お伽話 

六笠 嵩也

文字の大きさ
64 / 105
第二章

2-29 ★

しおりを挟む
「あの男…もしや……」

「あの男がどうされましたか?」

「いいえ、何でもありません。気にしないで。あの二人…二十歳を越えていそうなので他での経験があるではないかと思っただけよ。」

お妙は列の後へと姿を隠した男と、いま鈴虫を犯している男にどことなく違和感を覚えた。どうやら何も知らずにここへ来たわけではなさそうだ。

「さぁて、随分と待たされちまった。現身様の宝物がすっかり萎えちゃったけどよ、どうしてくれようか?ご自分で扱いて貰おうか?ほうれ、手を添えて…なぁ…現身様が昇天する時、この温かい襞がどんな風になるのか楽しませてもらいたいのぉ。」

「ぃやっ!…しない…そんなの…おらの役目じゃない…」

散々らさせた男は、焦らせれついでに面白い事をしてやろうと欲をかいているようだ。鈴虫の体を下から貫いたままで、ニヤニヤと含みのある嗤いを漏らしている。

「そうですか?俺は親切で言ってやったんですぜ?気持ちいいところを弄られまくって、本当はこの男の部分を使いたくなってきたんじゃないですかね?ふふっ、こうやってシコシコとマス掻きたいのを我慢しているんだろう。」

「ちがう…もうおらのことは見るな。はやく終わらせて…」

「現身様ともあろう御方が人間みたいに酷い事を言うなんて…。分りました、見ません。どっちにしろ、こっちからでは見えないんでね。では、現身様の感じやすいところを丁寧に扱いて差し上げよう。」

そう言うと男は鈴虫の撓垂しなだれた花芯を右手で包み込んだ。思わず鈴虫は首を横に振って拒絶を露わにする。しかし男は器用に包皮の上から裏筋とカリの辺りを柔らかく摘まんでゆるゆると刺激し始めた。

「…ぃやぁ…ぃやぁ…」

「嫌っていう割にはアソコがぐちゃぐちゃに濡れてますが?中も吸い付くみたいにうねって…あぁぁ…こうしているだけでも達してしまいそうだ…ふぅっ…もう…食べちゃいたい!…なんてね。」

結合部分から溢れ出した体液が行燈の火にヌラヌラと照らされていた。それは鈴虫が放つ甘い香りと相まって、滑らかな曲線を成す飴細工のようでもある。そんな光景を幾つもの目が見詰めていた。これから天から舞い降りた美しい観世音菩薩様が一般衆生の面前で絶頂を迎えて吐精してみせようというのだ。

「ほうれ、お手々がお留守だ。ちゃんと自分で持ってしごかなくちゃ。…ほぅれ、自分の気持ちいいところを…俺にも教えて下さいませ。」

「ぃやぁぁ…で、出ちゃう…いやなの!…うぅん…ぃやぁ…そこ、やめて…出ちゃう…」

口では必死に拒絶しているが、鈴虫の体はもう刺激に抗うのが難しくなってきていた。体を後ろから貫いている太い楔は最奥の敏感な部分に当たったままで、それに加えてまだあまり強い刺激に慣れていない花芯に対してこの責めである。無意識の内に溢れ出る蜜は、ほんの少し動くだけでもヌチャヌチャ…っと卑猥な水音を立ててしまう程に増えてきている。その流れはすでに男の腰を滴り落ちて布団の上にポツリと染みをつける程に広がっていた。

「ぃやぁ…あぁぁ…ゆるして…ぃやぁ…出したくなぁい…見ないで…ぃやぁ…」

「現身様…なぁんて…きれいなんだ…着ている物なんか全部脱がせて、その肌にしゃぶりつきてぇよ…気持ちいいか?良いだろう?俺のを咥え込んだまま…あぁぁ…アッ!俺まで達してしまいそうだ…アッ!すげぇ絞まるッ!」

不意にお妙が大きな声を上げた。

「あのぅ、少々お待ちくださいませ!
 現身様はあまり体が丈夫では御座いません。故に、一度達してしまうと眠ってしまうかもしれません。そうするとこの後にお待ちいただいている方々は何もしないままお帰り頂くことになりますが宜しいでしょうか?」

「…はぁ?」

観衆が騒ぎ出した。散々待たされているのに、見るだけで終わりでは納得がいくわけもない。

「おい!余計な事はするんじゃねぇ!さっさとしろ!」
「冗談じゃねぇぞ!」
「ここまで来て何も出来ないなんて赦さんからな!」

「はぁ?…そ、そんな?…あ、あぁ、悪かったなぁ。じゃぁ、余計な見世物は省いて、現身様を堪能させていただきます!」

鈴虫が短い悲鳴を上げた。急に男の腕が回り込んできたと思ったら、一瞬体が宙に浮いたのだ。男は鈴虫の軽い体をひょいと抱え上げると、結合したまま上手いこと四つん這いにした。ほんの一瞬の事で鈴虫は訳が分からない。先程まで可愛がられていた花芯は昇り詰める手前で放置されてしまった。

「恨まねぇでくだせぇよ。現身様の体がもたないんじゃしょうがねぇ。代わりに中から気持ち良くしてさしあげますから。ここ、気持ちいいらしいですねぇ…この、小振りな胡桃のようなところ。感じちゃうんでしょう?知ってるんですぜ。」

「アッ!ぃやっ!…ダメ…うぅん…あぁぁ…そこ…アッ!…アッ!ぃやっ!」

「ほぅれ、気持ちいいだろ?…俺もイイ…いいよ…あぁぁ…その白い肌…食っちまいたい…ハァハァ…」

男は鈴虫の腰を鷲掴みにして律動を始めた。大概の男が感じてしまう場所をこの男も良く心得ている。やはり他での経験があってのことか。的確に鈴虫の前立腺を責めてきているのだ。

「ダメ、ダメって…そればっかだな。わかってますよ。寝ちゃうんでしょ?だから…ハァハァ…俺だけ…俺だけ…ぁああぁあぁっ!ハァハァ…アッ!で、出る…うッ!…ハァハァ…奥に…奥に種付けして…たっぷり…種付けしてやるぜ…アッ!」

男は浅い位置から一気に最奥を突きさしてきた。ピリピリと細かく弾くような刺激が背骨を駆け上がってくる。体の全てを満たすように密着して、男は最奥の壁に頭を突っ込んで射精した。

「…ぃ…ぃ…ぃや…だよ…あぁ、いっぱい…とめて…熱いの…入ってくる…とめてよ…」

ぽろり…ぽろり…と、もう何度目かわからない。誰も拭いてくれない涙を鈴虫は下を向いたまま零していた。

お妙が風野の袖を引き、そっと耳打ちする。

「さっき、あの男が肌にしゃぶり付きたいって言ったでしょう。いえね、他の村で忌子が無理強いされて首に大怪我しまして、それ以来気が触れてしまったって事があったんですよ。誰がやったのかが未だ分からないのですが、案外とこういう若い者が勢いに任せて無理をさせたんじゃないかと思いましたの。こういう場合は止めないと大事になりかねません。」

「…うぅむ…そうでしたか。私もあの者に目を光らせておいた方が良いですね。」

「まぁ、分かりませんが…その方が良いでしょう。どうも…噛みつきたがる性癖の者が存在すのは確かなようでございます。」

「…じ、慈照様…も?慈照様も同類だとおっしゃいますか?」

「そうですねぇ…何を考えてやったのかは分かりませんが、行動は同じでしょ。ですから鈴虫がまたしても狙われないとも限りません。よく見張って下さいませ。襲い掛かってきましたら、殴り倒しても構いません。…まぁ、死なない程度にお願いしますよ。」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...