縛り合いから始まる・・・

國村城太郎

文字の大きさ
5 / 7

5.練習

しおりを挟む
 家に帰って部屋に鍵をかけると自分の足首を使って、本結びの練習をする。難しくてわからなくなると、動画を、見返す。素晴らしいお手本に感激しつつまた練習をする。ふと気づくと日付が変わってしまっていた。トモがあわてて寝る準備を整えてベッドに戻ると、ちょうどモコからのメッセージで通知音が鳴った。
 
 モコ:「もう寝てたらごめん。帰ってからずっと練習してたんだけど、とっても難しいね」
 
 トモ:「大丈夫、起きてるよ。本当にまだ最初なのに難しいよね」
 
 モコ:「良かったら、明日大学終わった後に、一緒に練習しない?」
 
 あ、僕の言いたい事を向こうから言って来てくれた。モコは僕の事、どう思ってるんだろう。単に便利な練習相手なんだろうか?でも少なくとも嫌ってはないよね、身体に触れる事を許容してくれているわけだし・・・などと考えていると。
 
 モコ:「明日何か用事あった?むりはしなくていいからね」と心配してもう一通メッセージをしてきた。
 
 トモ:「ああ、大丈夫だよ。そっちは何時頃終わる?何処なら練習出来るかな?って考えてたら返事遅れちゃっただけ」
 
 慌てて僕はこう返した。少し間があって、また通知がなる。
 
 モコ:「良かったら、私の部屋はどうかな?トモの大学から近いし、お金もかからないし」
 
 ドキドキして来た。モコの部屋、一人暮らしだって言ってたよね。
 
 トモ:「とても、ありがたいよ。じゃ、お邪魔して良いかな?僕は明日5限までだから15時くらいにいけると思う」
 
 モコ:「15時なら私も大丈夫。住所送るから。トモなら住所だけで、来れるかな?」
 
 トモ:「うん、大丈夫だよ。とりあえず授業終わったらメッセージいれるね」
 
 モコ:「わかった、おやすみない」
 
 トモ:「おやすみなさい」
 
 とおやすみの挨拶をしたけれど、僕は胸がドキドキし過ぎて、なかなか眠れず、翌朝は久し振りに母親に叩き起こされてしまった。
 
 そして翌日の午後、僕は住所の場所に立っていた。真新しくもなく、でも小綺麗で、一応オートロックのマンションだった。僕はインターホンで、聞いていた部屋番号を押して、呼び出した。
 
「はーい、開けるね」オートロックのドアが開いたので、すっと中に入ると、音もせず後ろでドアがまた閉まった。
 僕はエレベータに乗り彼女の部屋に向かって、呼び鈴を押す。
 
「いらっしゃい。どうぞ、入って」モコが笑って僕を招き入れてくれる。
 
 女の子の部屋、それも一人暮らし・・・余計なことを考えないように、気をつけて中に入っていった。
 
「まだ引越したばかりだから、整理しきれないとこがあったらごめんね」
 
 よく言えば、機能的。悪く言うと殺風景な部屋だった。女の子らしい雰囲気をまだ作る前・・・みたいな感じだろうか。それがかえって今の僕には安心できる雰囲気で、助かったと思う。
 
「まだ、最低限いるものしか送ってきてないのよね。必要なものがはっきりしてから、GWにもう一度戻って、荷物送るつもりだったから」
 
「そうなんだね。これお土産のケーキ。何にするか迷ったんだけど、モコは今でも苺のショートケーキは好きかな?好み変わってたらごめん」
 
「あ、ありがとう、大丈夫よ。今もそんな変わってないよ。これ冷蔵庫にしまっておくね。まず、練習しないとね」
 
 お互い向かい合って座って、黙々と練習する。練習を始めると、雑念が飛んでいって、縄に集中できるのがわかる。モコの部屋って意識するとダメになる気がして、真剣に、練習をした。
 時々、実際にお互いの手首を練習台にしてもらいながら、真剣にやってるとなんとか二人とも形が整ってくるようになった。
 
「とりあえずできるようになったけど、見本のビデオと比べちゃうと、全然ダメだって思っちゃうね」と僕が言うと、
 
「先生のは綺麗だよね。なんかピシッとしてるっていうか」とモコが答える。
 
「でも、そろそろ休憩して、ケーキにしない?お茶淹れるわ」
 
 大学の話をしながら、ケーキを食べる。
 モコはバイトをどうするか悩んでいるらしい、下宿して仕送りはあるけど、やはりバイトもしないとということらしい。実家でヌクヌクとしている自分が少し恥ずかしくなった。
 ケーキを食べ終わって、皿を片付けようとすると、モコに呼び止められる。
「待って、トモ、ほっぺにクリームついてるよ」そのまま子供時代のように、指で僕の頬のクリームを拭うと、それをまた子供時代のようにペロッと舐め取って、「美味しい」って笑った。

 やった後に、急に顔を真っ赤にして、「私、子供の時と一緒だわ、成長してないよね。ごめんなさい」と謝ってきた。「大丈夫だよ、気にしないから」と僕も顔を真っ赤にして言葉では言ったが、本当は僕は気にしまくっていたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

繰り返す夜と嘘 〜【実録】既婚の僕と後輩の彼女、あの夜のキスから始まった13年の秘密〜

まさき
恋愛
結婚して半年の僕と、同じ職場の彼女。 出会った頃は、ただの先輩と新入社員だった。   互いに意識しながらも、 数年間、距離を保ち続けた。   ただ見つめるだけの関係。   けれど――   ある夏の夜。 納涼会の帰り道。   僕が彼女の手を握った瞬間、 すべてが変わった。   これは恋でも、友情でもない。   けれど理性では止められない、 名前のない関係。   13年続いた秘密。 誓約書。 そして、5年の沈黙。   これは――   実際にあった「夜」の記録。

秘められた薫り

La Mistral
恋愛
エブリスタにて、トレンド#恋愛で最高位 55位を獲得した作品です。 「愛しているよ」という夫の言葉が、今の美咲には虚しい空気にしか聞こえない。 欠けていたのは、理性を焼き尽くすような衝動。 ​クライアントの慎吾と交わす視線。ビジネスという仮面の下で共有される、剥き出しの欲望。 指先が触れる。名前を呼ばれる。ただそれだけで、美咲の積み上げてきた「良き妻」としての世界は音を立てて崩れ去る。 ​完璧なアリバイ、塗り固めた嘘。 夫の隣で微笑みながら、心は別の男の指先を求めている。 一度知ってしまった濃厚な「薫り」は、もう彼女を元の場所へは戻してくれない。 ​守るべき家庭と、抗えない本能。 二つの世界の境界線で、美咲が選ぶ「最後の一線」とは――。 欲望の熱に浮かされた女の、美しくも残酷な堕落の記録。

なし崩しの夜

春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。 さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。 彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。 信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。 つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

一途な恋

凛子
恋愛
貴方だけ見つめてる……

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

処理中です...