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若き龍の目醒め 5
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九郎の視界が再び晴れた時は、日付も変わり、外はもう夜。
既に夕食を食べ終え、雪は後片付けを、玖朗は居間で酒を飲んでいる。
あの最初の襲撃から数週間経った。
やはり杞憂した通り、襲撃はあの一度で終わりではなかった。
その後も二日、三日と置いて、白い仮面を被った刺客に玖朗は何度か襲われたが、玖朗の敵ではなかった。
今のところ怪我という怪我もない。
ただ一つ気がかりなのは、敵が本気ではないということ。
はっきり言って、襲ってくる刺客は雑魚ばかりだ。
それも一人づつ。
こう何度も撃退されれば、襲う人数を増やす、罠を用意するなど、なにかしらの変化があってもいいようなものだが、それが全くない。
考えすぎならばそれでよいのだが、相手はあの『沖田総司』を殺した手練れだ。
このままで終わるはずがない。
そうなるともう一つ気がかりが出てくる。
雪だ。
普段あまり出かけない自分が、襲われる度に家を空け、留守にすれば、雪も薄々、何かに気づいているだろう。
やはり全てを話して、何か予防策を取った方がいいのではないか?
そこまで考えて、台所に目を向けると、雪が洗い物を終わらせ、濡れた手を拭きながら、玖朗のいる居間に戻ってきた。
「雪、話がある。座ってくれ」
全てを話そうと、雪に声をかける玖朗。
「……?はい」
いつもと違う真剣な顔の玖朗を疑問に思いながらも、指示通りに玖朗の正面に正座する雪。
「どうされたのです?改まって」
「気付いているだろう?最近、俺は何日か毎に数時間、家を空けてることがある」
「はい、何か大切なご用があるのかと思い、何も言いませんでしたが……」
「あぁ、実は――――」
全てを打ち明けようとしたその時、
「……っ!伏せろっ!!!」
「えっ……?」
突然の大声を雪が理解する前に、玖朗に押し倒され、二人して床に倒れ込む。
「痛っ!な、なにが……?」
玖朗に押し倒された瞬間、風切り音と共に、大量の矢が家の壁や天井に突き刺さり、家具などはめちゃくちゃに壊された。
「こ、これは……?」
驚愕の表情で目を丸くする雪。
あと一瞬、玖朗の反応が遅かったら、あの大量の矢の餌食になっていたかと思うと、体の震えが止まらない。
体を起こして、壁を背にして隠れながら、外の様子を確認する玖朗。
外を見てみると、家の周りには、目算で百人以上の人間が取り囲んでいた。
「どうやら本気で、俺を殺す気になったらしいな……」
「殺す?い、一体、何が起こっているのです!?」
「話は後だ。ひとまずここから抜け出そう」
そう言って、戸棚に隠してある竹田から預かった刀を取り出し雪の手を引き、裏口から逃げようとする。
「しょ、少々お待ち下さい!」
雪は狼狽えながらも、慌てて台所に駆け込み、何かを探している。
「何をしているっ!?早くしろっ!!」
「は、はい、只今!」
玖朗のいる裏口に来た雪は、紫色の布に包まれた、細長い棒状の荷物を抱えていた。
「緊急事態なんだ!そんな物は置いていけ!」
荷物を持っていては逃乏するのに支障が出る。
少し酷だとは思ったが、その荷物を奪い取ろうとするが、
「これは!これだけは置いてゆけぬのです!!大切な物なのです!!」
そう言って、持っている荷物を庇う雪。
「お願いでございます!!足手まといにはなりませぬ、だから……」
「……」
ここで議論している場合ではないし、よほど大事な物なのだろう。
ため息をついて、雪に言う。
「……わかった。遅れるなよ?」
「はい!」
幸い、裏口に刺客の姿はなかった。
息を潜め、裏口から逃げ出す二人。
「これからどうされるのです?」
「ひとまず街へ降りよう。そこまで行けば、奴らも派手には動けないはずだ」
裏手の山から街へと下りる道を目指し、雪の手を引く形で先導する玖朗。
雪は玖朗の後を追いながら、細長い包みを大事に抱えて歩く。
「一体、何が起きているのです?玖朗様を殺すってあの集団は何者なのですか?」
と、玖朗に一連の顛末を問う。
「最近、新撰組の元隊士……俺の仲間だった人間が、次々に殺される事件が起きている。」
林の中を早歩きで進みながら、正直に何が起きているのか話す玖朗。
「そ、それでは……?」
「あぁ、次は俺の番らしい……」
「一体、誰が……?」
「わからない。前に何度か襲われて、すべて追い払ってやったが今回は数が違いすぎる」
「そんな……」
玖朗の後を、必死について行きながら全てを聞かされ、その現実に愕然とする雪。
と、ここで玖朗が急に立ち止まった。
「玖朗様?」
「シッ!」
立ち止まった玖朗を不思議に思った雪の問いかけを黙らせる。
(後ろに三人、前に二人か)
玖朗は、木の陰に隠れて待ち伏せしている複数の気配を感じ取った。
(この人数では、雪を守りながらの戦いはキツいか?)
不利と悟った玖朗は、
「走るぞ!」
「えっ……?」
雪の手を引っ張り、走り出す。
急に腕を引かれ、足をもつれさせながらも荷物を落とさずになんとか一緒に走る雪。
全速力で逃げる二人。
その二人の前に、頭上から二つの影が降りてきた。
既に夕食を食べ終え、雪は後片付けを、玖朗は居間で酒を飲んでいる。
あの最初の襲撃から数週間経った。
やはり杞憂した通り、襲撃はあの一度で終わりではなかった。
その後も二日、三日と置いて、白い仮面を被った刺客に玖朗は何度か襲われたが、玖朗の敵ではなかった。
今のところ怪我という怪我もない。
ただ一つ気がかりなのは、敵が本気ではないということ。
はっきり言って、襲ってくる刺客は雑魚ばかりだ。
それも一人づつ。
こう何度も撃退されれば、襲う人数を増やす、罠を用意するなど、なにかしらの変化があってもいいようなものだが、それが全くない。
考えすぎならばそれでよいのだが、相手はあの『沖田総司』を殺した手練れだ。
このままで終わるはずがない。
そうなるともう一つ気がかりが出てくる。
雪だ。
普段あまり出かけない自分が、襲われる度に家を空け、留守にすれば、雪も薄々、何かに気づいているだろう。
やはり全てを話して、何か予防策を取った方がいいのではないか?
そこまで考えて、台所に目を向けると、雪が洗い物を終わらせ、濡れた手を拭きながら、玖朗のいる居間に戻ってきた。
「雪、話がある。座ってくれ」
全てを話そうと、雪に声をかける玖朗。
「……?はい」
いつもと違う真剣な顔の玖朗を疑問に思いながらも、指示通りに玖朗の正面に正座する雪。
「どうされたのです?改まって」
「気付いているだろう?最近、俺は何日か毎に数時間、家を空けてることがある」
「はい、何か大切なご用があるのかと思い、何も言いませんでしたが……」
「あぁ、実は――――」
全てを打ち明けようとしたその時、
「……っ!伏せろっ!!!」
「えっ……?」
突然の大声を雪が理解する前に、玖朗に押し倒され、二人して床に倒れ込む。
「痛っ!な、なにが……?」
玖朗に押し倒された瞬間、風切り音と共に、大量の矢が家の壁や天井に突き刺さり、家具などはめちゃくちゃに壊された。
「こ、これは……?」
驚愕の表情で目を丸くする雪。
あと一瞬、玖朗の反応が遅かったら、あの大量の矢の餌食になっていたかと思うと、体の震えが止まらない。
体を起こして、壁を背にして隠れながら、外の様子を確認する玖朗。
外を見てみると、家の周りには、目算で百人以上の人間が取り囲んでいた。
「どうやら本気で、俺を殺す気になったらしいな……」
「殺す?い、一体、何が起こっているのです!?」
「話は後だ。ひとまずここから抜け出そう」
そう言って、戸棚に隠してある竹田から預かった刀を取り出し雪の手を引き、裏口から逃げようとする。
「しょ、少々お待ち下さい!」
雪は狼狽えながらも、慌てて台所に駆け込み、何かを探している。
「何をしているっ!?早くしろっ!!」
「は、はい、只今!」
玖朗のいる裏口に来た雪は、紫色の布に包まれた、細長い棒状の荷物を抱えていた。
「緊急事態なんだ!そんな物は置いていけ!」
荷物を持っていては逃乏するのに支障が出る。
少し酷だとは思ったが、その荷物を奪い取ろうとするが、
「これは!これだけは置いてゆけぬのです!!大切な物なのです!!」
そう言って、持っている荷物を庇う雪。
「お願いでございます!!足手まといにはなりませぬ、だから……」
「……」
ここで議論している場合ではないし、よほど大事な物なのだろう。
ため息をついて、雪に言う。
「……わかった。遅れるなよ?」
「はい!」
幸い、裏口に刺客の姿はなかった。
息を潜め、裏口から逃げ出す二人。
「これからどうされるのです?」
「ひとまず街へ降りよう。そこまで行けば、奴らも派手には動けないはずだ」
裏手の山から街へと下りる道を目指し、雪の手を引く形で先導する玖朗。
雪は玖朗の後を追いながら、細長い包みを大事に抱えて歩く。
「一体、何が起きているのです?玖朗様を殺すってあの集団は何者なのですか?」
と、玖朗に一連の顛末を問う。
「最近、新撰組の元隊士……俺の仲間だった人間が、次々に殺される事件が起きている。」
林の中を早歩きで進みながら、正直に何が起きているのか話す玖朗。
「そ、それでは……?」
「あぁ、次は俺の番らしい……」
「一体、誰が……?」
「わからない。前に何度か襲われて、すべて追い払ってやったが今回は数が違いすぎる」
「そんな……」
玖朗の後を、必死について行きながら全てを聞かされ、その現実に愕然とする雪。
と、ここで玖朗が急に立ち止まった。
「玖朗様?」
「シッ!」
立ち止まった玖朗を不思議に思った雪の問いかけを黙らせる。
(後ろに三人、前に二人か)
玖朗は、木の陰に隠れて待ち伏せしている複数の気配を感じ取った。
(この人数では、雪を守りながらの戦いはキツいか?)
不利と悟った玖朗は、
「走るぞ!」
「えっ……?」
雪の手を引っ張り、走り出す。
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全速力で逃げる二人。
その二人の前に、頭上から二つの影が降りてきた。
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