異世界最底辺職だった俺、実は全スキルに適性Sだった件~追放されたので田舎でスローライフしてたら、気づいたら英雄扱いされてた~

えりぽん

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第7話 実は王都のお姫様でした!?

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村の朝はいつも静かだ。鶏の鳴き声で目が覚め、パンを焼く香ばしい匂いが風に乗ってくる。  
けれどその日の朝は、いつもと違っていた。  

外でざわめきが起こっていた。村人の声がやけに切羽詰まっている。  
俺は寝ぼけまなこを擦りながら戸を開けると、広場に人だかりができていた。  

「どうしたんだ?」  
「レオン殿っ、来てくださらんか! 旅人が倒れておる!」  

村長が手招きする。見れば、荷馬車の横で女の子が横たわっていた。  
金色の髪、白いドレス。薄汚れてはいるが、一見して分かる――庶民の服ではない。  
肌は雪のように白く、瞼の下には疲労が見えていたが、その顔立ちの整い方はまるで絵画のようだった。  

「……まさか王都からか?」  
俺は膝をついて少女の状態を確認する。神眼を展開。  

【対象:人族/生命反応安定/魔力消費過多による意識喪失】  
【ステータス:ティアナ・セレスティア/王都王家第一王女】  

「……嘘だろ」  

思わず息を呑む。  
まさか王都の王女が、辺境のレント村に一人で来るなんて有り得ない。  
俺が困惑している間にも、周囲の村人たちはざわざわと顔を見合わせていた。  

「お、お嬢さん……いったい何者なんだろうのう?」  
「言葉遣いが上品でしたが……まさか貴族様とか?」  

「間違いない。王家の者だ」  
俺がそう告げると、村人たちは一斉にどよめいた。  

「お、王家!?」「ひえぇ……畏れ多い!」  

俺は少女――ティアナの体を抱き上げ、村の宿舎に運んだ。  
ベッドに寝かせ、魔力流の乱れを整えるように軽い治癒魔法を施す。  
青白かった頬にうっすらと血色が戻り、まつげが震えた。  

「う……」  
「気がついたか?」  

彼女はまだ焦点の合わない瞳で俺を見上げ、か細い声を漏らす。  
「あなたは……ここは?」  
「レント村だ。倒れていたのを保護しただけだよ」  
「そう……ご迷惑をおかけしてしまいました」  

上品な口調と、どこか気品ある所作。  

「一体どうして、こんな辺境に一人で?」  
「私は……王都から逃げてきました」  

その言葉に、俺とシアが思わず顔を見合わせる。  
「逃げてきた!?」  

ティアナは少し息を整えてから、ゆっくりと話し始めた。  

「最近、王都で奇妙な魔導儀式が行われています。『封印再活性計画』という名目で……王国の一部貴族たちが、何かを復活させようとしているんです」  
「封印……!」  

俺の脳裏に浮かんだのは、神眼で見た封印解除進行の文字だった。  
――封印解除進行度、10%。  

まさか王都の中枢が関わっていたのか。  

「私は反対しました。けれど、父上や大臣たちは聞いてくれません。……だから、証拠を持って国外の学者に渡そうとしたんです。でも護衛が裏切って……」  
ティアナの手が震えた。  
「たどり着いたのが、この村なのですね」とシアが優しく包み込むように言う。  

ティアナは小さく頷き、俺を見た。  
「あなたが……助けてくださったのですか?」  
「まあ、たまたまだ。村人が見つけてくれただけだ」  
「感謝します。貴方のその瞳……まるで全てを見通すような色をしていますね」  

ドキリとした。神眼の効果は常時発動している。  
彼女は何かを感じ取ったのか。  
だが追及することはなく、安心したように微笑むだけだった。  

「これから、どうするつもりだ?」  
「王都に戻るわけにはいきません。でも封印の儀式を止める手立てを探したい。伝承の書に、古代文明の鍵があると聞きました」  
「古代文明……」  

頭の奥に、神眼が解析した“失われた符号”が浮かぶ。  
闇の魔石や異常魔力の紋様に使われていた模様。それが古代のルーンであることを、神眼が事前に示していた。  

「そのルーン、知ってるかもしれない」  
「えっ?」  
「詳しくは分からないけど、似たものを見た」  

その瞬間、ティアナの表情がぱっと明るくなった。  
「では、あなたが協力してくださるんですか?」  
「……まあ、放っておけないだろ。このままじゃ村も危ない」  

俺がそう答えると、彼女はまるで女神のように微笑んだ。  
「ありがとうございます、レオン様」  

「様はやめろ。俺は雑用士だ」と言うと、彼女はくすりと笑った。  
「そんなことを言う方ほど、本当に人を救う力をお持ちですわ」  

そのやり取りを横で見ていたシアが、ふと頬をぷくっとふくらませた。  
「……王女様、レオンさんに懐くの早すぎじゃないですか?」  
「懐いてなどいませんわ。ただ、信頼したのです」  

目を丸くする俺。二人のやり取りはいつになくピリピリしていた。  
「ちょ、ちょっと待て。今は言い合ってる場合じゃない」  

俺が慌てて割って入ると、ティアナは小さく笑う。  
「ふふ、でも素敵な村ですね。温かいです」  
「そうだな。俺もここで初めて人らしい生活を思い出した」  

外では、子どもたちの笑い声と風鈴の音が響いていた。  
穏やかな時間。だがその裏で、神眼が告げる新たな情報が浮かぶ。  

【封印解除進行度:12%】  
【影響範囲:王都地下層/魔導炉連結中】  

――時間がない。  

「ティアナ、封印の儀式が進んでる。止めるなら急いだ方がいい」  
「やっぱり……!」

彼女は悲痛な顔をして拳を握る。  
「どうすれば止められる?」  
「まず、その儀式の基点を断つ必要がある。おそらく王都の魔導炉に直結してる」  
「私が案内できます。場所はわかります。でも、王都への道は監視されています。私一人では無理です」  

しばし考え込み、俺はため息をついた。  
「……分かった。俺が行く。どうせ放っておいても眠れそうにない」  
「レオンさん……行くの?」シアが声を低くする。  
「ああ。このままじゃ村ごと巻き込まれる」  
「でも、それじゃ……また危険な目に……!」  

言葉を重ねようとした彼女の手を、俺はそっと取った。  
「大丈夫だよ。これはただの“雑用”だ」  

苦笑しながらそう言うと、シアは俯いたまま小さく頷いた。  

「必ず、無事に帰ってくださいね」  
「ああ、約束する」

その夜。  
レント村の外、月明かりの下で俺とティアナは準備を整えた。  
長旅に備え、簡易の馬車と護符を作り、神眼で周辺の気配を確認する。  

ティアナが馬に乗りながらこちらを見た。  
「レオン様、改めて……よろしくお願いします」  
「だから“様”はいらないってば」

隣で微笑む彼女の瞳が、強い意志を宿して輝いていた。  
王都へ――封印の真実を暴くための旅が、静かに始まる。  

俺は胸の奥で、小さく呟いた。  
「スローライフ、遠のいたな……」  

風が夜の帳を揺らしながら、俺たちはゆっくりと村を後にした。
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