縛り合いから始まる・・・

國村城太郎

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1.再会

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 入学して間も無くの履修届を提出した帰り道。僕は出会ってしまった。一生を共にしたい、コトと人に・・・・。
 
 鹿山《かやま》智幸ともゆき18歳、彼女いない歴年齢の陰キャのモブ。成績は悪くなかったので、都会の公立大学に入学こそできたが、目立たないその他大勢の一人だ。
 
 その日、履修届を出し終えて、時間を持て余していた僕は、大学の近くをフラフラと散策していた。そこで見つけたギャラリーでやっていた写真展にふらっと入ってしまった。決してチラシを配っていたお姉さんが綺麗だったからという下心ではない・・・と思いたい。
 
 アングラ系の写真、少し扇情的な薄着の写真を、顔を赤くしながら緊張しつつ見て回っていた中で、私は人生を変える一枚の写真と出会い、目を釘付けにされてしまった。
 
 暗めの和室の中で、一人の浴衣の女性が、縄で縛られている写真。肌なんかほとんど露出していない、特別にイヤらしいポーズをしているわけでもない、ただ畳の上で寝転んで縛られている浴衣女性というそれだけのモノのはずなのに、僕はとてつもなく美しく、そしてイヤらしいとそう感じてしまっていた。

 衝撃を受けてその前で固まっている僕は、その横に立ち止まって、同様に心を奪われている人間がいるのにしばらく気づいていなかった。
 
 真横に自分のように固まっていた他人に気づいた僕は、このまま魅入っていたいのを我慢して、視線をそちらに向ける。
 おそらく同年代の女性、だが何か既視感がある。・・・想い出そうと見つめていると、相手もこちらの視線に気付いてこちらを向く。じっと見つめていた事に罪悪感を覚えて目を伏せると、その女性が声を掛けてきた。
 
「ねぇ、もしかして、トモ?」
 
「エ?」と変な声が出て相手の顔を見直す。小さな頃の友人に呼ばれていた時の呼び方が『トモ』だ。誰だろう?と無言のまま考えていると、痺れを切らしたのか向こうから名乗ってきてくれた。
 
「私、モコよ、狭川《さがわ》萌子もえこ、忘れちゃった?」
 
「え?モコちゃん」その名前は忘れられない、保育園から小学校、中学2年まで隣に住んでいた同級生、おそらく初恋だったはずの女の子。
 
「人違いじゃなくて、良かった。今はこの辺りに住んでるの?あ、良かったら、ここ一階に喫茶店があったからそこでお茶しない?懐かしい、どうしてるか教えて」

「う、うん。会えて嬉しいよ」女の子と喋るなんて、恥ずかしくて殆ど普段はまともに出来ないのに、この時は幼い頃の懐かしさと親しさが勝ったのか、それ程キョドッた変な返事はせずに済んだ。
 
 二人で近況を話す。僕は近くの公立大学にこの春から通ってる事、今も家は同じ実家から通っているから、少し時間がかかること。
 彼女は近くの私大にやはりこの春から通っていて、彼女の実家は引越しで遠方なので、近くのマンションに一人暮らししている事。
 そして話題はさっきの写真の事になった。
 
「凄い真剣に見てる人がいるので私もよくみちゃったんだけど、凄かった。あの写真。とても綺麗だった。特にモデルの女性の目に引き込まれたわ。横の説明にあったけど、『緊縛』って言うんだってアレ」
 
「うん、恥ずかしいけど、僕はとても綺麗だと思って、吸い寄せられるみたいに思った。緊縛、アレ覚えるの大変なのかな?凄い憧れたよ」
 
「私も凄いしてみたくなって・・・」
 
 二人して黙って考え込む・・・。
 
「「良かったら、あなたを縛らせてくれない?」」完全に二人の声がハモった。
 
 二人して黙り込んでしまうと、横から声がした。
 
「縛り合い、してもいいのよ、そうやって練習する人も多いわよ」と、横の席に座ってる大人の女性が話しかけてきた。さっきチラシを渡してくれた人だと思った。
 
「え、えーと、どなたですか?」モコが女性に問いかける。
 
 すると女性は、眼鏡を外し、髪留めを外すと、頭を振るようにして、上げていた髪の毛を下ろした。
 
「これならわかる?」とニッコリ笑う。ら
 
「「あー、さっきのモデルさん」」また、二人の声がハモった。
 
「ふふ、仲良いのね。突然、話しかけて御免なさいね」と笑いかけて色々と話をしてくれた。
 
 縄の練習は生徒同士が縛りあってやったりする事は多い事。特定の相手を決めて練習した方が上達が早い事。
 彼女も実は縛れる事。
 そして、写真で彼女を縛ってくれた緊縛師の先生を、紹介してくれると約束をしてくれた。
 この近くに緊縛サロンという種類のお店があり、彼女が店主をしている事、そこで月一で縄の教室をやっている事。そこで縄を教えてくれているのが、その先生なのだという事。
 
 そこは平日の昼間にも空いてるのが特徴のお店で、二人の都合の合う次の月曜日の午後、二人でそこに遊びに行く事になった。その日はその先生も来てくれる日というのも決め手だった。。
 
 家に帰った僕は、興奮を抑えるのに必死になった。小さい時好きだった女の子と、縛り合い・・・するのだ。
 部屋で貰った名刺を眺める。
 
 緊縛サロン 翠《みどり》
 店主 蒼葉《そうば》 抄妓《しょうこ》
 
 綺麗な人だったな・・・でも、縄を受けたあの写真は・・・もっと・・・ゴク。
 それに、モコを・・・縛る・・・のだよな・・・ゴク。涎を飲み込む音が、静かな部屋で大きく聞こえる。

 ポン・・・SNSのメッセージ通知がスマホに届いた。
 
 モコ:「久しぶりに会えて嬉しかったよ。元気そうでよかった。月曜日楽しみだね」
 
 トモ:「僕も会えて嬉しかったよ。月曜日よろしくね。でも縛るって本当に僕でよかったの?」
 
 モコ:「トモだから、安心かなぁ・・・って思ったの。あ、でも彼女とかいて怒られたりする?それなら断っても全然構わないよ」
 
 トモ:「大丈夫、彼女・・・とかいないから、それなら、モコはどうなの彼氏とか大丈夫なの?」
 
 モコ:「大丈夫」
 
 一言だけ帰ってきた・・・けど、いるいないは書いてないな・・・。とはいえ、改めて聞くこともできなくて、僕は、落ち着かない気持ちのまま、日常を過ごす事になった。
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