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1 始まりと目覚め
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目が覚めたら、赤ん坊だった。
何を言っているかよくわからないと自分でも思う。
なんだこれ。
俺はどうなっているんだ。
驚きに目をかっ開くが視界に入ってくるのはただただ広がる空の世界。
吸い込まれそうなほど美しい晴れ渡った空。
いや、おかしくね?
上手く動かない腕を伸ばして視線を向ける。
その先は本当に小さな手のひらがあった。
(もしかしなくても俺は捨て子か)
人間の赤ん坊は野生動物ではないので一人では生きられない。野生動物でも無理だが。流石に最初は独り立ちできるまで何かしらの手伝いをしてくれるはずだろ。
そもそも自立どころか、動くことすら難しいこの状態では捨てられたと思うのが妥当だろう。
ぱた、と疲れた手を落として再び視線を空に向ける。
良い天気だった。視界にいっぱいに広がる青い空。遮蔽物は何もなく、ただただ雄大な景色があった。
これは死ぬな、と思う。
(短い人生だったなぁ。意識が生まれてすぐ死亡かぁ)
俺の最後の記憶はひどく曖昧で、地続きの意識がある。だからといって動かない赤子の身体をどうこうできるようなものでもない。
記憶と知識だけ持っててもなぁ、という感想だった。肉体が動かせるものでもないし。転がれないように布にくるまれているし。
ぽけー、と空を見ていると黒い点が見えた。
点?と内心首を傾げながら動くそれを追っていると段々とシルエットがはっきりしてくる。
それは、ドラゴンだった。
(マジかよ)
この世界はファンタジーな世界だったらしい。
終わった……。
いや、でも餓死するよりスッキリ死ねるか?
結構離れているはずなのに異様なシルエットがしっかり見えるということは相当な巨体だ。アレが降り立つ衝撃だけでも死ぬ。人間というのは脆弱だ。赤子なら更に。
ドラゴンはまっすぐこちらに向かって来ていた。
白いドラゴンだと思ったがよく見るとオパールのように虹色に輝くドラゴンだ。
あとデッカい。遠近感が狂うぐらいにはデカい。
どんどん近づいてくるドラゴンを俺はただ見つめるしかない。
白いドラゴンが降り立つと俺を真ん中にするように四肢をついた。上手い具合に衝撃波が散らされ、耳に轟音が届く。
俺の視界は真っ白な腹で埋め尽くされた。柔らかい部分のはずだがドラゴンという種族は硬いらしい。傷つきそうもない腹である。
少ししてぬぅ、と爬虫類のような鱗に覆われた顔が赤子の俺を覗き込む。
『おかしなものが置いてあると思ったら、随分とまぁ愚かなこと』
動物っぽい顔から人間の言葉が飛び出してきた。なかなかの衝撃である。だが明確には人間の言葉ではないというのも本能が理解していた。
理解できるように言葉が変換されているだけでこのドラゴンが話しているのは別の言葉だ。
なんでそれを俺が理解できているのか、という疑問は出るが。ちょー疑問だけど。
『人間如きが……。おや、』
全体的に人間に対しては下等生物という認識らしい。吐き捨てるように何かを言いかけて、そのドラゴンは顔を近づけてきた。
遠近感が狂うほど巨大な顔、その僅かに開いた口からとんでもなく凶悪な牙が見える。ギラギラと光る鋭い歯は軽く噛み締めるだけで赤子どころか大人だって殺せそうだ。そもそも口に含む必要すらない。サイズなんて可愛い豆つぶぐらいだろうし、丸呑みしたらいい。
ここまで自分で想像しておいてなんだが、丸呑みで死ぬのは嫌な最後だな。せめてあっさりさくっと死にたい。胃液に溶かされるのは嫌だ。
他所に意識を飛ばす俺にドラゴンは言った。
『お前、賢い子よなぁ』
近づいたドラゴンの目玉からは光が散っている。ゆったりと瞬く度にその瞳孔の中でパチパチと光が稲妻のように弾けていた。
『気が変わった。お前は面白そうだ。妾が育ててやろう。人間から逸脱するやもしれんが、まぁ良かろうて。人間如き、捨ててやると良い』
言葉の端々に人間への侮蔑が漏れている。なんか恨みでもあんのかな。
ぐわ、と大きく開いた口が迫る。
うーん凶悪。と現実逃避をしつつ迫る口をぼんやり眺めて。
そして気絶した。
まぁ命の危機を感じるよな、普通に。
俺じゃなかったら泣き喚いて大惨事だぜ。
何を言っているかよくわからないと自分でも思う。
なんだこれ。
俺はどうなっているんだ。
驚きに目をかっ開くが視界に入ってくるのはただただ広がる空の世界。
吸い込まれそうなほど美しい晴れ渡った空。
いや、おかしくね?
上手く動かない腕を伸ばして視線を向ける。
その先は本当に小さな手のひらがあった。
(もしかしなくても俺は捨て子か)
人間の赤ん坊は野生動物ではないので一人では生きられない。野生動物でも無理だが。流石に最初は独り立ちできるまで何かしらの手伝いをしてくれるはずだろ。
そもそも自立どころか、動くことすら難しいこの状態では捨てられたと思うのが妥当だろう。
ぱた、と疲れた手を落として再び視線を空に向ける。
良い天気だった。視界にいっぱいに広がる青い空。遮蔽物は何もなく、ただただ雄大な景色があった。
これは死ぬな、と思う。
(短い人生だったなぁ。意識が生まれてすぐ死亡かぁ)
俺の最後の記憶はひどく曖昧で、地続きの意識がある。だからといって動かない赤子の身体をどうこうできるようなものでもない。
記憶と知識だけ持っててもなぁ、という感想だった。肉体が動かせるものでもないし。転がれないように布にくるまれているし。
ぽけー、と空を見ていると黒い点が見えた。
点?と内心首を傾げながら動くそれを追っていると段々とシルエットがはっきりしてくる。
それは、ドラゴンだった。
(マジかよ)
この世界はファンタジーな世界だったらしい。
終わった……。
いや、でも餓死するよりスッキリ死ねるか?
結構離れているはずなのに異様なシルエットがしっかり見えるということは相当な巨体だ。アレが降り立つ衝撃だけでも死ぬ。人間というのは脆弱だ。赤子なら更に。
ドラゴンはまっすぐこちらに向かって来ていた。
白いドラゴンだと思ったがよく見るとオパールのように虹色に輝くドラゴンだ。
あとデッカい。遠近感が狂うぐらいにはデカい。
どんどん近づいてくるドラゴンを俺はただ見つめるしかない。
白いドラゴンが降り立つと俺を真ん中にするように四肢をついた。上手い具合に衝撃波が散らされ、耳に轟音が届く。
俺の視界は真っ白な腹で埋め尽くされた。柔らかい部分のはずだがドラゴンという種族は硬いらしい。傷つきそうもない腹である。
少ししてぬぅ、と爬虫類のような鱗に覆われた顔が赤子の俺を覗き込む。
『おかしなものが置いてあると思ったら、随分とまぁ愚かなこと』
動物っぽい顔から人間の言葉が飛び出してきた。なかなかの衝撃である。だが明確には人間の言葉ではないというのも本能が理解していた。
理解できるように言葉が変換されているだけでこのドラゴンが話しているのは別の言葉だ。
なんでそれを俺が理解できているのか、という疑問は出るが。ちょー疑問だけど。
『人間如きが……。おや、』
全体的に人間に対しては下等生物という認識らしい。吐き捨てるように何かを言いかけて、そのドラゴンは顔を近づけてきた。
遠近感が狂うほど巨大な顔、その僅かに開いた口からとんでもなく凶悪な牙が見える。ギラギラと光る鋭い歯は軽く噛み締めるだけで赤子どころか大人だって殺せそうだ。そもそも口に含む必要すらない。サイズなんて可愛い豆つぶぐらいだろうし、丸呑みしたらいい。
ここまで自分で想像しておいてなんだが、丸呑みで死ぬのは嫌な最後だな。せめてあっさりさくっと死にたい。胃液に溶かされるのは嫌だ。
他所に意識を飛ばす俺にドラゴンは言った。
『お前、賢い子よなぁ』
近づいたドラゴンの目玉からは光が散っている。ゆったりと瞬く度にその瞳孔の中でパチパチと光が稲妻のように弾けていた。
『気が変わった。お前は面白そうだ。妾が育ててやろう。人間から逸脱するやもしれんが、まぁ良かろうて。人間如き、捨ててやると良い』
言葉の端々に人間への侮蔑が漏れている。なんか恨みでもあんのかな。
ぐわ、と大きく開いた口が迫る。
うーん凶悪。と現実逃避をしつつ迫る口をぼんやり眺めて。
そして気絶した。
まぁ命の危機を感じるよな、普通に。
俺じゃなかったら泣き喚いて大惨事だぜ。
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