やがて最強になる結界師、規格外の魔印を持って生まれたので無双します

菊池 快晴

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第22話 人を殺す覚悟

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「――魔結界、魔滅!」

 早朝、王城の修練所。
 広大な敷地面積の奥に、等間隔で訓練用の魔法人形が並んでいる。
 魔滅によって形を崩した泥人形が、数秒後、何事もなかったかのように元に戻っていく。

 構築術式が付与されている便利な魔法具だ。

 人ではなく魔物型の方が良かったが。

「――魔滅」

 俺の横から波動が飛んでくる。
 それは泥人形にぶち当たると、真ん中に大きな穴が開いた。

 魔結界は使えないルージュだが、魔滅は攻撃力と速射性が高く、使い勝手がいい。
 採用となれば宮廷魔法使いとして働くらしい。一緒に合格しても部署が違うみたいなことになるだろう。
 とはいえ、今は3人一組。

 次に、泥人形の首だけが囲われた。それから数秒後、手、足、胸、と一秒の間に何度も囲われる。
 正確無比の魔結界――ミリシアだ。

「相変わらず頑張ってるね。そろそろ行かないと、ココア先生に怒られるよ」
「え? 早くないか?」
「ルージュ、10分前じゃなくて20分前行動。――それに、忘れたの?」

 俺の言葉に、とぼけた顔のルージュが首をかしげて、ああっ! と声をあげる。
 
 さて、楽しみだ。

   ◇

 遥か上空、俺は――おもちにぶら下がっていた。
 背中に乗ったこともあるが、ちょっとつらそうだったのでもうしていない。

 遥か下に見える黒い点。
 その一点をただ見つめている。

「おもちこのあたりでいいよ。――今日こそは」

 そのまま手を放す。ぐんぐんと下降、風切音が耳に通る。
 だが恐怖はない。

 あるのはただ一つ。

 今日こそ――一本を取る。

 魔結界には有効射程がある。

 詳しいメートルは俺にもわからないが、視力と同様程度だ。

 そして上から、仁王立ちのココア先生に魔結界を詠唱した。
 普通の大きさだと回避される。
 なので、巨大で更に広範囲なものだ。

 ジジジという空間結界の音が少しだけ響いた瞬間、立方体の透明な箱が出現した。

 もちろん落ちていく慣性が消えているわけじゃない。
 すぐ自身の下にもう一つの魔結界を形成する。
 それを魔変で性質変化させる。

 これは、イメージを注力するのだ。
 僕が想像したのは、マットレスと風船。

 ぶよんっと身体が押し込まれて、ぐぐぐと少し持ち上がった。

 ココア先生は当然気づくが視線を向けただけだ。

 そして更にそのまま箱を小さくしていく。
 そのタイミングでミリシアが魔結界をココア先生の足だけに形成した。
 全てを覆うのではなく、あえての一部分。
 
「ルージュ!」
「ルージュ!」

 俺とミリシアが同時に叫ぶと、離れた場所から魔滅が飛んでくる。
 ぐんぐんと高密度の魔力を蓄えていた。

 ココア先生は――嬉しそうに微笑んだ。

「なるほど、クラインが逃げ場を囲み、ミリシアの魔結界で行動範囲を狭めたのか。最後にルージュの攻撃か。おもしろい――だが、甘いな」

 先生は剣を抜くと、その場から動かず魔滅を――真っ二つに切り裂いた。
 分割した魔力は後ろへ飛んでいくと、壁と地面にぶち当たって轟音を響かせる。

 同時に足の魔結界を蹴りで解除、更に俺が狭めていた魔結界も切られてしまう。

 ダメだったか……。

 とぼとぼと項垂れながら集合する。

「走れ」

 脱兎、もとい集兎のごとく駆け寄る。
 
 訓練が始まってからすぐにココア先生はいつでも狙ってこいといった。
 初めは怯えていた俺たちもいつしか本気で倒したいと手加減しなくなり、今日にいたる。

 いつもは怒られてばかりだが、今日はまさかの――。

「いい連携だった。魔獣を許可すればもっと戦えるだろう」

 サラリとではあるが、褒められたのだ。
 そんなこと初めてあdった。

「え、ココア先生が俺たちを……」
「嘘よ、私たち今日で食べられるんだわ……」
「今までありがとう、ルージュ、ミリシア」

 なんて軽い冗談くらいは言い合えるようになっている。
 その後、黙れの一言でちゃんと背筋は伸ばした。

 初日こそ、いや今も厳しいのだが、ココア先生は厳しさと同じぐらい愛情深いこともわかった。
 また、それ以上に強すぎることもわかった。

 宮廷結界師でありながらも魔法使いの素質を持つ。
 そしてエリート中のエリート、過去、魔族を退けた功労者でもあるらしい。
 だがこの一か月の間で魔結界を見せてくれたのは二回。

 一度は攻撃を防ぐため、二回目は俺が全魔力を放出して魔滅を放ったときだ。
 だがそれでもダメだった。

 とはいえ俺たちも始まったばかり。
 と、何度も言い聞かせながら頑張っている。

 そして今日はいつもの基礎訓練とは違うと言われていた。

 一体何をさせられるのかはわからない。

「宮廷魔法使いは国家に準ずる集団だ。たとえばもし賊が城に侵入してきたらどう対処する? ――ルージュ、答えろ」
「対抗します」

 だがココア先生は答えない。

「賊が王妃を攫った。どうする、ミリシア」
「敵を捕まえ、犯人から理由を聞き出し、黒幕がいないか調べます」
「敵が何も話さなかったら?」
「拷問します」

 その言葉に戦慄が走る。
 わかっていることだが、口にするとおそろしい。

「クライン、敵が王女を殺そうとしている。賊は20人、お前を子供だと思い油断している。さあ、どうする?」
「魔結界で捕獲します」
「敵の中に解除できる奴がいるとすれば?」
「……魔滅を使います」

 しかしココア先生は、はあとため息を吐いた。

「お前たちは優秀だ。動きも、頭も悪くない。度胸だってある。だが足りないものがある」

 突然褒められたかと思えば、様子が違う。
 そして――。

「それは、人を殺す覚悟だ。断定してやる。今のお前らに人は殺せない。いいか? 宮廷結界師、魔法使い、索敵師、一ついっておく。私たちは護衛がメインじゃない。敵を見つけ次第、躊躇なく殺すのが私たちの仕事だ。それが魔物でも、魔族でも、人でも」

 ルージュとミリシアが困惑している中、俺はゆっくりと考えた。
 元の世界のことを。

 弱虫だった俺は、おもちを危険な目に合わせた。

「あります」

 俺の言葉に、ココア先生が少しだけ笑ったかと思えば、元に戻る。

「その言葉たがえるなよ。――少し早いが実戦訓練を行う。お前ら、賞金首の存在は知ってるな?」

「はい。大罪を犯したものたちに付けられるものです」
「そうだ。――名前は、ドルスティ・ブル。うちの元騎士だ。違法賭博、賄賂と罪を暴露されたところ、王家直属の騎士を殺し、逃亡した」

 罪状を語るココア先生は、いつもとは違って静かな声だった。
 だがそれが何なのかは直感でわかった。

「そして西の街でこいつが滞在してるとの情報提供が入った。――お前らはこいつを見つけ出し、殺してもらう」
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