やがて最強になる結界師、規格外の魔印を持って生まれたので無双します

菊池 快晴

文字の大きさ
8 / 39

第8話 能力の確認

しおりを挟む
 度肝を抜かれたとはこのことだろう。

 神殿の中は、俺が思っていた何倍も広く、そして人で溢れていた。

「どうぞこちらです」

 銀色の甲冑を着込んだ兵士たちに誘導されるがまま、前に進んでいく。
 
 玉座の間みたいだ。左右に並んでいるのは貴族だろうか。
 俺と同じぐらいの年齢の子供もいる。

「クライン、大丈夫だ。私がついてる」

 どうやら父には見透かされていたらしい。
 おもちは俺の肩に乗っていて静かにしているが、近くで立っていた貴族がおもちに気づいておお、と声を漏らしていた。
 めずらしいのか、それとも苦手なのかはわからない。

 それからも人がどんどんと増えていく。
 いつまで待てばいいんだろうと思っていたら、衛兵の一人が高らかに声をあげて姿勢を正した。

「第一王子、フィリップ様が見学に来られた! 静粛にせよ!」

 それに伴って、全員の顔が切り替わる。
 話し声はピタリと止み、現れたのは20代前半の若い男性だった。
 対照的に近衛兵と思われる男たちはみな屈強で、まるでプロレスラーだ。

「ありがとう、でもみんなそう気を張らないでくれ。父上の代わりに来ただけで、邪魔するつもりはない」

 どんなに厳しい人なのだろうと思っていたが、第一声はとても優しさに溢れていた。
 おかげで俺の心も少し和らぐ。だが次の言葉で、すぐその想いは消え失せた。

「今日の祝福の義を終えた時、人生が変わる人もいるだろう。良い意味でも悪い意味でも、周りの目も変わるだろう。だが誇ってほしい。君たちは既に選ばれた人間だということを」

 次の瞬間、揃えたように掛け声を上げた後、全員が足を揃えた。俺は少し遅れてしまったが、事前に教えてほしかったなと父を少し恨んだ。でも父の表情を見ていたら、俺と同じで緊張しているとわかった。

 第一王子は豪華な椅子に腰かけると、その権力を象徴するかのようにどっしりと構えた。
 その後、ゆっくりと現れたのは怪しげな黒衣を着た五人だった。
 黒子のように姿形が見えず、性別もわからない。

 だが彼らのことは事前に聞いている。名前はない、ただ、魔法使いと。
 
 祝福の義の詳細は教えてくれなかったが、能力の鑑定をしてくれるとのことだ。

 彼ら、あるいは彼女らは解析の魔力を持つ人たちだという。

 能力が低い、もしくは魔力の質を断定する際、逆恨みされないように、また買収されないように姿を隠して儀式を行う。
 もちろん仕事を受けたことは他言してならない。

 ただし俺は驚いた。
 黒衣から突き破るくらいヒシヒシと魔力が伝わってくるのだ。

 だが俺以外はそこまで感じていないのか、誰も表情を崩すことはない。
 みんな、魔力に耐性があるのだろうか。

 第一王子が視線で合図を送ると、祝福の義が始まった。

「ビアリス家の子、ルージュ! こちらへ!」

 一人目は、父に嫌味を言っていたインバート卿、その息子、ルージュだった。
 緊張しているらしく、歩き方はどこかぎこちない。

 黒衣の真ん中の椅子に座ると、手の平を翳される。

 一体何が起こるんだろうか。痛みとか伴うのは嫌だが、そんな様子はない。
 次の瞬間、真っ白い光がルージュを覆う。

 そして、黒子の一人が、隣にいたおじさんに耳打ちをした。

「魔印、中指、【魔滅《まめつ》】!」

 次の瞬間、歓声が上がった。

「魔滅か。一本指とはいえ、インバート家は安泰だな。大体の魔物をやれるぞ」
「ああ、悪くない」

 周りの貴族たちの話しぶりから凄いらしい。

 第一王子も「ほう、いいですね」と言っていた。

 俺はどなるんだ……と、思っていたが、その考えよりも先に次の人が呼ばれた。

 馬車で一緒になったミリシアだ。
 金髪を揺らせながら前に出る。どうやらかなり緊張しているらしく、歩き方がぎこちない。

 それがなんだか可愛くて、少し微笑んだ。

 そして――。

「魔印、人差し指【魔結界《まけっかい》】親指【魔獣《まじゅう》】!」

 またもや歓声が上がる。魔獣とは、俺のおもちと同じなのだろう。
 第一王子が見せてくれ、というと、ミリシアは何か口ずさむ。
 すると空中に黒い塊が出てきたかと思えば、そこからウサギが出てきた。

 まだ小さいが、みんな微笑む。

「愛玩型か、サーチ能力だろうか」
「魔結界との相性もいいだろう。彼女も安泰だな」

 それからも貴族たちは呼ばれ続けた。
 一本指、二本指、というのはそのままの意味であり、多ければ多いほど理由は、やはり能力が多いからだ。

 俺は自分の手を眺めた。魔印が二本、そして見えない三本を合わせて五本。

 ……どうなるのか。自分でもわからなかった。

「ロイク家の子、クライン!」
 
 そしてついに自分の番が来た。父上が軽く背中を押してくれる。

「私がついてるぞ」

 おもちを肩に乗ったまま、周りがざわめく。

「なぜ初めから召喚しているんだ? 見せつけか?」
「魔力を消費するというのに……ロイクは何を教えてるんだ」

 だがあまり肯定的ではないようだった。

 椅子に座ると、何とも言えない空気が漂っていた。
 黒衣の人たちが、俺に手を翳そうとする――だが、何かやら様子おかしかった。

 今までにはない時間、なぜか黒衣の人たちは話し合いはじめる。
 その後、何事もなかったかのように続けられた。

 身体中がピリピリする。まるで電気を流し込まれているかのようだ。
 なぜかわからないが、調べられている、とわかった。

 体重や、身長、身体をくすぐられている気分になる。

 そして這うような電気が、やがて指先に到達すると、ピリピリと魔印が痛みはじめる。
 だが決して声が出るほどではない。
 人差し指、親指、そして見えないはずの中指に到達した瞬間、黒衣の一人が、「え……」と声を漏らした。

 女性の声だ。そしてそれは連鎖するかのように動揺していく。

 薬指、そして小指を終えると、黒衣の集団は驚きを隠せなかったらしく、おじさんに耳打ちする時の声、身体が震えていた。
 何かしたのだろうか。

 不安がっていると、おもちが俺の頬を舐めてくれた。

「ぐるぅ」
「ありがとう、落ち着いたよ」
 
 そしてついに、その時がやってきた。。

「ま、魔印、人差し指【魔結界まけっかい】親指【魔獣まじゅう】――中指【魔滅まめつ】薬指【魔変まへん】小指【魔複まふう】……ご、五本指です!!!!」

 隣で黒子の翻訳をしていたおじさんが、思い切り叫んだ。

 歓声は上がらなかった。静寂。
 もしかして何か悪いことをしたのだろうか。

 そう思った瞬間――。

「ご、五本指!?」
「バカな!? そんなのありえるのか!?」
「世界を変える強さじゃないのか……」
「五本だと!!!???」

 周りが騒めき、歓声が上がった。
 父が喜んでくれるのかと思って視線を向けたが、驚きのほうが勝っているようだ。

 びっくりさせようとおもっていたが、もしかしたらやりすぎたのかもしれない。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...