幻冬のルナパーク

彼女の実家へ

約束の日になって、絵海は白いセレナに乗って私の家まで迎えに来てくれた。よく晴れた暑い日で、電線に遮られる狭い空に夏らしい綿あめのような雲が浮かんでいた。


　横浜の混雑した道路の中を柔らかいアクセルとブレーキで絵海の車は進んでいき、やがて高速に乗ってスピードを上げた。


「絵海さんって高速もスイスイ走っちゃうんですね」私が言った。


「全然平気よ。車の運転も好きだし。玲は乗らないんだっけ？」


「今となってはなぜ免許を取ったのか分からなくなるほどのペーパードライバーですね」


道路横の眼下には、神奈川の密集した家々や工場がギッシリと詰まってミニチュアのように並んでいるのが見えた。

しかしそれもやがて見えなくなり、青い空に美しい山々がそびえる風景になった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　


「なんだかすっかり景色が変わりましたね。山梨に入ったのかな」私が聞いた。


「ええ、そうね」


お昼になると途中のサービスエリアで昼食をとることにした。私たちは車を降りて出店で色とりどりの野菜が挟まったサンドイッチを買ってテーブルに座った。


「ちょっと待ってて、飲み物を買ってくるから」


私はそう言ってテーブルを離れ、生ブドウジュースをふたつ頼んだ。鮮やかな紫色をしたジュースがミキサーからカ
ップに注がれ、それを受け取って椅子に座って眼を閉じていた絵海のところへ持って行った。