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第2章
交際?いいえ恋の練習なので
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日が傾きかける時間。由紀の部屋は駅からは少し距離のある、都内のマンションの一室だった。
「ここ、駅から結構距離あるんじゃないですか?」
部屋に向かうエレベーターの中で、亮が尋ねた。
「そうかな。歩いて15分ぐらいだけど。もう慣れちゃったっていうか」
「……夜道とか1人で危なくないですか?」
「なるべく人通りの多いところ歩いてるし。一応防犯ブザーも持ってるから」
「……それだけだと心配だな」
眉を潜める彼に、由紀は明るく言った。部屋の前につくと、素早く鍵を回す。
「……どうぞ」
「お邪魔します」
由紀の部屋に足を踏み入れた瞬間、ふんわりと漂ってきたのは、控えめで上品なフレグランスの香りだった。石鹸のような清潔感に、ラベンダーとジャスミンの香りがわずかに混じっている。
玄関には靴が一足だけ、きちんと揃えて置かれている。マットも玄関も清潔そのもので、柔らかい照明が空間をふんわりと包んでいた。奥に進むと、そこには由紀らしいリビング空間が広がっていた。
天井にはペンダントライトが吊るされ、明るすぎず、けれど温かみのある光が部屋全体を照らしている。リビングの中心には、淡いグレージュのラグ。その上に重厚感のある革張りの2人掛けソファが置かれ、クッションにはシンプルな幾何学模様があしらわれていた。
「あ、大きなロルフ。ここでいつもゲームしてるんですね」
「はい。どうぞ、こちらに座ってください」
ゲーミングチェアの横は「エデンフィールド」のマスコットキャラクター、狼のロルフの大きなぬいぐるみが鎮座していた。デスク周りは部屋の雰囲気とややギャップがある。
促されてソファーの上に座る。
「コーヒーと紅茶どちらがいいですか?」
「じゃぁコーヒーで」
「はい、ちょっと待っててくださいね」
由紀は手際よくコーヒーを淹れる。その間、亮は幸せそうな顔でその様子を見ていた。
由紀の自宅に足を踏み入れた、という事実に、手足の末端が微かに痺れていた。玄関先のフレグランスは何だろう。聞いて早速買いに行こう、などと計画を立てる。
マグカップをテーブルに置いたあと、彼女は亮の隣に座り、改めて彼の方を向き直って背筋を伸ばした。
「今日は本当、ありがとうございました。これでしばらくは、とやかく言われなくなので」
「いえ、それなりに緊張しましたけど。お役に立ててよかったです」
「偽の報告なんで。良心の呵責を感じちゃいましたけど」
「いや。会って思いましたけど。あのお母様にガンガン言われたら、それは困っちゃうよなって」
「そうなんです」と由紀が苦笑した。そして目を少し逸らした後、意を決して亮に言う。
「それにその……この間の事も改めてありがとうございます。酔っていろいろ言ってちゃったし、やっちゃって。本当にごめんなさい」
亮はカップを口元に運びながら、視線だけを彼女に向けた。
「いえ、そんな。もう謝らないでください。”ゆきんこさん“を介抱できて、”僕“は役得でしたよ?」
配信者のシンシオンとして、彼は言う。
「また、そんなこと言って……」
「はは、本当のことですから」
由紀が照れて半目になると、亮は快活そうに笑った。それから真剣な顔で見つめられる。
「それで、気になっていたことがあって。……聞いてもいいですか?」
「……え?」
「もう恋とかできないかも”とか。“不感症かもしれない”って……。あれって、どういう意味だったんですか?」
肩がびくりと震える。
そんな事まで話してたのか──。目の前が真っ暗になりそうだった。
「ごめんなさい。聞いちゃいけない話、ですよね。忘れてください」
「……いえ。私、大学1年生のときに、初めて付き合った人がいたんです」
少しずつ言葉を選ぶように、由紀は話し出した。
***
「経済学部の3年生でした。最初はすごく優しくて……“おっとりしてて可愛い”とか、“癒される”って、言ってくれてて」
その頃の自分は、初めての恋に浮かれていた。付き合っているだけで、世界が変わったような気がしていた。
「でも、付き合ってすぐに、彼は変わりました」
喋り方が変だとか、つまらないとか。
服装が子供っぽいとか。いろんなことを言われるようになった。
最初は“私のため”だと思ってたけど、だんだんと苦しくなっていった。
「体の関係も、いつも一方的で。……嫌って言っても、ゴム、つけてくれなくて。『お前のせいで冷めた』って怒鳴られたこともあって」
触られるのが怖かった。
でも、嫌って言えなくて。
そういうものなんだと、思い込もうとしていた。
「……その彼、私のこと、飲み会のネタにしてたみたいで。サークル仲間に、笑いながら話したって。自分が浮気してる事も、含めて」
そう聞かされた時の、冷たい空気を思い出して、ほんの少し唇を噛む。
「……それを聞いて、その場にいたサークルの先輩が、彼のこと殴ってくれたらしくて。あの、知ってます?江口課長と私って同学科の先輩後輩なのって。殴ってくれたの、江口さんなんです」
亮の目が小さく見開かれる。
「え……あの江口さんが……?」
「はい、あの時は、本当に救われました。……“もう我慢するな”って言ってくれたんです」
その事を含めて、今までの彼の行いを、江口さんから聞かされた。聞いていて何かが急激に冷めていく感覚がしたのを、よく覚えている。
「呆れるとか、悲しいとか、そういう感情も出てこなかった。ただ、ほっとしたんです。“もう、触られなくていい”って」
由紀がふっと目を閉じる。目の端には涙が浮かんでいた。
「それ以来、誰かと深く関わるのが、怖くて。誰かに触れられるのも、好きって言われるのも、信じられなくなっちゃったんです」
部屋の空気は暖かいはずなのに、足元から冷えるような感覚があった。由紀は、自分の過去を語りながらも、亮の顔をほとんど見られなかった。聞かれたくない、話だった。
でも、曖昧な嘘を、彼には、つきたくなかった。
***
亮は何も言わなかった。怒りも、同情も、憐れみも、見せなかった。ただ静かに聞いて、隣に座っていた。
彼が小さく息を吸った気配がした。
「……俺、由紀さんが好きです」
その言葉は、ふいに、けれど真っすぐに、由紀の胸の中に届いた。
「……え?」
顔を上げると、青く澄んだ目が、ただ彼女だけを見ていた。そこに迷いはなかった。
「由紀さん」
「は、はい」
「俺は、由紀さんが本当に好きです」
胸が、ぎゅっと痛むように鳴った。
思わず顔を歪めてしまう。
「こんなこと聞いたあとに、言うなって感じかもしれないですけど。でも、聞いたからこそ、余計にちゃんと言いたくなってしまって」
亮の太ももに置かれた手が、硬く握られ、小さく震えている。怒りを、堪えていたらしい。
「過去のこと、本当にひどくて。由紀さんのことを、今の何倍も大事にしたいと思いました。ちゃんと、安心して一緒にいられるようにしたいって」
声のトーンは落ち着いていたが、大きな慈しみと温かさに溢れていた。
由紀はゆっくりとまばたきをした。頬が、ふわりと熱くなる。それでも、かすれた声で、なんとか返す。
「……ありがとう。そんなふうに、言ってもらえるなんて。──でも」
目に涙が浮かんでしまっていた。
嬉しかった。けれども同時に怖くて。
ただ混乱してしまっていた。
亮は、息をつくように笑った。
「無理に返事をもらおうなんて思ってないです。今はただ、ちゃんと伝えたくて。……ゆっくりでいいですよ」
優しくて、少しだけ照れている笑顔。
手を伸ばせば届く距離。だけど、彼は触れてこなかった。その配慮が何より優しくて。由心を締めつけた。
この人は本当に、大切にしてくれるかもしれない──。由紀の心の奥に、ずっとあった“怖さ”が少しだけ、ほどけた気がした。
「由紀さん、不感症だって言ってましたけど……」
由紀の手が、微かに震える。亮はその動きを見ても、言葉をやめなかった。ただ、穏やかで、慎重な口調のまま続けた。
「決して、そんなことないと思うんです。……きっと、心と体がちゃんと、信じられるって思える瞬間がなかっただけじゃないかって」
俯いたまま、小さくまばたきをする。
「俺のことを、好きになってほしいってまでは、今すぐには、望みません。でも、もし。もし許してもらえるなら」
間を置いて、亮はまっすぐに由紀を見た。
「仮のパートナーとして、練習していきませんか?」
「……練習?」
由紀が顔を上げる。戸惑いがちに言葉を繰り返す。
「はい。練習です。ちょっと、照れくさいですけど……恋の練習」
その声は冗談っぽく笑っているようでいて、決して軽くはなかった。
「俺からは、由紀さんが“いい”って言ったこと以外、何もしません。でももし、“これなら平気かも”ってことがあったら。少しずつ実行してみる。……そうやって、信じてもらえるように、時間をかけていけたらって」
沈黙が流れた。
部屋の隅で、パソコンが起動している低い電子音だけが聞こえる。
由紀は膝の上でぎゅっと手を握った。
「……亮くん、それ、本当に優しすぎますよ」
「優しいわけじゃないです。ただ、あなたと一緒にいたいだけなんです」
目を逸らさず、そう言い切る声が、胸に深く落ちた。
誰かに優しさを向けられることが、こんなに戸惑うなんて思わなかった。
でも、なぜかあなたには──。その言葉に甘えてみたいと思ってしまった。
「その、……ちょっとずつ、お願いします。練習」
小さくうなずくと、彼の表情がふわりと緩んだ。
「はい。よろしくお願いします。恋の練習していきましょう、って。やっぱ照れますね、この言い方」
「そう、ですね」
思わず苦笑してしまうと、亮も同じように笑った。
「ここ、駅から結構距離あるんじゃないですか?」
部屋に向かうエレベーターの中で、亮が尋ねた。
「そうかな。歩いて15分ぐらいだけど。もう慣れちゃったっていうか」
「……夜道とか1人で危なくないですか?」
「なるべく人通りの多いところ歩いてるし。一応防犯ブザーも持ってるから」
「……それだけだと心配だな」
眉を潜める彼に、由紀は明るく言った。部屋の前につくと、素早く鍵を回す。
「……どうぞ」
「お邪魔します」
由紀の部屋に足を踏み入れた瞬間、ふんわりと漂ってきたのは、控えめで上品なフレグランスの香りだった。石鹸のような清潔感に、ラベンダーとジャスミンの香りがわずかに混じっている。
玄関には靴が一足だけ、きちんと揃えて置かれている。マットも玄関も清潔そのもので、柔らかい照明が空間をふんわりと包んでいた。奥に進むと、そこには由紀らしいリビング空間が広がっていた。
天井にはペンダントライトが吊るされ、明るすぎず、けれど温かみのある光が部屋全体を照らしている。リビングの中心には、淡いグレージュのラグ。その上に重厚感のある革張りの2人掛けソファが置かれ、クッションにはシンプルな幾何学模様があしらわれていた。
「あ、大きなロルフ。ここでいつもゲームしてるんですね」
「はい。どうぞ、こちらに座ってください」
ゲーミングチェアの横は「エデンフィールド」のマスコットキャラクター、狼のロルフの大きなぬいぐるみが鎮座していた。デスク周りは部屋の雰囲気とややギャップがある。
促されてソファーの上に座る。
「コーヒーと紅茶どちらがいいですか?」
「じゃぁコーヒーで」
「はい、ちょっと待っててくださいね」
由紀は手際よくコーヒーを淹れる。その間、亮は幸せそうな顔でその様子を見ていた。
由紀の自宅に足を踏み入れた、という事実に、手足の末端が微かに痺れていた。玄関先のフレグランスは何だろう。聞いて早速買いに行こう、などと計画を立てる。
マグカップをテーブルに置いたあと、彼女は亮の隣に座り、改めて彼の方を向き直って背筋を伸ばした。
「今日は本当、ありがとうございました。これでしばらくは、とやかく言われなくなので」
「いえ、それなりに緊張しましたけど。お役に立ててよかったです」
「偽の報告なんで。良心の呵責を感じちゃいましたけど」
「いや。会って思いましたけど。あのお母様にガンガン言われたら、それは困っちゃうよなって」
「そうなんです」と由紀が苦笑した。そして目を少し逸らした後、意を決して亮に言う。
「それにその……この間の事も改めてありがとうございます。酔っていろいろ言ってちゃったし、やっちゃって。本当にごめんなさい」
亮はカップを口元に運びながら、視線だけを彼女に向けた。
「いえ、そんな。もう謝らないでください。”ゆきんこさん“を介抱できて、”僕“は役得でしたよ?」
配信者のシンシオンとして、彼は言う。
「また、そんなこと言って……」
「はは、本当のことですから」
由紀が照れて半目になると、亮は快活そうに笑った。それから真剣な顔で見つめられる。
「それで、気になっていたことがあって。……聞いてもいいですか?」
「……え?」
「もう恋とかできないかも”とか。“不感症かもしれない”って……。あれって、どういう意味だったんですか?」
肩がびくりと震える。
そんな事まで話してたのか──。目の前が真っ暗になりそうだった。
「ごめんなさい。聞いちゃいけない話、ですよね。忘れてください」
「……いえ。私、大学1年生のときに、初めて付き合った人がいたんです」
少しずつ言葉を選ぶように、由紀は話し出した。
***
「経済学部の3年生でした。最初はすごく優しくて……“おっとりしてて可愛い”とか、“癒される”って、言ってくれてて」
その頃の自分は、初めての恋に浮かれていた。付き合っているだけで、世界が変わったような気がしていた。
「でも、付き合ってすぐに、彼は変わりました」
喋り方が変だとか、つまらないとか。
服装が子供っぽいとか。いろんなことを言われるようになった。
最初は“私のため”だと思ってたけど、だんだんと苦しくなっていった。
「体の関係も、いつも一方的で。……嫌って言っても、ゴム、つけてくれなくて。『お前のせいで冷めた』って怒鳴られたこともあって」
触られるのが怖かった。
でも、嫌って言えなくて。
そういうものなんだと、思い込もうとしていた。
「……その彼、私のこと、飲み会のネタにしてたみたいで。サークル仲間に、笑いながら話したって。自分が浮気してる事も、含めて」
そう聞かされた時の、冷たい空気を思い出して、ほんの少し唇を噛む。
「……それを聞いて、その場にいたサークルの先輩が、彼のこと殴ってくれたらしくて。あの、知ってます?江口課長と私って同学科の先輩後輩なのって。殴ってくれたの、江口さんなんです」
亮の目が小さく見開かれる。
「え……あの江口さんが……?」
「はい、あの時は、本当に救われました。……“もう我慢するな”って言ってくれたんです」
その事を含めて、今までの彼の行いを、江口さんから聞かされた。聞いていて何かが急激に冷めていく感覚がしたのを、よく覚えている。
「呆れるとか、悲しいとか、そういう感情も出てこなかった。ただ、ほっとしたんです。“もう、触られなくていい”って」
由紀がふっと目を閉じる。目の端には涙が浮かんでいた。
「それ以来、誰かと深く関わるのが、怖くて。誰かに触れられるのも、好きって言われるのも、信じられなくなっちゃったんです」
部屋の空気は暖かいはずなのに、足元から冷えるような感覚があった。由紀は、自分の過去を語りながらも、亮の顔をほとんど見られなかった。聞かれたくない、話だった。
でも、曖昧な嘘を、彼には、つきたくなかった。
***
亮は何も言わなかった。怒りも、同情も、憐れみも、見せなかった。ただ静かに聞いて、隣に座っていた。
彼が小さく息を吸った気配がした。
「……俺、由紀さんが好きです」
その言葉は、ふいに、けれど真っすぐに、由紀の胸の中に届いた。
「……え?」
顔を上げると、青く澄んだ目が、ただ彼女だけを見ていた。そこに迷いはなかった。
「由紀さん」
「は、はい」
「俺は、由紀さんが本当に好きです」
胸が、ぎゅっと痛むように鳴った。
思わず顔を歪めてしまう。
「こんなこと聞いたあとに、言うなって感じかもしれないですけど。でも、聞いたからこそ、余計にちゃんと言いたくなってしまって」
亮の太ももに置かれた手が、硬く握られ、小さく震えている。怒りを、堪えていたらしい。
「過去のこと、本当にひどくて。由紀さんのことを、今の何倍も大事にしたいと思いました。ちゃんと、安心して一緒にいられるようにしたいって」
声のトーンは落ち着いていたが、大きな慈しみと温かさに溢れていた。
由紀はゆっくりとまばたきをした。頬が、ふわりと熱くなる。それでも、かすれた声で、なんとか返す。
「……ありがとう。そんなふうに、言ってもらえるなんて。──でも」
目に涙が浮かんでしまっていた。
嬉しかった。けれども同時に怖くて。
ただ混乱してしまっていた。
亮は、息をつくように笑った。
「無理に返事をもらおうなんて思ってないです。今はただ、ちゃんと伝えたくて。……ゆっくりでいいですよ」
優しくて、少しだけ照れている笑顔。
手を伸ばせば届く距離。だけど、彼は触れてこなかった。その配慮が何より優しくて。由心を締めつけた。
この人は本当に、大切にしてくれるかもしれない──。由紀の心の奥に、ずっとあった“怖さ”が少しだけ、ほどけた気がした。
「由紀さん、不感症だって言ってましたけど……」
由紀の手が、微かに震える。亮はその動きを見ても、言葉をやめなかった。ただ、穏やかで、慎重な口調のまま続けた。
「決して、そんなことないと思うんです。……きっと、心と体がちゃんと、信じられるって思える瞬間がなかっただけじゃないかって」
俯いたまま、小さくまばたきをする。
「俺のことを、好きになってほしいってまでは、今すぐには、望みません。でも、もし。もし許してもらえるなら」
間を置いて、亮はまっすぐに由紀を見た。
「仮のパートナーとして、練習していきませんか?」
「……練習?」
由紀が顔を上げる。戸惑いがちに言葉を繰り返す。
「はい。練習です。ちょっと、照れくさいですけど……恋の練習」
その声は冗談っぽく笑っているようでいて、決して軽くはなかった。
「俺からは、由紀さんが“いい”って言ったこと以外、何もしません。でももし、“これなら平気かも”ってことがあったら。少しずつ実行してみる。……そうやって、信じてもらえるように、時間をかけていけたらって」
沈黙が流れた。
部屋の隅で、パソコンが起動している低い電子音だけが聞こえる。
由紀は膝の上でぎゅっと手を握った。
「……亮くん、それ、本当に優しすぎますよ」
「優しいわけじゃないです。ただ、あなたと一緒にいたいだけなんです」
目を逸らさず、そう言い切る声が、胸に深く落ちた。
誰かに優しさを向けられることが、こんなに戸惑うなんて思わなかった。
でも、なぜかあなたには──。その言葉に甘えてみたいと思ってしまった。
「その、……ちょっとずつ、お願いします。練習」
小さくうなずくと、彼の表情がふわりと緩んだ。
「はい。よろしくお願いします。恋の練習していきましょう、って。やっぱ照れますね、この言い方」
「そう、ですね」
思わず苦笑してしまうと、亮も同じように笑った。
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