤しながら白い木綿の布を晒布を広げた。ふと赤ん坊の顔が脳裏に浮び、お妙の手が暫し止まる。そう、鈴虫は小さく生まれついた愛らしい顔立ちの男の子だった。
あの日…孫娘を亡くた悲しみを誰にも悟られまいと、気丈に釜戸の前に立っていたお妙の元に、血塗れの嘉平が駆け込んできた。その胸に抱かれていた未だ胎脂に覆われた赤ん坊…神か仏が願いを聞き届けて、再びこの手に授けてくれた大切な命。お妙にとってはその子が男の子でも、忌み子の産んだ子でも、どうでも良かった。失われた孫娘が姿を変えて戻って来てくれたようで、ただ愛しくてたまらなかったのだ。
その子が今、どうにもならない自らの体と闘っている。
「鈴虫よ…私はこれで最後になるかも知れない…あぁ、この後は喜一郎の嫁に伝えていければ良かったのに…ごめんよ、鈴虫。さぞや心細かろう…」
お妙は筆を握ると白い布地に文字を連ねてゆく。
そこには鈴虫が観世音菩薩の現身として振舞うにあたり、その功徳に浴する者が守らねばならない約束事を書き記さねばならない。体が小さく、あまり丈夫とは言えない鈴虫を思うと、乱暴な扱いをされる事は絶対に避けたい。まずはその辺りを明記しておこう。
それから…
お妙の手は何度も止まる。時に小さな喜一郎を抱き上げる雪虫の笑顔が浮び、時に首を括った嫁の苦悶の顔が浮ぶ。色々ありすぎた人生に、更に鈴虫の悲しみが刻まれようとしている。
この掟に携わる誰もが、それぞれの運命に弄ばれる事からは逃れられないのは分っている。どうせ逃れられないのならば、その対価として出来うる限り大きなものを得てやろう。お妙は精一杯思案を巡らせて巧妙な文章を組み立ててゆく。これが鈴虫に代わってしてやれる運命への仕返しだ。
お妙は滑らせる墨の跡を涙で滲ませないように気を張って筆を進めた。
山の端に夕日が隠れる頃に嘉平は何とか屋敷に戻ることが出来た。上ノ村の村長は怪我を負った際に、鈴虫の体の様子を診ていたので話は早かった。「始まったようだ」その一言で全てを察した上ノ村長は近隣への手配を請け負ってくれると言う。嘉平は屋敷の中の事と、村の女子供への対処をすれば良いだけだ。
しかし、そうは言っても簡単なことではない。時期があまり良くないのだ。どうせならば稲の刈り取りが終わった後の秋の祭礼の時期と被って貰えれば良かった。そうすれば自然と女や子供の目を逸らすことが出来ただろう。しかし凡その時期は見当がついても、その通りに鈴虫の体に観世音菩薩の御力が宿るとは限らないのだ。
何と言い繕って時期を早めようか。嘉平は思案に暮れながら、とうとう屋敷まで辿り着いてしまった。
「母さま、ただいま戻りました。手配は引き受けてくれるそうです。そして、これ、ここに、上ノ村より葛粉を分けていただきました。食の落ちた鈴虫の口に入れて欲しいとの事です。頃合を見て葛湯を作りますのでお運び願います。」
「心得たよ。で、嘉平や、書き止める文言はこんなものでどうだろうか。」
畳の上に広げられた晒布に綿々と綴られた文言は見事なものであった。
「母さま、見事にございます。」
お妙はそれを聞くと安堵の溜息を吐いた。
「そうかね、あぁ、では私はまだ早いけれど、もう寝かせてもらいますよ。お前も何か食べてから早々に休みなさいね。」
「…そうですね、でも…佐吉が堂を出るのを確かめてから休もうと思います。」
「そうかい、あの二人…引き剥がすのは可哀相な気もするけど…仕方が無い。後のことは頼んだよ。おやすみなさい。」
嘉平はお妙に背を向けて襖を閉めると、静まり返った廊下を厨へと向かい、小さく燈した明かりを頼りに鍋底を浚って簡単な夕餉を済ませた。この明かりが燃え尽きるまでに嘉平にはもう少しやるべきことが残っている。足早に納戸へ行き、普段余り使われていない行灯を一つ用意する。そして行李を開けて古びた女物の着物を一枚取り出した。その着物は薄い単衣で、あちこちに継接ぎのある酷く粗末なものであった。それらを持って廊下を戻り、自室に入るとそれらを入り口近くに置いたまま横になった。
屋敷の中は静まり返っていた。少し前まで虫や蛙の鳴き声が賑やかだったのが、今はすっかり落ち着いた会話の様な音色になっている。いつのまにか忍び足で季節は通り過ぎて秋めいた空気へと変わっていた。物寂しい沈黙の中に嘉平は独り佇みながら物思いに耽る。
「南無観世音菩薩…南無観世音菩薩…南無…。」
表で僅かに戸の閉まる音が聞こえた。思っていたよりも早く佐吉は堂を出たようだ。嘉平は昼間の疲れと、二つ目の言い付けが守られたことを確認できた安堵感から、強烈な眠気に襲われてそのまま朝まで眠りに付いた。
足音を忍ばせて佐吉は家路を急ぐ。誰の目にも留まらぬように家まで帰らねばならないのだ。
蛇がとぐろを巻くように、佐吉の中には悲しみや、切なさや、愛しい者を守りきれない不甲斐無さ、ありとあらゆる負の感情が渦巻いていた。あんな状態で鈴虫を独り置いてきたかったわけが無い。出来る事ならば二人で遠くへ逃れて、二度とこの土地へ戻りたくなかった。しかし、もし捕まれば今度こそ鈴虫の体はただでは済まされないだろう。結局は一緒に居残ることも、連れて逃げる事も叶わないのだ。
佐吉の頭上には一筋の雲も無い夜空が広がっていた。人間の気持ちなどとは関係なく自然は美しい。ただ凛と澄み切った漆黒の中に白い月と星が明るく輝いている。そして、そこから降り注ぐ淡い光が地上を青く照らし、佐吉の帰るべき道を真っ直ぐに指し示す。真綿のように白くて軽い鈴虫をその背に負って通った道を、今夜は青黒く重い孤独を抱えて独り行く。これが目印だよと教えた柿木から道を逸れると灯りの無い我が家だ。
佐吉は家まで辿り着きはしたが、親父と喜一郎の顔をまともに見ることも、話をすることも出来るとは思えなかったので、そのまま音を立てぬようにして作業小屋へと独り入って行った。
格子窓から僅かに月光の漏れる薄暗い作業小屋で膝を抱えると、否が応にも鈴虫の顔が脳裏に浮んだ。ほんの少し前まで繋いでいた指が温度を失っゆく。目頭に溜まる感情を押し殺そうと、佐吉は瞼をきつく閉じ、両の拳を固く握り締めた。
「…すず…すず、俺は…俺は!…ごめんよ…やっぱり、俺は無力だっ!!ごめん…ごめんよ…俺は一体どうすれば良かったんだろうか。」
おら、しあわせだから…だいじょうぶ…
閉じた瞼の裏で鈴虫が笑った。
精一杯の優しい言葉をくれた瞼の裏の鈴虫を手放したくない。佐吉は喉を詰めて声を殺し、真っ黒な天井に向かって鈴虫の名を呼んだ。闇の中に伸ばした手は、空を掴み決して鈴虫には届かない。そんな事は分っている。それでもそうせずには居られなかった。
「…お鈴ちゃん…俺の手を離さないでよ…俺も離さないから…」
佐吉は暗い空間を掴んだまま力無く床に横になると、独りぼっちの眠りに就いた。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる