ショートショートアソート

三木 佳

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猫でした

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 起きたら猫になっていた。
 物理の中間テストの結果が最悪だった。帰る道すがら、何匹かの猫が公園で日向ぼっこをしていた。丸まってすやすや眠る猫、ふわぁと大きなあくびをする猫。彼ら(彼女ら?)を見て「羨ましい。猫になりたい」そう思ったせいかもしれない。帰って母親に怒られる未来に震えながら歩いていたのだからそう思うのも無理からぬ話というやつだ。
 なってしまったものは仕方ない。猫なのでテストの成績で怒られずにすむし、猫を満喫することに決めた。
 一つ伸びをして歩き出す。猫たちの行動を思い返しながらなぞる。
 高い塀の上でも猫ならちょっと力を込めて飛び上がれば無事に着地できたし、そのまま細い塀の上を優雅に歩くことだってできた。
 猫たちがよく集まっている公園にでも行ってみよう。そう思い立って駆け出した。猫の体なら人間とは違って軽いし、速い。道路を駆け抜ける。左右の景色がいつもとは違うスピードで流れていく。やっぱ猫っていいな、そんなことを思っていたらあっという間に公園にたどり着いた。
 猫たちはいつも通りそこにいた。公園内に入ると猫たちを耳をぴくり持ち上げ、身を起こしこちらを見た。目が合うとにゃ、と一鳴きして一目散に向かってきた。反射的に身を翻して、駆け出す。少し走って振り返るとまだ追ってきていた。
「にゃあー(なんでぇー?)」
 思わず声が出る。言葉にはならず、猫の鳴き声だったが。
 振り返った際に見た追ってきた猫たちの目を思い出す。狂気じみたあの目、あれはなんというか……。
 発情期。
 思考の波にぱっと言葉が下りてきた。
 うっわー、それだ。思いながら、道々の角ばかりを選んで曲がり続け、垣根を抜け、ようやく巻き切った時にはへとへとになっていた。おなかも減った。とぼとぼと歩きながら、食べ物の匂いに誘われて一軒家の庭を見る。ガラス戸の向こう、子供たちと戯れる犬がいた。犬用の遊び道具だろうか、子供はそれを高く掲げてみたり、少し遠くに投げたりしている。きゃっきゃと騒ぐ声が聞こえるようだった。犬もめちゃくちゃ楽しそうだ。
 そのうちテーブルに家族用の食事が並び、犬にもごはんが与えられる。無我夢中で貪り食う犬を見ていたら、おなかがぐうと鳴った。
 再び歩き出す。疲れ果てていた。どこか眠るのによい場所を、と思ったが猫なのでどこで寝てもいいかと開き直って空き地になってずいぶん時間がたった様子の、草に覆われた地面に身を横たえた。
 見上げれば月がきれいだった。その周りを星々がきらきらと輝いている。輝く星を見ていると、少しだけ形が似ていたさっきのドッグフードが思い出されてまたおなかが鳴った。
 猫じゃなくて犬だったなあ。そんなことを思いながら目を閉じた。
 起きたら犬になっていた。
 間違えた、と思った。次は犬じゃなく人間を羨ましがらなくては。そう思った。
 
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