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目指せ!王国騎士団長
1年生 遅れての新入生
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地獄からの生還から7年の月日が流れていた。
アルルたち家族は、アルルの実家(下級騎士の館)で暮らしていた。
アルルは精霊の加護が弱く、地獄の空気があってなかったせいもあり肺を病んでいた。
エイトやアルルの知り合いの高名な魔法使いに完全治療魔法をかけてもらったが回復の見込みはなかった。
最近では地獄の門が開いた弊害として こういった病が発生しているようだ。
幼かったマルスやナインも元気に育っていた。
しかし、その幸せな家庭の中にエイトの姿はなかった。
~アルルの実家~
広間にある暖炉で暖まりながらアルルと 子供たちは本を読んでいる。
ナインは温くて眠くなったのか、アルルに抱き着き、腕に抱かれるようにして目を閉じる。
マルスはナインが寝るのを待っていたのか、ナインを起こさないように小声で話しかける。
「ねぇ、お母さん。
ちょっと相談があるんだけど。」
「どうしたの、マルス。」
「あのね、僕、お爺さんと同じように騎士になりたいんだ。
そして、立派な騎士になってお父さんを探しに行きたいんだ。」
「でも、騎士にならなくても冒険者としてお父さんを探すこともできるのよ。
騎士になると忙しくて探しにいけないかもよ。」
「そんなことないよ。
お爺さんは言ってたよ。
お母さんは本当は騎士団の団長を任せられるくらい立派な騎士で、お母さんが本気で探せば騎士団の皆と一緒にお父さんをすぐに見つけられるって。」
アルルは困った顔をした。
できれば、マルスやナインには騎士になってもらいたくなかった。
なぜなら、騎士養成所の思い出は嫌な思い出しかないからだ。
いまでは差別もなくなっているかもしれないが、自分の息子たちが差別する側になるのも、される側になるのも耐えられそうになかったのだろう。
「マルス、お母さんを困らせないで、騎士養成所には絶対に行かせません。」
アルルはナインを抱きかかえ、寝室のベットへ向かった。
1人取り残されるように暖炉の前の椅子に座るマルス。
バチバチと燃える炎は、地獄での生活を思い出し居心地がいい。
「マルス、こっちへおいで。」
「あ、お爺さん。」
「マルス、わしの言った通りお母さんは反対したじゃろ。」
「・・・。」
「仕方ないんじゃ。
冒険者として成功してしまうと大金が手に入り、騎士としての誇りを忘れてしまうからの。しかし、マルスには剣の才能も魔法の才能もありそうじゃから、わしが こっそり騎士養成所へ連れて行ってあげよう。」
「ほんと!」
「しかし、お母さんには内緒じゃぞ。」
「・・・でも、」
「大丈夫。
マルスが出発した後にちゃんとわしから説明しておくから。」
「はい。ありがとう、お爺さん。」
マルスは明日の早朝に出発する約束をお爺さんとした。
内緒で出発する うしろめたさは あったが、それよりも騎士団長になり、父エイトを探して連れ帰った方が母アルルも喜ぶと思ったから決断をした。
マルスはアルルとナインが寝る部屋へ行き、おやすみの挨拶をして部屋に戻った。
~翌日、早朝~
マルスは日の出前に祖父の準備した馬車に乗って王都を目指した。
王都は、ここから馬車で3日程かかる距離の為、これからのマルスの生活は寮での生活になる。
期待と希望を胸にマルスは家族に心の中で別れを告げた。
~3日後~
昼過ぎには王都に辿り着いた。
王都に辿り着くと、そこは見たこともない程の人や建物であふれかえっていた。
マルスの目に写る物、全てが新鮮だった。
地獄での生活は食べるものを探し、生きる為に剣や魔法を学ぶ生活だったのに、ここでは道端に食べ物が溢れ、人の顔にも笑顔が溢れている。
しばらく馬車が走ると、静かな場所に到着した。
馬車の扉が開き、執事のアンドルがマルスを案内してくれる。
「マルスさま、こちらが騎士養成所でございます。」
マルスの目の前には、いままで見た建物よりも大きな建物が見える。
門をくぐると、石畳の広場になっていて、広場の中央には噴水まである。
校舎は広場を囲むようにコの字状に立っている。
2人が校舎正面の玄関に近づくと、中から立派な髭の初老の男性が出てきた。
「君がアルメディシアの子、マルスかな?」
「はい、マルス=ハンニバルと申します。」
「うむ。ご両親に似て聡明そうな子だ。
私はこの王国騎士団育成学校の校長を務める。
ルーンバルト=メイガスだ。
メイガス校長先生と呼んでくれたまえ。」
「はい、メイガス校長先生。」
マルスは執事に別れを告げ、メイガス校長に学校を案内してもらった。
学校には、広い運動場がいくつもあり、武器の練習や魔法の練習を同時に練習できるそうだ。ほかにも馬に乗る馬術や湖を泳ぐ水練、山や森での戦闘演習などもあるそうだ。
なにより、マルスが注目したのは大きな食堂だった。一斉に、300人の学生が同時に食事をとることができるそうだ。人数もそうだが、それだけの食事を毎日準備するのも大変だと思った。
「マルス。最後に寮の話なんだが、君の入学が決まったのが遅すぎて下級騎士の宿舎しか空いていなかったんだ。
アルメディシアは特級騎士だから、上級騎士用の部屋を割り振りたかったんだが、すまない。」
そういって案内されたのは、2人部屋の立派な部屋だった。
間取りは6畳ほどの部屋に2段ベットが置かれている。
窓辺には、先に入居している学生が飾った花だろうか、質素な花瓶に花1本だけ活けられていた。
「いえ、メイガス校長先生、こんなに立派な部屋をありがとうございます。」
メイガス校長は、マルスに明日からの登校の流れを説明し、入学手続きの準備をしに校長室へと戻っていった。
メイガス校長の話では、どうやら今日は10日に1回の休息日になるそうで、相部屋の住人も出かけているようだ。
マルスはベットを見る。
2段とも布団が綺麗にしたあり、相部屋の相手の荷物は部屋の隅にまとめてある。
どうやら几帳面な住人のようだが。それにしても几帳面すぎる。
この部屋に入ってメイガス校長から同居人がいる話を聞くまでは、1人部屋だと勘違いしたほどだった。
それくらいに綺麗に片付いていて、チリひとつ落ちていない。
夕暮れ時になると相部屋の同居人が帰ってきた。
同居人は、同じくらいの背丈の赤髪赤目の細い男の子だ。
「はじめまして。僕は下級騎士のサターナ=ハイレディンの子。
ブックバック=ハイレディンといいます。」
「はじめまして。僕はマルス=ハンニバルです。
マルスって呼んで下さい。」
「はい、マルス様。」
「様?」
「はい、特級騎士のアルメディシア=ハンニバル様の子ですよね。校長先生から他言無用ですが、そのように聞きました。」
「そうだけど僕はまだ何もしてないよ。
だからマルスって呼んでよ。君はブックでいいかな?」
「はい。他の皆様もブックと呼んでいます。
マルス様、部屋は片付けておいたのでマルス様のお好きなように御利用下さい。
僕は空いた場所を使わせていただきます。」
マルスは、こういった生活をしたことがなかったので少し面倒にも感じていた。
「ごめん。そういうの面倒だから、マルスって呼び捨てにしてよ。
それから2人で使う部屋なんだから、お互いが自由に使おうよ。」
「しかし・・・。」
「いいって。こんな生活だったら、お互い頑張れないでしょ。
マルスって呼んでみてよ。」
「は、はい。マルス。」
「そう!
それでいいんだよ。ブック、君は僕の初めての友達なんだからさ。」
そういって、マルスは、握手を求める。
ブックとマルスは、固い握手をした。
「ブック、これから宜しくね!」
「はい、マルス、こちらこそ宜しくお願いします!」
その日は、話し合いの結果、マルスが上の段、ブックが下の段を使うことになった。
どうやら、ブックは本を読むのが、好きなようで、下の段だったら、ランプの明かりで本が読めて嬉しいと喜んでいた。マルスも外の景色が見える上の段で嬉しそうだ。
~翌朝~
マルスの朝は早い。地獄での生活の名残なのか、普段の睡眠時間が極端に短いのだ。
朝も早くから、マルスは、体を動かす為に、寮を出る。
校舎側の運動場では、走っている人影を見つけた。走っているのは、女性だろうか。長い髪がなびいていて、母(アルル)を思い出す。
マルスも散歩より、この運動場の人と一緒に走れば、朝食に遅刻しないだろうと、考えて一緒に走ることにした。
「おはようございます。一緒に走ってもいいですか。」
「はぁ、はぁ、どうぞ、はぁ、はぁ。」
少しペースが速いのか、それとも長く走っているのか、女性の呼吸は荒い。
マルスは、女性に合わせて走りだす。
しばらく走ると、マルスも体が温まり、背中が汗ばんできた。
すると、女性がペースを落とし始める。
「ねぇ、そろそろ時間だから、ゆっくり3周歩いたら、寮に戻ろうよ。」
「はい。」
運動場を1周歩き終わるころには、女性も呼吸が整い始めた。
「君、名前は?」
「マルスって言います。」
「あんまり見ない子ね。新入生?」
「はい、昨日入学しました。」
「ああ、遅れて入学してきたって噂の子だね。私は、ララ。5年生だから先輩だよ。」
「はい、ララ先輩。ララ先輩は、いつも走っているんですか?」
「うん。立派な騎士になる為には、体力も必要だからね。」
「よかったら、明日も一緒に走っていいですか。あまり長い距離を走ったことがなくて、すごく楽しかったですから。」
「いいよ。じゃあ、明日も一緒に走ろうか。」
マルスは、学校生活が楽しくなる予感がした。これから、騎士団になる為の訓練も、仲間がいれば楽しく行えるだろう。
いままでは、訓練も命がけだったし、正直、1人で繰り返す苦痛もあった。
誰かと一緒に訓練することが楽しいなんて思ってもいなかったことだ。
「おーい、マルス。なにボーっとしてるの!? 朝食に遅れるわよ。」
「はーい! ララ先輩、すぐ行きます!」
部屋に戻ると、ちょうどブックが目を覚ましたようだった。
「おはよう、ブック。」
「おはよう、マルス。」
「朝ごはんは、そろそろ?」
「はい、いそいで行かないと並ぶからね。」
マルスは、服を着替えて、ブックと一緒に食堂に行く。
ブックの話し方も、落ち着いてきて、過ごしやすくなってきた。
~寮の食堂~
食堂は、入り口でトレーをもらい、流れに沿って、パン、スープ、おかず、サラダを順番に乗せていき、好きな席に座り食事をとる形式だそうだ。
ただ、注意しないといけないのは、座る場所は、ある程度決まっていて、上級生や、上級騎士以上の出身者と、それ以外で座る場所が分けられているそうだ。
マルスは、面倒にも感じたが、ブックについて行くことにした。
「マルス、ここなら大丈夫だよ。」
「大丈夫?」
「あまり大きな声で言えないけど、上級騎士の近くに座ると、イジメを受けるんだよ。」
2人は、食堂の奥の壁側に座る。
遠くから、ブックを呼ぶ声が聞こえた。
「おい、ブック、昨日、おかずを取ってきたから、分けてやるよ。スープ持ってこいよ!」
数名の学生が笑いながら、2人を見る。
「マルス、気づかないふりして、急いで食べよう。」
「なぜ? おかず、貰ってこようか?」
「違うよ、あれ、虫を入れるんだよ。」
「おい! ブック、無視すんのか!」
「無視が好きなら、虫をいれちゃうぞ!」
笑いながら、数名の学生は、ブックを囲む。
「すみません。もうスープを食べ終わっていたので、ご期待に添えないかと思い、どうしようか考えておりました。」
「はぁ? いまさっきスープ飲んでただろ、嘘ついてんじゃねーぞ!」
ブックは、頭を叩かれながらも、無理して笑っている。
「おい、やめろよ。ブックが嫌がってるじゃないか。」
マルスは、立ち上がり、ブックを庇う。
「なんだコイツ、お前、自分の身分とか分かってんの?」
「俺らは、上級騎士の出身なんですけどー!」
「まじ、コイツむかつくな。」
「マルス、僕は大丈夫だよ。」
「ブック、嫌なことは嫌って言わないと。それに、僕らは友達だろ、困ってる時は助け合おうって昨日 決めたばかりじゃないか。」
ブックは、涙目になっていた。
「おい、下級生、お前らウルセーぞ!」
入り口のほうから、上級生が声をかけると、一斉にブックの周りにいた奴らは、散らばっていった。マルスが上級生の方を見ると、ララが、小さく手を振っている。
マルスも、軽く会釈して、席に着いた。
「マルス、ごめんね。」
「気にすることないよ。それに僕は、何もしてないからね。」
2人は食事を終え、部屋に戻ることにした。
~寮の自室~
「最初の授業まで、部屋で自習だから、少し時間があるよ。」
「自習って、ブックは何するの?」
「僕は、戦術が得意だから、戦術の勉強をすることが多いかな。マルスは何が得意なの?」
「得意・・・。」
マルスは悩んだ。剣術も魔法も、一通りの戦術も、両親から学び、そこそこは出来ると思う。だけど、これが得意と言えるほどではない。しいて言うなら、好きな剣術が得意なのだろうか、それとも、父より上手くなった魔法が得意だと答えるべきなのだろうか。
他の人と比べたこともなかったし、地獄では出来ないことが死につながると教えられてきたから、考えたこともなかった。
戦術や水練は、地上に戻ってから、お爺さんに習った程度の訓練だったから、苦手だということくらいだろう。
「戦術は苦手ってことくらいかな。特に得意はないよ。」
「じゃあ、僕と一緒に、戦術の自習をしようよ。戦術は、本を読んで学んだことを、人と競って訓練することでより上達できるんだ。」
ブックの戦術は面白く、お爺さんに習っていた内容とは違った戦い方だった、その理由は、ブックが住む土地は、川が多く、船を想定した戦術が基礎になっているそうだ。
マルスが習っていた戦術は、騎馬を使っての陣形が主で、その土地にあった戦い方があることも分かった。
~1限目・教室~
1限目は、教室で行われる、授業で、いよいよ武器についての講義が始まるといった具合だ。いままでの授業では、騎士道についての精神論の授業が主だったようだ。
軽く武器の種類や特性を習い、外に出て実際に使ってみることになった。
【騎士に支給される、近接武器の種類】
・騎士剣(両手剣)
騎士を象徴する武器で、両手で扱う武器。重量があり、敵を切り裂くといった使い方より、叩き切るといった、攻撃に使用される。重量がある分、一撃の威力が高く、騎士剣術を習得すれば、連続して攻撃をすることもでき、非常に強力な攻撃手段となる。
・片手剣(&小型盾)
一般の冒険者などが使っている 使いやすい武器。片手で扱えるように、刀身は短めで、切ったり、突いたり、万能に使える。片手で扱いやすいので、盾を併用した戦い方が主流になる。マルスの得意とする武器でもある。
・騎士盾
戦術的な要素で使われる 大型の盾。高さ150cm、幅50cmもあり、重量のある、盾を使った攻撃も威力がある。
・騎士槍
一般的な槍と違い、長さ3m~5m程の、馬上にて使う槍。馬の突進力が加わり、敵を鎧ごと貫くこともできる。強力なドラゴンの鱗を貫くには、騎士槍による攻撃が最も有効と言われている。
「マルスは、どの武器を使うの? やっぱり私物で持ってた、片手剣が得意なの?」
「そうだね。逆に片手剣しか使ったことがなくって、騎士剣とか面白そうだなって思ってる。ブックは?」
「僕は、細剣を魔法剣道場で習ってたから、細剣が得意なんだけど、騎士の武器としては選べないから、片手剣にしてみるよ。」
そこに、朝からブックに絡んできた、上級騎士出身のアロンと、とりまきのフリオ、ランドがいた。
「俺は、騎士槍を選ぼうかな。」
「さすが、アロン様は、騎士槍が似合ってますね! 俺は、騎士剣にしようかな。」
マルスは思った。
あんな長い槍、馬に乗らなければ使うことも出来ないのに、なぜ選ぶんだろうかと。
たぶん、フリオ、ランドも、そう思っているかもしれない。しかし、フリオは、アロンが槍が似合うとおだてている。
「おい、フリオは騎士盾にしろよ。ランドは、騎士剣にしろ。」
「え、俺も騎士剣が・・・。」
「体のでかい奴が盾を使って守るのがいいだろ、いいからお前、今後も盾を選べよ。」
「そうですよね、アロン様。 フリオは、盾が似合ってますからね。」
「そ、そんな・・・。」
それぞれが、武器を選択していく。
結局、マルスは、騎士剣。ブックは、片手剣を選ぶことになった。
ちなみに、アロンは騎士槍、フリオは騎士盾、ランドは騎士剣を選んでいる。
教官が、それぞれが武器を選択したのを確認して、口を開く。
「いいか、ちゃんと授業を聞いてたのか! 騎士槍を選んだバカは、運動場を10周走ってこい! それから武器を選びなおせ!」
いつの間にか、アロンとランドの武器が入れ替わっていた。
いよいよ訓練開始だ。
訓練は、相手を変えながら、本物の防具をつけて、木製の武器で練習をする。模擬試合の形式をとっている。
マルスは、隙の大きな騎士剣に困惑しながらも、器用に体をひねり、連撃を繰り出していく。
「マルス、いままで騎士剣を習っていたのだろう、筋がいいな!」
教官は、マルスの剣筋をほめる。
「おい、ちょっと褒められたからって、調子に乗るなよ。」
次の練習相手のアロンが、マルスにちょっかいを出してくる。
アロンとマルスの番になった。
アロンの力任せの一撃を、右足を後ろに引き、うまくかわし、隙だらけの、アロンに一撃を加える。
アロンは、兜に一撃を受けながら、後ろに逃げる。
「アロン、後ろに引くな! 相手の連撃を受けるぞ!」
教官の指摘通り、マルスは、振り上げる力を利用して、距離をとる手間が省けたので、2撃目をアロンの胴にいれる。その一撃で、バランスを崩し、アロンが尻もちをつく。
「そこまで! マルス、素晴らしい剣筋だ。今後も騎士剣を使うことを進めるぞ。
アロン、遊んでいても上達しないぞ、わざわざ相手と間合いを取れば、次の一撃を放ってくださいと言っているようなものだ。一撃目の後に、体当たりで けん制するなどして、態勢を立て直せ!」
アロンは、教官からの指摘もあり、プライドが傷ついたのだろうか、マルスを睨みつける。
武器の成績が悪かった生徒は、次の武器を取りに移動していく。
もちろん、アロンのように、騎士剣にこだわる生徒もいる。
「マルス、片手剣は向いてなかったみたい。」
ブックが恥ずかしそうに、騎士剣を担いでやってくる。
「やっぱり細剣とは、勝手が違うの?」
「そうだね。教官から、一撃が軽く、鎧を着た敵を剣で撫でてるだけって言われちゃって。」
「それで、重量のある騎士剣に来たの?」
「そう!」
しかし、ブックは、アロン達3人が、勢ぞろいしているのを見て、後悔したようだ。
次の移動の際に、すぐに騎士盾に移動していった。
「よし、午前の授業は これまで! 午後は、ドーラ特別講師の魔法だ。お前ら、一瞬でも手を抜いたり、居眠りしたりすると、夜間の打ち込み練習に参加させるからな!」
教官は、ニコニコ顔で、職員室に戻っていく。
「どうしたの?」
「ああ、マルスは知らないんだよね。美人のドーラ先生が来るときは、鬼教官ブルノスも昼の補習なしの、仏のブルノス になるんだよ。」
~2限目・特別講義室~
2限目は、特別講師として、ドーラ=メイガス先生が来るそうだ。
1年生から3年生までの合同の授業になるそうだ。
教室に入ると、2・3年生の男子が、教室の前の方を独占している。
「マルスは、魔法を使えるの? 僕は、魔法剣を習っていたから、一通りの魔法が使えるから、後ろの方で授業を受けようと思うけど。」
「そうだな。僕も、魔法は使えるから、ブックと一緒に授業を受けようかな。」
マルスと、ブックは、後ろの席で授業を受けることにした。
隣に座った2年生の女子が、マルスに声をかけてくる。
「ねえ、あまり見ない顔ね。いままで前で授業を受けてたの?」
「いいえ、今日から授業を受け始めたんです。」
「メリッサ先輩、マルスっていうんですよ。」
同級の女子 リナが、なぜか自慢げにマルスの紹介をする。
他の先輩たちも、新入生のマルスを見る為なのか、楽しそうに集まってくる。
「マルスくん、いい名前ね。」
「背も低いのが、可愛いよね。」
「黒い瞳が、すっごく綺麗ね。」
「ほんと、黒い瞳とか、珍しくて素敵よね。」
「朝から、食堂で見たよ。勇気あるよね。」
「先輩、騎士剣を使った訓練も上手いんですよ!」
「へぇ、騎士剣に振り回されそうなのにね。」
「耳が赤くなってるよ、可愛い。」
「ブック、前の席に移動しない?」
「・・・そうだね。」
2人は、前の席に移動することにしたが、もう前の席は空きがない。
仕方なく、女子に囲まれながらの授業になった。
後で、このことを言われるんじゃないかと思っていたが、その心配はなさそうだ。
早めに教室に入ってきていた、特別講師のドーラを取り囲むように、男子も前に移動している。
カーンカーンカーン
授業開始のベルがなる。
「では、授業を始める。よろしく!」
「「「はい! ドーラ先生、宜しくお願いします!」」」
まさに 騎士団らしい、息の合った大合唱であった。
「では、講義の前に、今日から授業を受ける生徒がいると思うが。」
マルスは、恥ずかしそうに手を挙げる。
「よろしい。マルス、魔法を習たことは?」
「はい、父から教わりました。」
「そうか、しかし、魔法とは今までの書物からの考え方では習得が難しい、まずは前に来て基本的な知識をつける必要があると思うのだが、そのまま後ろで講義を受ける気なの?」
周囲の視線が痛い。
「すみません。前の席が空いていなかったので。」
「それは、仕方ない。マルス、君の実力を知らずに、後ろで授業を受けさせるほど、私も甘くないし、君の為にもならないだろう。一度、前に出てきなさい。」
マルスは、言われるままに、前に出てきた。
ドーラ特別講師は、マルスの腕にある、母からもらった腕輪を見ている。
「マルス、君に魔法を教えた父の名前は? 」
「はい、エイトです。」
「いま、父は、どうしている?」
「・・・冒険先ではぐれて行動していて、行方不明です。」
周囲の生徒は、笑っている。
「そうか、すまない。いま聞くべきことでは、なかったかもしれない。
父から魔法は、どの程度ならったの?」
「父の取得している魔法は全て。」
「そうか、では、後ろで講義を受ける権利がある。」
マルスは、元の席に戻り、講義が始まる。
ドーラ特別講師の授業は分かりやすく、父が教えていた魔法の理論によく似ていた。
「では、今日の講義はここまで。それと、マルス。あとで職員室に来るように。」
「マルス、怒られちゃうんじゃない?」
「ブック、大丈夫だよ。たぶん。」
「ごめんね。私のせいだよね。完全に。」
「メリッサ先輩のせいでもないですよ。僕が、最初の講義なのに、自分の意思で、後ろに座ったからだと思います。」
マルスは、ドーラ特別講師の怒りが高まる前に、職員室へ急ぐことにした。
「おい、1年、頑張れよ!」
「ドーラ先生は、美人だけど、怒るとヤバいからな。」
「ありがとうございます。ちょっと、怒りが高まる前に謝ってきます。」
男子たちも笑って見送ってくれた。
~職員室~
職員室に入ると、ブルノス先生と遭遇した。
「どうしたんだ、マルス。」
「はい、ドーラ先生に呼ばれてきました。」
「そうなのか。お前は まじめだ。魔法が使えなくたって、騎士剣の技術を磨けば立派な騎士になれるから。頑張れよ。」
ブルノス先生は、何か勘違いをしているようだった。
職員室に入ると、ドーラ特別講師が、指導相談室へマルスを連れていく。
部屋の鍵を閉め、何か魔法を詠唱し始める。
「無音の空間(LV1)」
「無音の空間の魔法ですね。いまから、怒られるってことでしょうか?」
「変な勘違いしないでよ。マルスは、アルルとエイト先生の子供なんでしょ。」
「はい。そうですけど、父や母を知ってるんですか?」
「知ってるも何も、私はエイト先生の一番弟子だからね。それに、君の腕輪、魔法の力場盾は、私がアルルにあげた親友の証だったから。」
「・・・そうだったんですね。」
「意外と普通の反応なのね。ところで、エイト先生が行方不明って、どういう意味?」
マルスは、地獄の門の先で産まれたことや、そこで体験したことなどを、ドーラ特別講師に説明した。
ドーラは興味津々で話を聞き、ドーラと父や母の関係などを教えてくれた。
「とにかく、君の出生の話とか、そういったことは、誰にも言わない方がいいよ。今後、騎士団長を目指してるんだったら、絶対に言うべきではないわね。」
「はい、ありがとうございます。」
マルスは、ドーラ特別講師にお礼をいい、魔法の解除を行って、特別指導室を出て、教室に帰る。
(・・・大魔法の、無音の空間の解除に、1秒もいらなかったみたいね。)
~3限目・教室~
教室に戻ると、誰もいない教室に、ブックが1人で待っていた。
「マルス、戻ってこないのかと思って、ドキドキしたよ。次の授業は、体力づくりだから、運動用の装備を持って、運動場に集合だよ!」
「運動用の装備!?」
「そう、運動準備室にあるから、それを装備していくんだよ。」
運動準備室に行くと、いくつかの革製の甲冑に鉄のプレートで重さを調節した装備が置いてある。
「おえ、マルス、これ外れだよ。」
「はずれ?」
たしかに装備品の甲冑は、異様な臭いを放っていて、革の部分も黒く汚れている。
「前の人が手入れ不十分だと、こんな臭くなっちゃうんだ。」
「ちょっと、匂いがキツイね。香りの選定(LV1)」
「あれ? マルス、何をしたの?」
「匂いを変える魔法を使ったの。」
「そんな魔法まであるの!?」
「うん。これは、2人だけの秘密だからね。」
2人は、いい香りのする、装備品の甲冑をきて運動場に集合した。
先に来ていた、アロンが、遅れてきた2人を見つけて大きな声で言う。
「ルナ、悪臭二人組が来たぞ!」
「辞めなよ、アロン。いつも思うんだけど、やってることがヒドイわよ。」
「大丈夫ですよ。僕も、マルスも気にしてませんから。」
「そうだね。それに、どっちかっていうと、花みたいな香りがしない?」
マルスが、そういったとたん、無臭だった装備品の甲冑は、花のような香りに変わった。
ブックの近くに居たリサが気づく。
「ほんと、ブックから甘い花の香りがするわ。ルナ、ブックの近くに行ってみて。」
「ほんと! 私、この香り好きかも!」
「え、どういうこと?」
アロンと愉快な仲間たちは困惑している。
「おい! お前たち、そろそろ訓練を始めるぞ!」
その日の最後の授業は、少し重めの装備品の甲冑と、午前中に選んだ自分の武器をもって野山を走り抜ける訓練だった。
本物の騎士剣を担いだマルスでも、嘔吐しそうになる苦しさだった。
騎士盾を選んだブック達は、拷問だっただろう。
ちなみに、同じ騎士剣を選んでいたアロンは、なぜか片手剣を持って走っていた。
~寮の自室~
食事を終え 部屋に戻り、その日は、深い眠りについた。
翌朝、早朝に目が覚めたマルスは、運動場に行ってみる。
まだ誰も来てないようだ。
しばらく体操をして、準備をした後にゆっくりと走り出す。
マルスが1周回るころには、ララも運動場に来ていた。
「マルス、おはよう。」
「おはようございます。ララ先輩」
「昨日は、かっこよかったよ。」
「いえ、こちらこそ助けて頂き、ありがとうございました。」
2人は、軽く挨拶をして走り始める。
ララは、走りながら、いろいろな決まりなどを教えてくれた。
ララは、特級騎士の出身で、そのプレッシャーが大変だとも言っていた。
これから1年間、マルスは、ララと早朝のランニングを続けることになる。
そう、あの事故が起きるまでは・・・。
アルルたち家族は、アルルの実家(下級騎士の館)で暮らしていた。
アルルは精霊の加護が弱く、地獄の空気があってなかったせいもあり肺を病んでいた。
エイトやアルルの知り合いの高名な魔法使いに完全治療魔法をかけてもらったが回復の見込みはなかった。
最近では地獄の門が開いた弊害として こういった病が発生しているようだ。
幼かったマルスやナインも元気に育っていた。
しかし、その幸せな家庭の中にエイトの姿はなかった。
~アルルの実家~
広間にある暖炉で暖まりながらアルルと 子供たちは本を読んでいる。
ナインは温くて眠くなったのか、アルルに抱き着き、腕に抱かれるようにして目を閉じる。
マルスはナインが寝るのを待っていたのか、ナインを起こさないように小声で話しかける。
「ねぇ、お母さん。
ちょっと相談があるんだけど。」
「どうしたの、マルス。」
「あのね、僕、お爺さんと同じように騎士になりたいんだ。
そして、立派な騎士になってお父さんを探しに行きたいんだ。」
「でも、騎士にならなくても冒険者としてお父さんを探すこともできるのよ。
騎士になると忙しくて探しにいけないかもよ。」
「そんなことないよ。
お爺さんは言ってたよ。
お母さんは本当は騎士団の団長を任せられるくらい立派な騎士で、お母さんが本気で探せば騎士団の皆と一緒にお父さんをすぐに見つけられるって。」
アルルは困った顔をした。
できれば、マルスやナインには騎士になってもらいたくなかった。
なぜなら、騎士養成所の思い出は嫌な思い出しかないからだ。
いまでは差別もなくなっているかもしれないが、自分の息子たちが差別する側になるのも、される側になるのも耐えられそうになかったのだろう。
「マルス、お母さんを困らせないで、騎士養成所には絶対に行かせません。」
アルルはナインを抱きかかえ、寝室のベットへ向かった。
1人取り残されるように暖炉の前の椅子に座るマルス。
バチバチと燃える炎は、地獄での生活を思い出し居心地がいい。
「マルス、こっちへおいで。」
「あ、お爺さん。」
「マルス、わしの言った通りお母さんは反対したじゃろ。」
「・・・。」
「仕方ないんじゃ。
冒険者として成功してしまうと大金が手に入り、騎士としての誇りを忘れてしまうからの。しかし、マルスには剣の才能も魔法の才能もありそうじゃから、わしが こっそり騎士養成所へ連れて行ってあげよう。」
「ほんと!」
「しかし、お母さんには内緒じゃぞ。」
「・・・でも、」
「大丈夫。
マルスが出発した後にちゃんとわしから説明しておくから。」
「はい。ありがとう、お爺さん。」
マルスは明日の早朝に出発する約束をお爺さんとした。
内緒で出発する うしろめたさは あったが、それよりも騎士団長になり、父エイトを探して連れ帰った方が母アルルも喜ぶと思ったから決断をした。
マルスはアルルとナインが寝る部屋へ行き、おやすみの挨拶をして部屋に戻った。
~翌日、早朝~
マルスは日の出前に祖父の準備した馬車に乗って王都を目指した。
王都は、ここから馬車で3日程かかる距離の為、これからのマルスの生活は寮での生活になる。
期待と希望を胸にマルスは家族に心の中で別れを告げた。
~3日後~
昼過ぎには王都に辿り着いた。
王都に辿り着くと、そこは見たこともない程の人や建物であふれかえっていた。
マルスの目に写る物、全てが新鮮だった。
地獄での生活は食べるものを探し、生きる為に剣や魔法を学ぶ生活だったのに、ここでは道端に食べ物が溢れ、人の顔にも笑顔が溢れている。
しばらく馬車が走ると、静かな場所に到着した。
馬車の扉が開き、執事のアンドルがマルスを案内してくれる。
「マルスさま、こちらが騎士養成所でございます。」
マルスの目の前には、いままで見た建物よりも大きな建物が見える。
門をくぐると、石畳の広場になっていて、広場の中央には噴水まである。
校舎は広場を囲むようにコの字状に立っている。
2人が校舎正面の玄関に近づくと、中から立派な髭の初老の男性が出てきた。
「君がアルメディシアの子、マルスかな?」
「はい、マルス=ハンニバルと申します。」
「うむ。ご両親に似て聡明そうな子だ。
私はこの王国騎士団育成学校の校長を務める。
ルーンバルト=メイガスだ。
メイガス校長先生と呼んでくれたまえ。」
「はい、メイガス校長先生。」
マルスは執事に別れを告げ、メイガス校長に学校を案内してもらった。
学校には、広い運動場がいくつもあり、武器の練習や魔法の練習を同時に練習できるそうだ。ほかにも馬に乗る馬術や湖を泳ぐ水練、山や森での戦闘演習などもあるそうだ。
なにより、マルスが注目したのは大きな食堂だった。一斉に、300人の学生が同時に食事をとることができるそうだ。人数もそうだが、それだけの食事を毎日準備するのも大変だと思った。
「マルス。最後に寮の話なんだが、君の入学が決まったのが遅すぎて下級騎士の宿舎しか空いていなかったんだ。
アルメディシアは特級騎士だから、上級騎士用の部屋を割り振りたかったんだが、すまない。」
そういって案内されたのは、2人部屋の立派な部屋だった。
間取りは6畳ほどの部屋に2段ベットが置かれている。
窓辺には、先に入居している学生が飾った花だろうか、質素な花瓶に花1本だけ活けられていた。
「いえ、メイガス校長先生、こんなに立派な部屋をありがとうございます。」
メイガス校長は、マルスに明日からの登校の流れを説明し、入学手続きの準備をしに校長室へと戻っていった。
メイガス校長の話では、どうやら今日は10日に1回の休息日になるそうで、相部屋の住人も出かけているようだ。
マルスはベットを見る。
2段とも布団が綺麗にしたあり、相部屋の相手の荷物は部屋の隅にまとめてある。
どうやら几帳面な住人のようだが。それにしても几帳面すぎる。
この部屋に入ってメイガス校長から同居人がいる話を聞くまでは、1人部屋だと勘違いしたほどだった。
それくらいに綺麗に片付いていて、チリひとつ落ちていない。
夕暮れ時になると相部屋の同居人が帰ってきた。
同居人は、同じくらいの背丈の赤髪赤目の細い男の子だ。
「はじめまして。僕は下級騎士のサターナ=ハイレディンの子。
ブックバック=ハイレディンといいます。」
「はじめまして。僕はマルス=ハンニバルです。
マルスって呼んで下さい。」
「はい、マルス様。」
「様?」
「はい、特級騎士のアルメディシア=ハンニバル様の子ですよね。校長先生から他言無用ですが、そのように聞きました。」
「そうだけど僕はまだ何もしてないよ。
だからマルスって呼んでよ。君はブックでいいかな?」
「はい。他の皆様もブックと呼んでいます。
マルス様、部屋は片付けておいたのでマルス様のお好きなように御利用下さい。
僕は空いた場所を使わせていただきます。」
マルスは、こういった生活をしたことがなかったので少し面倒にも感じていた。
「ごめん。そういうの面倒だから、マルスって呼び捨てにしてよ。
それから2人で使う部屋なんだから、お互いが自由に使おうよ。」
「しかし・・・。」
「いいって。こんな生活だったら、お互い頑張れないでしょ。
マルスって呼んでみてよ。」
「は、はい。マルス。」
「そう!
それでいいんだよ。ブック、君は僕の初めての友達なんだからさ。」
そういって、マルスは、握手を求める。
ブックとマルスは、固い握手をした。
「ブック、これから宜しくね!」
「はい、マルス、こちらこそ宜しくお願いします!」
その日は、話し合いの結果、マルスが上の段、ブックが下の段を使うことになった。
どうやら、ブックは本を読むのが、好きなようで、下の段だったら、ランプの明かりで本が読めて嬉しいと喜んでいた。マルスも外の景色が見える上の段で嬉しそうだ。
~翌朝~
マルスの朝は早い。地獄での生活の名残なのか、普段の睡眠時間が極端に短いのだ。
朝も早くから、マルスは、体を動かす為に、寮を出る。
校舎側の運動場では、走っている人影を見つけた。走っているのは、女性だろうか。長い髪がなびいていて、母(アルル)を思い出す。
マルスも散歩より、この運動場の人と一緒に走れば、朝食に遅刻しないだろうと、考えて一緒に走ることにした。
「おはようございます。一緒に走ってもいいですか。」
「はぁ、はぁ、どうぞ、はぁ、はぁ。」
少しペースが速いのか、それとも長く走っているのか、女性の呼吸は荒い。
マルスは、女性に合わせて走りだす。
しばらく走ると、マルスも体が温まり、背中が汗ばんできた。
すると、女性がペースを落とし始める。
「ねぇ、そろそろ時間だから、ゆっくり3周歩いたら、寮に戻ろうよ。」
「はい。」
運動場を1周歩き終わるころには、女性も呼吸が整い始めた。
「君、名前は?」
「マルスって言います。」
「あんまり見ない子ね。新入生?」
「はい、昨日入学しました。」
「ああ、遅れて入学してきたって噂の子だね。私は、ララ。5年生だから先輩だよ。」
「はい、ララ先輩。ララ先輩は、いつも走っているんですか?」
「うん。立派な騎士になる為には、体力も必要だからね。」
「よかったら、明日も一緒に走っていいですか。あまり長い距離を走ったことがなくて、すごく楽しかったですから。」
「いいよ。じゃあ、明日も一緒に走ろうか。」
マルスは、学校生活が楽しくなる予感がした。これから、騎士団になる為の訓練も、仲間がいれば楽しく行えるだろう。
いままでは、訓練も命がけだったし、正直、1人で繰り返す苦痛もあった。
誰かと一緒に訓練することが楽しいなんて思ってもいなかったことだ。
「おーい、マルス。なにボーっとしてるの!? 朝食に遅れるわよ。」
「はーい! ララ先輩、すぐ行きます!」
部屋に戻ると、ちょうどブックが目を覚ましたようだった。
「おはよう、ブック。」
「おはよう、マルス。」
「朝ごはんは、そろそろ?」
「はい、いそいで行かないと並ぶからね。」
マルスは、服を着替えて、ブックと一緒に食堂に行く。
ブックの話し方も、落ち着いてきて、過ごしやすくなってきた。
~寮の食堂~
食堂は、入り口でトレーをもらい、流れに沿って、パン、スープ、おかず、サラダを順番に乗せていき、好きな席に座り食事をとる形式だそうだ。
ただ、注意しないといけないのは、座る場所は、ある程度決まっていて、上級生や、上級騎士以上の出身者と、それ以外で座る場所が分けられているそうだ。
マルスは、面倒にも感じたが、ブックについて行くことにした。
「マルス、ここなら大丈夫だよ。」
「大丈夫?」
「あまり大きな声で言えないけど、上級騎士の近くに座ると、イジメを受けるんだよ。」
2人は、食堂の奥の壁側に座る。
遠くから、ブックを呼ぶ声が聞こえた。
「おい、ブック、昨日、おかずを取ってきたから、分けてやるよ。スープ持ってこいよ!」
数名の学生が笑いながら、2人を見る。
「マルス、気づかないふりして、急いで食べよう。」
「なぜ? おかず、貰ってこようか?」
「違うよ、あれ、虫を入れるんだよ。」
「おい! ブック、無視すんのか!」
「無視が好きなら、虫をいれちゃうぞ!」
笑いながら、数名の学生は、ブックを囲む。
「すみません。もうスープを食べ終わっていたので、ご期待に添えないかと思い、どうしようか考えておりました。」
「はぁ? いまさっきスープ飲んでただろ、嘘ついてんじゃねーぞ!」
ブックは、頭を叩かれながらも、無理して笑っている。
「おい、やめろよ。ブックが嫌がってるじゃないか。」
マルスは、立ち上がり、ブックを庇う。
「なんだコイツ、お前、自分の身分とか分かってんの?」
「俺らは、上級騎士の出身なんですけどー!」
「まじ、コイツむかつくな。」
「マルス、僕は大丈夫だよ。」
「ブック、嫌なことは嫌って言わないと。それに、僕らは友達だろ、困ってる時は助け合おうって昨日 決めたばかりじゃないか。」
ブックは、涙目になっていた。
「おい、下級生、お前らウルセーぞ!」
入り口のほうから、上級生が声をかけると、一斉にブックの周りにいた奴らは、散らばっていった。マルスが上級生の方を見ると、ララが、小さく手を振っている。
マルスも、軽く会釈して、席に着いた。
「マルス、ごめんね。」
「気にすることないよ。それに僕は、何もしてないからね。」
2人は食事を終え、部屋に戻ることにした。
~寮の自室~
「最初の授業まで、部屋で自習だから、少し時間があるよ。」
「自習って、ブックは何するの?」
「僕は、戦術が得意だから、戦術の勉強をすることが多いかな。マルスは何が得意なの?」
「得意・・・。」
マルスは悩んだ。剣術も魔法も、一通りの戦術も、両親から学び、そこそこは出来ると思う。だけど、これが得意と言えるほどではない。しいて言うなら、好きな剣術が得意なのだろうか、それとも、父より上手くなった魔法が得意だと答えるべきなのだろうか。
他の人と比べたこともなかったし、地獄では出来ないことが死につながると教えられてきたから、考えたこともなかった。
戦術や水練は、地上に戻ってから、お爺さんに習った程度の訓練だったから、苦手だということくらいだろう。
「戦術は苦手ってことくらいかな。特に得意はないよ。」
「じゃあ、僕と一緒に、戦術の自習をしようよ。戦術は、本を読んで学んだことを、人と競って訓練することでより上達できるんだ。」
ブックの戦術は面白く、お爺さんに習っていた内容とは違った戦い方だった、その理由は、ブックが住む土地は、川が多く、船を想定した戦術が基礎になっているそうだ。
マルスが習っていた戦術は、騎馬を使っての陣形が主で、その土地にあった戦い方があることも分かった。
~1限目・教室~
1限目は、教室で行われる、授業で、いよいよ武器についての講義が始まるといった具合だ。いままでの授業では、騎士道についての精神論の授業が主だったようだ。
軽く武器の種類や特性を習い、外に出て実際に使ってみることになった。
【騎士に支給される、近接武器の種類】
・騎士剣(両手剣)
騎士を象徴する武器で、両手で扱う武器。重量があり、敵を切り裂くといった使い方より、叩き切るといった、攻撃に使用される。重量がある分、一撃の威力が高く、騎士剣術を習得すれば、連続して攻撃をすることもでき、非常に強力な攻撃手段となる。
・片手剣(&小型盾)
一般の冒険者などが使っている 使いやすい武器。片手で扱えるように、刀身は短めで、切ったり、突いたり、万能に使える。片手で扱いやすいので、盾を併用した戦い方が主流になる。マルスの得意とする武器でもある。
・騎士盾
戦術的な要素で使われる 大型の盾。高さ150cm、幅50cmもあり、重量のある、盾を使った攻撃も威力がある。
・騎士槍
一般的な槍と違い、長さ3m~5m程の、馬上にて使う槍。馬の突進力が加わり、敵を鎧ごと貫くこともできる。強力なドラゴンの鱗を貫くには、騎士槍による攻撃が最も有効と言われている。
「マルスは、どの武器を使うの? やっぱり私物で持ってた、片手剣が得意なの?」
「そうだね。逆に片手剣しか使ったことがなくって、騎士剣とか面白そうだなって思ってる。ブックは?」
「僕は、細剣を魔法剣道場で習ってたから、細剣が得意なんだけど、騎士の武器としては選べないから、片手剣にしてみるよ。」
そこに、朝からブックに絡んできた、上級騎士出身のアロンと、とりまきのフリオ、ランドがいた。
「俺は、騎士槍を選ぼうかな。」
「さすが、アロン様は、騎士槍が似合ってますね! 俺は、騎士剣にしようかな。」
マルスは思った。
あんな長い槍、馬に乗らなければ使うことも出来ないのに、なぜ選ぶんだろうかと。
たぶん、フリオ、ランドも、そう思っているかもしれない。しかし、フリオは、アロンが槍が似合うとおだてている。
「おい、フリオは騎士盾にしろよ。ランドは、騎士剣にしろ。」
「え、俺も騎士剣が・・・。」
「体のでかい奴が盾を使って守るのがいいだろ、いいからお前、今後も盾を選べよ。」
「そうですよね、アロン様。 フリオは、盾が似合ってますからね。」
「そ、そんな・・・。」
それぞれが、武器を選択していく。
結局、マルスは、騎士剣。ブックは、片手剣を選ぶことになった。
ちなみに、アロンは騎士槍、フリオは騎士盾、ランドは騎士剣を選んでいる。
教官が、それぞれが武器を選択したのを確認して、口を開く。
「いいか、ちゃんと授業を聞いてたのか! 騎士槍を選んだバカは、運動場を10周走ってこい! それから武器を選びなおせ!」
いつの間にか、アロンとランドの武器が入れ替わっていた。
いよいよ訓練開始だ。
訓練は、相手を変えながら、本物の防具をつけて、木製の武器で練習をする。模擬試合の形式をとっている。
マルスは、隙の大きな騎士剣に困惑しながらも、器用に体をひねり、連撃を繰り出していく。
「マルス、いままで騎士剣を習っていたのだろう、筋がいいな!」
教官は、マルスの剣筋をほめる。
「おい、ちょっと褒められたからって、調子に乗るなよ。」
次の練習相手のアロンが、マルスにちょっかいを出してくる。
アロンとマルスの番になった。
アロンの力任せの一撃を、右足を後ろに引き、うまくかわし、隙だらけの、アロンに一撃を加える。
アロンは、兜に一撃を受けながら、後ろに逃げる。
「アロン、後ろに引くな! 相手の連撃を受けるぞ!」
教官の指摘通り、マルスは、振り上げる力を利用して、距離をとる手間が省けたので、2撃目をアロンの胴にいれる。その一撃で、バランスを崩し、アロンが尻もちをつく。
「そこまで! マルス、素晴らしい剣筋だ。今後も騎士剣を使うことを進めるぞ。
アロン、遊んでいても上達しないぞ、わざわざ相手と間合いを取れば、次の一撃を放ってくださいと言っているようなものだ。一撃目の後に、体当たりで けん制するなどして、態勢を立て直せ!」
アロンは、教官からの指摘もあり、プライドが傷ついたのだろうか、マルスを睨みつける。
武器の成績が悪かった生徒は、次の武器を取りに移動していく。
もちろん、アロンのように、騎士剣にこだわる生徒もいる。
「マルス、片手剣は向いてなかったみたい。」
ブックが恥ずかしそうに、騎士剣を担いでやってくる。
「やっぱり細剣とは、勝手が違うの?」
「そうだね。教官から、一撃が軽く、鎧を着た敵を剣で撫でてるだけって言われちゃって。」
「それで、重量のある騎士剣に来たの?」
「そう!」
しかし、ブックは、アロン達3人が、勢ぞろいしているのを見て、後悔したようだ。
次の移動の際に、すぐに騎士盾に移動していった。
「よし、午前の授業は これまで! 午後は、ドーラ特別講師の魔法だ。お前ら、一瞬でも手を抜いたり、居眠りしたりすると、夜間の打ち込み練習に参加させるからな!」
教官は、ニコニコ顔で、職員室に戻っていく。
「どうしたの?」
「ああ、マルスは知らないんだよね。美人のドーラ先生が来るときは、鬼教官ブルノスも昼の補習なしの、仏のブルノス になるんだよ。」
~2限目・特別講義室~
2限目は、特別講師として、ドーラ=メイガス先生が来るそうだ。
1年生から3年生までの合同の授業になるそうだ。
教室に入ると、2・3年生の男子が、教室の前の方を独占している。
「マルスは、魔法を使えるの? 僕は、魔法剣を習っていたから、一通りの魔法が使えるから、後ろの方で授業を受けようと思うけど。」
「そうだな。僕も、魔法は使えるから、ブックと一緒に授業を受けようかな。」
マルスと、ブックは、後ろの席で授業を受けることにした。
隣に座った2年生の女子が、マルスに声をかけてくる。
「ねえ、あまり見ない顔ね。いままで前で授業を受けてたの?」
「いいえ、今日から授業を受け始めたんです。」
「メリッサ先輩、マルスっていうんですよ。」
同級の女子 リナが、なぜか自慢げにマルスの紹介をする。
他の先輩たちも、新入生のマルスを見る為なのか、楽しそうに集まってくる。
「マルスくん、いい名前ね。」
「背も低いのが、可愛いよね。」
「黒い瞳が、すっごく綺麗ね。」
「ほんと、黒い瞳とか、珍しくて素敵よね。」
「朝から、食堂で見たよ。勇気あるよね。」
「先輩、騎士剣を使った訓練も上手いんですよ!」
「へぇ、騎士剣に振り回されそうなのにね。」
「耳が赤くなってるよ、可愛い。」
「ブック、前の席に移動しない?」
「・・・そうだね。」
2人は、前の席に移動することにしたが、もう前の席は空きがない。
仕方なく、女子に囲まれながらの授業になった。
後で、このことを言われるんじゃないかと思っていたが、その心配はなさそうだ。
早めに教室に入ってきていた、特別講師のドーラを取り囲むように、男子も前に移動している。
カーンカーンカーン
授業開始のベルがなる。
「では、授業を始める。よろしく!」
「「「はい! ドーラ先生、宜しくお願いします!」」」
まさに 騎士団らしい、息の合った大合唱であった。
「では、講義の前に、今日から授業を受ける生徒がいると思うが。」
マルスは、恥ずかしそうに手を挙げる。
「よろしい。マルス、魔法を習たことは?」
「はい、父から教わりました。」
「そうか、しかし、魔法とは今までの書物からの考え方では習得が難しい、まずは前に来て基本的な知識をつける必要があると思うのだが、そのまま後ろで講義を受ける気なの?」
周囲の視線が痛い。
「すみません。前の席が空いていなかったので。」
「それは、仕方ない。マルス、君の実力を知らずに、後ろで授業を受けさせるほど、私も甘くないし、君の為にもならないだろう。一度、前に出てきなさい。」
マルスは、言われるままに、前に出てきた。
ドーラ特別講師は、マルスの腕にある、母からもらった腕輪を見ている。
「マルス、君に魔法を教えた父の名前は? 」
「はい、エイトです。」
「いま、父は、どうしている?」
「・・・冒険先ではぐれて行動していて、行方不明です。」
周囲の生徒は、笑っている。
「そうか、すまない。いま聞くべきことでは、なかったかもしれない。
父から魔法は、どの程度ならったの?」
「父の取得している魔法は全て。」
「そうか、では、後ろで講義を受ける権利がある。」
マルスは、元の席に戻り、講義が始まる。
ドーラ特別講師の授業は分かりやすく、父が教えていた魔法の理論によく似ていた。
「では、今日の講義はここまで。それと、マルス。あとで職員室に来るように。」
「マルス、怒られちゃうんじゃない?」
「ブック、大丈夫だよ。たぶん。」
「ごめんね。私のせいだよね。完全に。」
「メリッサ先輩のせいでもないですよ。僕が、最初の講義なのに、自分の意思で、後ろに座ったからだと思います。」
マルスは、ドーラ特別講師の怒りが高まる前に、職員室へ急ぐことにした。
「おい、1年、頑張れよ!」
「ドーラ先生は、美人だけど、怒るとヤバいからな。」
「ありがとうございます。ちょっと、怒りが高まる前に謝ってきます。」
男子たちも笑って見送ってくれた。
~職員室~
職員室に入ると、ブルノス先生と遭遇した。
「どうしたんだ、マルス。」
「はい、ドーラ先生に呼ばれてきました。」
「そうなのか。お前は まじめだ。魔法が使えなくたって、騎士剣の技術を磨けば立派な騎士になれるから。頑張れよ。」
ブルノス先生は、何か勘違いをしているようだった。
職員室に入ると、ドーラ特別講師が、指導相談室へマルスを連れていく。
部屋の鍵を閉め、何か魔法を詠唱し始める。
「無音の空間(LV1)」
「無音の空間の魔法ですね。いまから、怒られるってことでしょうか?」
「変な勘違いしないでよ。マルスは、アルルとエイト先生の子供なんでしょ。」
「はい。そうですけど、父や母を知ってるんですか?」
「知ってるも何も、私はエイト先生の一番弟子だからね。それに、君の腕輪、魔法の力場盾は、私がアルルにあげた親友の証だったから。」
「・・・そうだったんですね。」
「意外と普通の反応なのね。ところで、エイト先生が行方不明って、どういう意味?」
マルスは、地獄の門の先で産まれたことや、そこで体験したことなどを、ドーラ特別講師に説明した。
ドーラは興味津々で話を聞き、ドーラと父や母の関係などを教えてくれた。
「とにかく、君の出生の話とか、そういったことは、誰にも言わない方がいいよ。今後、騎士団長を目指してるんだったら、絶対に言うべきではないわね。」
「はい、ありがとうございます。」
マルスは、ドーラ特別講師にお礼をいい、魔法の解除を行って、特別指導室を出て、教室に帰る。
(・・・大魔法の、無音の空間の解除に、1秒もいらなかったみたいね。)
~3限目・教室~
教室に戻ると、誰もいない教室に、ブックが1人で待っていた。
「マルス、戻ってこないのかと思って、ドキドキしたよ。次の授業は、体力づくりだから、運動用の装備を持って、運動場に集合だよ!」
「運動用の装備!?」
「そう、運動準備室にあるから、それを装備していくんだよ。」
運動準備室に行くと、いくつかの革製の甲冑に鉄のプレートで重さを調節した装備が置いてある。
「おえ、マルス、これ外れだよ。」
「はずれ?」
たしかに装備品の甲冑は、異様な臭いを放っていて、革の部分も黒く汚れている。
「前の人が手入れ不十分だと、こんな臭くなっちゃうんだ。」
「ちょっと、匂いがキツイね。香りの選定(LV1)」
「あれ? マルス、何をしたの?」
「匂いを変える魔法を使ったの。」
「そんな魔法まであるの!?」
「うん。これは、2人だけの秘密だからね。」
2人は、いい香りのする、装備品の甲冑をきて運動場に集合した。
先に来ていた、アロンが、遅れてきた2人を見つけて大きな声で言う。
「ルナ、悪臭二人組が来たぞ!」
「辞めなよ、アロン。いつも思うんだけど、やってることがヒドイわよ。」
「大丈夫ですよ。僕も、マルスも気にしてませんから。」
「そうだね。それに、どっちかっていうと、花みたいな香りがしない?」
マルスが、そういったとたん、無臭だった装備品の甲冑は、花のような香りに変わった。
ブックの近くに居たリサが気づく。
「ほんと、ブックから甘い花の香りがするわ。ルナ、ブックの近くに行ってみて。」
「ほんと! 私、この香り好きかも!」
「え、どういうこと?」
アロンと愉快な仲間たちは困惑している。
「おい! お前たち、そろそろ訓練を始めるぞ!」
その日の最後の授業は、少し重めの装備品の甲冑と、午前中に選んだ自分の武器をもって野山を走り抜ける訓練だった。
本物の騎士剣を担いだマルスでも、嘔吐しそうになる苦しさだった。
騎士盾を選んだブック達は、拷問だっただろう。
ちなみに、同じ騎士剣を選んでいたアロンは、なぜか片手剣を持って走っていた。
~寮の自室~
食事を終え 部屋に戻り、その日は、深い眠りについた。
翌朝、早朝に目が覚めたマルスは、運動場に行ってみる。
まだ誰も来てないようだ。
しばらく体操をして、準備をした後にゆっくりと走り出す。
マルスが1周回るころには、ララも運動場に来ていた。
「マルス、おはよう。」
「おはようございます。ララ先輩」
「昨日は、かっこよかったよ。」
「いえ、こちらこそ助けて頂き、ありがとうございました。」
2人は、軽く挨拶をして走り始める。
ララは、走りながら、いろいろな決まりなどを教えてくれた。
ララは、特級騎士の出身で、そのプレッシャーが大変だとも言っていた。
これから1年間、マルスは、ララと早朝のランニングを続けることになる。
そう、あの事故が起きるまでは・・・。
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