魔界沼の怪魚

瀬能アキラ

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廃墟になった観光ホテル

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 「西洋村のパシフィックホテルだ。例の廃墟になっいる観光ホテルだが・・・」
 「・・・」
 私は一瞬、声が出なかった。地元では心霊スポットで有名であったパシフィックホテル。二十年以上も前に閉鎖され、廃墟となっているらしい。直接足を運んだことはないが、心霊スポットと呼ばれるだけあって奇怪な出来事も起きていた。確かに、いわく付きの物件だ。まさか自分が、あの廃墟ホテルの解体工事を担当するとは・・・
 「部長、本当に、うちが解体工事を行なうのですか?」
 私の問いに笠原部長はコクリと頷き
 「パシフィックホテルを現在所有している山口不動産の社長と、うちの社長が知り合いらしい。その関係で、直接解体工事を依頼してきた。色々な噂は流れているらしいが、早く建物を解体して更地にしてしまえば何ら問題はない。村の地域住民らも、できるだけ早く壊してほしいと役場に声を上げているようだ」
 「やりますか・・・」
 仕事であるから仕方なかったが、私はあまり乗り気ではなかった。できれば工事担当者を私以外の者に替わってもらいたかった。薄気味悪いものには近寄りたくないのが本音である。
 「完全な民間工事だから面倒なこともない。山中の現場となるから、近隣住民らとのトラブルもない。作業員らの方は直営の作業班が新港の現場へ年末まで取られているから、坂本工業を回す。廃材の運搬関係は砂沢産業に任せるからな・・・」
 笠原部長は、この後もパシフィックホテル解体工事について長々と語っていたが、私の頭の中には何故か入っていなかった。どうやら、この仕事からは逃れられないのか。パシフィックホテル、自分でも少し調べてみるか・・・

 ブロックの製作工事も順調に終わり、私と谷本が残りの書類作業を行なうのみとなっていた。そんな中、パシフィックホテルについて調べてみたのであった。
 ホテルのある西洋村は高知県の東端の室戸岬の北端にあり、海岸に面した村であった。その向こう側は徳島県となる。
 室戸岬の観光客や西洋村にある吉見海岸はサーフィンでも有名で、全国から集まるサーファーら、それに周辺海域はスキューバダイビングのメッカでも知られ、多くのダイバーを見込んで建てられた観光ホテルだったようだ。昭和五十年代に建設され、多くの観光客らの宿泊施設として利用されていたが、絶頂期であったバブル期を最後に施設は閉鎖された。その後、何人かの所有者が替わったようであるが、施設は再建されることなく、現在の山口不動産が所有者となっていた。
 施設の建物が閉鎖さているだけなら、何ら問題はなかったはずである。だが、自殺者が十年程前から相次いで現れ、その頃から心霊現象の噂も多く聞かれるようになっていた。
 それだけではない。施設の敷地と重なっている沼沢地で、男性と少女の水死事故が発生して二人とも水死体で発見されている。少女の方が三年前で、男性の方が二年前であった。
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