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3章・迷宮探索!
第10階 人気の理由
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10階層は、階段と大きな水晶と魔法陣があるだけだ。
水晶の先には、下に降りる階段がある。
水晶の近くでは、占い師が占いをしている場所もあり、冒険者が列を作っている。
レヴィアは、占い師の列が気になっているようだ。
「ここが10階のようだね。さて、並ぶとするか。」
「早く地上に戻ろうよ。」
エイトは、疲れ果てているのだろうか?
早く地上に帰りたがっているようだ。
「いや、列を作ってる占い師だから、有益な情報も得れるだろう。みんなで占ってもらおうと思ってる。」
「占いですか、楽しそうですね。」
「僕、占いとか信じないんだけどな・・・。」
アルルは、レヴィアの意見に同意している。
ミザリは、エイトの意見に同意しているようだが・・・。
「えー、並ぶのはちょっと・・・。」
エイトが否定的な態度を取ると、レヴィアが ミザリ、アルルの肩に手を当てながら言う。
「では、エイトは占わないとして、他のメンバーは占う方向で決定だね。」
「・・・。」
ミザリは、エイトを裏切るようにレヴィアに付いて行く。
商人魂からなのだろうか、権力者に逆らうことはしない考えのようだ。
~20分後~
列も徐々に進み、レヴィア達の番が近づく。
心配そうな表情でアルルがレヴィアに話しかける。
「ほんとうに、エイトさんは占わないんですかね。誘ってきましょうか?」
「大丈夫だ、エイトは自分の事は自分で占える。超高確率で当たる占いも あるからね。」
「じゃあ、エイトに占ってもらえばいいんじゃない?」
ミザリがエイトに占ってもらうことを提案すると、レヴィアが小声で話し始める。
「それは、無理だろう。
守護神が、かなり陰険だからね。」
レヴィアが、エイトを見ながら パーティに聞く。
「ところで、エイトはさっきから何をしてるのかな?」
「ああ。自作の香水を、他の冒険者から買い取った、空の小瓶に詰めてるよ。」
ミザリが呆れたように説明する。
「無駄な労力を使ってるね。」
レヴィアも呆れた表情を見せる。
アルルは、言われて気づいたのか、エイトの方を見て、顔が引きつっている。
「・・・100本以上ありますよ。」
~更に20分後~
占い師の付き人だろうか、受付をしていた男性がレヴィアたちパーティに声を掛ける。
「次の方どうぞー!」
「やっと私たちの番だね。」
レヴィアが嬉しそうに、占い師の老婆の前に立つ。
「まずは、お代だよ。証明書の発行が必要なら、金貨3枚、鑑定だけなら金貨1枚、魔装具の鑑定は、金貨10枚だよ。」
「証明書?鑑定?」
レヴィア達は 全員意味が分かっていないようで、困った顔をしている。
「知らないで並んでたのかい!?
ここは、あんたがたの特殊技能を、鑑定する場所だよ。」
「ああ、そういう列だったんだ。」
残念そうな表情のレヴィアと、ワクワクした表情のアルル。
「面白そうですね。鑑定だけでもしてもらいます?」
「・・・では、わたし以外の鑑定をお願いしようかな。」
そういって、レヴィアは 金貨3枚を占い師に渡す。
「はい、まいど!」
占い婆は、机の下から水晶を取り出す。
いきなり説明もなしで、ミザリが困っている。
「どうやって使うのかな?」
「ああ、これは、こうやって手を水晶にかざすんだよ。」
そういって、レヴィアは水晶に手をかざす。
すると、水晶の中に文字が浮かび始める。
【レヴィア】
特殊技能:錬金術
:命名士
:変質者
:恋する乙女
:
「しまった!!!」
レヴィアのスキルが表示される。
「レヴィア姉さん、変質者って・・・!?」
「レヴィアさん、恋する乙女ですか!?」
アルルとミザリが盛り上がる。
レヴィアは、悔しそうな顔をしている。
「やってしまった。また無駄なスキルが増えている。」
「問題はそこじゃないですよ!」
「まさか、レヴィア姉さん エイ・・・。」
ミザリの言葉を遮るように、レヴィアが 淡々と否定する。
「いや、絶対に違う。」
アルルもミザリの意見に補足を加える。
「でも、スキルは神が与えた能力ですから。」
ミザリとアルルは、レヴィアの恋する乙女の相手を知りたがっている。
しかし、心当たりがないのだろうか、レヴィアは淡々と否定している。
「いや、ここで議論しても前に進まないだろう、ほらスキルの詳細が・・・。」
レヴィアの発言を遮るように、占い師の婆さんが声を掛けてくる。
「スキル詳細は、証明書に乗ってるよ。金貨5枚だけど すぐ決めておくれ。」
3人は、証明書の値段が吊り上がっていることに気づいた。
「いい人そうなのに。ちょっと・・・。」
「うん。値上がりしてる気が・・・。」
「・・・狡猾な作戦みたいだね。」
レヴィアは、追加の金貨と自分の鑑定代を支払った。
・恋する乙女
他人には悟られず、者や物を大切に思うことで与えられる能力。
その者や物を使う場合、身体能力が大幅に向上する。
納得がいったのか、レヴィアが笑顔で証明書を2人に見せる。
「ほら!私が装備を大切に命名して使ってる証拠だろうね!」
「「なーんだ。」」
ミザリと アルル、つまらなさそうにしている。
レヴィアは、納得がいき満足そうな表情でミザリを見る。
「では、次はミザリ!」
「はい!
・・・ちょっと、どきどきするね。」
ミザリが推奨に手をかざす。
【ミザリ】
特殊技能:特殊開錠
:鑑定眼
:大幸運
:
:
レヴィアは、スキル名で予想がついたのだろう。
ミザリのスキルに 興味なさそうな表情を見せる。
「何の面白みもない、商人って感じのスキルだね。」
「えっと・・・。すみません。コメントはないです。」
「では、次は、レイザー行ってみようか!」
自分の番は最後と思っていたのだろう。
レイザーが驚いた表情を一瞬見せるが、進んで一歩前に出る。
内心では、早く鑑定したかったに違いない。
「私も面白くないと思うぞ。」
「うん。知ってる。」
「・・・。」
寂しそうな表情のまま、レイザーが水晶に手をかざす。
【レイザー】
特殊技能:傍観者
:交渉術
:恋する乙女
:
:
「!!!」
レイザーの結果にレヴィアが喰いつく!
「レイザーさんも乙女なんですね!」
「確かに、レイザーも 愛用の武器があるからだよね。」
アルルと ミザリは、レイザーの恋する乙女に注目している。
しかし、レヴィアは その様子を見て顔を横に振る。
「違う、違うよ。2人とも。
交渉術なんて身に着けてたのに、商売で生かしてないのが悔やまれる。」
「確かに・・・。
傍観者ってスキルが邪魔をしてるんじゃないでしょうか!」
レヴィアとアルルは、レイザーの交渉術を伸ばす方法を話し合い始めた。
その横でレイザーのスキルを見ていたミザリが、とても重大なことに気づいた。
「レヴィア姉さん。このメンバーは、冒険には不向きなスキルが揃っちゃったね。」
「「「・・・。」」」
レヴィアさえ、思っても口にしなかったことを、ミザリは平気で言う。
商人らしい はっきりした性格なのだが、冒険の序盤、他の冒険者も大勢いる中で言うようなセリフではない。
もっとも、ミザリの中では、今のパーティを心から信頼しているからこそ 言えるセリフだったのだろうが。
レヴィアは、場の空気を変える為、いっそう元気よくアルルを指名する。
「いや、まだ大丈夫だ!
大御所、色気担当のアルルがいる。」
「はい!頑張ります!」
アルルもレヴィアの元気に触発されて、気合が入っている。
また彼女は、騎士養成所で苦しい訓練を積んできたからこその 自信もあった。
アルルは、胸の高まりを最高潮に感じながら、水晶に手をかざす・・・。
【アルル】
特殊技能:
:
:
:
:
「「「・・・。」」」
パーティだけに留まらず、周囲の冒険者の空気も凍る。
迷宮の10階層まで冒険してきたにも関わらず、特殊技能を発動していないのは、かなり珍しいことなのだ。
「あれ、壊れてるんですかね?」
気まずそうにミザリが答えようとする。
「いや・・・。アルル・・・。その・・・。」
アルルは勝手に、もう一度、手をかざしてみる。
【アルル】
特殊技能:
:
:
:
:
もう一度、手をかざしてみる。
【アルル】
特殊技能:
:
:
:
:
もう一度、手をかざす。
【アルル】
特殊技能:
:
:
:
:
もう一度、
【アルル】
特殊技能:
:
:
:
:
もう一度・・・。
レヴィアが、無心で手をかざし続けるアルルを制止する。
「アルル!やめておけ、周りの冒険者の笑いの的になってるぞ!」
ミザリとレイザーも、すかさずフォローをいれる。
「ほら、き、きっと凄いスキルが控えてるんじゃないかな。迷宮では発動しない系の凄い奴が!」
「そ、そうだな、冒険者でもスキルなしは 多いんじゃないかな。」
そういってレイザーは占い婆に同意を求めるが、占い婆は、首を横に振る。
無表情だったアルルが泣きそうな顔になる。
「もう一度、もう一度だけお願いします!」
「いや、しかし・・・。」
レヴィアは、どうやってアルルを納得させようか考えるが、いい方法が思いつかない。
言葉を詰まらせたレヴィアに、アルルは さらに食い下がる。
「つぎ、次こそは、スキルが発動しているはずです。」
涙目で訴えるアルル。
誤認逮捕の時以上に訴えてきている。
「そ、そうだね。う、うん!
ミザリは、どう思う?」
「え、えっと。あと1回で、次の人に順番をゆずろっか。」
「ああ、ああそうだな。ここで流れを止めるのは、他の冒険者達にも 申し訳ないからね。」
レヴィア達の同意をもらえたアルルは、最後の1回に挑む。
パーティメンバーだけでなく、周囲の冒険者も水晶を直視する者はいない。
「行きます!」
【アルル】
特殊技能:不屈の精神
:
:
:
:
「やった!やりましたよ!!!」
周りの冒険者から、盛大な拍手を受けるアルル。
アルルは、喜びのあまり泣いているようだ。
「・・・レヴィア姉さん、早く地上に戻ろうよ。アレも換金してあると思うからさ!」
「ああ、そうだね。アルルのスキルも発動したからね。」
メンバーが、その場を立ち去ろうとした時、誰かがレヴィアの服を引っ張る。
「では、追加料金の金貨5枚をいただくね。」
服を引っ張ったのは、占い師の婆さんだった。
~ to be continued
【補足】
・魔装具の鑑定
拾ったばかりの魔装具は、未鑑定のまま装着せずに鑑定してから装着するのが一般的。
過去に、フランダース傭兵団のネロは、拾った魔装具を未鑑定のまま装備してしまい、廃人のように、他人の迷惑も考えずに、絵を描き続けるようになってしまったと言われている。
呪いのせいで廃人ネロは、死ぬまで戦うか、絵を描くかしかできないようだ。
水晶の先には、下に降りる階段がある。
水晶の近くでは、占い師が占いをしている場所もあり、冒険者が列を作っている。
レヴィアは、占い師の列が気になっているようだ。
「ここが10階のようだね。さて、並ぶとするか。」
「早く地上に戻ろうよ。」
エイトは、疲れ果てているのだろうか?
早く地上に帰りたがっているようだ。
「いや、列を作ってる占い師だから、有益な情報も得れるだろう。みんなで占ってもらおうと思ってる。」
「占いですか、楽しそうですね。」
「僕、占いとか信じないんだけどな・・・。」
アルルは、レヴィアの意見に同意している。
ミザリは、エイトの意見に同意しているようだが・・・。
「えー、並ぶのはちょっと・・・。」
エイトが否定的な態度を取ると、レヴィアが ミザリ、アルルの肩に手を当てながら言う。
「では、エイトは占わないとして、他のメンバーは占う方向で決定だね。」
「・・・。」
ミザリは、エイトを裏切るようにレヴィアに付いて行く。
商人魂からなのだろうか、権力者に逆らうことはしない考えのようだ。
~20分後~
列も徐々に進み、レヴィア達の番が近づく。
心配そうな表情でアルルがレヴィアに話しかける。
「ほんとうに、エイトさんは占わないんですかね。誘ってきましょうか?」
「大丈夫だ、エイトは自分の事は自分で占える。超高確率で当たる占いも あるからね。」
「じゃあ、エイトに占ってもらえばいいんじゃない?」
ミザリがエイトに占ってもらうことを提案すると、レヴィアが小声で話し始める。
「それは、無理だろう。
守護神が、かなり陰険だからね。」
レヴィアが、エイトを見ながら パーティに聞く。
「ところで、エイトはさっきから何をしてるのかな?」
「ああ。自作の香水を、他の冒険者から買い取った、空の小瓶に詰めてるよ。」
ミザリが呆れたように説明する。
「無駄な労力を使ってるね。」
レヴィアも呆れた表情を見せる。
アルルは、言われて気づいたのか、エイトの方を見て、顔が引きつっている。
「・・・100本以上ありますよ。」
~更に20分後~
占い師の付き人だろうか、受付をしていた男性がレヴィアたちパーティに声を掛ける。
「次の方どうぞー!」
「やっと私たちの番だね。」
レヴィアが嬉しそうに、占い師の老婆の前に立つ。
「まずは、お代だよ。証明書の発行が必要なら、金貨3枚、鑑定だけなら金貨1枚、魔装具の鑑定は、金貨10枚だよ。」
「証明書?鑑定?」
レヴィア達は 全員意味が分かっていないようで、困った顔をしている。
「知らないで並んでたのかい!?
ここは、あんたがたの特殊技能を、鑑定する場所だよ。」
「ああ、そういう列だったんだ。」
残念そうな表情のレヴィアと、ワクワクした表情のアルル。
「面白そうですね。鑑定だけでもしてもらいます?」
「・・・では、わたし以外の鑑定をお願いしようかな。」
そういって、レヴィアは 金貨3枚を占い師に渡す。
「はい、まいど!」
占い婆は、机の下から水晶を取り出す。
いきなり説明もなしで、ミザリが困っている。
「どうやって使うのかな?」
「ああ、これは、こうやって手を水晶にかざすんだよ。」
そういって、レヴィアは水晶に手をかざす。
すると、水晶の中に文字が浮かび始める。
【レヴィア】
特殊技能:錬金術
:命名士
:変質者
:恋する乙女
:
「しまった!!!」
レヴィアのスキルが表示される。
「レヴィア姉さん、変質者って・・・!?」
「レヴィアさん、恋する乙女ですか!?」
アルルとミザリが盛り上がる。
レヴィアは、悔しそうな顔をしている。
「やってしまった。また無駄なスキルが増えている。」
「問題はそこじゃないですよ!」
「まさか、レヴィア姉さん エイ・・・。」
ミザリの言葉を遮るように、レヴィアが 淡々と否定する。
「いや、絶対に違う。」
アルルもミザリの意見に補足を加える。
「でも、スキルは神が与えた能力ですから。」
ミザリとアルルは、レヴィアの恋する乙女の相手を知りたがっている。
しかし、心当たりがないのだろうか、レヴィアは淡々と否定している。
「いや、ここで議論しても前に進まないだろう、ほらスキルの詳細が・・・。」
レヴィアの発言を遮るように、占い師の婆さんが声を掛けてくる。
「スキル詳細は、証明書に乗ってるよ。金貨5枚だけど すぐ決めておくれ。」
3人は、証明書の値段が吊り上がっていることに気づいた。
「いい人そうなのに。ちょっと・・・。」
「うん。値上がりしてる気が・・・。」
「・・・狡猾な作戦みたいだね。」
レヴィアは、追加の金貨と自分の鑑定代を支払った。
・恋する乙女
他人には悟られず、者や物を大切に思うことで与えられる能力。
その者や物を使う場合、身体能力が大幅に向上する。
納得がいったのか、レヴィアが笑顔で証明書を2人に見せる。
「ほら!私が装備を大切に命名して使ってる証拠だろうね!」
「「なーんだ。」」
ミザリと アルル、つまらなさそうにしている。
レヴィアは、納得がいき満足そうな表情でミザリを見る。
「では、次はミザリ!」
「はい!
・・・ちょっと、どきどきするね。」
ミザリが推奨に手をかざす。
【ミザリ】
特殊技能:特殊開錠
:鑑定眼
:大幸運
:
:
レヴィアは、スキル名で予想がついたのだろう。
ミザリのスキルに 興味なさそうな表情を見せる。
「何の面白みもない、商人って感じのスキルだね。」
「えっと・・・。すみません。コメントはないです。」
「では、次は、レイザー行ってみようか!」
自分の番は最後と思っていたのだろう。
レイザーが驚いた表情を一瞬見せるが、進んで一歩前に出る。
内心では、早く鑑定したかったに違いない。
「私も面白くないと思うぞ。」
「うん。知ってる。」
「・・・。」
寂しそうな表情のまま、レイザーが水晶に手をかざす。
【レイザー】
特殊技能:傍観者
:交渉術
:恋する乙女
:
:
「!!!」
レイザーの結果にレヴィアが喰いつく!
「レイザーさんも乙女なんですね!」
「確かに、レイザーも 愛用の武器があるからだよね。」
アルルと ミザリは、レイザーの恋する乙女に注目している。
しかし、レヴィアは その様子を見て顔を横に振る。
「違う、違うよ。2人とも。
交渉術なんて身に着けてたのに、商売で生かしてないのが悔やまれる。」
「確かに・・・。
傍観者ってスキルが邪魔をしてるんじゃないでしょうか!」
レヴィアとアルルは、レイザーの交渉術を伸ばす方法を話し合い始めた。
その横でレイザーのスキルを見ていたミザリが、とても重大なことに気づいた。
「レヴィア姉さん。このメンバーは、冒険には不向きなスキルが揃っちゃったね。」
「「「・・・。」」」
レヴィアさえ、思っても口にしなかったことを、ミザリは平気で言う。
商人らしい はっきりした性格なのだが、冒険の序盤、他の冒険者も大勢いる中で言うようなセリフではない。
もっとも、ミザリの中では、今のパーティを心から信頼しているからこそ 言えるセリフだったのだろうが。
レヴィアは、場の空気を変える為、いっそう元気よくアルルを指名する。
「いや、まだ大丈夫だ!
大御所、色気担当のアルルがいる。」
「はい!頑張ります!」
アルルもレヴィアの元気に触発されて、気合が入っている。
また彼女は、騎士養成所で苦しい訓練を積んできたからこその 自信もあった。
アルルは、胸の高まりを最高潮に感じながら、水晶に手をかざす・・・。
【アルル】
特殊技能:
:
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「「「・・・。」」」
パーティだけに留まらず、周囲の冒険者の空気も凍る。
迷宮の10階層まで冒険してきたにも関わらず、特殊技能を発動していないのは、かなり珍しいことなのだ。
「あれ、壊れてるんですかね?」
気まずそうにミザリが答えようとする。
「いや・・・。アルル・・・。その・・・。」
アルルは勝手に、もう一度、手をかざしてみる。
【アルル】
特殊技能:
:
:
:
:
もう一度、手をかざしてみる。
【アルル】
特殊技能:
:
:
:
:
もう一度、手をかざす。
【アルル】
特殊技能:
:
:
:
:
もう一度、
【アルル】
特殊技能:
:
:
:
:
もう一度・・・。
レヴィアが、無心で手をかざし続けるアルルを制止する。
「アルル!やめておけ、周りの冒険者の笑いの的になってるぞ!」
ミザリとレイザーも、すかさずフォローをいれる。
「ほら、き、きっと凄いスキルが控えてるんじゃないかな。迷宮では発動しない系の凄い奴が!」
「そ、そうだな、冒険者でもスキルなしは 多いんじゃないかな。」
そういってレイザーは占い婆に同意を求めるが、占い婆は、首を横に振る。
無表情だったアルルが泣きそうな顔になる。
「もう一度、もう一度だけお願いします!」
「いや、しかし・・・。」
レヴィアは、どうやってアルルを納得させようか考えるが、いい方法が思いつかない。
言葉を詰まらせたレヴィアに、アルルは さらに食い下がる。
「つぎ、次こそは、スキルが発動しているはずです。」
涙目で訴えるアルル。
誤認逮捕の時以上に訴えてきている。
「そ、そうだね。う、うん!
ミザリは、どう思う?」
「え、えっと。あと1回で、次の人に順番をゆずろっか。」
「ああ、ああそうだな。ここで流れを止めるのは、他の冒険者達にも 申し訳ないからね。」
レヴィア達の同意をもらえたアルルは、最後の1回に挑む。
パーティメンバーだけでなく、周囲の冒険者も水晶を直視する者はいない。
「行きます!」
【アルル】
特殊技能:不屈の精神
:
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「やった!やりましたよ!!!」
周りの冒険者から、盛大な拍手を受けるアルル。
アルルは、喜びのあまり泣いているようだ。
「・・・レヴィア姉さん、早く地上に戻ろうよ。アレも換金してあると思うからさ!」
「ああ、そうだね。アルルのスキルも発動したからね。」
メンバーが、その場を立ち去ろうとした時、誰かがレヴィアの服を引っ張る。
「では、追加料金の金貨5枚をいただくね。」
服を引っ張ったのは、占い師の婆さんだった。
~ to be continued
【補足】
・魔装具の鑑定
拾ったばかりの魔装具は、未鑑定のまま装着せずに鑑定してから装着するのが一般的。
過去に、フランダース傭兵団のネロは、拾った魔装具を未鑑定のまま装備してしまい、廃人のように、他人の迷惑も考えずに、絵を描き続けるようになってしまったと言われている。
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