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若き龍の目醒め 9
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玖朗が引き抜いたその刀は、刃は紅く峰の部分真っ白な日本刀。不思議と手に馴染む。
雪が、玖朗のためだけに打った玖朗専用の刀なのだが、出来上がったとほぼ同時に平和な時代を迎え、玖郎は刀が必要なくなったため、雪は渡しそびれていたのだ。
だが、怒りで我を忘れた玖朗には、そんなことはどうでもよかった。
ただただ、雪を殺した目の前の敵を殺す事だけに、頭の中はいっぱいだった。
「オォォォォォォォォォォッ!!」
猛烈な勢いで走ってくる玖朗に対してアサルトライフルを構えた仮面の男たちはその銃爪を引き、玖朗を狙う。
放たれた銃弾は、玖朗の肩に、腕に、足に、膝に、腹に、胸に命中するが玖朗は血を吹き出しながらも構わずに突進する。
いくら撃たれようが、体に痛みは感じなかった。体の痛みよりも、心の痛みがそれを上回る。 傷だらけの玖朗が、全ての弾を撃ち終えた仮面の男の一人に近づいた。男は慌てて次弾を装填しようとするが、玖朗は刀を上段に振りかぶり、力任せに男をAK-47アサルトライフルごと叩き斬った。しかし、次弾を装填し終えた、他の仮面の男たちが一斉に玖朗を狙い撃つ。
敵が動いたと同時に、玖朗も敵に向かって走り、もの凄い速さで次々と敵を斬り伏せていく。だが仮面の男たちは、いつの間にか玖朗を中心に取り囲み、一斉に銃を発砲する敵に囲まれる形で追い込まれた玖朗は、為すすべもなくその破壊の嵐を全て受けてしまった。
装填された弾を、全て撃ち尽くしたアサルトライフルは、銃身の先から、白い煙が空へと立ちのぼる。
全身血だらけで倒れる玖朗。
一度、起きあがろうと、片手を地面につけるが、それも徒労に終わってしまう。
それを見た仮面の男たちは、玖朗は死んだと判断し、夜の山へと去っていく。
だが、玖朗はまだ死んでいなかった。もう虫の息で動くことすらできなかったが、なんとか意識だけはまだ残っている。
(まだだ!まだ死ねない。俺は……俺はまだっ!)
うっすらと目を開けるとその先には雪の遺体があった。
(くそ……!まだ戦える―――取り戻せる……奇跡は起こせばいいだけのことだ!)
眠っている雪の傍までなんとか近づこうと地面を這いずり手を伸ばす。
一人の剣士は、まだ諦めない。みっともないほどにしつこく、しぶとく、彼は念じ続けた。
生き抜くことを。
戦い抜くことを。
そして希望を。
哀しみも怒りもある。
だが恐怖と諦念の二つだけは、彼のうちにはない。
『そうだ!そうだよ、玖朗!きみは死んじゃいけない!!』
そして玖朗の内にいる九郎もまた、強く、強く、強く念じた。
『……誰だ?俺を励ます、君は?』
その瞬間、九郎は、正気を疑うべきだったのかも知れない。〈夢〉の中の存在と、コミュニケーションが初めて成立したのだから。
だが、もう玖朗の命の灯火はその友情を深める時間を今は与えてはくれなかった。すでに絶命寸前の、玖朗は目の前の光景は暗くなり、玖朗の体から力が抜け――――。
死んでゆく。
――――だが、その直前。
何も見えないはずなのに、玖朗は、自分が真っ白な輝きに包まれたことに気が付いた。
――――色がないのではなく、全ての色を含んだことによる白い光。
玖朗だけではなく九郎も、その光を見た。
『――――あれは……?』
光。
青。
導き。
通廊。
無限の生命を宿す、巨大な樹。
世界樹。
枝分かれする可能性。
無数の世界。
そして道を開くのは……。
『……龍?』
ふたたび青。
そして、闇。
………。
………。
………。
………。
………。
………。
………。
雪が、玖朗のためだけに打った玖朗専用の刀なのだが、出来上がったとほぼ同時に平和な時代を迎え、玖郎は刀が必要なくなったため、雪は渡しそびれていたのだ。
だが、怒りで我を忘れた玖朗には、そんなことはどうでもよかった。
ただただ、雪を殺した目の前の敵を殺す事だけに、頭の中はいっぱいだった。
「オォォォォォォォォォォッ!!」
猛烈な勢いで走ってくる玖朗に対してアサルトライフルを構えた仮面の男たちはその銃爪を引き、玖朗を狙う。
放たれた銃弾は、玖朗の肩に、腕に、足に、膝に、腹に、胸に命中するが玖朗は血を吹き出しながらも構わずに突進する。
いくら撃たれようが、体に痛みは感じなかった。体の痛みよりも、心の痛みがそれを上回る。 傷だらけの玖朗が、全ての弾を撃ち終えた仮面の男の一人に近づいた。男は慌てて次弾を装填しようとするが、玖朗は刀を上段に振りかぶり、力任せに男をAK-47アサルトライフルごと叩き斬った。しかし、次弾を装填し終えた、他の仮面の男たちが一斉に玖朗を狙い撃つ。
敵が動いたと同時に、玖朗も敵に向かって走り、もの凄い速さで次々と敵を斬り伏せていく。だが仮面の男たちは、いつの間にか玖朗を中心に取り囲み、一斉に銃を発砲する敵に囲まれる形で追い込まれた玖朗は、為すすべもなくその破壊の嵐を全て受けてしまった。
装填された弾を、全て撃ち尽くしたアサルトライフルは、銃身の先から、白い煙が空へと立ちのぼる。
全身血だらけで倒れる玖朗。
一度、起きあがろうと、片手を地面につけるが、それも徒労に終わってしまう。
それを見た仮面の男たちは、玖朗は死んだと判断し、夜の山へと去っていく。
だが、玖朗はまだ死んでいなかった。もう虫の息で動くことすらできなかったが、なんとか意識だけはまだ残っている。
(まだだ!まだ死ねない。俺は……俺はまだっ!)
うっすらと目を開けるとその先には雪の遺体があった。
(くそ……!まだ戦える―――取り戻せる……奇跡は起こせばいいだけのことだ!)
眠っている雪の傍までなんとか近づこうと地面を這いずり手を伸ばす。
一人の剣士は、まだ諦めない。みっともないほどにしつこく、しぶとく、彼は念じ続けた。
生き抜くことを。
戦い抜くことを。
そして希望を。
哀しみも怒りもある。
だが恐怖と諦念の二つだけは、彼のうちにはない。
『そうだ!そうだよ、玖朗!きみは死んじゃいけない!!』
そして玖朗の内にいる九郎もまた、強く、強く、強く念じた。
『……誰だ?俺を励ます、君は?』
その瞬間、九郎は、正気を疑うべきだったのかも知れない。〈夢〉の中の存在と、コミュニケーションが初めて成立したのだから。
だが、もう玖朗の命の灯火はその友情を深める時間を今は与えてはくれなかった。すでに絶命寸前の、玖朗は目の前の光景は暗くなり、玖朗の体から力が抜け――――。
死んでゆく。
――――だが、その直前。
何も見えないはずなのに、玖朗は、自分が真っ白な輝きに包まれたことに気が付いた。
――――色がないのではなく、全ての色を含んだことによる白い光。
玖朗だけではなく九郎も、その光を見た。
『――――あれは……?』
光。
青。
導き。
通廊。
無限の生命を宿す、巨大な樹。
世界樹。
枝分かれする可能性。
無数の世界。
そして道を開くのは……。
『……龍?』
ふたたび青。
そして、闇。
………。
………。
………。
………。
………。
………。
………。
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