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エルフの集落
第43話:一直線
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「走れ!」
ロックが全員を奮い立たせるように大声を出した。子供は母親に抱きかかえられ、フルボが事前に全員にありったけの防御補助魔法をかけている。アイレ達はひと塊の軍団の様に魔物の群れを一直線に抜け切る為に
全速力で走った。
村の入り口から勢いよく飛び出ると、足が速い魔物といち早く遭遇した。牙が鋭く馬の様の体と速く駆けれそうな脚をしている。接敵する前にロックが
「ダメージを与えるだけでいい! 止めを刺そうとするなよ!」
全員に再度確認した。アイレはそれを頭で復習する様に唱えながら、誰よりも早く馬の魔物の目を潰した。魔物は悲鳴をあげてると
フェアが更に押し出すように風の魔法で横に吹き飛ばした。
「吹《ヴォン》き飛《ムーシュ》べ!」
それを見ていたロックとワイズが口笛を鳴らした。
「やるねぇ」
「速いな」
村人達はそんな余裕はなく、兎に角必死に走った。 全員の足並みを揃える様に時折、後方のグレースとフルボが声をかける。
「これからが本番だ油断するなよ!」
「ああ」
「おう!」
「わかったわ!」
全員が鼓舞するかの様にロックに応える。それから直ぐに大勢の魔物が前方に見え始めた。すると、後方からグレースが弓を構えた。
ピンと張った弦を引っ張りそれを放つ瞬間に魔法で具現化された矢が浮き⒟ると、三種類の綺麗な色となり光の様に飛び出した。
魔法の矢はそれぞれ違う魔物に命中して目や足にダメージを与えた。それを見ていたアイレとフェアは初めて見る魔法攻撃に驚いた。
「すげぇ、ああいうのもできるのか」
「詠唱もなしで魔法の矢を具現化できるなんて……凄い」
アイレの隣にいた、ロックとワイズは片手剣を使って最小限の動きで魔物の足や目にダメージを与えている。アイレにはとても出来ないような狙いすました攻撃で
まるで道を作る様に流れる様な攻撃をしている。
横にいたミットと元冒険者の村人も横から攻撃されない様に警戒しながら、一生懸命に走った。それでも、魔物はどんどんと前方から向かってくる。
「ちくしょう! 多すぎる!」
「本当に……」
アイレとフェアが悪態をつきながらも攻撃を繰り出した。走る速度はやがてゆるかな速度になってしまう程の魔物が増えてきた所で
蛇の魔物が炎を吐いてきた。
それをフルボとフェアが急いで魔法を詠唱して、全員に障壁を張って守ったが
完全に足が止まってしまった。 アイレ達の左右には大勢の魔物がけたたましい声を上げて通過していってるが、前方の魔物はアイレ達を敵と認識して止まった。
その後ろからも魔物が押し寄せてきており、まるでドミノ倒しの様にアイレ達が落ち潰される未来が見えている。
「まずいねぇ」
ロックが少し顔を歪ませた。
「時間を作って!」
フェアがそう言うと、アイレは誰よりも早く前方の魔物に飛び掛かった。高速で攻撃を繰り出しながら、足止めを頑張っている。それに続いてグレースも魔法の矢を何度も撃った。
ロック、ワイズも続いて時間を稼ぐと
フェアが高密度の魔力を高めて離れて! と叫んだ。
「風の精霊よ、私達に道を示して風《ウィンド》道《ロード》!!!!」
掌からまるで瞬間的な台風の様な波動が飛び出ると、魔物は吹き飛ばされた。それでまた通り道が出来た所をアイレが直ぐに全員に声をかけた。
「今だ! 走るぞ!!!」
全員は再び一丸となって走った。村の入り口を超えると直ぐに森があり、そこを更に進むと平地に出る。それまで抜ければきっと活路が見いだされるはずだった。
だが、その途中でグレースとフルボが叫んだ。
「後ろから魔物が追いかけてきてる!」
「おかしいよ! 僕達を狙ってるみたい!」
それを聞いたアイレ達が後方を振り向くと、まるで挟み込む様に魔物の群れが追いかけてきていた。次もし、止まってしまえば囲まれて命はない。
「絶対止まるなよ!!!」
ロックが言った。
カナリアや村人達はできるだけ何も考えない様に走っていたが、限界を迎えようとしていた。子供を抱きかかえた母親がいつまでも走れるわけもなく
ついに態勢を崩して倒れてしまった。その拍子に足を怪我して、子供が手から離れる。
それを後方にいたグレースが跳躍するように子供を捕まえたが、グレースは孤立してしまい直ぐに魔物に囲まれてしまった。
「グレース!!!」
ロックがそれに気付いて大声を出した。
アイレ達もそれに気付いて止まったが、その隙に大勢の魔物に囲まれてしまった。
「うわあああああああ」
「も、もうだめだああああ」
村人達は悲鳴をあげて、恐ろしい魔物達の姿を見て震えた。自分達だけの事を考えれば
もしかしたら脱出ぐらいはできたかもしれないが、アイレとフェアは勿論そんな気はなかった。
一方でロック達はできるだけ村人も助けたいと思っていたが、最悪自分達だけでも逃げるぐらいの非情さ持ち合わせていた。
だが、グレースが子供を助け孤立した事により、事情が変わった。
「最後まで諦めるな! 絶対どこかで活路があるはずだ! グレース達を助けるぞ!」
皆が絶望的な表情を浮かべている時にアイレは大声で励ました。その言葉に嘘偽りはなく、どんな時も諦めないアイレの本心だ。そのまま、グレース達に向かうように魔物に攻撃を仕掛けた。
それに続いて、ロック達もグレースを助けようと急いだ。
フェアやフルボ達は村人を守る様に魔法で防御をしながら、なんとか耐え凌いでいた。その時、グレースは子供を守るように背中を丸めていた。ただ、子供を守りたいと。
しかし、不思議な事にグレースと子供の姿はまるで見えていないかのように魔物達はどこかへ移動していった。 アイレ達は依然魔物達に囲われている。
「……な、なんで? どういう事……?」
一方ですぐ近くのアイレ達はかなり手こずっていた。強い魔物も紛れ込んでいて、なかなか思うように進めない。
「ちきしょう! なんとかならねえか! ワイズ! ミット! フルボ!」
ロックは今まで一番焦っていた。グレースの姿が見えず、冷静さを保てずにいた。
「キリがねえぞ!」「くそ!」「もう魔力もつきかけてきてる!」
全員が満身創痍になり、魔力も底をつきかけていた。このままでは確実に死ぬ。その時、アイレが異変に気付いた。魔物は村人達に攻撃する事はなく、殆どがアイレとフェア、そしてロック達に矛先を向けている。
――なんだ、なんだこの違和感は?
その時、フェアが攻撃魔法を放った瞬間に大勢の魔物が寄って来たのを見て違和感は確信に変わった。
「魔力だ! この魔物達は魔力に反応してる!」
アイレが全員に叫んだが、誰もが理解できなかった。
「皆、魔力を消すんだ! それなら助かるはずだ!」
「ばかかよ! そんなんで攻撃を受けたら一瞬でお陀仏だぞ!」
やせっぽっちのミットが悪態をついた。ロックはその発言に対して冷静に分析したが、危険が高すぎてとても試す事はできないと思った。
フェアもフルボも理解はできずにいた。
このままでは全員が死ぬ。アイレは一か八かに賭けた。 大柄の蜂の様な魔物がアイレを突き刺そうと尻尾で攻撃してきた瞬間に
全ての魔力を閉じた。 防御力はゼロに等しくなり、ダメージを受けてしまえば死は免れない。
「アイレ!!!!!!!」
それに気付いたフェアがアイレを身を案じた。
だが、蜂の魔物は寸前の所で攻撃を止めて、方向を変えて吸い寄せられるように魔力に反応してロック達に向かった。そこでアイレが
「皆、今すぐに魔力を閉じろ!」
それを見ていたフェアが真っ先に閉じると、ロックは直ぐに仲間達に閉じろと叫んだ。すると魔物達はまるで目が見えなくなったかの様にキョロキョロを顔を動かして
その場でアイレ達を見失いはじめた。
それからグレースと子供の姿が見えはじめた。
「やっぱりそうだ、理由はわからないが、こいつらは目で確認してるんじゃない。 魔力を感じ取ってるんだ」
村人達が安心して、ロック達もなんとか助かったと思った矢先に、魔物達が鼻をクンクンと鳴らして何かを感じ取った。
「おい、どういう事だよ! 動いてるぞ!」
ミットが大声をあけた。
すると再び魔物は大きな雄叫びをあげた。その目線の先にはカナリアがいた。
カナリアは生活魔法を卒なくこなす程、村人達の中でも魔力が飛びぬけている。それが裏目に出た。戦闘訓練も受けていないカナリアは魔力を自身で閉じる事はできなかった。
魔物は再び、カナリアを含めた全員に攻撃を仕掛けようとした。
ロックはそれにいち早く気づくと、剣を取り出し全員の無事と引き換えにカナリアを殺す決意をした。
ロックが全員を奮い立たせるように大声を出した。子供は母親に抱きかかえられ、フルボが事前に全員にありったけの防御補助魔法をかけている。アイレ達はひと塊の軍団の様に魔物の群れを一直線に抜け切る為に
全速力で走った。
村の入り口から勢いよく飛び出ると、足が速い魔物といち早く遭遇した。牙が鋭く馬の様の体と速く駆けれそうな脚をしている。接敵する前にロックが
「ダメージを与えるだけでいい! 止めを刺そうとするなよ!」
全員に再度確認した。アイレはそれを頭で復習する様に唱えながら、誰よりも早く馬の魔物の目を潰した。魔物は悲鳴をあげてると
フェアが更に押し出すように風の魔法で横に吹き飛ばした。
「吹《ヴォン》き飛《ムーシュ》べ!」
それを見ていたロックとワイズが口笛を鳴らした。
「やるねぇ」
「速いな」
村人達はそんな余裕はなく、兎に角必死に走った。 全員の足並みを揃える様に時折、後方のグレースとフルボが声をかける。
「これからが本番だ油断するなよ!」
「ああ」
「おう!」
「わかったわ!」
全員が鼓舞するかの様にロックに応える。それから直ぐに大勢の魔物が前方に見え始めた。すると、後方からグレースが弓を構えた。
ピンと張った弦を引っ張りそれを放つ瞬間に魔法で具現化された矢が浮き⒟ると、三種類の綺麗な色となり光の様に飛び出した。
魔法の矢はそれぞれ違う魔物に命中して目や足にダメージを与えた。それを見ていたアイレとフェアは初めて見る魔法攻撃に驚いた。
「すげぇ、ああいうのもできるのか」
「詠唱もなしで魔法の矢を具現化できるなんて……凄い」
アイレの隣にいた、ロックとワイズは片手剣を使って最小限の動きで魔物の足や目にダメージを与えている。アイレにはとても出来ないような狙いすました攻撃で
まるで道を作る様に流れる様な攻撃をしている。
横にいたミットと元冒険者の村人も横から攻撃されない様に警戒しながら、一生懸命に走った。それでも、魔物はどんどんと前方から向かってくる。
「ちくしょう! 多すぎる!」
「本当に……」
アイレとフェアが悪態をつきながらも攻撃を繰り出した。走る速度はやがてゆるかな速度になってしまう程の魔物が増えてきた所で
蛇の魔物が炎を吐いてきた。
それをフルボとフェアが急いで魔法を詠唱して、全員に障壁を張って守ったが
完全に足が止まってしまった。 アイレ達の左右には大勢の魔物がけたたましい声を上げて通過していってるが、前方の魔物はアイレ達を敵と認識して止まった。
その後ろからも魔物が押し寄せてきており、まるでドミノ倒しの様にアイレ達が落ち潰される未来が見えている。
「まずいねぇ」
ロックが少し顔を歪ませた。
「時間を作って!」
フェアがそう言うと、アイレは誰よりも早く前方の魔物に飛び掛かった。高速で攻撃を繰り出しながら、足止めを頑張っている。それに続いてグレースも魔法の矢を何度も撃った。
ロック、ワイズも続いて時間を稼ぐと
フェアが高密度の魔力を高めて離れて! と叫んだ。
「風の精霊よ、私達に道を示して風《ウィンド》道《ロード》!!!!」
掌からまるで瞬間的な台風の様な波動が飛び出ると、魔物は吹き飛ばされた。それでまた通り道が出来た所をアイレが直ぐに全員に声をかけた。
「今だ! 走るぞ!!!」
全員は再び一丸となって走った。村の入り口を超えると直ぐに森があり、そこを更に進むと平地に出る。それまで抜ければきっと活路が見いだされるはずだった。
だが、その途中でグレースとフルボが叫んだ。
「後ろから魔物が追いかけてきてる!」
「おかしいよ! 僕達を狙ってるみたい!」
それを聞いたアイレ達が後方を振り向くと、まるで挟み込む様に魔物の群れが追いかけてきていた。次もし、止まってしまえば囲まれて命はない。
「絶対止まるなよ!!!」
ロックが言った。
カナリアや村人達はできるだけ何も考えない様に走っていたが、限界を迎えようとしていた。子供を抱きかかえた母親がいつまでも走れるわけもなく
ついに態勢を崩して倒れてしまった。その拍子に足を怪我して、子供が手から離れる。
それを後方にいたグレースが跳躍するように子供を捕まえたが、グレースは孤立してしまい直ぐに魔物に囲まれてしまった。
「グレース!!!」
ロックがそれに気付いて大声を出した。
アイレ達もそれに気付いて止まったが、その隙に大勢の魔物に囲まれてしまった。
「うわあああああああ」
「も、もうだめだああああ」
村人達は悲鳴をあげて、恐ろしい魔物達の姿を見て震えた。自分達だけの事を考えれば
もしかしたら脱出ぐらいはできたかもしれないが、アイレとフェアは勿論そんな気はなかった。
一方でロック達はできるだけ村人も助けたいと思っていたが、最悪自分達だけでも逃げるぐらいの非情さ持ち合わせていた。
だが、グレースが子供を助け孤立した事により、事情が変わった。
「最後まで諦めるな! 絶対どこかで活路があるはずだ! グレース達を助けるぞ!」
皆が絶望的な表情を浮かべている時にアイレは大声で励ました。その言葉に嘘偽りはなく、どんな時も諦めないアイレの本心だ。そのまま、グレース達に向かうように魔物に攻撃を仕掛けた。
それに続いて、ロック達もグレースを助けようと急いだ。
フェアやフルボ達は村人を守る様に魔法で防御をしながら、なんとか耐え凌いでいた。その時、グレースは子供を守るように背中を丸めていた。ただ、子供を守りたいと。
しかし、不思議な事にグレースと子供の姿はまるで見えていないかのように魔物達はどこかへ移動していった。 アイレ達は依然魔物達に囲われている。
「……な、なんで? どういう事……?」
一方ですぐ近くのアイレ達はかなり手こずっていた。強い魔物も紛れ込んでいて、なかなか思うように進めない。
「ちきしょう! なんとかならねえか! ワイズ! ミット! フルボ!」
ロックは今まで一番焦っていた。グレースの姿が見えず、冷静さを保てずにいた。
「キリがねえぞ!」「くそ!」「もう魔力もつきかけてきてる!」
全員が満身創痍になり、魔力も底をつきかけていた。このままでは確実に死ぬ。その時、アイレが異変に気付いた。魔物は村人達に攻撃する事はなく、殆どがアイレとフェア、そしてロック達に矛先を向けている。
――なんだ、なんだこの違和感は?
その時、フェアが攻撃魔法を放った瞬間に大勢の魔物が寄って来たのを見て違和感は確信に変わった。
「魔力だ! この魔物達は魔力に反応してる!」
アイレが全員に叫んだが、誰もが理解できなかった。
「皆、魔力を消すんだ! それなら助かるはずだ!」
「ばかかよ! そんなんで攻撃を受けたら一瞬でお陀仏だぞ!」
やせっぽっちのミットが悪態をついた。ロックはその発言に対して冷静に分析したが、危険が高すぎてとても試す事はできないと思った。
フェアもフルボも理解はできずにいた。
このままでは全員が死ぬ。アイレは一か八かに賭けた。 大柄の蜂の様な魔物がアイレを突き刺そうと尻尾で攻撃してきた瞬間に
全ての魔力を閉じた。 防御力はゼロに等しくなり、ダメージを受けてしまえば死は免れない。
「アイレ!!!!!!!」
それに気付いたフェアがアイレを身を案じた。
だが、蜂の魔物は寸前の所で攻撃を止めて、方向を変えて吸い寄せられるように魔力に反応してロック達に向かった。そこでアイレが
「皆、今すぐに魔力を閉じろ!」
それを見ていたフェアが真っ先に閉じると、ロックは直ぐに仲間達に閉じろと叫んだ。すると魔物達はまるで目が見えなくなったかの様にキョロキョロを顔を動かして
その場でアイレ達を見失いはじめた。
それからグレースと子供の姿が見えはじめた。
「やっぱりそうだ、理由はわからないが、こいつらは目で確認してるんじゃない。 魔力を感じ取ってるんだ」
村人達が安心して、ロック達もなんとか助かったと思った矢先に、魔物達が鼻をクンクンと鳴らして何かを感じ取った。
「おい、どういう事だよ! 動いてるぞ!」
ミットが大声をあけた。
すると再び魔物は大きな雄叫びをあげた。その目線の先にはカナリアがいた。
カナリアは生活魔法を卒なくこなす程、村人達の中でも魔力が飛びぬけている。それが裏目に出た。戦闘訓練も受けていないカナリアは魔力を自身で閉じる事はできなかった。
魔物は再び、カナリアを含めた全員に攻撃を仕掛けようとした。
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