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若き龍の目醒め 7
しおりを挟む「はぁ……はぁ……」
あれからどれくらいの時間が経っただろうか。
斬っても斬っても相手の攻撃が休まることがない。玖朗は圧倒的な強さで敵を斬り伏せていった。
背後には屍の山。
仮面の集団は徐々にではあるが、数を減らしていっている。だが敵は仲間が殺されていっても、怯むどころか更に攻撃に拍車をかけ、玖朗に息つく暇を与えない。
玖朗の体力も限界に近づいていった。目立った傷は最初の肩と、竹田にやられた右足のみで、他に新しく受けた傷はない。
だがそこからの出血がひどく、意識も朦朧としてきた。
しかし玖朗は膝を曲げずに相手を迎え撃つ。
(――――もう少しだ……!もう少しで雪の許へ……)
“どんなことがあっても必ず帰ってくる”
雪との約束を守るため、玖朗は右手に持った刀に力を込める。その時、槍を持った男が玖朗に、槍の穂先を向けて突進してきた。その穂先が玖朗に届く前に、玖朗は懐に飛び込み、自分の刀て男の体を貫いた。
しかし、刀にこびりついた血と脂で思ったより刃は進まず、相手に致命傷を与えられなかった。
腹部から血を吹き出しても、なお玖朗の背中に槍を突き立てようとする仮面の男に、玖朗は左手で柄尻を押し込み、更に刀を相手の体に深く押し込む。そして刃を逆転させ、そのまま上に斬り上げた。
盛大に血を噴き上げて倒れる槍の男。
両断された頭から、黒ピラミッドが零れ出る。玖朗が次の相手を求めて、周りを見渡すと誰もいなかった。物陰からの気配もない。
「去った……か……?」
敵が姿を消したことで、気を弛ませる玖朗。その時、聞き慣れない爆発音が連続に起こり、その音に気が付いた時には、玖朗の体から血が噴き出していた。
「がっ……!」
たまらずに膝を地に着かせる玖朗。
「撃たれた……?銃かっ!?」
なんとか致命傷を避けた玖朗が顔を上げると、そこには見たことのない銃を持った数人の仮面男たちが、玖朗の前に立ちふさがっていた。
『あれは……アサルトライフル!?』
玖朗の中にいる九郎が驚く。
仮面の男たちが持っていた銃は、九郎の世界で“人類史上最も人を殺した兵器”と言われる《AK-47》というアサルトライフルだ。だがAK-47は第二次世界が終結されてから、製造されたはずの近代兵器だと、九郎はテレビで見た覚えがある。この時代から60年以上も後に完成された兵器だ。
『なんで……?何でこんなものがこの時代にあるんだよ?』
あるはずのない兵器に驚き、困惑する九郎。
その間にも、AK-47を装備した仮面の集団が、玖朗ににじり寄る。立ち止まっていてはマズいと、距離を取ろうとする玖朗。だが玖朗が動く前に、仮面の男はその右足に数十発の弾を撃ち込まれる。
「がはっ……!」
倒れてなるものかと、なんとか刀を地面に刺して体を支える玖朗。倒れはしないものの、右足からはおびただしい血が流れ出る。
少し動かしてみようものなら、焼け付くような痛みが右足に走る。
(これまで……か?)
自嘲の笑みを浮かべ、覚悟を決めて、目を瞑る。
その時、玖朗のまぶたの裏に、愛する妻の雪の姿が浮かぶ。
勝てないのならば、せめて妻の逃げる時間を少しでも稼ごうと、刀を支えにして立ち上がる。足を引きずり、仮面の男たちに立ち向かう。
だが、仮面の男たちは、今度こそ玖朗にとどめを刺そうと、一斉に銃口を向ける。
(――――雪、済まない……!)
そして敵は、構えたAK-47の引き金を引き、銃口から火が噴き自分の命の最後を悟った瞬間、玖朗と敵の間に割り込む一人の影があった。
――――玖朗の前にいた影の正体は……。
雪だった。
両手を広げ、玖朗を守るために男たちの前に立っていた。
彼は見てしまった。
冷たく慈悲のない破壊の銃弾が、雪に降り注ぎ、その体を引き裂いていくのを。
「ゆ……」
だが、雪は銃弾の嵐に、その体を蹂躙されながらも、決して退こうとしない。
そして、その破壊の嵐が過ぎ去った後には、体中から血を流し、着物は裂かれ、力なく倒れていく雪の姿があった。
玖朗の唇が震える。
人前で感情を乱したことがない、一人の男の喉から、叫びが湧き出てくる。
「雪ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
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