私だけが知っている〜キモい主人公を彼氏にしたあとで、イケメンに改造しちゃいます〜

羽化？

「実家に帰ったら、野菜メインの料理に変わっててね。それ食べてたら、なんかお腹の辺りの肉が減ったみたいなんだ」
マイロはお腹の辺りを擦りながら言った。

以前はボタンが弾け飛びそうだったのに。

初めて声をかけた時が、ブヨブヨ？パンパン？
夏休みに入る直前がポッチャリ？
そして今はふっくら？

背も伸びて、なんか別人みたい。

考え事をしていると、腕が軽くなった。
ふと見ると、マイロが私の荷物を持ってくれていた。

「アイラは？楽しかった？みんな元気だったの？荷物持つよ」

「ありがとう。うん。元気だった。お母さんがお菓子を持たせてくれたから。お世話になるお礼のお菓子」

「別に気を使わなくていいのに。僕から言い出したことなんだから。でも嬉しい。ありがとう。みんな喜ぶよ」

マイロはふにゃりと笑った。

背も伸びて、少し痩せて、かっこよくなっちゃって。
前は俯いて、ポツポツと小さな声で話すだけだったのに。
だけど笑う顔は、変わらないな。


マイロの顔をじーっと見ていると

「どうしたの？僕、なんか変？」
と首を傾げて聞いてくるマイロ。


「なんか、学校のマイロと少し違って、元気っていうか、ハツラツとしているというか、キラキラしているというか……なんか、変わったなぁって思ったの」


マイロは少し考えた後で

「そうだね、実家に帰ってからは、少しリラックスしているかもしれないね。アイラと一緒に過ごすようになって、髪の毛と洗顔方法を変えてからは、学校も少しは過ごしやすくなったけれど、それでもやっぱり僕にとって学校は緊張する場所だからね。上手く人と話すことも、関わることもできないから」

と言った。


「でも、最近は学校でも隣の席の男の子と話ししたりしてるじゃない？」

「うん。僕の髪がねサラサラになった秘訣を聞きたいんだって。あと、肌がきれいになってきたのも、一体何をやっているのか？って。やっぱり、みんな大なり小なり悩みを抱えているんだよ」

「そうなんだね？」

「そうだよ。やっぱり見た目で判断されることも……多いからね」

マイロは俯きながらそう言うと、顔を上げて

「アイラのおかげだから、僕が嫌悪の目で見られなくなってきたのも、話しかけてくれる人が増えてきたのも、自分の気持ちを言葉にすることができるようになってきたのも、全部アイラのおかげだから。だから、僕は苦しかっただけの学校生活が少しずつ楽しいことも増えて、頑張ろうって気持ちになれてきているから。ありがとう、アイラ。僕が絶対君を転校なんかさせないからね」

私をまっすぐに見てそう言った。

あまりにもまっすぐな感謝の言葉に、私は頬が熱くなるのを感じた。
マイロが、こんな風に私に言ってくれるなんて、思わなかった。

ただ私は将来的に出世して、かつイケメンになると前世の記憶で知っていたから、青田刈りしただけ。他の誰にも知られる前に。
ただ、マイロが予想以上に可愛くて、もっと一緒に居たくて、もっと好きになっただけ……
あぁ、私は本当にマイロが好きなんだな。
口下手なのに、まっすぐに私に感謝を伝えてくれる。素直で、心優しいマイロが。


「ありがとう、マイロ。転校なんかしないように、私がんばるね。よろしくお願いします！マイロ先生！」