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交易都市にて?
不安の中でHする?
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ルナリアは暗い顔をして、ソファーに座り込んでいた。
豪華な装飾の部屋、豪奢なソファー、アールデコ調の調度品のテーブルの上には、いい香りのする茶が、これまた高級そうな器で置かれていた。
ルナリアはそこで一人の背の高い若い男性と向き合っていた。衛士ではない、モノクルをかけ優し気にルナリアにほほ笑み、部屋の感じから何処かの貴族のようだった。
「それで?、エム殿はどうでしたか、ルナリア殿?」
「彼女は……キケンです」
「そうですか……」
泣き顔のルナリアの後ろに回った男は、そう言って彼女を抱きしめた。
「でも、フィロドロ様、私は……エムを救いたいのです」
「わかりますよ、この私も貴方のお力になりたい。ですが、このままだとその方は厳罰になる。良くて奴隷落ち、悪くて極刑でしょう」
「極刑!?」
「ですので、せめて犯罪奴隷に落ちつかせて、貴方が召し上げれば良いのですよ」
「エムを私の奴隷に?」
「そうです」
「奴隷に……ああ、お願いします。私、何でもします」
「他ならぬ、貴方のためです」
男はそう言って、ルナリアに口づけした。ルナリアも、舌を絡ませそれに応える。
男は優しくソファにルナリアを押し倒し、服を脱がして行く。
「フィロドロ様……」
「貴方の心を癒やして差し上げましょう、ルナリア」
フィロドロは、露になったルナリアの豊満な乳房を揉み上げ、そして手を彼女の股の中へ入れていく
「あ、ああ、や、優しくしてください」
「さあ、癒しの中でまどろんでください」
「はい」
フィロドロがフフフと笑った。
……
宿屋で待てど、ルナリアは戻ってこない。
ワタシに対して何が気に食わなかったのか……いえ、理由はわかってる。
ゲイロード事件と、今回の事件、ワタシの”暴走”で共通してる。ただ前回と違って、今回は記憶がない。
スノウから聞いたわ、”ルナリアは恐れている”と、このワタシを。
正直、ワタシも、自分がちょっと怖い。
……だけど、何かおかしい、何か変、モヤモヤっとした心の正体がわからない。
……
時間も押し迫り、ワタシ達はスノウをカスティアさんにお願いして、彼女を宿に留め、3人で衛士隊庁舎に向かった。そこにギルドの関係者も来るとの話。
やだなー
あ、ギルドと言えば…、道ゆく途中でマティに質問を投げた。
「ねえ、山賊の件はどうなったの?」
「衛士隊やギルドが把握している大規模な山賊集団は全て壊滅している事が確認取れたそうです。ただ、私達が討伐したと言う事実確認は保留中です」
「なんで?」
「私達が持ち込んだ耳の数は、結果的に98あったそうです。その照合に時間がかかっているのと、たった4人で4組織、100人近い山賊を屠ったという事が、まだ信じられないみたいですよ」
報告はスノウを除いた4人で討伐した事にしてある。
でも、実のところほとんどがスノウとルナリア、それからナイトメアのチェレスタちゃんの二人と一頭、マティとケティは、彼女達が討ち漏らした輩を片付け、ワタシなんか殆ど見てただけ。
それにしても前衛と後衛がひっくり返ってて、おかしなパーティーよね。
その中で、1番の討伐数を叩き出したのが実はスノウなんだけど……魔族は怒らせると怖いというのを実感した。
「大した連中じゃなかったけどなー、あんなの有象無象よね?」
「そうでもないそうですよ?、冒険者崩れの元ランクAとかゴロゴロいたそうです」
「え?どこに?」
「さあ?」
「ふーん、まあ、ワタシ的にヤバかったのは、あの大青龍刀使いくらいよね」
そう、ケティが馬車で轢き殺してしまった山賊の首魁”ゴリ男君”。ワタシの剣技だけじゃ敵わない相手だったわ。
まあでも、信じてもらえないなら、それでもいいわ、別に名声が欲しいとか、報酬は……惜しいけど、そんなことで名を馳せようとか思ってないし、そんな事で良くも悪くも目をつけられるのはゴメン被りたいしね。
……
イヤダイヤダと、暗い気持ちで衛士隊庁舎まで来た。
いっそのこと、建物ごと消し去りたい
「ダメ出すよ」
庁舎を見上げてうんざりした顔をしていると、マティが目を細め、ワタシにジトッと流し目を向けていたわ
「まさか、マティ、読心術持ち!?」
「顔に出てます」
あうっ
ギルドよりも立派な建物、基本的に街を護る事を主体としている組織だけに、こちらは公費で運営されていると言うのがあるのかも。
衛士隊の上位組織は、王都の騎士団になると、マティが話してくれた。
衛士隊は、地方公務員ってやつね
とりあえず、入口で召喚された事を告げ庁舎内に入ると、ワタシ達の周りをすぐさま衛士隊が取り囲んで来た。
装備していた武器類は、その場で全て取り上げられ、ワタシ達はそのまま連行された。
四方を衛士隊に挟まれる状態で廊下を進む。乱暴な扱いをされてるわけでもないけど、何やら偉いプレッシャーを与えてくる、何人かは目つきがイヤラシイ。
大きな扉の前まで来ると、中に入れと促され、扉を開けて入ると、そこは法廷の様な場所。
なにこれ?、裁判なの?
前方左右と長テーブルが置かれ、そこには、沢山の人人人が座ってる、中でも前方は、少し高くなっていて、なにやら偉そうな人達が座ってる。衛士隊の上級幹部ってとこかしら?
その列の右端に座る人物、ワタシはマティに小声で話しかけた。
「アイツ、なんでアッチ側に座ってるのよ?」
肩をすくめるマティ
そこに座っていたのはルナリア、厳しい目つきでワタシを睨んでる。その隣には、豪奢な服装のインテリそうなモノクル男子、お貴族様?
ウムム
「ルナリア殿、あの者ですか?」
「はい」
「なるほど、貴方の言う通り見目麗しきご婦人ですね」
あのモノクル男子、何奴?
「議長、では始めてくれたまえ」
「はい、フィロドロ様」
フィロドロ様?、あのモノクルイケメン君はひょっとしてお偉いさん?
中央に控える顎髭を生やしたヒョロリとした年配の男性、我の強そうな感じのオジ様が、ワタシをギロリと見下ろして来た。ワタシ的にちょっと苦手なタイプ
「さて、この審議場は、調和と裁定の神が見ておられる、嘘偽りは、神罰が下るものと心得よ」
神罰ですか、どんな罰なんだろ?
「そこの者、名と職業は?」
ワタシ?、と指を差してみた。
「他に誰がいる」
「あー、ワタシの名はエム、冒険者、ランクDです、後ろに控える2人はワタシの側仕えの従者、右が…マティ、左がケティです」
「ウフフ、従者だなんて……」
マティとケティが、顔を赤らめさせモジモジしてる
なんでやねん
すると場がざわめいた。
「貴殿は、ランクDと申すか」
「エムだってば」
議長のオジ様は、ピクっと眉根を寄せた
「名ではない、ふざけているのか」
「あ、すみません、冒険者ランクはDです」
本当に?、ランクDが?、エルフを?……とか周りが囁いてる
「議長、その者は、ランクDだが、実力はAを凌駕しているそうだ、従者の2人は元王都騎士団所属の戦乙女だそうだよ」
そう言ったのはモノクル男子、さてはルナリアに聞いたのね。余計な事言わないでよ、ルナリア
マティ達が戦乙女と知るや、周囲のざわめきが更に広がった。
「戦乙女殿を従えている是非はさておき、何故貴様は実力がありながら”D”なのだ」
「最近冒険者登録をしたからです」
「貴殿は、冒険者登録する前は、いかなる職に就いていた」
えー?、覚えてませんよ
「答えなければいけませんか?」
「答えたまえ!」
議長が語気を強めた。んもー、めんどくさいな。
「では、黙秘します」
「も……なに?」
「個人情報に関わる案件です。黙秘します」
嘘は天罰と言うなら、言わなきゃ良い、そもそも覚えていないんだから、簡単な話しよね
場がざわめきから響めきに変わった。
カンカンカンっ!!
議場に乾いた音が響き渡る
「静粛に!」
議長が顔を赤くして、激しく木槌でテーブルを叩いた。ワタシをスゲー睨んでる。怒らせるつもりはないんだけどなー
「では、出身は?、どこの出なのだ」
「わかりません」
「わ、わからないとは、なんだ!!」
議長のオジ様、ついに額に血管を浮き上がらせ、立ち上がり、怒りを露わにさせた。
短気だなーもう、どないせーちゅうのよ
「議長殿、この者は、記憶喪失で、過去のことを覚えておりません」
そう言ったのはルナリア
「そんな都合の良い話しがあるか!」
「事実です、今まで彼女と接して来て、嘘はありません」
ルナリア、そのフォローはいいんだけどさー、そこじゃないし……ワタシは、議長に声をかけるべく口を開いた。
「あのー、ちょっといいですか?」
「挙手をし、発言の是非を乞いたまえ」
もう、めんどくさっ!
「議長殿、発言の許可を」
「許可する」
「これなんの尋問なの?」
「き、貴様……」
そんな議長を制したのは、モノクル男子
「議長、少し冷静になりたまえ、かの者に、本審議の些細説明をしたのかね?」
モノクル男子がそう言って苦笑してる。
「……そ、そうでした…失礼しました、閣下」
大丈夫なのかしらこの人?、なに緊張してんの?
議長席列の人達はお互い、顔を見合わせ頷き合う
「で、ではまず事件のあらましだ」
うん、そこからよね?
「貴殿は、人族に化けたエルフによって拉致され……」
はぁ?、冒頭から話がおかしいんですけど?
「北東にある旧聖教会の地下墓所で、そのエルフ達によって性的な虐待を受けていた。そこへ駆けつけた衛士隊によって、他に囚われていた女性達と共に救助された。だが貴殿は助け出された直後に、突如激昂し、エルフ8名をその場で首を斬り落とし殺害した」
「……」
議長は口を大きく開け、何か言おうとしたけど、深呼吸をして口をつぐんだ。
「……しかしながら、その際、救助に来た衛士隊4名にも、凄惨なる危害を加えたのは事実か」
本題はそっちね
「危害を加えたのは事実なんだと思います」
「思います?」
「エルフの殺害、衛士隊への危害、ワタシが聴いた感じだと概ねその様ですね」
「…聞いた?、概ね?、なんだ、そのまるで他人事の様な言い回しは」
「その時の事を覚えていないからです」
「覚えていない!?」
場がざわめいた。
今にもキレそうな議長殿は、モノクル男子をちらっと見て、踏みとどまって呼吸を整えてる。
「……よくもこの神聖なる審議場で、その様に不遜な態度をとれるものだな……」
不遜かな?
この場所での”嘘”はつけない。だって、ココが議長の言う通り、神域だと言うのは、マジで正しいと思う。
ただならぬ気配がする。天秤持った女神様とか出て来そうだもん。
それに、覚えてない以上、どこぞの国の政治家の様に「記憶にございません」と言った方が、当たり障りがないし、嘘にもならないない。
その前に議長が宣った内容は事実じゃないけど、そのあたりの神様判定はないのかしら?
すると、黙っていたルナリアが口を開いた。
「エム、真面目に答えなさい。貴方は今、不利な状況にあるのよ?、答え方によっては、立場が更に悪くなるのよ」
君は、どっちの味方やねん。
それに、その言い方は、ワタシの罪ありきってことで話しを進めようとしてるわよね?、コレってちょっと違うけど、ゲイロード轟沈した時に、ルナリアと対峙した構図と一緒よね。
ならば…
「……議長殿、ワタシから意見してもよろしいですか?」
「意見だと・・・」
議長が苦虫噛み潰した様な顔をしながら、モノクル男子の顔を見た。すると彼は小さくうなずいた
「……いいだろう、意見を述べよ」
「ありがとうございます」
ワタシは、胸に手をやり深く会釈した。不遜と言われるのも癪なので・・・
「・・・この審議の場に、ワタシを弁護する者がおりません」
「ベンゴ?、ベンゴとはなんだ」
「ワタシを擁護してくれる代弁者です」
ワタシはチラリとルナリアを見た
「その様な者は必要ない、ここは罪のあらましと、当事者本人からその事実を確認し、罪の重さをはかる場である。それに際して虚偽を申せば即座に神罰が降り、地獄へ落ちると心得よ」
やっぱりここは、罪ありきで裁く場なのね
「畏れながら、今の話の虚偽の審議はされないのですか?」
ワタシの言葉に周りがざわついた。
「この場での虚偽は神罰が降ると、たった今申したはずだ」
「この場での虚偽ですよね?」
「そうだ」
「この場だけですよね?」
「何が言いたい」
「ワタシが危害を加えたとされる衛士隊4人は、今ここにいますか?」
更に場がざわついた。
「その者達は治療中で動けない、故に事前に聴取してある。この場ではその代弁者が答える、その者がここで虚偽を申告することは当然ない」
いやいや、あれから3日も経ってるんでしょ?、ケツの穴ぶっ壊されても、神聖術なら、日帰りコースでしょうよ。
……でも話はそこではない。
「その代弁者が、衛士隊に嘘をつかれていたらどうなるのですか?」
議場が騒めきから、再び響めきに変わった。
「冒険者ならいざ知らず、この街を守護する崇高な職に着く衛士が嘘をつくと言いたいのか!…」
だって、既に騙されてますもの
「議長殿、”冒険者なら”とは、聞き捨てならないですな」
右列の真ん中に座っている男性が腕を組んだまま、議長を見やってる。
「ぎ、ギルド長、それは…」
ふお、ギルド長さんですか、左目にキズの隻眼、貫禄増し増しの初老のオジ様だわ、なんか素敵
「……とは言ったものの、冒険者はやさぐれていますがな」
ギルド長がそう言って苦笑すると、周りからも笑いが漏れる
おい
だけど、ギルド長の隻眼の眼光が一段と鋭く光った。
「……だが議長殿、彼女の言うことも一理ある、この審議場にその衛士4人を呼べないのか?」
「歩く事もままならぬほどの重傷と聞いている、そこの冒険者のおかげでな」
日帰りコース、日帰りコース、ワタシは心のなかで呟いた
議長が、机の上の報告書に目をやった
「報告では、影の様な魔物を召喚し、それを使って……その、なんだ…」
議長が口籠る、するとルナリアが……
「それは魔物ではありません、彼女の影分身です。彼女はそれを使って、衛士隊4人の菊門を拷問し、破壊したのです。それ故か、神聖術でも、怪我が治り難い様です」
シャドウにそんな呪い的追加効果はないわよ?、ルナリア、マジで言ってる?
彼女のその説明に、周りから悲鳴に似た声が上がった。尻を押さえているものまでいるわ。
議長様が、木槌を叩きまくってるけど、全く静かにならない。
モノクル男子は、口元を隠してルナリアと何やら囁きあってる。
そんな騒然としている中、ギルド長が身を乗り出し、ワタシにだけ聞こえる様な感じで、フランクに声をかけて来た。
「その報告はギルドでも聞いてるよ、嬢ちゃん、本当にヤったのか?」
ギルド長は、そう言いながらも、なぜか笑いをこらえている。
「状況的にワタシが手をかけたんでしょうね、でもその時の記憶は本当にありません」
「嘘をつくな!!」
わっ、聴いてた。議長がワナワナと震えてる。
議長の怒声に、一瞬で場が静まり返った。
「嘘なんか言ってません。神罰が降るのでしょ?」
「くっ……ギルド長、勝手な質問は困る」
「申し訳ない。では議長殿、改めて彼女にギルドより質問をしたいが宜しいか?」
そう言ってギルド長が手を挙げる。
「……いいでしょう」
「では聞く、君はナゼそんな事をした?」
「んー、簡単に言えば報復でしょうね」
「報復?……」
「衛士の彼らにしてみれば、クソ……あ、いえ、エルフの行動を監視、内偵するという任務の一貫だったのでしょう、街を護る者としては立派な事、……ですが、その手段の先に、ワタシを囮に使ったんです」
「囮?」
「エルフの虜囚となっていた若い女性たちを助けるために、囮としてワタシを昏倒させエルフに目を引かせて、奴らに凌辱させたんです」
ワタシはチラリとルナリアの方を見た。だけど彼女は目をつむり無反応。怪訝な顔をしていたワタシを見たモノクル男子が苦笑した目で見下ろしてくる、その目が・・・気持ちわるい。
なに、アイツ・・・
「そ、そんな報告は受けていないぞ!!」
議長がそう声を荒らげ、ワタシは我に返った
そりゃ言うわけないじゃん、この場にあの4人が来ないのは、それを聞かれたら、神の前で嘘がつけないからだと思うわ。…でもワタシはそんな事は伝えない。少しは頭を使いやがれ。
そこにサッとマティが手を挙げた
「議長殿、発言の許可を」
「従者如きが……い、いや戦乙女殿であったな、失礼した。発言を許可する」
え?、なにそれ?、戦乙女って、なんでそんなに敬られてるの??
「その衛士達の事ですが、彼らは冒険者として、”魔犬の匙”というパーティーを名乗っているようでした。ギルド長、心あたりはありませんか?」
「”魔犬の匙”?」
ギルド長は隣に座る秘書のような女性に目配せした。
すると女性が手のひらぐらいのメモを開いた
「……魔犬の匙は、最近王都よりこの街に拠点を移した冒険者です。ランクはC、ランクBの依頼もこなせる実力があります。ちなみに3日前に北の迷宮に赴いており、戻ってきておりません。生死不明です」
3日前?、それってアイツらに捕まってエルフにパコパコされた日じゃん!?
「アリバイが合わないな……戦乙女殿は、”衛士”と”魔犬の匙”の連中が同一人物だと?」
「可能性はあるかと」
議長がしきりに机の報告書を見ているけど、おそらくそこにはそんなことは書いてないと思うわよ
「・・・議長殿、これはもはや茶番です」
そういったのはルナリア、立ち上がると、ワタシの前まで来た
「事実を捻じ曲げないでエム、記憶がない?、いいえ違うわ、貴方は自ら記憶を消したのよ」
何をいいだすかな・・・
「貴方前に言ったわよね?、”記憶がない”と・・・、記憶がない以上、嘘か本当かなんてわからない、事実だけを受け入れ答えればいい、よくもそんな姑息な手段を取ったものね」
マティとケティが前に踏み出そうとして踏みとどまった。ワタシが制したから。
「貴方達は、すぐそうやって暴力で解決しようとする。ここは神聖な審議の場なのよ」
ワタシはモノクル男子をみた、一見無表情だが、目だけがいやらしく笑っていた。この野郎、ルナリアに何をしたの?、そんなワタシの視線にルナリアが反応する
「エム、フィロドロ様は関係ありません」
すると、モノクル男子が手を上げた
「議長、ギルド長、どうだろうか?、その”魔犬の匙”とやらの冒険者が、そこのご婦人を拉致したのは間違いないようだ。だが、その者達が本当に衛士なのか確認が必要ではないかな?、それと、彼女自身が認めた様に衛士に危害を与えたのもまた事実。諸々を調査した後、改めて審議をしては?」
何でやねん、アホか、魔犬の匙は、衛士隊じゃ、ボケ。
「お言葉ですが、フィロドロ様、”魔犬の匙”よりも、まず被害者とされる衛士4人の召喚が先だと思いますが?」
ギルド長の言う通り、素敵よオジ様
「それに戦乙女殿が言われるように、件の冒険者が、もし衛士だったのだとすれば……」
そんなギルド長の言葉を衛士サイドの連中が激昂して遮った。
「ギルドは、加害者の小娘よりも、我らを疑うのか!」
「衛士隊を愚弄するつもりか!!」
衛士側の人達が声を荒らげる。小娘って、そんな歳じゃないやい。あんたらの方が失礼じゃんか
「そうではない!、審議に足る情報が不足していると言っている!、それに衛士4人に話を聞くのが早い!」
ギルド長も言い返す。
ワーワーギャーギャーと審議の場が荒れた。議長が木槌がバンバン叩いてる。
カオスだわ。
「燃やしていい?」
すぐ背後のマティにそう囁いた
「ダメです」
ですよねー
・・・
豪華な装飾の部屋、豪奢なソファー、アールデコ調の調度品のテーブルの上には、いい香りのする茶が、これまた高級そうな器で置かれていた。
ルナリアはそこで一人の背の高い若い男性と向き合っていた。衛士ではない、モノクルをかけ優し気にルナリアにほほ笑み、部屋の感じから何処かの貴族のようだった。
「それで?、エム殿はどうでしたか、ルナリア殿?」
「彼女は……キケンです」
「そうですか……」
泣き顔のルナリアの後ろに回った男は、そう言って彼女を抱きしめた。
「でも、フィロドロ様、私は……エムを救いたいのです」
「わかりますよ、この私も貴方のお力になりたい。ですが、このままだとその方は厳罰になる。良くて奴隷落ち、悪くて極刑でしょう」
「極刑!?」
「ですので、せめて犯罪奴隷に落ちつかせて、貴方が召し上げれば良いのですよ」
「エムを私の奴隷に?」
「そうです」
「奴隷に……ああ、お願いします。私、何でもします」
「他ならぬ、貴方のためです」
男はそう言って、ルナリアに口づけした。ルナリアも、舌を絡ませそれに応える。
男は優しくソファにルナリアを押し倒し、服を脱がして行く。
「フィロドロ様……」
「貴方の心を癒やして差し上げましょう、ルナリア」
フィロドロは、露になったルナリアの豊満な乳房を揉み上げ、そして手を彼女の股の中へ入れていく
「あ、ああ、や、優しくしてください」
「さあ、癒しの中でまどろんでください」
「はい」
フィロドロがフフフと笑った。
……
宿屋で待てど、ルナリアは戻ってこない。
ワタシに対して何が気に食わなかったのか……いえ、理由はわかってる。
ゲイロード事件と、今回の事件、ワタシの”暴走”で共通してる。ただ前回と違って、今回は記憶がない。
スノウから聞いたわ、”ルナリアは恐れている”と、このワタシを。
正直、ワタシも、自分がちょっと怖い。
……だけど、何かおかしい、何か変、モヤモヤっとした心の正体がわからない。
……
時間も押し迫り、ワタシ達はスノウをカスティアさんにお願いして、彼女を宿に留め、3人で衛士隊庁舎に向かった。そこにギルドの関係者も来るとの話。
やだなー
あ、ギルドと言えば…、道ゆく途中でマティに質問を投げた。
「ねえ、山賊の件はどうなったの?」
「衛士隊やギルドが把握している大規模な山賊集団は全て壊滅している事が確認取れたそうです。ただ、私達が討伐したと言う事実確認は保留中です」
「なんで?」
「私達が持ち込んだ耳の数は、結果的に98あったそうです。その照合に時間がかかっているのと、たった4人で4組織、100人近い山賊を屠ったという事が、まだ信じられないみたいですよ」
報告はスノウを除いた4人で討伐した事にしてある。
でも、実のところほとんどがスノウとルナリア、それからナイトメアのチェレスタちゃんの二人と一頭、マティとケティは、彼女達が討ち漏らした輩を片付け、ワタシなんか殆ど見てただけ。
それにしても前衛と後衛がひっくり返ってて、おかしなパーティーよね。
その中で、1番の討伐数を叩き出したのが実はスノウなんだけど……魔族は怒らせると怖いというのを実感した。
「大した連中じゃなかったけどなー、あんなの有象無象よね?」
「そうでもないそうですよ?、冒険者崩れの元ランクAとかゴロゴロいたそうです」
「え?どこに?」
「さあ?」
「ふーん、まあ、ワタシ的にヤバかったのは、あの大青龍刀使いくらいよね」
そう、ケティが馬車で轢き殺してしまった山賊の首魁”ゴリ男君”。ワタシの剣技だけじゃ敵わない相手だったわ。
まあでも、信じてもらえないなら、それでもいいわ、別に名声が欲しいとか、報酬は……惜しいけど、そんなことで名を馳せようとか思ってないし、そんな事で良くも悪くも目をつけられるのはゴメン被りたいしね。
……
イヤダイヤダと、暗い気持ちで衛士隊庁舎まで来た。
いっそのこと、建物ごと消し去りたい
「ダメ出すよ」
庁舎を見上げてうんざりした顔をしていると、マティが目を細め、ワタシにジトッと流し目を向けていたわ
「まさか、マティ、読心術持ち!?」
「顔に出てます」
あうっ
ギルドよりも立派な建物、基本的に街を護る事を主体としている組織だけに、こちらは公費で運営されていると言うのがあるのかも。
衛士隊の上位組織は、王都の騎士団になると、マティが話してくれた。
衛士隊は、地方公務員ってやつね
とりあえず、入口で召喚された事を告げ庁舎内に入ると、ワタシ達の周りをすぐさま衛士隊が取り囲んで来た。
装備していた武器類は、その場で全て取り上げられ、ワタシ達はそのまま連行された。
四方を衛士隊に挟まれる状態で廊下を進む。乱暴な扱いをされてるわけでもないけど、何やら偉いプレッシャーを与えてくる、何人かは目つきがイヤラシイ。
大きな扉の前まで来ると、中に入れと促され、扉を開けて入ると、そこは法廷の様な場所。
なにこれ?、裁判なの?
前方左右と長テーブルが置かれ、そこには、沢山の人人人が座ってる、中でも前方は、少し高くなっていて、なにやら偉そうな人達が座ってる。衛士隊の上級幹部ってとこかしら?
その列の右端に座る人物、ワタシはマティに小声で話しかけた。
「アイツ、なんでアッチ側に座ってるのよ?」
肩をすくめるマティ
そこに座っていたのはルナリア、厳しい目つきでワタシを睨んでる。その隣には、豪奢な服装のインテリそうなモノクル男子、お貴族様?
ウムム
「ルナリア殿、あの者ですか?」
「はい」
「なるほど、貴方の言う通り見目麗しきご婦人ですね」
あのモノクル男子、何奴?
「議長、では始めてくれたまえ」
「はい、フィロドロ様」
フィロドロ様?、あのモノクルイケメン君はひょっとしてお偉いさん?
中央に控える顎髭を生やしたヒョロリとした年配の男性、我の強そうな感じのオジ様が、ワタシをギロリと見下ろして来た。ワタシ的にちょっと苦手なタイプ
「さて、この審議場は、調和と裁定の神が見ておられる、嘘偽りは、神罰が下るものと心得よ」
神罰ですか、どんな罰なんだろ?
「そこの者、名と職業は?」
ワタシ?、と指を差してみた。
「他に誰がいる」
「あー、ワタシの名はエム、冒険者、ランクDです、後ろに控える2人はワタシの側仕えの従者、右が…マティ、左がケティです」
「ウフフ、従者だなんて……」
マティとケティが、顔を赤らめさせモジモジしてる
なんでやねん
すると場がざわめいた。
「貴殿は、ランクDと申すか」
「エムだってば」
議長のオジ様は、ピクっと眉根を寄せた
「名ではない、ふざけているのか」
「あ、すみません、冒険者ランクはDです」
本当に?、ランクDが?、エルフを?……とか周りが囁いてる
「議長、その者は、ランクDだが、実力はAを凌駕しているそうだ、従者の2人は元王都騎士団所属の戦乙女だそうだよ」
そう言ったのはモノクル男子、さてはルナリアに聞いたのね。余計な事言わないでよ、ルナリア
マティ達が戦乙女と知るや、周囲のざわめきが更に広がった。
「戦乙女殿を従えている是非はさておき、何故貴様は実力がありながら”D”なのだ」
「最近冒険者登録をしたからです」
「貴殿は、冒険者登録する前は、いかなる職に就いていた」
えー?、覚えてませんよ
「答えなければいけませんか?」
「答えたまえ!」
議長が語気を強めた。んもー、めんどくさいな。
「では、黙秘します」
「も……なに?」
「個人情報に関わる案件です。黙秘します」
嘘は天罰と言うなら、言わなきゃ良い、そもそも覚えていないんだから、簡単な話しよね
場がざわめきから響めきに変わった。
カンカンカンっ!!
議場に乾いた音が響き渡る
「静粛に!」
議長が顔を赤くして、激しく木槌でテーブルを叩いた。ワタシをスゲー睨んでる。怒らせるつもりはないんだけどなー
「では、出身は?、どこの出なのだ」
「わかりません」
「わ、わからないとは、なんだ!!」
議長のオジ様、ついに額に血管を浮き上がらせ、立ち上がり、怒りを露わにさせた。
短気だなーもう、どないせーちゅうのよ
「議長殿、この者は、記憶喪失で、過去のことを覚えておりません」
そう言ったのはルナリア
「そんな都合の良い話しがあるか!」
「事実です、今まで彼女と接して来て、嘘はありません」
ルナリア、そのフォローはいいんだけどさー、そこじゃないし……ワタシは、議長に声をかけるべく口を開いた。
「あのー、ちょっといいですか?」
「挙手をし、発言の是非を乞いたまえ」
もう、めんどくさっ!
「議長殿、発言の許可を」
「許可する」
「これなんの尋問なの?」
「き、貴様……」
そんな議長を制したのは、モノクル男子
「議長、少し冷静になりたまえ、かの者に、本審議の些細説明をしたのかね?」
モノクル男子がそう言って苦笑してる。
「……そ、そうでした…失礼しました、閣下」
大丈夫なのかしらこの人?、なに緊張してんの?
議長席列の人達はお互い、顔を見合わせ頷き合う
「で、ではまず事件のあらましだ」
うん、そこからよね?
「貴殿は、人族に化けたエルフによって拉致され……」
はぁ?、冒頭から話がおかしいんですけど?
「北東にある旧聖教会の地下墓所で、そのエルフ達によって性的な虐待を受けていた。そこへ駆けつけた衛士隊によって、他に囚われていた女性達と共に救助された。だが貴殿は助け出された直後に、突如激昂し、エルフ8名をその場で首を斬り落とし殺害した」
「……」
議長は口を大きく開け、何か言おうとしたけど、深呼吸をして口をつぐんだ。
「……しかしながら、その際、救助に来た衛士隊4名にも、凄惨なる危害を加えたのは事実か」
本題はそっちね
「危害を加えたのは事実なんだと思います」
「思います?」
「エルフの殺害、衛士隊への危害、ワタシが聴いた感じだと概ねその様ですね」
「…聞いた?、概ね?、なんだ、そのまるで他人事の様な言い回しは」
「その時の事を覚えていないからです」
「覚えていない!?」
場がざわめいた。
今にもキレそうな議長殿は、モノクル男子をちらっと見て、踏みとどまって呼吸を整えてる。
「……よくもこの神聖なる審議場で、その様に不遜な態度をとれるものだな……」
不遜かな?
この場所での”嘘”はつけない。だって、ココが議長の言う通り、神域だと言うのは、マジで正しいと思う。
ただならぬ気配がする。天秤持った女神様とか出て来そうだもん。
それに、覚えてない以上、どこぞの国の政治家の様に「記憶にございません」と言った方が、当たり障りがないし、嘘にもならないない。
その前に議長が宣った内容は事実じゃないけど、そのあたりの神様判定はないのかしら?
すると、黙っていたルナリアが口を開いた。
「エム、真面目に答えなさい。貴方は今、不利な状況にあるのよ?、答え方によっては、立場が更に悪くなるのよ」
君は、どっちの味方やねん。
それに、その言い方は、ワタシの罪ありきってことで話しを進めようとしてるわよね?、コレってちょっと違うけど、ゲイロード轟沈した時に、ルナリアと対峙した構図と一緒よね。
ならば…
「……議長殿、ワタシから意見してもよろしいですか?」
「意見だと・・・」
議長が苦虫噛み潰した様な顔をしながら、モノクル男子の顔を見た。すると彼は小さくうなずいた
「……いいだろう、意見を述べよ」
「ありがとうございます」
ワタシは、胸に手をやり深く会釈した。不遜と言われるのも癪なので・・・
「・・・この審議の場に、ワタシを弁護する者がおりません」
「ベンゴ?、ベンゴとはなんだ」
「ワタシを擁護してくれる代弁者です」
ワタシはチラリとルナリアを見た
「その様な者は必要ない、ここは罪のあらましと、当事者本人からその事実を確認し、罪の重さをはかる場である。それに際して虚偽を申せば即座に神罰が降り、地獄へ落ちると心得よ」
やっぱりここは、罪ありきで裁く場なのね
「畏れながら、今の話の虚偽の審議はされないのですか?」
ワタシの言葉に周りがざわついた。
「この場での虚偽は神罰が降ると、たった今申したはずだ」
「この場での虚偽ですよね?」
「そうだ」
「この場だけですよね?」
「何が言いたい」
「ワタシが危害を加えたとされる衛士隊4人は、今ここにいますか?」
更に場がざわついた。
「その者達は治療中で動けない、故に事前に聴取してある。この場ではその代弁者が答える、その者がここで虚偽を申告することは当然ない」
いやいや、あれから3日も経ってるんでしょ?、ケツの穴ぶっ壊されても、神聖術なら、日帰りコースでしょうよ。
……でも話はそこではない。
「その代弁者が、衛士隊に嘘をつかれていたらどうなるのですか?」
議場が騒めきから、再び響めきに変わった。
「冒険者ならいざ知らず、この街を守護する崇高な職に着く衛士が嘘をつくと言いたいのか!…」
だって、既に騙されてますもの
「議長殿、”冒険者なら”とは、聞き捨てならないですな」
右列の真ん中に座っている男性が腕を組んだまま、議長を見やってる。
「ぎ、ギルド長、それは…」
ふお、ギルド長さんですか、左目にキズの隻眼、貫禄増し増しの初老のオジ様だわ、なんか素敵
「……とは言ったものの、冒険者はやさぐれていますがな」
ギルド長がそう言って苦笑すると、周りからも笑いが漏れる
おい
だけど、ギルド長の隻眼の眼光が一段と鋭く光った。
「……だが議長殿、彼女の言うことも一理ある、この審議場にその衛士4人を呼べないのか?」
「歩く事もままならぬほどの重傷と聞いている、そこの冒険者のおかげでな」
日帰りコース、日帰りコース、ワタシは心のなかで呟いた
議長が、机の上の報告書に目をやった
「報告では、影の様な魔物を召喚し、それを使って……その、なんだ…」
議長が口籠る、するとルナリアが……
「それは魔物ではありません、彼女の影分身です。彼女はそれを使って、衛士隊4人の菊門を拷問し、破壊したのです。それ故か、神聖術でも、怪我が治り難い様です」
シャドウにそんな呪い的追加効果はないわよ?、ルナリア、マジで言ってる?
彼女のその説明に、周りから悲鳴に似た声が上がった。尻を押さえているものまでいるわ。
議長様が、木槌を叩きまくってるけど、全く静かにならない。
モノクル男子は、口元を隠してルナリアと何やら囁きあってる。
そんな騒然としている中、ギルド長が身を乗り出し、ワタシにだけ聞こえる様な感じで、フランクに声をかけて来た。
「その報告はギルドでも聞いてるよ、嬢ちゃん、本当にヤったのか?」
ギルド長は、そう言いながらも、なぜか笑いをこらえている。
「状況的にワタシが手をかけたんでしょうね、でもその時の記憶は本当にありません」
「嘘をつくな!!」
わっ、聴いてた。議長がワナワナと震えてる。
議長の怒声に、一瞬で場が静まり返った。
「嘘なんか言ってません。神罰が降るのでしょ?」
「くっ……ギルド長、勝手な質問は困る」
「申し訳ない。では議長殿、改めて彼女にギルドより質問をしたいが宜しいか?」
そう言ってギルド長が手を挙げる。
「……いいでしょう」
「では聞く、君はナゼそんな事をした?」
「んー、簡単に言えば報復でしょうね」
「報復?……」
「衛士の彼らにしてみれば、クソ……あ、いえ、エルフの行動を監視、内偵するという任務の一貫だったのでしょう、街を護る者としては立派な事、……ですが、その手段の先に、ワタシを囮に使ったんです」
「囮?」
「エルフの虜囚となっていた若い女性たちを助けるために、囮としてワタシを昏倒させエルフに目を引かせて、奴らに凌辱させたんです」
ワタシはチラリとルナリアの方を見た。だけど彼女は目をつむり無反応。怪訝な顔をしていたワタシを見たモノクル男子が苦笑した目で見下ろしてくる、その目が・・・気持ちわるい。
なに、アイツ・・・
「そ、そんな報告は受けていないぞ!!」
議長がそう声を荒らげ、ワタシは我に返った
そりゃ言うわけないじゃん、この場にあの4人が来ないのは、それを聞かれたら、神の前で嘘がつけないからだと思うわ。…でもワタシはそんな事は伝えない。少しは頭を使いやがれ。
そこにサッとマティが手を挙げた
「議長殿、発言の許可を」
「従者如きが……い、いや戦乙女殿であったな、失礼した。発言を許可する」
え?、なにそれ?、戦乙女って、なんでそんなに敬られてるの??
「その衛士達の事ですが、彼らは冒険者として、”魔犬の匙”というパーティーを名乗っているようでした。ギルド長、心あたりはありませんか?」
「”魔犬の匙”?」
ギルド長は隣に座る秘書のような女性に目配せした。
すると女性が手のひらぐらいのメモを開いた
「……魔犬の匙は、最近王都よりこの街に拠点を移した冒険者です。ランクはC、ランクBの依頼もこなせる実力があります。ちなみに3日前に北の迷宮に赴いており、戻ってきておりません。生死不明です」
3日前?、それってアイツらに捕まってエルフにパコパコされた日じゃん!?
「アリバイが合わないな……戦乙女殿は、”衛士”と”魔犬の匙”の連中が同一人物だと?」
「可能性はあるかと」
議長がしきりに机の報告書を見ているけど、おそらくそこにはそんなことは書いてないと思うわよ
「・・・議長殿、これはもはや茶番です」
そういったのはルナリア、立ち上がると、ワタシの前まで来た
「事実を捻じ曲げないでエム、記憶がない?、いいえ違うわ、貴方は自ら記憶を消したのよ」
何をいいだすかな・・・
「貴方前に言ったわよね?、”記憶がない”と・・・、記憶がない以上、嘘か本当かなんてわからない、事実だけを受け入れ答えればいい、よくもそんな姑息な手段を取ったものね」
マティとケティが前に踏み出そうとして踏みとどまった。ワタシが制したから。
「貴方達は、すぐそうやって暴力で解決しようとする。ここは神聖な審議の場なのよ」
ワタシはモノクル男子をみた、一見無表情だが、目だけがいやらしく笑っていた。この野郎、ルナリアに何をしたの?、そんなワタシの視線にルナリアが反応する
「エム、フィロドロ様は関係ありません」
すると、モノクル男子が手を上げた
「議長、ギルド長、どうだろうか?、その”魔犬の匙”とやらの冒険者が、そこのご婦人を拉致したのは間違いないようだ。だが、その者達が本当に衛士なのか確認が必要ではないかな?、それと、彼女自身が認めた様に衛士に危害を与えたのもまた事実。諸々を調査した後、改めて審議をしては?」
何でやねん、アホか、魔犬の匙は、衛士隊じゃ、ボケ。
「お言葉ですが、フィロドロ様、”魔犬の匙”よりも、まず被害者とされる衛士4人の召喚が先だと思いますが?」
ギルド長の言う通り、素敵よオジ様
「それに戦乙女殿が言われるように、件の冒険者が、もし衛士だったのだとすれば……」
そんなギルド長の言葉を衛士サイドの連中が激昂して遮った。
「ギルドは、加害者の小娘よりも、我らを疑うのか!」
「衛士隊を愚弄するつもりか!!」
衛士側の人達が声を荒らげる。小娘って、そんな歳じゃないやい。あんたらの方が失礼じゃんか
「そうではない!、審議に足る情報が不足していると言っている!、それに衛士4人に話を聞くのが早い!」
ギルド長も言い返す。
ワーワーギャーギャーと審議の場が荒れた。議長が木槌がバンバン叩いてる。
カオスだわ。
「燃やしていい?」
すぐ背後のマティにそう囁いた
「ダメです」
ですよねー
・・・
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