異世界最底辺職だった俺、実は全スキルに適性Sだった件~追放されたので田舎でスローライフしてたら、気づいたら英雄扱いされてた~

えりぽん

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第8話 田舎なのに冒険者がやたら押しかけてくる件

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レント村を騒がせた事件から三日後、村の入口はやけにざわついていた。  
朝から慌ただしく人の声が上がり、馬の嘶きが響く。  
外に出てみると、何台もの荷馬車がずらりと並び、鎧姿の集団が村に列をなしていた。  

「な、なんだこれ……」  
思わず呟くと、近くの少年が目を輝かせて言う。  
「王都から冒険者さんたちが来たんだよ! “この村に強力な守護者がいる”って噂で!」  
「守護者? ……まさか俺のことじゃないよな」  

嫌な予感しかしない。  
案の定、村長が俺を見つけて駆け寄ってきた。  
「おお、レオン殿! ちょうどよかった! 王都ギルドの使者が、お主に会いたいと言っておる!」  
「やっぱりか……」  

神眼でざっと集団を見渡す。  
冒険者ギルドの紋章をつけた中級冒険者が十数名、その中心には黒髪の女が凛と立っていた。  
腰まで伸びる髪を風に揺らし、鎧も装飾的。ただ者ではない。  
【対象:メリア・リンドバーグ 職業:魔導士/等級:A】  
A級冒険者――王都でも滅多にお目にかかれない。  

「あなたが、この村を救ったというレオンさんですね?」  
メリアは一歩前に出て、真っ直ぐ俺を見据えた。  
「……まあ、そう呼ばれてるけど。魔猪を倒したのは偶然だ」  
「偶然で上級魔獣を撃退? ふふ、面白い方ですわね」  

軽く挑戦的な笑みを浮かべるその瞳に、周囲の冒険者たちが息を呑んだ。  
噂では村を守った“聖眼の英雄”がいると聞いていたが、まさか無精髭に田舎服の男とは思わなかったのだろう。  

「王都ギルドにご協力をお願いできませんか? 現在、王国内に異常な魔獣発生の報告が相次いでおります。原因は不明。ですが、あなたなら手掛かりを得られるかもしれない」  
「協力って、俺はもうギルド関係者じゃないけどな」  
「いえ、これは正式依頼です。報酬も破格に設定されています」  

そこまで言われても、正直乗り気ではなかった。  
本音を言えば、また厄介な面倒に関わりたくない。  
目立つのはごめんだ。  

「レオンさん、せっかくだし受けてもいいんじゃないですか?」と横から声がした。  
シアだ。朝の薬草を抱えたままこっちを見上げている。  
「村のためにもなるし、王女様とも関係あるかも……」  

ちらと振り向くと、宿舎の奥でティアナがこちらを見ていた。  
旅立ちの準備をしていたはずだが、冒険者の集団を見て顔を強ばらせている。  
俺と目が合うと、静かに首を振った。  
――彼女は多分知っている。このギルドの動きが、例の“封印”と関係していることを。  

「……分かった。話を聞くだけだ」  
俺が答えると、メリアは満足げに微笑んだ。  

村長の家を臨時の会議場にし、俺とメリア、そして数名の冒険者が席につく。  
テーブルの上には地図が広げられていた。  

「異変は先週から顕著です。東の街アスロックで結界の乱れが観測。北の山岳地帯ではドラゴン級の魔獣が発見され、王都では封印炉の暴走が近いと言われています」  
「……封印炉?」  
メリアが頷く。  
「古代の魔力炉です。王都の地下に設置され、“封印”の一部を制御しています」  

ティアナが震えるように息を呑んだ。  
やはり、彼女が言っていた儀式と繋がっている。  

「その炉の安定装置が一つ、行方不明になりました。奪ったのは“異端探索団”という組織。彼らは古代崇拝を掲げていて、封印の力を解放しようとしている」  
「異端探索団……また厄介な名前だな」  

神眼に情報が流れ込む。  
過去のデータベース記録――反王家、反教会。数百年前、滅んだはずの思想団体。  
その残党が今も活動しているというのか。  

「俺になら何ができるって?」  
「あなたはこの村で闇の魔石を無害化したそうですね。それと同じ魔力干渉が、各地で観測されています。貴方のような“適合者”でなければ感じ取れない領域です」  

言葉を選ぶように、メリアは俺の瞳を見た。  
まるで神眼の存在を知っているかのように。  
俺は微かに息を呑む。  

「……どこでそれを?」  
「勘です。ただ、あなたの気配は普通じゃない。魔力を感知しただけで、鳥肌が立ちましたもの」  

何とも言えない目を向けてくる。  
……正直、こういう直感だけはごまかしきれない。  

話し合いの最中、外で別の冒険者が飛び込んできた。  
「メリア隊長! 西の荒野方面で巨大な魔物、発見! 向かっております!」  
「なに!? 距離は!?」  
「二刻と持ちません!」  

メリアが立ち上がる。  
「即座に防衛体制を! 村人は避難を!」  

彼女の声が飛ぶと同時に、俺も神眼を開いた。  
遠方に、黒い渦のような存在。  
地を削りながら進む巨影――キメラだ。しかも、魂が複数融合している。  
普通の冒険者では太刀打ちできない。  

「こいつは……厄介だな」  

「あなたは避難を!」  
「いや、俺が出る。ここを守るのは俺の役目だ」  

そう言って立ち上がると、メリアが息をのむ。  
「無茶です! あれはA級どころか、討伐隊でも無理な――」  
「大丈夫だ、慣れてる」  

村人たちが逃げ惑う中、俺は一人村の西門へ向かった。  
風がうなり、地鳴りが近づく。  
やがて視界の向こうに、それは現れた。  

人の胴に獅子の頭、背に蝙蝠の翼。乱れた体から闇の霧を吐き出しながらこちらへ突進してくる。  
風圧で地が裂ける。  

「レオンさん!」  
背後からシアの声。だが振り返らずに、俺は地を踏みしめた。  

「悪い、今は俺が行く」  

拳を握り、神眼を全開にする。  
景色の奥で、無数の線が交差し、世界の構造そのものが見える。  
空気、温度、魔力、すべてが数式のように展開される中――一点、赤い裂け目が現れる。  
そこがこのキメラの“核”だった。  

「――焼き払え」  

叫ぶと同時に、空が明るくなる。  
風と炎を融合させた魔法が空を駆け、巨大な光柱がキメラを飲み込んだ。  
轟音と振動が村全体を揺らし、土煙が晴れたとき、地面には巨大な焦げ跡だけが残っていた。  

静寂。  
次の瞬間、村人たちから歓声が上がる。  

「倒した! レオンが倒したぞ!!」  
「救世主だ! また助けられた!」  

俺はため息をつく。  
また“救世主”扱いだ。  
だが今回は、確かに俺が出なければ村は壊滅していた。  

メリアが近づき、静かに言った。  
「……あなた、本当に何者です?」  
「ただの雑用士だって」  
「そんな答えで、王都はもう誤魔化せませんよ」  

その笑みは挑戦的で、どこか嬉しそうだった。  
彼女の背後では、ティアナとシアが俺を見ていた。二人の間に奇妙な緊張が走る。  

神眼に再び文字が浮かぶ。  

【封印解除進行度:15%】  
【関連地点:西荒野の遺跡】  

――動いている。  
闇の力は確実に世界を蝕み、その中心に“誰か”がいる。  

俺は拳を握りしめた。  
せっかくのスローライフが、やっぱり遠ざかっていく。  
けれど、不思議と胸の奥が高鳴っていた。  

「次は……その遺跡だな」
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