ショートショートアソート

三木 佳

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「異常気象」つづき(おまけ)

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 帰宅し、マンションの入り口へ向かおうとしたところでほのかに煙草のにおいがしたのでそちらを見る。
 いつぞやポテトチップスが降ってきたベランダには少女の母親がいた。手には火のついた煙草がある。少女の母親はこちらを見ていたようで、目が合うと人差し指を持ち上げ、くいくいと二度動かした。上がって来いということらしい。
 少女の住んでいた家の前につくとドアが開いた。少女の母親が開けてくれたドアを一旦支え、滑り込むように内に入った。
 靴を脱ぎ、何も言わず先導する彼女に付き従う。案内された先にはこちらに向かって笑いかける少女の写真と骨壺があった。沈黙したまま、線香をあげた。目を開けると隣に彼女が座っていた。すぐそばの彼女からは線香の香りに混じりつつも煙草のにおいがしていた。
「止めたんじゃなかったのか?」
「ずっと吸ってなかったんだけど、さすがにね」
 苦笑して写真へと視線を投げて、彼女は言葉を継いだ。
「目元はあなたそっくりだったわよ」
 その横顔は遠い目をしていた。写真を見て答える。
「そうか」
 しばしの沈黙の後、彼女のほうから口を開いた。
「やったのはあなたでしょ?」
「何の話だ」
 写真から目を離さない彼女に、同じく写真を見つめたまま返した。真相を話す必要はない。ないが、告げずとも彼女には伝わっているだろう。
 今度は自分から切り出す。
「落ち着いたら一緒に引っ越さないか?」
 彼女はここに来てから初めてしっかりとこちらを見た。
「まだ好きなの?」
 茶化すような笑顔。無理していることが自分には分かってしまう。
「ずっと好きだよ」
 真剣な表情で返した。
 彼女は驚いたような表情を見せた後、力なく笑んだ。
「それがいいのかもね。あの子も一緒に暮らすことを望んでいたし」
 今度はこちらが驚く番だった。
「話していたのか?」
「亡くなる前の日にね」
「そうだったのか……」
 一緒に暮らす未来は有り得たということか。
「会ったことあったんでしょ?」
「故意にじゃないぞ」
 慌てて弁解する。そういう約束で近くに住むことを許されたからだ。
「聞いたから分かってるわよ。落ち着いていてユーモアがあって頼りがいがありそうだって。昔のやんちゃだったころの写真見せる予定だったのよ」
 会話が途切れる。二人して写真を見つめる。笑顔のあの子がこちらを見ている。
 ふいにばさばさと音がする。視線を向ける。開けたままだったベランダの戸から吹き込んだ風にカーテン煽られた音だった。ベランダに立っていたあの子の姿が思い起こされる。ついこの間のことだ。他愛ないやり取りに見せてくれた笑顔が思い出される。
 空からポテトチップスが降るような異常気象はもう起こらない。
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